堀間善憲

気がついてみたら60代のなかば。これまで出会った本や音楽、映画……からピックアップして…

堀間善憲

気がついてみたら60代のなかば。これまで出会った本や音楽、映画……からピックアップして、自分なりに解読してみたいと思います。めざすはあっと驚くような大発見ですが、果たしてどうなりますやら。みなさまもご一緒に楽しんでいただけますと幸いです。

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  • note クラシック音楽の普遍化を達成する

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    クラシック音楽の歴史や作曲家、作品について、哲学的な視点から分析し、その普遍性や深さを探求する和田大貴のnoteです。クラシック音楽について語り合えることを楽しみにしています。参加希望の方はマガジンの固定記事でコメントしてください。

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アナログ派の愉しみ/映画◎スティーヴン・キング原作『スタンド・バイ・ミー』&宮本 輝 原作『泥の河』

その夏、少年は 世界の神秘と出会った アメリカと日本のふたりの作家、スティーヴン・キングと宮本輝のあいだにはのっぴきならない共通項がある。両者とも1947年生まれであること、そして、ともに少年期を主題にした短篇小説を書き、かつ、それらを原作としてつくられた映画のいずれもが大傑作となったことだ。前者がロブ・ライナー監督の『スタンド・バイ・ミー』(1986年)、後者が小栗康平監督の『泥の河』(1981年)とは言うまでもないだろう。 『スタンド・バイ・ミー』の舞台は1959

    • アナログ派の愉しみ/音楽◎サン=サーンス作曲『動物の謝肉祭』

      作曲家はなぜ 傑作を封印したのか フランスの作曲家、カミーユ・サン=サーンスのおそらく最も有名な作品、『動物の謝肉祭』(1886年)はずいぶんと謎めいている。プロコフィエフの『ピーターと狼』(1936年)やブリテンの『青少年のための管弦楽入門』(1945年)とともに、子ども向けのわかりやすいオーケストラのレパートリーとして知られているけれど、わたしにはそう簡単に受け取れないのだ。 まず、謎のひとつ。そもそもタイトルに冠した謝肉祭(カーニバル)と言ったら、人間どもがひと

      • アナログ派の愉しみ/映画◎フランク・キャプラ監督『毒薬と老嬢』

        おばあさんが 「超能力」を発揮するとき おばあさんが発揮する「超能力」の凄まじさを一度だけ目撃したことがある。かつて信州へ山登りに出かけて、地元の路線バスに乗り込んだとき、車内には5人連れの老婦人だけが腰かけておしゃべりしていた。農家のおかみさん同士らしい集団はこちらに一瞥をくれると、通りすがりの客に気をまわす必要もないと判断したのだろう、すぐにおしゃべりを再開したのだが、わたしは呆気に取られてしまった。 こんな具合だ。おばあさん5人のうち、入れ代わり立ち代わりつねに

        • アナログ派の楽しみ/スペシャル◎中曽根康弘の「フクロウ」

          わたしが雑誌編集者になったのは、中曽根康弘が首相として絶大な威勢をふるっている時期でした。内政では「戦後政治の総決算」を標榜して靖国神社公式参拝、防衛費「1%」枠の撤廃、国鉄・電電公社・専売公社の民営化(現在のJR・NTT・日本たばこ)を断行したり、外交ではアメリカのレーガン大統領と「ロン・ヤス」関係を結ぶ一方、「(日本列島は)不沈空母」「(黒人などの)知的水準」発言で物議をかもしたり、これほどひっきりなしにニュースを振り撒く首相というのも前代未聞だったでしょう。 そこで、

        アナログ派の愉しみ/映画◎スティーヴン・キング原作『スタンド・バイ・ミー』&宮本 輝 原作『泥の河』

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          アナログ派の愉しみ/本◎ヘルマン・ヘッセ著『車輪の下』

          新しい幸福感は 新鮮なブドウ酒のように わたしは東京・小平市の公立小学校から、ふたつ隣の国立市にある中学・高校一貫の私立男子校を受験した。小学6年の担任教師が熱心に勧めてくれたのがきっかけで、母親とともに初めてその学校を見学に訪れた際、いかにも名門エリート校らしい重厚な雰囲気が漲っているのに圧倒されたものだ。当時は中学受験がブームになりはじめたころで、このときの競争率も10倍以上といわれたものの、幸運の女神に微笑まれてわたしは合格することができた。地元の小学校からは初めてだ

          アナログ派の愉しみ/本◎ヘルマン・ヘッセ著『車輪の下』

          アナログ派の愉しみ/音楽◎セル指揮『ライヴ・イン・東京1970』

          音楽の美食家が 最後に成し遂げたもの オーケストラの指揮者には特異な性格の面々が目につくが、そのなかでもジョージ・セルはとりわけ際立った存在ではないだろうか。 1897年にハンガリーのブダペストに生まれたセルは神童の誉れ高く、3歳からウィーン音楽院で学び、作曲を行う一方で、10歳でピアニストとして、16歳で指揮者としてデビューする。こうしてヨーロッパの楽壇で頭角を現したものの、ナチス・ドイツが台頭すると、ユダヤ系のかれは亡命を余儀なくされてアメリカ大陸へ移住することに

          アナログ派の愉しみ/音楽◎セル指揮『ライヴ・イン・東京1970』

          アナログ派の愉しみ/映画◎イ・チャンドン監督『ペパーミント・キャンディー』

          男の愚かさを 見くびってはならない 韓国映画の傑作、イ・チャンドン監督の『ペパーミント・キャンディー』(2000年)をわたしは落ち着いて観ることができない。稀代の「カメレオン俳優」ソル・ギョングの演じる主人公キム・ヨンホが、あたかも自分の合わせ鏡のように思えるからだ。 この作品では時間軸が重きをなす。ファーストシーンは1999年の春、背広姿のヨンホはソウルを流れる漢江の河原に現れる。このとき40歳のかれは、わたしと同年生まれということになる。たまたま3日前にカーラジオ

          アナログ派の愉しみ/映画◎イ・チャンドン監督『ペパーミント・キャンディー』

          アナログ派の楽しみ/スペシャル◎桜田淳子の「櫻」

          わたしは、テレビ番組『スター誕生!』が送りだした中学生のアイドル、森昌子、桜田淳子、山口百恵(デビュー順)の「花のトリオ」と同じ学年にあたり、それだけに当時、彼女たちの華やかな活躍ぶりをまぶしい思いで眺めました。のちにわたしが仕事で接する機会を持ったのは、このうち桜田だけです。 あれは確か1984年、おたがいが25歳のときだったでしょう。桜田が谷崎潤一郎原作の舞台『細雪』に初めて起用され、プロモーションの雑誌記事をつくるためのインタビュー取材を行ったのです。その日はマスコミ

          アナログ派の楽しみ/スペシャル◎桜田淳子の「櫻」

          アナログ派の愉しみ/映画◎ポール・シュレイダー監督『MISHIMA』

          三島由紀夫生誕100年の メモリアルイヤーに 三島由紀夫生誕100年のメモリアルイヤーとなる来年(2025年)には、果たしてどれだけ記念企画が繰りだされるのだろうか? そこで、僭越ながらわたしからもひとつ提案してみたい。この機会に、幻の映画とされてきた『MISHIMA』(1985年)の封印を解いて一般上映するのだ。 三島の死から15年後につくられたこの日米合作映画が、日本においてタブー視されてきた理由に関してはいくつかの憶測が流布するものの真相は闇のなかだ。結果的に一

          アナログ派の愉しみ/映画◎ポール・シュレイダー監督『MISHIMA』

          アナログ派の愉しみ/音楽◎山田耕筰 作曲『赤とんぼ』

          その憂愁のメロディは シューマンからやってきた!? 行きつけの市営スポーツセンターでエアロバイクを漕ぎながら、ヘッドフォンでシューマンの『ピアノ協奏曲』を聴いていた。ウラディーミル・アシュケナージの独奏とウリ・セガル指揮ロンドン交響楽団の組み合わせによる、初めてのCDだ。その演奏が30分ほどで終わり、つぎにこれまで一度も耳にしたことのない曲がはじまったのをそのまま流していると、わたしは思わずバイクから転げ落ちそうになった。なぜなら、ピアノとオーケストラのやりとりがあまりにも

          アナログ派の愉しみ/音楽◎山田耕筰 作曲『赤とんぼ』

          アナログ派の愉しみ/本◎今井むつみ&秋田喜美 著『言語の本質』

          赤ちゃんが犬に向かって 「ワンワン」と呼びかける意味 かねてわたしが不思議なのは、愛犬のチワワを連れて散歩していると、乳母車に乗った赤ちゃんまでが「ワンワン、ワンワン」と声を出して笑いかけてくることだ。目の前の犬に好奇心を向けるのはいいとしても、なんだってわざわざ言語化して、いかにも嬉しそうな表情を浮かべるのだろう? こんな疑問に明快な回答を与えてくれたのが、認知科学者・今井むつみと言語学者・秋田喜美の共著になる『言語の本質』(中公新書 2023年)だ。子どもがことば

          アナログ派の愉しみ/本◎今井むつみ&秋田喜美 著『言語の本質』

          アナログ派の楽しみ/スペシャル◎いまさらながら自己紹介

          いつもご愛読を ありがとうございます! わたしがnoteに記事を掲出するようになって1年3カ月が経ちました。この間、多くのみなさまと温かい交流を持てましたことに深く感謝いたします。 ここで、いまさらながら自己紹介をさせていただきます。1959年の魚座の生まれ。折々記事のなかでも触れましたが、東京・多摩地区に育ち、小平市の市立第7小学校、国立市の私立桐朋中学・高等学校を経て、早稲田大学文学部ロシア文学科を卒業しました。1981年に中央公論社(現・中央公論新社)に入社し、雑誌

          アナログ派の楽しみ/スペシャル◎いまさらながら自己紹介

          アナログ派の愉しみ/映画◎小林正樹 監督『東京裁判』

          大川周明が東條英機の 禿げ頭をひっぱたいたワケ 息つく間もない、とはこうした映画を指して言うのだろう。小林正樹監督のドキュメンタリー『東京裁判』(1983年)だ。わたしが今度鑑賞したのは3回目となるが、40年前に初めて観たときと変わらず、しばしば呼吸するのも忘れて咳き込んでしまった。満州事変から支那事変、太平洋戦争まで17年8カ月におよぶ日本の戦争行為が裁かれた東京裁判(極東国際軍事裁判)の全容を、当時の記録映像にもとづき再現したこの作品は、後世のわれわれにとってまさに国宝

          アナログ派の愉しみ/映画◎小林正樹 監督『東京裁判』

          アナログ派の愉しみ/音楽◎チャイコフスキー作曲『ヴァイオリン協奏曲』

          フーゼル酒の 匂いを嗅ぐばかりの チャイコフスキーが作曲した唯一の『ヴァイオリン協奏曲』については、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスの「三大ヴァイオリン協奏曲」に次ぐ地位にあって、併せて「四大ヴァイオリン協奏曲」と紹介されることが多い(わたし自身は「三大」よりもチャイコフスキーのほうを愛聴しているが)。そのうえで、この作品が1881年にアドルフ・ブロツキー独奏とリヒター指揮ウィーン・フィルによって初演された際にまったく理解されず、音楽ジャーナリズムの大御所だった

          アナログ派の愉しみ/音楽◎チャイコフスキー作曲『ヴァイオリン協奏曲』

          アナログ派の愉しみ/本◎ポー著『メエルシュトレエムに呑まれて』

          額から上の わが「突然変異」について 新型コロナウイルスの流行でわれわれが学んだことのひとつに、実は「突然変異」というものがしょっちゅう起きるとの認識があったように思う。よく考えてみれば、われわれ人類からすればあっという間の変化だとしても、ウイルスにとっては相応の時間を費やしてのことかもしれないし、その変化だってわれわれに有害なものだから大騒ぎされるのであって、毒にも薬にもならなければハナから問題にされまい。つまり、「突然」といい「変異」といったところで、どこかに客観的な基

          アナログ派の愉しみ/本◎ポー著『メエルシュトレエムに呑まれて』

          アナログ派の愉しみ/音楽◎オードリー・ヘップバーン歌唱『素敵じゃない?』

          もうひとつの マイ・フェア・レディ わたしが最も親しんできたミュージカル映画は『マイ・フェア・レディ』(1964年)だ。ジョージ・キューカー監督のもとでこの名作がつくられて30年ほどの歳月を経たころ、驚くべき発見があった。オリジナル・フィルムの劣化をデジタル技術によって修復する作業のさなか、映画会社の倉庫からオードリー・ヘップバーンが作中のナンバーをうたった録音が見つかったのだ。主演女優の彼女が役柄の歌をうたうのは当然のようだが、そこにはこうした事情が横たわっていた。

          アナログ派の愉しみ/音楽◎オードリー・ヘップバーン歌唱『素敵じゃない?』