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◆読書日記.《中村昇『ウィトゲンシュタイン、最初の一歩』》
<2023年4月8日>
中村昇『ウィトゲンシュタイン、最初の一歩』読了。
自分の中での今年の学習課題、ウィトゲンシュタインのお勉強の2冊目である。
という事で今回はウィトゲンシュタインの翻訳書を手がけ、ウィトゲンシュタイン『哲学探究』の入門書、解説書も手がけている哲学研究者の手による「中高生向け」の、ウィトゲンシュタイン入門書である。
※ちなみに1冊目としてとり上げたのは岡田雅勝『人と
◆コラム.《隙間時間に読めるお気に入り本の紹介・その2》
前回の「その1」のコラムで、俳句の夏井いつき先生の『絶滅寸前季語辞典』の説明をさせて頂いたくだりで、ぼくは「辞典形式の読み物」が好きで、「隙間時間に読む本」としては最適だ、というお話をさせて頂いた。
実際ぼくは学生時代は広辞苑を読むのが大好きで、ちょっとした勉強の合間などに適当に開いたページの1ページ分を読んで楽しんでいたほど辞典系の本が好きだった。
辞典系の本は、どこから読み始めても
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◆読書日記.《岡田雅勝『人と思想76 ウィトゲンシュタイン』》
<2023年4月1日> 岡田雅勝『人と思想76 ウィトゲンシュタイン』読了。
自分は毎年、詳しく学ぼうと思っている思想家を一人絞って、その人に関する本を集中的に読んで勉強し、最終的にその思想家の主著の一つを通読する事を自分への宿題として課してる。
この習慣を続けるようになってから6~7年くらいたっているだろうか?
その成果として、西洋近代哲学についてはある程度ものを言えるようになったのでは
◆読書日記.《E・H・カー『歴史とは何か』》
<2024年3月23日>
<総評>
エドワード・ハレット・カー『歴史とは何か』読了。
英国の歴史家による「歴史とは何か」というシンプルな問題について主に六つのテーマに分けて論じた講演録。
E・H・カーは1961年にイギリスのケンブリッジ大学にてこのテーマについて6回の連続講演を行った。その書籍化されたものが本書の原著となる。
「歴史とは何か?」……こういうシンプルな疑問というもの
◆短評集・その1
<前口上> 昨年あたりからこの「note」にUPしている文章の分量を意識して長くしている。
それは在野のぼくでも、いわゆる「職業批評家」と呼ばれている、雑誌などに書評を乗せてお金を貰っている職業の人たちと変わらないレベルの記事を書く事は出来るのだ――と、何より自分自身に対して証明したいがために、雑誌なんかに載る記事のレベルを想定して書いているためだ。
そのため、当然ネットで読む人向けの書
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◆読書日記.《日影丈吉『孤独の罠』》
<2024年2月7日>
日影丈吉『孤独の罠』読了。
日影丈吉は、戦後に出た探偵小説専門誌『宝石』誌上で「かむなぎうた」を江戸川乱歩に激賞されデビューした小説家である。
日本の推理文壇の中でも随一の名文家としても知られ、60~70年代にかけての異端文学ブームの中で小栗虫太郎や夢野久作、久生十蘭、国枝史郎といった作家らと共に再評価されたのが日影丈吉であった。
この数年、新年はキリリと冷え
◆読書日記.《J・G・バラード『太陽の帝国』》
<2024年1月27日>ジェイムズ・グレアム・バラード『太陽の帝国』読了。
イギリスのSF文壇で60年代ニュー・ウェーブの中心人物であったJ・G・バラードが自らの少年時代を自伝的に、フィクションも交えて描いた長編小説である。
本作は「訳者あとがき」によれば「イギリス読書界の圧倒的支持を得た作品」なのだそうだ。それもあってか「一九八四年、純文学畑で最大最高の文学賞といわれるブッカー賞の有力候
◆読書日記.《J・G・バラード『ハイ・ライズ』》
<2024年1月10日> ジェイムズ・グレアム・バラード『ハイ・ライズ』読了。
1960年代、イギリスSF文壇で「ニュー・ウェーヴ」と呼ばれた新しい流れの中心人物の1人と呼ばれたバラードの中期「テクノロジー三部作」の一作。
というわけで皆さま、明けましておめでとうございます。
新年はキリリと冷えた空気の中で美しい文章の小説を読むのが、近年自分の中の習わしになっているのだが、本年はいろい
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◆読書日記.《高木光太郎『証言の心理学 記憶を信じる、記憶を疑う』》
<2023年12月30日> 高木光太郎『証言の心理学 記憶を信じる、記憶を疑う』読了。
非常に読みやすくてシンプルな内容ながら、多くの示唆に富む、法廷のおける「人の記憶」についての心理学。
犯罪の容疑者や事件の目撃者などの証言は、しばしば実際に起こったものとはかけ離れた内容であったりする――というのは、犯罪学などでも昔から良く知られたものだが、本書はそんな証言者たちの記憶違いは何故起こるの
◆読書日記.《数土直志『誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命』》
<2023年12月18日> 数土直志『誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命』読了。
2017年に出版され、2016年までの日本のアニメ業界の動向を説明、今どのような状況にあるのかという状況を踏まえ、これからアニメ業界はどうなっていくのかを予想する一冊。
著者紹介にもある通り、本書の著者は元「アニメ!アニメ!」という国内有数のアニメ情報サイトを運営してい
◆読書日記.《ロビン・ベイカー『精子戦争 性行動の謎を解く』》
<2023年12月13日> ロビン・ベイカー『精子戦争 性行動の謎を解く』読了。
本書はマンチェスター大学で教鞭をとっていたロビン・ベイカーとマーク・ベリスが1995年に発表した共同研究の結果を一般読者向けに書き下ろしたものである。
彼らは人間の性行動についての謎を「精子戦争」という新しい概念によって解釈し直し、世界の生物学者たちにインパクトを与えた。そのため本書はこれまで27の言語に翻訳
◆読書日記.《エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』》
<2023年11月15日>
<本書の概要と著者エーリッヒ・フロムについて>
エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』読了。
フロムはフロイト左派として、フロイト理論を受け継ぎながらもフロイトは人間心理の社会的影響を視野に入れなかった事を批判する立場を採る。
本書はその社会心理学の立場からファシズムを支持する群集心理を批判的に分析する。
ぼくは『正気の社会』を読んでからのフロムのファンで
◆読書日記.《辺見庸『私とマリオ・ジャコメッリ』》
<2023年10月18日> 辺見庸『私とマリオ・ジャコメッリ』読了。
本書は作家・ジャーナリストとして有名な辺見庸が現代写真家ジャコメッリを随筆風の文体で紹介した内容。
辺見庸らしく、この現代写真家の作品を「時間」「生と死」「資本とメディア」といったテーマから語っていき、その途中に関連するテーマを書いた辺見庸の詩が挟まれる。
ぼくはこの写真家の名前は本書を見て初めて知ったのだが、「辺見
◆読書日記.《皆川博子『水底の祭り』》
<2023年10月14日> 皆川博子『水底の祭り』読了。
久しぶりに皆川博子の残酷な小説を読みたいと思って、とっておきの短編集を引っ張り出してきた。
1986年刊で今のところ復刊もない絶版本・文春文庫版『水底の祭り』である。
(※因みに後に調べた所によれば2017年に中公文庫で出た『鎖と罠 - 皆川博子傑作短篇集』に本書に収録されている5編の短編は全て収録されているようなので、本書の収録作
◆掌編小説.《逆転裁判》
孫娘を殺害した容疑で12歳の少年が起訴された。まだ未成年であるにもかかわらず、無情にも少年は法廷に引っ張り出されたのである。
これは、あまりに無茶な罪状であった。
無茶であるがゆえに、弁護を引き受けた弁護人は、法廷であえて少年の素行の悪さ、性格の悪辣さ、神をも恐れぬ残忍さ、そして過去実際に彼が犯してきた犯罪の数々をあげ連ね、被告が間違いなく有罪であると主張した。
驚いたのは原告の検察
◆読書日記.《宮本常一『庶民の発見』》
<2023年10月3日>宮本常一『庶民の発見』読了。
農民の出で、農民と生活を共にしながらフィールドワークを行って「庶民・常民・農民の内側からその生活を観察した」民俗学者として知られる学者の論文集。
宮本は百姓を続けながら研究もやっていた人で、日本各地をフィールドワークで渡り続けて生涯に千軒以上の農家に泊まって話を聞き続けた人でもある。
柳田国男に影響を受けて渋沢敬三の元で働き、日本常民