てるぼい | ショートショート | 小説

不定期に短編小説やショートショートを上げています。

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【ショートショート】静かな侵略【短編小説】

地球に宇宙人が現れた。彼らは非常に大きな円盤形の宇宙船に乗ってやってきた。 宇宙船は最初、ヨーロッパのとある国の上空に出現した。上空に浮いているだけで何をするでもなかったが、空を覆い隠す程大きな物体が現れたことで人々は不安に駆られた。 この事件は世界中で瞬く間にニュースになり、巧妙なフェイクニュースだの、某国の新兵器だの様々な噂が飛び交った。各国は当初お互いを疑っていたものの、やがて地球外からやってきた宇宙船だと認め、全世界で対処方法について議論を始めた。 宇宙船は出現

    • 【掌編小説】死ぬこと

      祖父が死んだ。 第一発見者は祖父と二人で暮らしていた祖母で、朝中々起きてこない祖父を起こしに行くと既に亡くなっていた。それから方々に連絡したり、手続きを済ませたりで色々と大変だったようだ。 独り暮らしの私の元に連絡が来たのは昼過ぎだった。私は昼休みが明けると、明日から数日休む旨を部長に伝え、足早に家に帰った。 東京から実家へは片道数時間かかる。私は急いで支度をして、必要なものだけ持って家を出た。電車に乗り、新幹線に乗り、また電車に乗って、実家についた頃にはもう夜中だった

      • 【ショートショート】鏡の世界【短編小説】

        男は東京の小さなアパートに住んでいた。 男の一日は鏡を見ることから始まる。男の部屋には全身を写すことのできる大きな鏡があったが、彼は自分の姿を眺めることに異常なほどの執着を持っていた。彼は鏡に向かって笑い、時には話しかけ、自分自身との対話を楽しんでいた。 男の仕事は保険の営業で、営業成績は悪くなかった。男はそれを自らの明るく親しみやすい印象のおかげであると理解していた。男は社内でも評判が良かったが、まわりと密に交流を取ることを避けていた。仕事が終わるとすぐに家に帰り、鏡の

        • 【短編小説】最後の裁判【ショートショート】

          とある小さな島国の話である。この国では、毎年春の始めに「正義の日」というイベントを開催する。この日、人々は国内の不正行為を選び、それに対する裁判を行う。裁判の結果、罪を犯した者はこの国から追放されるという厳しい措置が取られる。 今年の被告は、老舗のパン屋を営む男だった。彼は「金儲けのため、パンの重さをごまかして売っていた」という疑惑をかけられていた。この国ではパンの重さに対して値段が決まっており、それよりも高い値段でパンを売ってはいけない決まりであった。金儲けのため食料の値

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        【ショートショート】静かな侵略【短編小説】

          【ショートショート】永久機関【短編小説】

          とある国の小さなラボ。このラボでは、ある男が永久機関の研究が行っていた。 この国では昔から化石エネルギーの枯渇問題が囁かれていたが、多くの人間が遠い将来のことで他人事のように考えていた。が、いよいよその時が訪れようとしており、人々は死が目前に迫っていることを理解し始めた。 このような事情を受け、国はエネルギー問題を解決した人には莫大な財産を与えることを約束した。人々は国の未来のため、そして、自分のお財布のためにエネルギー問題解決に向けて動き始めた。 この男もその一人で、

          【ショートショート】永久機関【短編小説】

          【時の果て】どんなに権力があっても老いには勝てないというSF

          宇宙は果てしなく広がり、数え切れないほどの星々が瞬いている。そんな星々の中にアルファ・ステーションはあった。それは人類が築き上げた最も先進的な宇宙コロニーだった。しかし、その繁栄も、ある一つの疫病によって暗雲が垂れ込めていた。 その疫病は「眠り病」と呼ばれた。一度発症すると、患者は深い眠りに落ち、二度と目を覚ますことがない。そして、その間、体は急激に老化し、数か月のうちに寿命を迎えてしまう。眠り病がどのように感染するのか分からないが、人から人へと感染しているのは確かだった。

          【時の果て】どんなに権力があっても老いには勝てないというSF

          【健康管理AI】科学技術は人を救済ってくれるか?

          男はサラリーマンだった。毎日の激務に追われ、心の支えだった妻を失ってからは、さらに孤独と絶望に沈んでいた。ある冬の夜、彼は暮らしているマンションの一室で一人、大量に酒を飲んで酔っぱらっていた。そして、妻の写真を見つめながら、涙を流していた。 そのときスピーカーから声が聞こえた。男は驚き、ディスプレイを見た。男の血液から大量のアルコールが検出されたことで、健康管理AIが起動したようだった。 「血液から大量のアルコールが検出されました。これ以上の飲酒は健康を損なう可能性があり

          【健康管理AI】科学技術は人を救済ってくれるか?

          【遺伝子改良ペット】ペットは人間の愛情か、エゴか。

          男が最初にその店を訪れたのは、まるで偶然のようなものだった。オフィスの近くに新しくオープンしたペットショップは、ショーウィンドウに並べられた色とりどりの動物たちで目を引いた。特に目を引いたのは、ショーウィンドウの中央に鎮座する一匹の猫だった。 その猫は、まるで人間のように知的な目をしていた。男は無意識に足を止め、その猫と目を合わせた。そして、ふとした瞬間に、猫が男を見つめ返していることに気づいた。その瞳には、深い知性と何か言い表せない悲しみが宿っているように感じられた。

          【遺伝子改良ペット】ペットは人間の愛情か、エゴか。

          【思考盗聴】誰かが頭を覗いている、あるいは、狂気

          男は普通のサラリーマンだった。彼の日常は平凡そのものだった。朝、目覚まし時計の音で起き、コーヒーを淹れて新聞を読み、電車に乗って会社に行く。仕事をこなして帰宅し、テレビを見ながら晩酌をする。そんなルーチンに特別な変化はない。ただ、ある日一つの異変が生まれた。彼は突然人々の思考が聞こえるようになったのだ。 最初は耳鳴りか何かだと思った。たまに会社でノイズを感じる程度だった。けれど、段々感じることが多くなった。ある時は通勤電車の中、ある時は同僚とランチを取っている時、そして取引

          【思考盗聴】誰かが頭を覗いている、あるいは、狂気

          【見栄】見栄を張るのは死ぬまでやめられない

          あるところに見栄っ張りな若者がいた。その若者はまわりからよく見られたいがために、高い服や時計をしていた。そして週末になると、その服を着て飲み歩くのが日課だった。高い服を着ている手前、安価な居酒屋ではなく、お金のかかるおしゃれなバーに通っていた。そして、そうしているうちに返しきれないほど借金がかさんでしまった。 男はこの借金をどう返すべきか考えていると、バーのマスターから聞いた町一番の大金持ちの話を思い出した。そして、その大金持ちのところに行き、お金を稼ぐ方法について教えても

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          【道半ば】その道を選んで後悔する人はどのみち後悔する

          男は悩んでいた。 その男は画家だった。自分の好きなことを仕事として選んだが、一向に芽が出ない。仕事の依頼はほとんど来ず、たまに来ても自分好みの仕事ではなかった。日銭のために、仕事を受けることもあるが、その仕事が自分のキャリアに残ることが納得いかなかった。 こんなことなら画家になるべきではなかった。大学を出たときに絵から離れ、全く別の仕事を選ぶこともできた。だが、自分なら絵で食べていけるはずだという自信が判断を鈍らせた。あのとき就職をして、それ以降はただの趣味として絵を描く

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          【真実の鏡】君の真実は見たいものの集まり

          あるところに小さな貧しい村があった。その村では、毎朝早くから夜遅くまで村人が一生懸命働いていたが、村は一向に豊かにならなかった。村人たちは、その理由を仲の悪い隣の裕福な村が自分たちの利益を奪っているからだと考えていた。 ある時、そこに旅の行商人がやってきて、不思議な鏡を村人に売り、帰っていった。その鏡は、真実を映し出すということだった。その噂を聞いた村人たちは興味津々で、その鏡を見に行った。 ある若い農夫がその鏡の前に立つと、鏡の中には彼の姿が映っていた。しかし、鏡には二

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          【消滅と復活】ただ生きるか消えるか

          田中一郎は平凡な会社員だった。彼は来る日も来る日も仕事に追われ、忙しい毎日を送っていた。 ある晩、深夜まで残業をして帰宅途中に、彼は奇妙な男と出会った。男は黒いローブに身を包み、目の前に突然現れた。田中は驚いて立ち止まり、男を見上げた。 「君、田中一郎だね?」男は低い声で尋ねた。 「そうですけど、あなたは誰ですか?」田中は不安を感じながら答えた。 男はにやりと笑い、「私は死神だ。君の魂を貰いに来た」と言った。 田中は凍りついた。心臓が激しく鼓動し、頭が真っ白になった

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          【栄光と対価】長生きだけが人生ではない。名を残すこともまた人生である【ショートショート|短編小説】

          男は完璧なスーツを求めていた。男にとってスーツは武器であり、仕事のできる男には相応のスーツが必要だ。 男は様々なスーツを探し歩いたが、どんなに高価なものでも、仕立てが良くても、満足させるスーツは見つからなかった。 ある日、男は町外れの小さな仕立て屋を見つけた。古びた看板には「夢のスーツ、作ります」と書かれていた。半信半疑で店に入ると、老人がにこやかに迎えてくれた。 「お客様にぴったりのスーツをお作りします」と老人は言った。 採寸も終わり、数日後、彼のもとにスーツが届け

          【栄光と対価】長生きだけが人生ではない。名を残すこともまた人生である【ショートショート|短編小説】

          【希望】男が使えない鍵を渡されて満足した理由

          遅い夜、静かな駅のホームに一人の男性が立っていた。彼は仕事で疲れ果て、早く家に帰りたかった。時計を見て、終電の時間が迫っていることに気づいた。数分後、電車がホームに滑り込んできた。 乗り込んだ車内はガラガラだった。男性は適当に席に腰を下ろし、目を閉じた。次の駅に着いたとき、電車が少し揺れたが、誰も乗ってこなかった。再び電車が走り出す音に耳を傾けながら、彼は徐々に眠りに落ちていった。 突然、電車が急停車した。男性は驚いて目を開けた。車内の照明がちらつき、不気味な静けさが漂っ

          【希望】男が使えない鍵を渡されて満足した理由

          【三大欲求】愛情とは何か?

          あるところに一人の科学者がいました。その科学者は近所でも有名で博士と呼ばれて慕われていました。 ある時、博士のもとに一人の悩める青年がやってきました。その青年は言いました。 「博士、僕には好きな女の子がいて。もうすぐ受験なんだけど、どうしてもその子と同じ学校に行きたいんです!だから一生懸命勉強しているんだけど、すぐに眠くなっちゃって・・・」 博士は困っている青年を見かねて、助けになろうと考えました。そうして、ある薬を開発しました。博士は青年を呼び出してその薬を渡しました

          【三大欲求】愛情とは何か?