山口祝子(やまぐちしゅうこ)

「言葉」で表現しきれないことは、たくさんあります。それでも、「おもい」があふれて、「景…

山口祝子(やまぐちしゅうこ)

「言葉」で表現しきれないことは、たくさんあります。それでも、「おもい」があふれて、「景色」が浮かぶ文章が書けたら。。といつも願っています。その「願い」のために、日々書き綴っています。

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固定された記事

近代的自我の功罪〜後悔と再生と〜

  ※マックス・シェーラーに捧ぐ   ーーすべて「嘘」でした。 とだけ書いた「遺書」を残して、思い切って死んでしまおう。 ーーわたしの人生は、それでおしまい。 …

声・靴・はじまり(改訂版)

  #戯曲    舞台中央 独白 スポットライトの下 男はギターを抱えている。 男 「ーー僕はずっと、ある女の子を探している。。君は、いったいどこにいるの?」 …

呼ばれた街・約束の街・再会の街

 まだ、わたしが、高校二年生だった、一九七三年の、秋頃のことだ。    たぶん、土曜日の午後。    午前の授業を終えて、お弁当を食べ、学校から帰宅する途中だったと…

遠い記憶・海からの贈り物・夢

 ずいぶんと幼いころから、わたしは、「日の出」よりも「日の入り」のほうが、ずっと、好きだった。  「日の出」のお日さまは、とても元気一杯で、嬉しそうに、昇ってく…

湖水を覆う雲・秘密・永遠なるもの

 「万葉集」は、我が国最古の「歌集」で、全二十巻、ある。  載せられている「うた」は、四五四〇首もあって、「詠み人」は、「天皇から農民まで」と、大変に、多岐にわ…

哀しみの湖水・むべの実と紅葉の道

  「果物のなかでは、何が、一番好き?」    誰かに、そう聞かれたら、たぶん、わたしは、即座に、 「一番は、グレープフルーツ、かな。」 と、答えるだろう。  何…

教会通り・長い長い道と人生の孤独

 荻窪駅北口の、青梅街道を渡ると、少し左手に、北に向かって長く長く続いてゆく、古い「商店街」がある。  通称「教会通り」。  長く長く続いていて、たくさんの小さ…

巡り廻るたましいの記憶・琵琶湖へ

 「なぜ、踊らぬ。。」  しばらくのあいだ、わたしの顔を、まじまじと見つめていたそのひとは、振り絞るような声で、それでいて、静かな、毅然とした言いかたで、そんな…

十四才・わたしの怪しく妖しい衝動

 これまでに経験したことも無い、からだの奥底から突き上げて来るような、どこかしら仄暗く、怪しく妖しい、その「衝動」を、わたしが初めて自覚したのは、十三才くらいの…

表現・生活・呼吸・新しき村

 埼玉県内を、北西部に向かって縦断する「八高線」の、「高麗川」と「毛呂山町」のあいだに、「とても小さな踏切」が、ある。  その「踏切」を渡り、直進する。  する…

「虹をかける」〜二つの戯曲にこめたおもい

 今年、わたしは、二つの戯曲を書くことが出来た。  最初に書いたのは、「声・靴・はじまり」で、二つめは、「らせん階段を昇るとき」である。  「声・靴・はじまり」…

国木田独歩・その自由恋愛の実体

 わたしは、普段、自分の考えていることを、あまり、ひとには、話さない。  これまでの人生で、こころから共感出来るひととの出会いは、ほとんどなかったし、自分の感覚…

「愛される幸福」と「幻の告白」

 「わたしは、おかあさんのこと、世間知らずのお嬢さんだなって思ってるの。おとうさんに愛されてて、おしあわせなことってさ。わたしは、おかあさんのようにはならないつ…

下北沢の魔力・取り戻せたおもい

 長いエスカレーターを昇り切って、「駅前の広場」に着いたとき、わたしは、久しぶりに、ほんとうに、久しぶりに、「下北沢に降り立った」という「実感」を持っている自分…

「木の鳥」が居たおじいちゃんのお庭

 わたしの父は、昭和の初めに、台湾で生まれた。  祖父が、台湾で、警察官をしていたからだ。  けれども、祖父は、父が、三才のときに、マラリアに罹って、職務中に、…

表現と秘密と父と母のおはなし

 遠くから、「声」が、聞こえて来る。    どこかで聞いたような、優しげな、温かそうな、懐かしい「声」。  何かの「うた」を、歌っている。  「誰?」  ーーおと…

声・靴・はじまり(改訂版)

声・靴・はじまり(改訂版)

  #戯曲
 

 舞台中央 独白 スポットライトの下 男はギターを抱えている。

男 「ーー僕はずっと、ある女の子を探している。。君は、いったいどこにいるの?」

  (暗転)

   
    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 
 ライブハウスの楽屋 夕方。

男  「僕は、自分で歌を作って、ライブハウスで歌っている。ギター1本で、弾き語っているんだ。人生はうまくいくことばかりじゃない。だから、

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湖水を覆う雲・秘密・永遠なるもの

湖水を覆う雲・秘密・永遠なるもの

 「万葉集」は、我が国最古の「歌集」で、全二十巻、ある。

 載せられている「うた」は、四五四〇首もあって、「詠み人」は、「天皇から農民まで」と、大変に、多岐にわたっている。

 「うた」の表わされかたは、一見すると、「漢文」のようにも見えるのだけれど、「漢文」ではない。

 よく見ると、本来の「漢字」や「熟語」のほかに、「音」や「意味」だけを拝借して、まるで「宛て字」のように使われている「万葉仮

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哀しみの湖水・むべの実と紅葉の道

哀しみの湖水・むべの実と紅葉の道

 
「果物のなかでは、何が、一番好き?」  
 誰かに、そう聞かれたら、たぶん、わたしは、即座に、

「一番は、グレープフルーツ、かな。」

と、答えるだろう。

 何故なら、「グレープフルーツ」は、そんなに、甘くなくて、食べたあと、口のなかに、若干の「苦み」が残るから。。
 
 甘いばかりの果物は、わたしには、なんだか、「つまらない」のだ。
 
 食後に残る、あの「苦味」が、もしかしたら、わ

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表現・生活・呼吸・新しき村

表現・生活・呼吸・新しき村

 埼玉県内を、北西部に向かって縦断する「八高線」の、「高麗川」と「毛呂山町」のあいだに、「とても小さな踏切」が、ある。

 その「踏切」を渡り、直進する。

 すると、やがて、何やら文字が刻まれた「木の門」が、見えて来る。

 「踏切」は、その場所への、「入口」のようにも、見える。

 その「門」には、

 「この門に入るものは自己と他人の 生命を尊重しなければならない」

と、刻まれている。

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「虹をかける」〜二つの戯曲にこめたおもい

「虹をかける」〜二つの戯曲にこめたおもい

 今年、わたしは、二つの戯曲を書くことが出来た。

 最初に書いたのは、「声・靴・はじまり」で、二つめは、「らせん階段を昇るとき」である。

 「声・靴・はじまり」は、もう、二十年近くも、こころのなかで、温めていたもので、実際に、わたしの身の上に起こった、わたし自身の「生き直し」が、テーマになっている。

 わたしにとって「生き直し」とは何だったのか。 

 何故、「生き直し」が必要だったのか。

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国木田独歩・その自由恋愛の実体

国木田独歩・その自由恋愛の実体

 わたしは、普段、自分の考えていることを、あまり、ひとには、話さない。

 これまでの人生で、こころから共感出来るひととの出会いは、ほとんどなかったし、自分の感覚は、きっと、世間とは、ずいぶん、ズレているんだろうなと、思っているからだ。

 こころを許して、ひとと話すことに、あんまり、魅力が持てない。というよりも、違和感しか受け取れない会話に、疲れ果ててしまっていると言ったほうが良い。

 根は「

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下北沢の魔力・取り戻せたおもい

下北沢の魔力・取り戻せたおもい

 長いエスカレーターを昇り切って、「駅前の広場」に着いたとき、わたしは、久しぶりに、ほんとうに、久しぶりに、「下北沢に降り立った」という「実感」を持っている自分に、気がついた。

 今年の五月に、街をまわるサーキットライブが行われたときに、わたしは、短い時間だったけれども、「下北沢」に、来ては、いたのだ。

 だから、正確に云えば、「下北沢」に降り立ったのは、今年二回目、ということになる。

 で

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「木の鳥」が居たおじいちゃんのお庭

「木の鳥」が居たおじいちゃんのお庭

 わたしの父は、昭和の初めに、台湾で生まれた。

 祖父が、台湾で、警察官をしていたからだ。

 けれども、祖父は、父が、三才のときに、マラリアに罹って、職務中に、あっけなく、亡くなってしまった。そこで、残された家族は、しかたなく、祖父が生まれ育った町に、戻って来たのだった。

 そうして、代々祖父の一族が住む土地の一画に、家を建ててもらい、祖父が残した年金で、細々と暮すことになった。

 だから

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