川良部逸太

かわらべ・いつた いつか小説を書いてみたい。 そんな夢を抱きつつ、手にするのは小説:技…

川良部逸太

かわらべ・いつた いつか小説を書いてみたい。 そんな夢を抱きつつ、手にするのは小説:技術書=1:3。 古建築とお酒、ランニングを愛してやまない、元技術屋です。

最近の記事

コングラボードをいただきました! 読んでくださる皆様、たくさんのスキ、ありがとうございます!!

    • 拙作「Monument」の書かれ方 #4

       およそ5カ月間のご無沙汰になってしまいました。 『拙作「Monument」の書かれ方』、続きを記して参りたいと存じます。  一人称で記されたミステリーとSF。  この2作品を、交互にひたすら模写していく。  そんな日々が、しばらくの間、続きました。  それは、とても楽しいひと時でした。  すでに何度も読み返した作品でしたので、物語はその細部まで映像のように思い浮かべることができます。  そのはずなのに、まだまだ埋もれていたのです。  新たな発見の数々が。  

      • 創作大賞2024、完走しました

        創作大賞、なんとか完走を迎えることができました。 確か、アジサイも盛りの6月中旬から投稿を初めて、今はヒマワリの花が炎暑に立ち向かって、すっくと顔をあげています。 その間、四十日余り。 実に充実した日々……と、かっこよくまとめたいところなのですが、なんと申しましょうか、毎日参地にが綱渡り。ひやひや、もやもやの連続でした。 無事、こうして完走できましたのも、拙作をご覧くださる皆様、スキやコメントで応援くださる皆様はもとより、ともに創作大賞を駆ける数多くのnoterの皆様

        • ご紹介の御礼

          水野明日香さんに、拙作「Monument」をご紹介いただきました。 連載に「了」の字を打った直後でもあり、思いがけないお褒めの言葉に、嬉しさが込み上げて参りました。 本当に、ありがとうございます。 水野明日香さんは、素敵な風景写真と共に、短歌、詩、SSを書かれているnoterさんです。 短い言葉の中に、ぎっしりと詰まった心模様。 毎度、心を揺さぶられます。 皆様も是非。 創作を通じて、交流の機会をいただけましたこと、大変ありがたく存じます。 読んでくださる皆様、

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          8,000回の「スキ」、ありがとうございます。 これからも、どうかよろしくお願い申し上げます。

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          【note創作大賞2024応募作品】Monument(最終話)

          第七章(3/3)眞琴  クチナシの、ほのかな香りで目を覚ますと、わたしは窓辺で横になり、ブランケットを、被っていた。  明け方の、冷たい風にあたったのか、片頬と耳が冷たい。  半身を起こし、ぼやけた目で振り返った窓の外。  ベランダには、緑に混じって白が滲む。  物音を立てないよう、そっと窓の隙間を広げる。  気持ちのいい朝の空気が、室内に流れ込んだ。  ふんわりと甘い香りを連れて。  四つ並んだクチナシの鉢。  そのすべてのつぼみが、口を開きかけていた。  夜露に

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(最終話)

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第23話)

          第七章(2/3)眞琴  眼下には、地平の果てまで一面の闇。  光も、ない。  音も、ない。  風も、ない。  匂いも――走りに走り続けたせいで、焼き付いた肺が吐き出す微かすかな血の香り以外、なにもない。  汗を吸った衣類は肌に纏わり、手の甲で拭った唇には、薄っすらと塩の味がした。  町は、闇という名の水底に深く沈んで果てしなく広がり、そのまま空へ――吸い込まれてしまいそうなほど、澄み渡った星空へと連なっている。  天空は、くっきりと銀河に両断されていた。  首筋に

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第23話)

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第22話)

          第七章(1/3)眞琴 「もうじきだよ。眞琴っちゃん。あと少し」  前を行く啓太郎が、呼吸の合間にわたしを気遣う。 「うん」  と、返すのが、精一杯になった。  急な登りを終えると水路は次第に浅くなり、もうわたしですら、ひざを屈めなければ歩けない。  ちょっぴり酸欠気味なのか、頭の芯がぼおっとなる。 「ついたぞ」  先頭の毬野が、足下を照らすランタンを消した。  啓太郎が背負うクチナシが、わたしの目の前、水路の床に降ろされる。  暗闇に目が慣れてくると、二人の頭の少し先

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第22話)

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第21話)

          第六章(2/2)眞琴  木曜の終バスに、乗客は少ない。  わたしは啓太郎と二人、一番後ろの左側、外が見えるほうに席を取った。  バスは途中、香澄の仮の墓碑「23番」の柱を通過する。  ここに座っていれば、それを拝めるはずだった。 『発車します』  運転手が、低い声で出発を告げる。  タイヤが、水溜まりを踏む音がした。  陽もすっかり暮れ切ってからの雷鳴で、窓辺のわたしは飛び起きた。  雨は、いじわるなほど激しく窓を叩き、わたしを不安に陥れる。  毬野が、計画を断念

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第21話)

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第20話)

          第六章(1/2)眞琴  長い、一日になる。  覚悟して望んだ最終日、木曜のボランティアは、流れるように時間が過ぎた。  脩さんの誤解は最後まで解けず、おかげで恒例の懇親会も堂々とすっぽかして、毬野と二人、帰途につく。  日中、啓太郎が調達してくれた不足の品を確かめて、行動計画をおさらいすると、わたしたちにはもう、成すべきことはなくなった。  ベッドを譲る、というわたしの提案はあっけなく退けられて、啓太郎はリビングのカウチで、毬野はダイニングテーブルに突っ伏して、わた

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第20話)

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第19話)

          幕間(2/2)香澄(承前) 「あはは……やってくれるじゃないか。やっぱおまえ、見所あるわ」  妙子さんの手元でライターの炎は踊り続け、なかなか蚊取り線香に火を移せない。 「んで、そのダチョウ頭のケータロくんが、好きんなっちゃったわけだ」 「違います。どうしてそうなるんですか?」 「んじゃあ、巻き毛の毬野くん?」  もういい。  わたしは鉄階段の隅っこに、図書コーナーから掠めてきた雑誌を一冊挟むと腰を下ろした。   わたしの部屋には非常階段への出口があって、サムターン

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第19話)

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第18話)

          幕間(1/2)香澄  ベッドの端に腰かけて、腕の絆創膏を取る。  赤紫にべったりと、また針の痕が残っていた。  やれやれ、だ。  首尾よく退院が叶っても、当分、半袖は着られまい。  もっとも、ここを出る頃にはもう、季節外れかもしれないが。  朝っぱらから、だらだらと続いた検査も、すべて完了。  なすべきことは何もなく、わたしはベッドに身を投げ出した。  陽射しは早、西に傾き、さらさらと群れ鳴く虫の音が、珍しく静まりかえった病棟の隅々にまで滲み渡る。  いまさらながら、

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第18話)

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第17話)

          第五章(3/3)眞琴  深紅のはちまきを、なびかせながら、先陣を駆ける香澄。  その姿は、憎らしいほどかっこよかった。  けれど、直後、始まった乱戦に、あたしは彼女を見失ったままだ。  緒戦で白組に捕まり、潰されてしまったか?  もみくちゃになって踏みつけられる香澄と、彼女を守ろうと奮戦する三人の姿に背筋が凍える。  いや、そんなはずはない。毬野と啓太郎がついているんだ。  不吉な予感を振り払った次の瞬間、混戦の中から俊足の一騎が姿を現した。  追いすがる敵騎を難

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第17話)

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第16話)

          第五章(2/3)馨  梅雨は中休みらしく、絶好の運動会日和に恵まれて、保護者観覧席の人出は、例年と比べても遜色がない。  ぼくは、森ノ宮のご両親を探していた。  森ノ宮が、騎馬戦に出ることを伝えるためだ。 「毬ちゃん、グッドアイデア!」 「だめ! 絶対、内緒にしておいて」 「なにを今さら。ここまでやらせといて、まだ猫かぶっているつもり?」  なんの話か、さっぱりだったが、聞き返す時間が惜しい。  せっかく、危ない橋を渡るんだ。  ご両親にだけは、どうしても見届けて欲し

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第16話)

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第15話)

          第五章(1/3)馨  用心に、と持参したロープは使わずに済んだ。  護岸には足場があって、水路への入り口までは、容易に降りて来られたからだ。  入り口は、想像以上に大きい。  大人が立って歩いても、まだまだ十分、余裕がある。  見えない水路の底へ向かって、そろりそろりと、踵を延ばした。  かちり、と固いコンクリートの感触が、滑り止めの鋲に伝わる。  水深は、さほどでもなさそうだ。  意を固めて、水路へ入る。  僕の後ろに、麦が続いた。  水路の壁面に手をついて、長靴

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第15話)

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第14話)

          第四章(3/3)眞琴  アクセスルートを、探さねば。  わたしは、返信をためらった。  啓太郎にとって、旧交を温めるには短かすぎるひと時が、今のわたしたちには命取りになりかねない。 「会おう。夢のことも確かめたいし」 「でも、啓太郎は」  巻き込みたくない。 「心配ない。遠まわしに確かめてみるだけだ。すぐに済む」 「でも、アクセスルートのほうが、先でしょう?」 「やみくもに探し回ったところで、時間を無駄にするだけだ。まずは麦の真意を確かめよう」  管理棟から、雨合羽の

          【note創作大賞2024応募作品】Monument(第14話)