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文筆愛好家はじめました|エッセイ(全文無料)

 「文筆愛好家はじめました」
 これは簡単に言えてよいと思った。だって文筆が好きで、愛好していればそれでよいわけだから。
 さて最近その文筆を愛好する気持ちを思い出し、何か書いていこうと決意して、準備を整え、ようやくここまでこぎつけたのであるが、さらに勢いをつけるため、自己紹介でもないけれども、私のこの溌剌とした初心を書き留めておくことにした。

 私の中から文芸を引っ張り出してみる。色んなところから出てくる。あちこちにしまってある。古びたものもある。意外と新鮮に見えるものもある。私はいつごろから文芸にさわり、その情熱を蓄積してきたのだろうか。

 少年時代はそれほど本を読むタイプでもなかったと思う。
 成長するにつれて、少しずつ、本に興味を示していった程度だった。歴史小説などを読んでいた。

 転機となったのは、高校の時の『罪と罰』だった。級友のすすめがきっかけだった。
 当時、私は文学というものには興味がなかったが、そのドストエフスキーの罪と罰を読んでみたら、とてつもなく面白かった。夢中になって、何もかも忘れて読んだ。たしか高校2年の秋から冬にかけてのころだったか。いま思っても、生まれてこの方、あんなに面白い本は読んだことがないというほどだった。

 その後、海外の文学をまずは探ってみたが、あまり気持ちが乗らなかった。
 ゲーテはよかった。しかし『ファウスト』は第2部で挫折した。ちなみに数年後、再挑戦して、第2幕司会者の台詞を乗り越え、第3幕以降、おしまいまで一息に読んで、ゲーテいいね!と大声で叫んだのであるが、この最初の時は第1部までで諦めた。

 その後は日本文学に目を向けた。
 日本文学は面白かった。
 私は、唯一できる言葉である日本語が、そこそこ好きであったためか、やっぱ日本語でしょ!と少し浮かれていた。

 自分で何か書いてみようと思い始めたのはいつ頃だったか…
 日本文学に触れる前だったかもしれない。いまは亡き母方の祖母が、当時まだ今ほど普及していなかったパソコンだったか、ワープロソフトだったかを、当時の私に買ってくれた。そのワープロソフトで遊ぶつもりで、内容など気にせず書いてみたら、意外と面白い遊びだと感じて、長々書いていくことになった。これが書いたはじめだったかもしれない。
 もともと文章の書けない子どもではなかったが、これをきっかけに、書くことに興味を持っていった。
 タイピングにもなじんだ。

 ところで我褒めとなるが、子どものころの私は文章がうまかった。前に小学校の自分の日記を読み返す機会があった。読んでみると、とてもうまかった。大人になった私よりも断然きれいな文章を書いていた。あの頃のように書けたらいいな、と思って、いま、私はもがいているのかもしれない。

 読む方で日本文学にたどり着いた後は、たまに思い立って、短い小説など書いていた。一万字にも満たないような、短いものだったけれど。

 小説以外にも、詩や戯曲にも興味を持っていった。日本のものが多かった。
 私は音楽も好きだったから、歌詞というものにもだんだんと興味を持っていった。

 親しい人と話しながら、その人のために、詩や歌詞(歌)など書いたこともあった。

 戯曲というものに対して、私は、ちょっとした憧れを持っている。
 私の名前は、この戯曲への思いから、「戯」の字をヒントに、「たわむれ」と名付けていただいたものだ。

 しばらく読書の習慣から離れていたが、いまは少しずつ、これを生活に呼び戻しつつある。詩集など家のそこら辺に置いておいて、通りがかりに気が向いたら立ち読みなどしている。

 私は、当時の若いころからすると何年も年を取った。
 こうした趣味的なものを忘れるともなく忘れて、何年も過ごしてきた。
 ふと、自分の中の文芸を愛好する気持ちを思いだした。と同時に、その愛好の気持ちを「すっかり忘れていた」ことに気づいて、自分がすこし悲しかった。
 何でもいいから書いていくと決めた。わくわくしてきた。まずは子どものころの私の文章を目指そう。文芸を忘れていた間にも、生活上、蓄積するものはあったから、種には困りそうにないな。
 リハビリとして、適当に書いてみると、なんと楽しいこと。気が向いた時に原稿を書いて、印刷して、寝っ転がって推敲する。懐かしい! 以前書いていた時もこのやり方だった。寝ながら、空中で紙にペンを入れていく。私は青いペンを使うことが多いようだ。原稿が真っ青になって、またこれをデータファイルに反映させる。そして印刷して寝っ転がる。この繰り返し。就寝直前にこれが始まろうものなら、なかなか寝られない。すぐに寝不足になる。それでも毎夜これをしてしまう。就寝前の推敲は冴えるようで、どうしても、これがやりたくなるのだ。
 ピン!と来て書いた原稿はあまり青が入らない。気持ちが熟しないうちにとりあえず書いたような原稿は真っ青になる。これ以上は青の余白がないよ…でも一つの推敲では区切りまで行きたいから、途中で打って刷り直すことはしない。隙間を見つけて青を入れていく。
 一度、推敲の紙をなくしたことがあった。その推敲は大詰めで、青の量もさほどじゃなかったのだが、翌日気づいてみると、それがどこを探してもないのだ。
「もうー! なんだよー!」
 探している間に再度推敲すればよいだけのことだが、前夜と同じ言い回しが出るかわからなかったし、なんだか悔しい気持ちもあって、半日探していた。紙は頑として出てこなかった。仕方がないので諦めて、推敲し直した。これが終わった途端に、紙は出てきた。まあそんなものです。これこれ、いい言い方してるね!と、前夜の推敲の表現を一部加えて、完成させたりした。

 私は文筆愛好家。
 もう二度と忘れない。


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