『本よみの虫干し』関川夏央

文学には日本近現代史そのときどきの最先端が表現されている。文学は個人的表現であると同時に、時代精神の誠実な証言であり必死の記録である。つまり史料である。

近現代日本の著名な小説について、その時代背景から舞台背景まで、ストーリーと共に完結に語ってくれているので、ガイドブックとしてすばらしい。高校時代の現代文の授業が、これくらいおもしろかったらいいのにと残念に思ったほど。

おもしろいだけじゃ

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あかね書房の「初級世界絵文庫」と川端康成『小公子』

世界文芸と日本語教養

 西洋文化受容の歴史が半世紀程度しかない日本国の読書大衆は西洋文芸教養を崇拝しながらも、文献の真正さや正統性にこだわらず、少数の権威ある日本語出版の版元や日本語言論の著者が本物に似ていると認める模倣作で満足する習慣を広く共有した。
 そのおかげで、冷戦期の経済成長期の日本語教養圏では、非西洋語圏にもかかわらず西洋語の文芸教養の初歩が日本語に翻案されて、原典をまったく読んでい

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村上春樹│一人称単数│短編集レビュー

「女のいない男たち」以来6年ぶりに発表された短編集。8編を収めている。書下ろしの表題作『一人称単数』以外はすべて雑誌「文學界」に発表されたもので、『石のまくらに』『クリーム』『チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ』の3冊は2018年7月号、『ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles』と『「ヤクルト・スワローズ詩集」』は2019年8月号、『謝肉祭(Carnaval)』は2019

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「鏡子の家」

三島先生の長編小説。2回目読了。

「そんなに筋肉が大切なら、年をとらないうちに、一等美しいときに自殺してしまえばいいんです」
「あなた方はみんな年をとるんだ。生身の筋肉なんて幻にすぎないんだ」
「なかには君のように、はじめから年寄りの憐れな男もいる。情けない弱虫の芸術家で、僕らに腕っ節ではかなわないものだから、この世の筋肉がみんな滅びればいいと思っているんだ」

…最初に読んだ時に最も印象に残っ

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月を語る表現者のまなざしとは。#秋分「月の文学館」

こんにちは。広報室の下滝です。
秋も深まり、月がよりいっそう美しく感じられるようになってきましたね。

みなさんは、月を見て何か想うことはありますか?

美しい、癒やされる、パワーをもらえる、という方から、孤独な存在、いつも追いかけられているようで苦手、といった方もいらっしゃるかもしれません。

私たちが生まれた時からずっと、空に現れる不思議な存在。「月」を見るたびに、人は何かを感じずにはいられな

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宇宙✖️日本文化 「星は すばる。ひこぼし。ゆふづつ。よばひ星、すこしをかし。尾だに なからましかば、まいて・・・」 …宇宙への憧れ

清少納言『枕草子』

昨日人工流れ星について書きました。いつの時代も星を愛でる気持ちは今も昔も変わらない。中学生のとき学んだ枕草子にも書かれています。

『星は昂星(すばる)。彦星(ひこぼし)。夕づつ。よばひ星(流れ星)は、少し面白い。しっぽさえなかったら…もっと良いのに。 』

枕草子の時代には、流れ星は よばひ星と呼んでいたのですね。なんか平安貴族っぽいですよね。その時代、男性が夜女性のところ

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スキを頂きましてありがとうございます。また頂けるように頑張ります。
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「文学部不要論」は不要論 其の弐

前回は文学部のデメリット(というか、まあそんなに強みではないと思われる点)についてつらつら書きました。

ここからは逆にそんな文学部で学ぶことの強みとは何かを、考察していきたいと思います。

なお、以下の内容はあくまで私個人的な意見なので、異論反論はご勘弁ください。

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この出会いに感謝します。
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【破天荒】石川啄木の作品と生涯

”若さの前に不可能もなければ、陰影も無い、それは一切を突破する力であり、一切を明るくする太陽である。”
与謝野晶子

最近、短歌を詠みました。

病院の テレビに流れる 顔を見て
世もおかしきと 目をそらす
(拙作)

渾身の一作のつもりでしたが、後で読み返すと何だか納得いきません。自らの技術のなさを恥じ、勉強することにしました。

「じっと手を見る」などで有名な石川啄木は

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ありがとうございます!
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文アルに太宰治の読み方を教えられた話

28年間の人生で全くと言っていいほど日本文学に触れてこなかった私。ずっと太宰治に苦手意識を持っていた。

※本記事では敬称を省略させていただきます。

私が読んだことのある太宰治といえば、学校の教科書に載っている「走れメロス」くらいだった。読書自体は大好きで、小学校の休み時間は一歩も外へ出ずハードカバーの本にかじり付き、全く外で遊ぼうとしない様子を叱られた回数は数えきれない。ただ、読む本はいつも海

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The Deer's Dictionary

Instagramを、はじめていますが、もうすでに、日に日に、ちょっと、あきらめてきてしまって、とうとう猫の写真や、コーヒーとケーキの写真を撮りためたりしていて、これでは、いけない、と思い、なにかの、コンセプトのようなものを考えて、そうして更新してみようと、思った次第です。あとは、なにかやらねば、という、思いもあり。

名づけまして、「はなしかの辞典」。

題名は、某名著から、拝借。

令和になっ

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有難う存じ🐟←鱒
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