【短編小説】悪辣な推論(2)
男が隣国で暮らした数年間で、このようなことは幾度となくあったが、両親にそれらを告げることはなかった。男のつらい日々とは対照的に、両親の仕事は非常にうまく回っているようだった。隣国の人々はアルファ国人を嫌っているとはいえ、ビジネスとして利益関係が成り立つのであれば、そこに幾分かの秩序が生まれるのだろう。両親は仕事が前にも増しておもしろいと感じているようで、一層仕事にのめりこむ様になった。それに比例して男が両親と過ごす時間は少しずつ少なくなっていった。男がいじめの件を両親に話さな