西園寺命記~紗由・翔太之巻~その14

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「メッセージのやり取りの中で、“足らない部分を早急に入手しろ”という指示があったんだよ」龍が言う。「ただ、それが何なのかはわからない」

「下手に先をたどるのも危ないかもしれないものね…」紗由が頷く。

「それが狙いで、わざわざPCを渡したという見方もできなくはない」

 龍が遠くのビルのスクリーンを見つめる。

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とってもうれしいです!
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アリウム(誕生花ss)

職場のあるフロアの奥、非常口の手前で、俯いた人が座り込んでいるのを見た、ような気がした。何か深く物思いに沈むように頭を垂れ、膝を抱えて、錆び付いたドアの前に。
 あれ、と思ってよく見直したが、誰もいない。ただ昼下がりの重たい空気が停滞しているばかりだ。
 次の日も、家を出てすぐの電柱の陰に、同じ姿勢の人を見た、気がした。その次の日も、職場に続く廊下の壁にもたれる人を、見た気がした。だんだんとその姿

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実はウチの犬、ちょっとだけ話す。 第八話「徳島のゆるキャラ」

徳島県の公式マスコットキャラクターの「すだちくん」を知っている?特産品の「すだち」をモチーフにしたキャラクターで、緑の顔に弾けるような笑顔を浮かべ、イニシャルSの書かれた服を着てスーパーマンのような真っ赤なマントをはためかせている。平成五年に開催された東四国国体で誕生したキャラクターだから、俺より十歳も年上だ。ちなみに性別は男でも女でもない、中性。

「またうんこマンのグッズを買ったな、タケル」

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虚実の境目を見失う

「私、あいつら嫌いなんです。いなくなればいいのに」

あいつら、とは彼女の両親の事だ。真夜中、ベランダに煙草を吸いに出ると、時たま彼女に出会う。思えば彼女はベランダで何をしてるのだろう。

「親をあいつらと言わない方がいいですよ」
「いなくなれば、はいいんですか?」
「それも駄目です、口に出しちゃ」
「どうして?」
「後々、自分が後悔します」
「後悔しなかったら?」
「後悔しない人生を歩んだことに

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【小説】選考結果のおいでませ 1話

〈厳正なる選考の結果、誠に残念ながら宇野様のご貴意に添いかねる結果となりました〉

微かな期待が身体から抜け出て、天に向かった。お祈りメールをもらう瞬間は、予期せぬ転倒から痛みを感じるまでの数秒に似ている。

「あっ、こいつ右回った。ちょっとポンはB3の出口行って。挟み込む」

FPSゲームにのめりこむ成田は、僕の隣でいつになく厳格な表情を浮かべている。

「おい。いけって。て、おい!…お前、何ス

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Reincarnation -繋がるトキ-

眠る瞬間、その意識が何かと融合していく時がある。私は私自身でありながら、何者かになっているのだ。そんな事が、幼い頃から幾度とあった。

その度に私は、それの意味を探していた。

・・・・・・・

騒々しい、何だろう?今度はドコに居る?
え…アレは…私?だよね?

眠りについたと思われる瞬間、私は違う世界に居た。よくある事だ。更に時代背景や性別、年齢は違えど、ここに居る私は私であって、私じゃない。

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あなたのたいせつなスキ♡
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雨の奥[六]



物心ついたときには、父はいつも酔っていた。アルコールの匂いが、すなわち父の匂いだった。

酔っている父はいつも大声で叫び、人の話は聞こうともしなかった。

仕事だと言って、家に帰ってくることも少なかった。

父に褒められた記憶はない。そのかわり、怒られたこともない。

父は自分にしか興味がないのである。

そのことに気が付いたのは中学生になってからだった。

いつも母に迷惑をかけ、娘の私には

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ペチュニア(誕生花ss)

「ツクバネさんと一緒にいると、なんかホッとするんだよね」
 夏の日差しが差し込むカフェで、斜め向かいに座った同僚が言う。すると、その隣の同僚も大きく頷いた。
「あ、分かる分かる。癒し系だよね」
「あはは……ありがとうございます」
 軽く頭を下げ、唇を噛む。腹に溜まりそうなものを吐息とともに逃し、また頭を上げる。
「いつも親身になって相談に乗ってくれるし、ほんと助かるよ」
「私も、深夜に泣きながら電

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コヨーテ #12

カラレア共和国(Republic of Karjalea)
第12話 隣国カラレア共和国

オルカラド王国の隣国、カラレア共和国―

ルシアン帝国とオルカラド王国の間に位置する縦長の小国で、国土はオルカラドの半分しかないと言われている。

そのカラレア共和国とルシアン帝国を結ぶ鉄道モースト鉄道の終着駅ホネに到着したのは夜中だった。

「おい、着いたぞ。ったく…いつまでダラダラしてんだよ、お前は。」

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西園寺命記~紗由・翔太之巻~その13

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「じゃあ、あらためて乾杯!」

「乾杯!」

 ケーキの登場で、龍が音頭を取り、再度誕生日祝いが始まった。

 龍と翔太の想像通り、目の前の18センチホールを一人でペロリと平らげる紗由。

 聖人と真琴がじーっと見つめているが、まったく意に介さない。

「すごいなあ…」愛娘の食欲に、あっけにとられる涼一。

「ほん

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