死にゆく恋人との「幸福」を探し求めて✨堀辰雄の『風立ちぬ』③
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7月第1作目には、堀辰雄の自伝小説、『風立ちぬ』を取り上げます。
『風立ちぬ』は昭和10年代文学の代表作として高い評価を得ています。
近年では、宮崎駿監督による長編アニメーション映画『風立ちぬ』が公開されて大きな話題となりましたが、小説とはストーリーの異なるオリジナル作品となります。
「風立ちぬ」――死と直面しながら、二人の「幸福」を探し求める自伝小説
堀辰雄(1904~1953)
【書き出し】
それらの夏の日々、一面に薄の生い茂った草原の中で、お前が立ったまま熱心に絵を描いていると、私はいつもその傍らの一本の白樺の木陰に身を横たえていたものだった。
【名言】
「風立ちぬ、いざ生きめやも」
(ポール・ヴァレリーの詩「海辺の墓地」より)
「私、なんだか急に生きたくなったのね……」
「あなたのお陰で」
※あらすじは、第一回・第二回解説をご参照ください🌸↓↓
※死にゆくヒロイン像は、共作小説「白い春」でも追及しています🌸
どうぞよろしくお願い致します!
共作小説「白い春」全編まとめはこちら!↓↓
【解説】
・「風立ちぬ」
『風立ちぬ』の題名は、フランスの詩人・ヴァレリーの詩「海辺の墓地」のなかの一節、
「風立ちぬ、いざ生きめやも」
からとったものです。
ただし、フランスの原文は、英語では
と表現されています。
そこを、作者の堀辰雄が「いざ生きめやも」と訳したことで、意味が変わってきました。
「いざ生きめやも」の「~やも」は反語に当たります。
そのため、作者の堀辰雄としては、意味を訳すると、
「風が立っている、生きられるだろうか……いや、生きられはしない」
となるようです。
小説の「風立ちぬ」は、サナトリウムで死にゆく恋人のお話なので、「生きねばならぬ」という表現で題名をつけたわけではないのですね。
・宮崎駿監督映画『風立ちぬ』との違い
近年では、宮崎駿監督による長編アニメーション映画『風立ちぬ』が公開され、大反響を呼びました。
この映画は、堀辰雄の『風立ちぬ』からの着想も盛り込みつつ、零銭(零式艦上戦闘機)を設計した実在の人物・堀越二郎を主人公にしたオリジナル作品です。
そのため、映画では、堀越二郎の半生に、小説『風立ちぬ』のヒロイン・節子のように肺結核を患い、サナトリウムで闘病する奈緒子という人物が登場します。
サナトリウムに入院する病床のヒロインと、と闘病生活に付き添う主人公、という構図は映画も小説も同じです。
ストーリーこそ違うものの、映画を観て二郎と奈緒子の純愛に心打たれた方は多く、小説『風立ちぬ』の情景の美しさが、形を変えて表現されていたのではないかと思います。
なお、小説『風立ちぬ』のストーリーとしては、「闘病中のヒロインとそれに寄り添う『私』」というシンプルな流れです。そのため、映画「風立ちぬ」と小説とは別の物語だと思って、解説も読んでいただければ幸いです。
・作者・堀辰雄の実体験
小説『風立ちぬ』のヒロイン・節子は、作者の堀辰雄の婚約者・矢野綾子がモデルとなっているようです。
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