堀間善憲

気がついてみたら60代のなかば。これまで出会った本や音楽、映画……からピックアップして…

堀間善憲

気がついてみたら60代のなかば。これまで出会った本や音楽、映画……からピックアップして、自分なりに解読してみたいと思います。めざすはあっと驚くような大発見ですが、果たしてどうなりますやら。みなさまもご一緒に楽しんでいただけますと幸いです。

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  • note クラシック音楽の普遍化を達成する

    • 2,242本

    クラシック音楽の歴史や作曲家、作品について、哲学的な視点から分析し、その普遍性や深さを探求する和田大貴のnoteです。クラシック音楽について語り合えることを楽しみにしています。参加希望の方はマガジンの固定記事でコメントしてください。

最近の記事

アナログ派の愉しみ/音楽◎オッフェンバック作曲『天国と地獄』

そのステージでは 「世論」と「蝿」が大活躍して フランス・オペレッタ史上最大のヒット作といわれる『天国と地獄(地獄のオルフェ)』には、およそ他の歌劇では目にすることのないふたつのキャラクターが登場する。そのひとつは「世論」だ。幕が開くなり彼女(貫禄のあるメゾ・ソプラノ歌手によって演じられる)はステージでこんな口上を述べる。   「私はだれでしょう? ギリシア劇のコーラスの代役をつとめる『世論』です。いわば世間の良識の立場で、ときには祝福したりときには呪詛したりして、ドラマ

    • アナログ派の愉しみ/映画◎ズビャギンツェフ監督『エレナの惑い』

      われわれの身近にある 完全犯罪の光景 完全犯罪。それは古来、ミステリー小説における主要なテーマで、真犯人の巧みな手練手管でいかにも成り立ちそうに見えながら、結局、名探偵の推理によって突き崩されてしまうというパターンが多い。あたかも、完全犯罪などとうてい不可能であることを教えようとしているかのように。しかし、果たしてそうだろうか? 現実には、われわれのごく身近なところでふつうに完全犯罪が実行されているのではないか? アンドレイ・ズビャギンツェフ監督のロシア映画『エレナの惑い』

      • アナログ派の楽しみ/スペシャル◎高峰秀子の「ビール」

        昭和の大女優、高峰秀子に一度だけお会いしたことがある。 わたしが出版社で最初に配属された婦人雑誌で、「私の得意料理」というカラー・グラビアを担当していたときだ。これは各界の著名人に自宅で手料理を披露してもらう企画で、ふだんはまことに威勢のいい方であってもこと料理となるとけんもほろろに断られるケースが多く、毎回人選に苦労した。そんなとき、すでに女優業から引退してエッセイストとして活躍していた高峰が『台所のオーケストラ』という本を出したので依頼してみたところ、ふたつ返事で引き受

        • アナログ派の愉しみ/本◎マーク・トウェイン著『トム・ソーヤーの冒険』

          トランプ前大統領は トム・ソーヤーなのか? 腕白。男の子が世間の規範をものともせず、自由奔放に振る舞うことを意味するこの言葉は、かつてごく当たり前に使われていたはずだ。それがいつの間にかさっぱり見聞きしなくなったのは、少子化社会にあってもはや死語となりかけているのだろうか?   マーク・トウェインの『トム・ソーヤーの冒険』(1876年)が少年の日のわれわれを魅了したのも、そこにはめくるめく腕白の世界が繰り広げられていたからだろう。光り輝く真夏の季節、主人公のトムは友人ハック

        アナログ派の愉しみ/音楽◎オッフェンバック作曲『天国と地獄』

        • アナログ派の愉しみ/映画◎ズビャギンツェフ監督『エレナの惑い』

        • アナログ派の楽しみ/スペシャル◎高峰秀子の「ビール」

        • アナログ派の愉しみ/本◎マーク・トウェイン著『トム・ソーヤーの冒険』

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          アナログ派の愉しみ/スペシャル◎閲覧(ビュー)数ランキング【ベスト60】

          いつもご愛読をありがとうございます。 これまでの記事の閲覧(ビュー)数のベスト60はこちらです。 今後ともどうぞよろしくお願いします! 第1位 本◎青山透子 著『日航123便 墜落の新事実』 第2位 本◎志賀直哉 著『剃刀』 第3位 映画◎ベルイマン監督『野いちご』 第4位 スペシャル◎へそまがり日本史 第5位 スペシャル◎中曽根康弘の「フクロウ」 第6位 音楽◎グルダ演奏『月光』ソナタ 第7位 スペシャル◎へそまがり世界史 第8位 映画◎内田吐夢 監督『飢餓海峡』 第9位

          アナログ派の愉しみ/スペシャル◎閲覧(ビュー)数ランキング【ベスト60】

          アナログ派の愉しみ/スペシャル◎600回分のタイトル一覧

          おかげさまでこのシリーズ記事も600回を数えました。 ご参考までに、これまで取り上げた本、音楽、映画……をまとめました。 みなさまにとっても有意義な出会いのヒントとなりましたら幸いです。 1   本◎大友克洋 著『童夢』 2   映画◎山田佳奈監督『タイトル、拒絶』 3   音楽◎ショパン作曲『ピアノ協奏曲第1番』 4   本◎マルサル著『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』 5   映画◎黒澤 明 監督『七人の侍』 6   音楽◎『仰げば尊し』 7   本◎『金槐和歌

          アナログ派の愉しみ/スペシャル◎600回分のタイトル一覧

          アナログ派の愉しみ/映画◎黒澤 明 監督『天国と地獄』

          情が支配する時代劇の国、 法が支配する西部劇の国 黒澤明監督の『天国と地獄』(1963年)を、わたしは学生時分に映画館のリヴァイヴァル上映で初めて鑑賞したのだが、そのときに忘れられないできごとがあった。   大手靴メーカーの重役・権藤金吾(三船敏郎)が豪邸で社内抗争の秘策を練っているところに、ふいに電話が鳴って、男の声が、あんたの息子を誘拐した、身代金3000万円を用意しろ、警察には知らせるな、と告げる。電話が切れたのち秘書が警察へ連絡しようとすると、かれは「ばか、ジュンの

          アナログ派の愉しみ/映画◎黒澤 明 監督『天国と地獄』

          アナログ派の愉しみ/本◎江戸川乱歩 著『人間椅子』

          痴漢や盗撮といった 犯罪病理を解き明かす鍵が かねて不可解なのだ、痴漢や盗撮といった犯罪が。およそ児戯のたぐいの愚かしい行いが、なんだってこうもはびこるのか。しかも、いまや世間から厳しい目を向けられて、いったんことが露見すれば人生を棒に振りかねないにもかかわらず、それなりの立場にある連中までがしばしば摘発されてニュースとなっているのはどうしたわけか。さらに不可解なのは、日本特有のものらしいこうした社会現象に対して、マスコミは毎度おなじみの批判を繰り返すばかりで、その根っこに

          アナログ派の愉しみ/本◎江戸川乱歩 著『人間椅子』

          アナログ派の愉しみ/音楽◎パガニーニ作曲『24のカプリース』

          悪魔が奏でた ヴァイオリンの秘密は? その曲のイメージが、初めて耳にしたときのレコードによって固定されてしまうことがある。わたしにとって、パガニーニの『24のカプリース(奇想曲)』をマイケル・レビンの演奏で知ったのもそんなケースのひとつだ。おかげで、悪魔に魂を売り渡したという稀代のヴァイオリニストが残したこの練習曲集の不穏な気配にすっかりあてられて、以来、心ならずも遠ざける結果となった。   1782年イタリアのジェノヴァ生まれのニコロ・パガニーニが悪魔と関連づけられたのは

          アナログ派の愉しみ/音楽◎パガニーニ作曲『24のカプリース』

          アナログ派の愉しみ/映画◎ベルイマン監督『野いちご』

          過去の女たちが 夢に現れる理由とは このあいだの夢に、もう30年以上前に世を去った母親が出てきてぎょっとした。とくに何か口にするわけでもなく、ただ上目遣いでじっとこちらを見つめていた。また、はるか昔に恋仲だった女性が当時の姿かたちのまま現れて手と手を取りあったこともある。立て続けにそんな夢と出くわしたわたしは、そう言えば似たような情景をイングマール・ベルイマン監督の映画『野いちご』(1957年)で目撃したことを思い出した。   スウェーデンの首都ストックホルムに暮らす78

          アナログ派の愉しみ/映画◎ベルイマン監督『野いちご』

          アナログ派の愉しみ/本◎滝田ゆう 著『寺島町奇譚』

          そこに描きだされた 少年たちの王国 たとえば、こんな場面がある。   家族が朝メシのちゃぶ台を囲んだのもそこそこに、キヨシがランドセルを背負って駆けだすと、背後から母親が「いってまいりますは!」と怒鳴り、「イッテマイリマス」と返して学校へと向かっていく。スタンドバーがなりわいの家では母親の目を盗んで遊び人の父親がそそくさと外出したり、隣近所の「鰻どぜう」屋では主人がさっそく蒲焼きの下拵えにいそしんだり。そんな平凡な日がはじまって、平凡な日が暮れようとするころ、下校してきた

          アナログ派の愉しみ/本◎滝田ゆう 著『寺島町奇譚』

          アナログ派の愉しみ/音楽◎グルダ演奏『月光』ソナタ

          破天荒なピアニストが 日本人女性に捧げた愛の演奏 クラシック音楽界に星の数ほども出現したピアニストのなかで、最も破天荒な存在かもしれない。フリードリヒ・グルダ。   1930年にウィーンで生まれ、16歳のときにジュネーヴ国際音楽コンクールで第1位となってデビューを果たす。以後、世界各地で演奏活動を繰り広げるとともに、レコード録音も積極的に行う。わけても、ベートーヴェンの『ピアノ・ソナタ全集』(1967年)と『ピアノ協奏曲全集』(1970~71年)、バッハの『平均律クラヴィ

          アナログ派の愉しみ/音楽◎グルダ演奏『月光』ソナタ

          アナログ派の愉しみ/本◎トルストイ著『イワン・イリイチの死』

          死の恐怖と対峙した 文豪が突きつけてくるものは 夜中にふと目が覚めて、死の恐怖に襲われることがある。いつか必ず虚無の闇に呑み込まれてしまうという、切実な感覚が湧きあがってきて胸苦しくなるのだ。先だってもそんな発作が起きたときに、たまたま愛犬(オスのチワワ・13歳)が足元で寝ていたので手さぐりで背中を撫でさすってみたら、ほんの少し気持ちが落ち着いたのは、およそ死の恐怖とは無縁らしい小さな生命の息づかいに癒されたせいかもしれない。   レフ・トルストイの『イワン・イリイチの死

          アナログ派の愉しみ/本◎トルストイ著『イワン・イリイチの死』

          アナログ派の愉しみ/映画◎熊井 啓 監督『海と毒薬』

          いつか罰を受けるやろ え、そやないか? 「ばってん、俺たち、いつか罰を受けるやろ。え、そやないか?」   医学部研究生の勝呂(奥田瑛二)が夜の闇のなかでタバコを吸いながら、そう問いかけると、同僚の戸田(渡辺謙)はせせら笑って答えた。   「罰って世間の罰か? 世間の罰だけやったら何も変わらへんで。俺もお前もこんな時代のこんな医学部におったから捕虜を解剖しただけや。俺たちを罰する連中かて同じ立場に置かれたら、どうなったかわからへんで。世間の罰など、まずまず、そんなもんや」

          アナログ派の愉しみ/映画◎熊井 啓 監督『海と毒薬』

          アナログ派の愉しみ/狂言◎『蚊相撲』

          一国の大名と 一匹の蚊の格闘劇 もちろん、わたしに狂言師(能楽師狂言方)の品定めなどできはしないが、その若い役者を眺めるたびに、ホンモノの太郎冠者を目の当たりにしているような気分を味わう。   大蔵章照(あきみつ)。700年以上の歴史を持つという能楽狂言最古の流派、大蔵流の宗家・二十五世大蔵弥右衛門の孫で、まだ15歳の高校生ながら、舞台上でのメリハリのある発声と立ち居振る舞いが実に頼もしい。また、テレビ・ラジオへの出演ばかりでなく、大蔵流の180の演目にちなんで「ももやそ

          アナログ派の愉しみ/狂言◎『蚊相撲』

          アナログ派の愉しみ/映画◎トリュフォー監督『アデルの恋の物語』

          文豪ユーゴーの 実の娘が辿った恋の道のり 1863年、イギリスの植民地だったカナダの州都ハリファックスの港に、商船からひとりの淑女が降り立った。彼女は英仏海峡に浮かぶガーンジー島で両親と暮らしていたが、そこに駐留した第16英軽騎兵連隊の将校と恋愛関係になり、間もなく連隊がハリファックスへ移動すると、両親の反対を押し切って追いかけてきたのだ。   フランソワ・トリュフォー監督の『アデルの恋の物語』(1975年)はこんなふうにはじまる。主人公の淑女アデル(イザベル・アジャーニ

          アナログ派の愉しみ/映画◎トリュフォー監督『アデルの恋の物語』