女神浪漫紀行 5

女神浪漫紀行5 元伊勢 「崇神天皇の御代、宮中よりはじめて、天照大御神を豊鍬入姫命(とよすきいりひめのみこと)に託されてお遷しになり、「磯城神籬(しきひもろぎ)」を立て、お祀りされた「倭笠縫邑(やまとかさぬいのむら)」であります。 大御神のご遷幸の後も、その御蹟を尊崇し、檜原神社…

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熊の飼い方 34

 影 18    ごっさんの描く絵は僕には理解できなかった。 黒く塗られた背景の中心に、白い布のようなものが螺旋状に渦巻いている。その白い物体は何かから抜け出すようにも見える一方、もがきながら動いているという印象も受ける。鉛筆で描かれたその絵は、白と黒しかないはずだが躍動感がありあ…

連載小説:メミエの空き瓶と12ヶ月⑥

第6月:ワカサギのエスカベッシュ 週末、メミエは朝早くから湖のスケートリンクでアルバイトをしている。組み立て式のテーブルの上に、魔法瓶と紙コップ。 「熱々のメープルティーはいかがー」 ひとりの青年がスイーっと近寄ってきて「一杯おくれ」と、100ピリカ硬貨を二枚差し出す。メミエは湯気の…

まとめて読む「泣くなよここに来いよ」(01~10)

「泣くなよここに来いよ」の第1回から第10回までまとめました。  Twitterに、縦書きに変換した画像を貼りつけているので、電子書籍のようにを読むむこともできます。 01 サバ折りするくらい抱きしめたい  アタシが圏外地《けんがいち》に引っ越したのは、ニクイさんが「しばらく休んだらどう?」…

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Over Rewrite Living Dead ㉚

Heaven(9話) ――どんな未来になったとしても、僕らは誰かを想うだろう 【連載小説】…

2年後。 僕らは旅の後、それぞれに仕事を選び、毎日忙しくしている。 僕の朝は、火を起こすことから始まる。かまどに火が入ると、妹のハルが水の入った鍋を持ってきて、かまどに置く。ハルはいったん家に戻り、しばらくすると芋や野菜を載せたまな板を持ってきて鍋に入れる。今日は干し肉も割いて入れ…

猫と女

転機 保健所では時間で人間が見にくる。餌が出てくる。運動する。同じカゴに戻る。寝る。決まりきった一日があった。 時折知らない人間が見にくる。今日も何人か僕らを見にきた。僕はぼーっと眺めていた。いつの間にか見なくなった仲間もいた。 あるとき仔猫が仲間にやってきた。なぜ…

No.46~50

No.46 昼想夜夢 あなたは……。ああ、そうか。これは夢だ。僕はあなたと話したことがないし、顔すらまともに合わせたこともない。だから、目の前のあなたは喋らない。でも、いいんです。言葉を交わせなくても、二人でいるだけで。 昼に考えていたことが、夜になって夢に見ること。または、いつも思…

霜花——迷迭香 4

雨か。 確かにここ一週間ほど降っていなかった。轟轟と叩きつけられた雨粒が跳ね返って泥と一緒に喫茶店の窓を少し汚している。あまり客は入っていないが、なかなかに落ち着く。カランカランと乾いた音と共にびっしょりと濡れた霜花が入ってきた。右手には見事にプラスチックの布がなくなり、骨だけに…

文字だけの、見えない君を探してる。 第十七夜 雨は美学

金曜日がやって来た。 かなえは、先週の鋤柄への問いの答えを知るために、あの店へと向かった。 しばらく歩いていると、一軒の店が見えてくる。 店の戸には、のれんがかけられており、そこには『おあいそ』とある。 奇妙な寿司屋は、今日も同じ場所に存在していた。 かなえは、店の戸を開けた。 数人…