アナログ派の愉しみ/映画◎ズビャギンツェフ監督『エレナの惑い』
われわれの身近にある
完全犯罪の光景
完全犯罪。それは古来、ミステリー小説における主要なテーマで、真犯人の巧みな手練手管でいかにも成り立ちそうに見えながら、結局、名探偵の推理によって突き崩されてしまうというパターンが多い。あたかも、完全犯罪などとうてい不可能であることを教えようとしているかのように。しかし、果たしてそうだろうか? 現実には、われわれのごく身近なところでふつうに完全犯罪が実行されているのではないか? アンドレイ・ズビャギンツェフ監督のロシア映画『エレナの惑い』