本格ミステリ

〈お約束〉という思考停止

書評:伊吹亜門『刀と傘』(東京創元社) 「マニアの間で、年間ベスト級の作品と評判」だという噂を小耳に挟んだので、読んでみることにしたのだが、あまり評価できなかった。 噂が事実なら「どうしてこの程度の作品を、そこまで高く評価してしまったのか」と考えて、いちおうの解答が見つけられた。 …

さらば長き眠り

書評:辻寛之『インソムニア』(光文社) 本書を謎解き小説(ミステリ)として読んだ場合、真相は必ずしも想像予想を超えるものではなく、その点を指摘するレビュアーの存在は当然ものである。しかしまた、それを補って余りある本書のテーマの切実さは、本書が「カンボジアPKO派遣・文民警察官殺害事…

「新本格ミステリ」の遺児

書評:澤村伊智『予言の島』(KADOKAWA) 気鋭のホラー作家による、初の長編ミステリ。 作中で、横溝正史、三津田信三、京極夏彦の三人に言及されるとおり、横溝的な田舎を舞台に、三津田的な民俗的怪異を扱い、それを京極的な問題意識で描いているが、最後に持ち出されるのは、最後まで言及されなか…

古野まほろについて。

まえがきを書いてゆく。どうも、神山です。 『天帝のはしたなき果実(幻冬舎)』初めて読んだのは2012年の春だった。高校生の頃からメフィスト賞作品を追っていた僕は、絶版となっている講談社ノベルス版の本書を読むことができないと思っていた。そんなことはなく、古野は別の出版社にて再始動してい…

隻眼の少女

"やがてみかげは再び右眼を開けると、自信に満ちた声で云った。『私の左眼は、真実を見抜きます』透き通ったその声は、風に乗って村人たちがいる川下へと消えていく"2010年発刊の本書は日本推理作家協会賞、本格ミステリ大賞W受賞、後期クイーン的問題に真っ向から向き合った傑作ミステリ。 個人…

言葉の螺鈿細工による奇跡の匣

書評:竹本健治『涙香迷宮』(講談社) 「面白い」などというありふれた言葉の対象とはならない、脅威の一書。 小説は「面白くなければならない」というのは、俗説である。 実際、人が何を面白いと思うかは千差万別であり、面白さとは実質的に内容規定など出来ず、せいぜい「知的に快感を惹起する特…

急ぐことと待つこと

書評:米澤穂信『王とサーカス』(東京創元社) 期待以上の出来でした。特に、テーマの生かされた、ラストで示される犯人像がすばらしく、笠井潔の名作『バイバイ、エンジェル』に通じるものがありました。 本作のテーマを「他者の現実的悲劇を報ずることの、ジャーナリズムにおける正当性」の問題だ…

大好きな作家

タイトルだけだとなんだかバカっぽい気もしますが、好きなミステリ作家について、思いつくまま気の向くままに書いてみます。 あれは大学生の頃でした。当時は実家暮らしだったのですが、大学まで片道2時間くらいかけて通っていたこともあり、電車の中では音楽を聴くか、本を読むか、の二択。(たぶん若…

賛否両論?クセがすごすぎるミステリ小説10選

皆さん、普通のミステリ小説に満足していますか。 普通に人が死んで探偵が解決するタイプのミステリもいいが、もっとクセが欲しくないだろうか? そんな皆さんに今回ご紹介したいのは、クセがすごいミステリだ。もしかしたら、某千鳥の某ノブさんが読んだら「クセがすごいんじゃ」っていうかも知れな…

名刺代わりの小説10選

きのう、Twitterでつぶやいた 僕が好きな小説10選について補足を加えて記事にします。 20代、30代の頃、 ミステリーが好きだった僕は、手あたり次第に 読みまくりました。 ▽占星術殺人事件/島田荘司  新本格ミステリーの旗手・島田荘司が生み出した  稀代の名探偵・御手洗 潔(みたらい きよし)…