樹立夏 | 小説•エッセイ|

樹立夏(いつき・りつか)と申します。 文筆業とは全く関係のないお仕事の経験を活かし、兼…

樹立夏 | 小説•エッセイ|

樹立夏(いつき・りつか)と申します。 文筆業とは全く関係のないお仕事の経験を活かし、兼業作家を目指しています。 エッセイや小説など、色々書きます。 夏ピリカグランプリ2022にて、『ピリカ賞』、春ピリカグランプリ2023にて、『Marmalade賞』を頂きました!

マガジン

  • note創作大賞2024応募作【神隠しの庭で、珈琲を】

    note創作大賞2024応募作【神隠しの庭で、珈琲を】をまとめたマガジンです。

  • 連載小説 白夜の海

    #シロクマ文芸部の企画として書いた、連載小説をまとめています。生きづらさを抱えた少女と青年のラブストーリーです。ぜひご一読ください。

  • あなたのための短編小説、書きます。

    お題を提供して頂き、提供者様のためだけの短編小説を書く企画、「あなたのための短編小説、書きます」にて執筆した記事をまとめています。

  • 小牧幸助文学賞応募作 二十文字の小説

    小牧幸助文学賞への応募作をまとめています。

  • #シロクマ文芸部 投稿作品

    小牧幸助様の企画「シロクマ文芸部」への投稿作品をまとめました!

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『神隠しの庭で、珈琲を』 第一話:サンクチュアリは嵐の先に #創作大賞2024

第一話:サンクチュアリは嵐の先に  この闇の先には、本当に光があるのだろうか。容赦なく降る雨は止み、夜は明けるのだろうか。 『いつまで、このまま夜間飛行を続ければいい?』  小さな子供のような顔をして、今にも泣きだしそうな彼の、震える肩に触れた。 『闇が最も深くなるのは、夜が明けるほんの少し前のことよ』  瀬名朝来は、温かいベッドの中で、夢を見ていた。いつもと同じ、真冬の雪嵐の夢だ。風がごうごうと鳴り、朝来の行く手を阻もうとする。子供であれば、体ごと吹き飛ばされそうな強

    • 創作大賞、小説をもう一遍応募したかったのですが、時間と文字数の壁を突破できそうになく、来年に持ち越しといたしました。焦って中途半端な状態で応募したくはないな、と思ったので……。じっくり書いて、納得のいくものに仕上げたいです。という訳で、ここからは読む方に回ります!楽しむぞ!

      • 仕返しはnoteいっぱいの夢物語で #創作大賞2024 エッセイ部門

        「立夏ちゃんは贅沢なんだよ!」 ずっとずっと前のことだ。将来の夢を語っていると、友人が突然大きな声を出して、私を睨んだ。 二十年近く前に放たれた言葉だ。今でも私の心に刻まれている。ガリガリと私の心を削ってできた刻印は、今でも時々疼いて、私を苛立たせる。 「贅沢で何が悪い。私の人生は私のものだ」と言ってしまえたらよかったのだが、当時の私は、攻撃への対処方法を何も知らなかった。脆かった。 「贅沢なんだよ!」が、私の核となる部分に刺さってしまった。すぐに引っこ抜くことができ

        • 創作大賞応募作「神隠しの庭で、珈琲を」が完結しました。第一話から最終話まで、それから作品のご紹介記事を公開しております。何も考えず、凄まじい連続投稿になってしまい、申し訳ありません。。 さあ、神隠しの庭で珈琲でも飲んで、一息つきませんか? 寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!!

        • 固定された記事

        『神隠しの庭で、珈琲を』 第一話:サンクチュアリは嵐の先に #創作大賞2024

        • 創作大賞、小説をもう一遍応募したかったのですが、時間と文字数の壁を突破できそうになく、来年に持ち越しといたしました。焦って中途半端な状態で応募したくはないな、と思ったので……。じっくり書いて、納得のいくものに仕上げたいです。という訳で、ここからは読む方に回ります!楽しむぞ!

        • 仕返しはnoteいっぱいの夢物語で #創作大賞2024 エッセイ部門

        • 創作大賞応募作「神隠しの庭で、珈琲を」が完結しました。第一話から最終話まで、それから作品のご紹介記事を公開しております。何も考えず、凄まじい連続投稿になってしまい、申し訳ありません。。 さあ、神隠しの庭で珈琲でも飲んで、一息つきませんか? 寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!!

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        • note創作大賞2024応募作【神隠しの庭で、珈琲を】
          7本
        • 連載小説 白夜の海
          6本
        • あなたのための短編小説、書きます。
          16本
        • 小牧幸助文学賞応募作 二十文字の小説
          6本
        • #シロクマ文芸部 投稿作品
          22本
        • 辻井伸行さんのピアノに恋して
          4本

        記事

          【創作大賞2024応募作のご紹介】「神隠しの庭で、珈琲を」

           小説の中でなら、思い切り「お節介」ができるのではないか。それが、本作を執筆するきっかけとなった思いです。  生きていく上で、悲しみや苦しみが絶えることはありません。  悲しみや苦しみを消すことはできません。  けれど、もしも、人生に疲れた時に、こんな世界に迷い込んだとしたら。      自分の話にじっくりと耳を傾けてくれる人がいて    美味しい食事を、美味しく食べることができて    夜は、星空を仰ぎ、太陽の匂いがする布団で、ぐっすり眠れたなら  この小説の舞台は、

          【創作大賞2024応募作のご紹介】「神隠しの庭で、珈琲を」

          『神隠しの庭で、珈琲を』 最終話:未来への小さな扉を開く #創作大賞2024

          最終話:未来への小さな扉を開く 「瀬名さーん! 瀬名朝来さーん! わかりますかー? 瀬名さーん!」  ピッ、ピッ、ピッという音が聞こえる。瞼は重く閉じている。力を入れるとぴくりと瞼が震え、目が少しだけ開いた。目の前が、ゆっくりと明るくなっていく。朝来の顔を覗き込んでいる誰かのぼんやりとした輪郭が、少しずつ明瞭さを取り戻す。  朝来が目覚めたのは、天窓がある屋根裏部屋ではなく、病院のベッドの上だった。消毒薬の匂いが漂っている。寒々とした蛍光灯の明かりが目に染みて、今が夜なのだ

          『神隠しの庭で、珈琲を』 最終話:未来への小さな扉を開く #創作大賞2024

          『神隠しの庭で、珈琲を』 第六話:あなたの話を聞かせてちょうだい #創作大賞2024

          第六話:あなたの話を聞かせてちょうだい 「幸成さん! 待って!」  朝来は、フサヱさんの腕を振りほどき、屋敷の外へ出た。走ろうとしても、水の中にいるようで、足が思うように前に進まない。幸成と雪夏は、森に向かって滞りなく歩き、どんどん遠ざかっていく。  足を無理矢理に動かすと、体が何かに当たって止まった。透明な壁が、朝来を阻んでいた。朝来は、泣きながら、両手で壁を叩いた。 「通して! 通してよ!」  幸成と雪夏は、木の門をくぐり、森の中へ消えた。  朝来は、声の限り、幸成の名

          『神隠しの庭で、珈琲を』 第六話:あなたの話を聞かせてちょうだい #創作大賞2024

          『神隠しの庭で、珈琲を』 第五話:それでも、朝は来る #創作大賞2024

          第五話:それでも、朝は来る   夕暮れ時の常庭に、雨が降り続いている。屋敷の窓から空を見ると、雲が低く垂れこめ、霧のように森を煙らせている。窓に張り付いた雨滴は、ダイヤモンドのように輝く。小さい雨滴が、大きな雨滴に飲み込まれ、左右に小刻みに揺れながら、窓ガラスの上を滑り落ちていく。  小鳥の歌は聞こえない。代わりに、鼓膜が微かな遠雷を拾う。  朝来は、雨音を聴きながら、チェロを弾いていた。バッハの無伴奏チェロ組曲を、第一番から、丁寧に弾き込んでいく。弦の上を弓が滑り、なめら

          『神隠しの庭で、珈琲を』 第五話:それでも、朝は来る #創作大賞2024

          『神隠しの庭で、珈琲を』 第四話:あなたは、この世界に必要 #創作大賞2024

          第四話:あなたは、この世界に必要  常庭の象徴ともいえる、桜の老木の枝が風でしなる。花びらが、ひとひら、またひとひらと散り、春風に乗って旅を始める。この桜の花びらの総数は、どれくらいあるのだろう。同じように見えるたくさんの桜の花びらにも、きっとひとひらずつ個性があるのだろうと、朝来は、風に運ばれていく花びらを目で追った。  今日は、昼過ぎにお客様がみえると、フサヱさんが言っていた。洗濯は、フサヱさんと共に朝一番に終わらせている。朝来は太陽の角度を確認した。まだ昼までには時

          『神隠しの庭で、珈琲を』 第四話:あなたは、この世界に必要 #創作大賞2024

          『神隠しの庭で、珈琲を』 第三話:命を捨てないで #創作大賞2024

          第三話:命を捨てないで  常庭に自生する植物たちは、眩しい午後の光を全身で浴びて、伸び伸びと生い茂っている。エンゴサクの青色が、カタクリのピンク色が、ルピナスの紫色や白が、他の様々な草花の色彩と、争うことなく調和している。  洗い立てのシーツとベッドカバーが、陽光の中ではためいている。ばらの香りを練り込んだ石鹸の香りが、風に乗って漂う。フサヱさんと朝来は、桜の老木の下にある、杉の一枚板のテーブルで珈琲を飲みながら、満足げに洗濯物を眺めていた。穏やかな時間が、流れていく。 「

          『神隠しの庭で、珈琲を』 第三話:命を捨てないで #創作大賞2024

          『神隠しの庭で、珈琲を』 第二話:母であり、病人である前に #創作大賞2024

          第二話:母であり、病人である前に  朝来とフサヱさんは、「常庭」の屋敷の玄関前に立ち、森を見つめている。屋敷の庭にある桜の老木が、森から吹く風に枝をしならせている。桜の枝が、柔らかに風を受け流すように、辛いことがあっても、心が折れずに生きられたなら、と朝来は思う。常庭にやって来るお客様は、皆、誰にも言えない苦しみを抱えている。朝来だってそうなのだろう。ただ今は、思い出せないだけだ。  フサヱさんの視線の先には、「木の門」がある。木の太い幹は、根元から曲がりながら伸びて弧を描

          『神隠しの庭で、珈琲を』 第二話:母であり、病人である前に #創作大賞2024

          【感謝!!】すまいるスパイスで作品を朗読して頂きました!

           皆さま、いかがお過ごしでしょうか。  暑さに弱い私は、北国の短い夏に早くも苦戦しています。外気温が三十度を超えると、やはり堪えます……。    早くも夏バテ気味の私ですが、そんな辛い気分を吹き飛ばす素敵なことが起こりました!  ピリカ文庫の三周年記念に、「誕生」というテーマで、寄稿のご依頼を頂きました。なんと、ピリカさん直筆のお手紙を、文学フリマ東京にてコッシ―さんから直々に頂戴したのです!これはやるっきゃない。心を燃やし、全集中の呼吸で、持てる力を全て投入して、〆切ギリ

          【感謝!!】すまいるスパイスで作品を朗読して頂きました!

          アニメが大好きです。創作大賞応募作を一通り書き終え、推敲のため一旦寝かせている間に、見ました!鬼滅の刃柱稽古編最終回! ストーリーの緩急、キャラクター設定、伏線の回収、視聴者の寝首を搔く驚異の演出。そして何よりも、熱い想いが、心がある! はあ……。なんて素晴らしいのでしょう。

          アニメが大好きです。創作大賞応募作を一通り書き終え、推敲のため一旦寝かせている間に、見ました!鬼滅の刃柱稽古編最終回! ストーリーの緩急、キャラクター設定、伏線の回収、視聴者の寝首を搔く驚異の演出。そして何よりも、熱い想いが、心がある! はあ……。なんて素晴らしいのでしょう。

          創作大賞応募作「神隠しの庭で、珈琲を」。現在、最初からリライトしています。すごく大変だけど、すごく楽しいです。もしかしたら、書き直し前の作品を下書きに戻して投稿し直すかもしれません。スキ、コメントをくださったのに申し訳ありません……。けれど、白い画面の中はこんなに自由なんだなあ。

          創作大賞応募作「神隠しの庭で、珈琲を」。現在、最初からリライトしています。すごく大変だけど、すごく楽しいです。もしかしたら、書き直し前の作品を下書きに戻して投稿し直すかもしれません。スキ、コメントをくださったのに申し訳ありません……。けれど、白い画面の中はこんなに自由なんだなあ。

          西加奈子先生の「i」、初版。今日、再び読み終えました。本を閉じた後、生まれ変わったような気持ちになりました。体の中を巡る血液を感じます。この仮初の平和が奇跡であること。けれど、生きていて申し訳ない、と思わなくていいこと。誰かを想像し、祈ること。認めること。 「私はここよ。」

          西加奈子先生の「i」、初版。今日、再び読み終えました。本を閉じた後、生まれ変わったような気持ちになりました。体の中を巡る血液を感じます。この仮初の平和が奇跡であること。けれど、生きていて申し訳ない、と思わなくていいこと。誰かを想像し、祈ること。認めること。 「私はここよ。」

          北国の短い夏。夏至の日が暮れていきます。この時間でもほの明るい。一年で一番好きな日です。 明日からは、冬至に向かいます。気づけば夏は残り二月半ほど。残りの夏を精一杯満喫します。

          北国の短い夏。夏至の日が暮れていきます。この時間でもほの明るい。一年で一番好きな日です。 明日からは、冬至に向かいます。気づけば夏は残り二月半ほど。残りの夏を精一杯満喫します。