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#シロクマ文芸部 投稿作品

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小牧幸助様の企画「シロクマ文芸部」への投稿作品をまとめました!
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記事一覧

秘密のシナスタジア【#シロクマ文芸部】

 珈琲と、僕だけの暗号。だれにも理解されることはない、秘密の言葉は、今日も空を切るだろう…

夜のピクニック~冷めないうちに、あつあつの焼きりんごをどうぞ~【#シロクマ文芸部…

 りんご箱が、今年も無事に届いた。 「紗菜」  集中しているときの紗菜には、私の声さえも…

夏の昼の夢【#シロクマ文芸部】

 ヒマワリへ、分け入る。夏の終わりの太陽が、燃え尽きる前、最後の抵抗をしているかのような…

光【#シロクマ文芸部】

 ただ歩く。海辺を、あなたの隣で。それだけで、私は、世界中の誰よりも、幸せなの。ああ、斜…

私の居場所は、扉の中に【#シロクマ文芸部】

 文芸部の前の廊下を、湊鳴衣は行ったり来たりしている。もう三往復目だ。鳴衣は、襟足で一本…

万年筆と、白猫と、セロと【#シロクマ文芸部】

 書く時間になり、僕はいつも通りペンを執る。小さなラムプに明かりを灯すと、文机の上で、僕…

命の理由~続・ファティマの指【#シロクマ文芸部】

 平和とは、何だ?  掬っても、掬っても、どれだけ掬い上げようとしても、命が、指の間からこぼれ落ちていく。  遠くに聳え立つ山脈に目を細める。頂上が雪で覆われた、遥かなる山。此処は、天国の中にある地獄だ。終わらない戦闘。毎日、死にゆく人々。 「サクラ、すごく疲れているようだけど、少し休んできたら? ずっと寝ていないんでしょう?」  キャンプ地のテントの脇にある、小さなベンチに深く腰掛けた私の目を、看護師のアイリーンが覗き込む。アイリーンの故郷は、東南アジアの、豊かな熱帯

雷に打たれたことはありますか【#シロクマ文芸部】

 海砂糖がいいと、言ってみた。 「次の三連休、沖縄に行くんだ」と、蒼井君は笑った。 「え…

街クジラの歌~空と海のハイブリッド~【#シロクマ文芸部】

 街クジラと言われる度に、僕は自分に言い聞かせる。 「僕は空と海のハイブリッド。どこへだ…

潮騒【#シロクマ文芸部】

 消えた鍵を探して、イセは砂浜を彷徨っている。砂の中を手で探るが、一向に鍵は見つからない…

夜叉の森【#シロクマ文芸部】

 食べる夜叉に、稲光が浮かび上がらせたその姿に、時姫は見惚れた。  雷鳴が轟くとすぐに、…

光る種の名は【#シロクマ文芸部】

手渡されたのは光る種。 暖炉の火が揺らめき、光と影が交互に私の顔を這う。 おばあちゃんは、…

長い長い物語が始まる【#シロクマ文芸部】

こんばんは。 今週も、小牧幸助さまの下記企画に参加させていただきます。 小説書きの修行がで…

手紙は、ライラックの香りと共に【#シロクマ文芸部】

 こんばんは。  今週も、小牧幸助さまの下記企画に参加させていただきます。  毎週のこの時間が楽しみになりました。  素敵な企画を本当にありがとうございます。 それでは、本編をどうぞ! ――― 透明な手紙の香り。今も忘れない、あの香りだ。 「ん!」  茉悠は、突然、つっけんどんに、僕に右手を差し出した。 「え?」  とっさのことに、何が何だか、解らない。 「読んでよ!」 「読んでって?」 「だから、手紙!」  どうやら、茉悠が差し出した手には、手紙が握られて