「認知の遅れによる代償」と「デジャブな感覚」~小峰隆夫「平成の経済」を読んで~

「認知の遅れによる代償」と「デジャブな感覚」~小峰隆夫「平成の経済」を読んで~

 日本経済や政策に対する本質的で鋭い提言をなされているエコノミスト・小峰隆夫氏による経済という側面からみた「平成」という30年の時代の振り返り。出版時に読んだが、最近の政治経済情勢を見るにつけ、「平成」という時代とのデジャブな感覚になり再読。  平成9年(1997年)に社会人となった私にとっても同時代史であり、経済学や経済政策に詳しいわけではないが、改めて読んでも大変興味深かった。  政府や日本銀行という財政・金融政策担当者のバブル崩壊・デフレ・金融危機、財政再建との戦いの

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【読書メモ】共感の本質:『G・H・ミード著作集成』(植木豊編訳)第2篇・第38章

【読書メモ】共感の本質:『G・H・ミード著作集成』(植木豊編訳)第2篇・第38章

本章では共感が鍵概念として登場します。ミードは共感を「我々の示す構えは、今現在我々が手を差し延べている相手側の構えを、我々自身のうちに喚起するということ」(513頁)という意味合いで捉えているようです。 したがって、共感という事象が生じるためには、自分だけではなく自分に応答する他者という存在が不可欠になります。言い換えれば、自分と他者との協働過程の中に共感は生じるということです。 前章で述べられた経済分野を例にミードは解説をしています。経済行動を媒介する手段には貨幣があり

【読書メモ】宗教的態度と経済的態度についてのさらなる考察:『G・H・ミード著作集成』(植木豊編訳)第2篇・第37章

【読書メモ】宗教的態度と経済的態度についてのさらなる考察:『G・H・ミード著作集成』(植木豊編訳)第2篇・第37章

前章から論じられ始めた宗教的態度と経済的態度について、本章では対比的に論じられます。人が社会化する上で宗教と経済という二つの要素がどのように関係するのかをミードは説明しています。 まず経済について。経済は交換によってなされ、その交換は物々交換から貨幣を媒介したものへと変質しました。すなわち、経済学における貨幣とは、私たちの実感にも近いように、欲求をシンボル化したものと言えます。 交換の形式はそれゆえ、対話の方法なのであり、交換手段は身振りとなる。(507頁) 次に宗教に

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【読書メモ】『ドラッカー✖️社会学 コロナ後の知識社会へ』(井坂康志・多田治著)

【読書メモ】『ドラッカー✖️社会学 コロナ後の知識社会へ』(井坂康志・多田治著)

企業組織で働いていると、ドラッカーといえばマネジメントというイメージがついて回ります。本書のポイントは、彼のマネジメント論の裏表の関係には社会生態学があるという点です。この点をドラッカー研究者と社会学者とが対談を交えて解説してくれています。 現代におけるドラッカーと社会学ドラッカーが社会を論ずる上で仮想敵に置いたのが、経済至上主義、近代合理主義、社会主義、そしてナチズムです。これらに通底する考え方は「一元的な主体による理性的・演繹的・還元的な思考」(36頁)であるとし、ドラ

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『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』花田菜々子より ♥本と人と人生について考える♥

『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』花田菜々子より ♥本と人と人生について考える♥

花田さんにとって、「本を人にすすめる」ということは彼女の人生そのものなんだと、深く心に染み入った。本を介して自分を見つめ、満たし、そして他人の懐をほぐす。自分の心を癒すもの、または知識を得られるものだとされる「本」という概念を越え、人と人の心をつなぐ架け橋や、または糸のような繊細な役目もできる、そんな本に対する愛情が伝わる、またわたしにとっても本に対する想いがより深くなった、そんな読後感だった。 花田さんの綺麗な心を現す言葉も多く散りばめられ、ひいては自分にとっての幸せとは、

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Monday Letter #16~先週の色々~
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Monday Letter #16~先週の色々~

“Monday Letter”では先週起きた出来事や記録などをいくつかの項目に分け、 「日記」ならぬ、「週記」を書いております。 先週は相当バタバタしました。 特に木曜日。悪い事は固まって来るものです。 プチ繁忙期は今月いっぱい続くので早く切り替えたい。 今週は何としても切り替えたい。 そんな気持ちです。 【先週のニュース】日本は衆院選の最中ではありますが、何故これを取り上げたか。 麻生さんが財務大臣として最後の会見をしたときに原油価格に触れていたからです。 アベノミク

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呼応してる?

呼応してる?

森田真生『数学の贈り物』より 実感を表現に写し取ったり、逆に表現にしたがって実感を更新したり。その往復こそが、創造行為の醍醐味だろう。 ところで、表現が実感を牽引するのはいいが、実感が表現を手元にひき寄せ続けることも重要である。 でないと、表現はすぐに空疎になる。 現実にしたがって何かを表現することもあれば、生まれてしまった表現に、現実の方が鍛えられていくこともある。 恩田陸『蜜蜂と遠雷』より ・・・おおかたの演奏者は作曲家の意図を理解して、曲の方に自分を引き寄せていく

【読書メモ】デモクラシーと、社会における普遍性:『G・H・ミード著作集成』(植木豊編訳)第2篇・第36章

【読書メモ】デモクラシーと、社会における普遍性:『G・H・ミード著作集成』(植木豊編訳)第2篇・第36章

シンボルや言語を通じた社会における相互作用を扱ってきましたが、本章では、その社会のベースには何があるのかについての考察がなされ、デモクラシーや普遍的宗教といった存在について触れられています。 まずミードが述べているのは、普遍的な抽象的概念がある社会の規定を為すといっても、そこに介在するのは言語であるという点です。社会を構成する概念として経済もありますが、人の考え方や行動に意味を与えてお互いに影響を与え合えるのは、言語がその基盤として存在するからです。 そのため、使われる言

2021年9月の読書録
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2021年9月の読書録

先月からというもの、しっかりと読書へのエンジンがかかりまして、積ん読の消化に励んでおります。 先月に引き続きの伊坂幸太郎さん、そして特筆すべきは辻村深月さんラッシュでしょうか。(笑)多作なので、積ん読の中にまだまだ辻村作品が潜んでおります……!それにしても「東京會舘とわたし」は素晴らしかったです。(特に下巻が!)東京會舘の前を通り掛かった事はありますが、中に入った事はないので、いつかの小さな夢として「東京會舘のコンソメスープを飲む」を追加しておきます。その他、これまたお馴染

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10月16日、なんという闇。
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10月16日、なんという闇。

なんという光。 あゝ!あたしはたうとうお前の口に口づけしたよ、 ヨカナーン、お前の口にくちづけしたよ。 ーーオスカー•ワイルド〈サロメ〉 今日はオスカー•ワイルド氏の お誕生日なんですって。 1900年生まれの破天荒作家ワイルドの著名作といえば 自身の肖像画に狂わされる「ドリアングレイの肖像」 像の王子と燕の自己犠牲を描く「幸福な王子」 そして、「サロメ」 戯曲用に作られたお話です。 叔父にあたる王様にラブコールされた王女は、囚われの預言者ヨカナーンに一目惚れ! 王

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