『神隠しの庭で、珈琲を』 最終話:未来への小さな扉を開く #創作大賞2024
最終話:未来への小さな扉を開く
「瀬名さーん! 瀬名朝来さーん! わかりますかー? 瀬名さーん!」
ピッ、ピッ、ピッという音が聞こえる。瞼は重く閉じている。力を入れるとぴくりと瞼が震え、目が少しだけ開いた。目の前が、ゆっくりと明るくなっていく。朝来の顔を覗き込んでいる誰かのぼんやりとした輪郭が、少しずつ明瞭さを取り戻す。
朝来が目覚めたのは、天窓がある屋根裏部屋ではなく、病院のベッドの上だった。消毒薬の匂いが漂っている。寒々とした蛍光灯の明かりが目に染みて、今が夜なのだ