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月刊『抽象的な歩き方』

113
様々なフリー切符や長旅に出た記録の置き場。
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#乗車

ACT.113『沁みる決別』

ACT.113『沁みる決別』

何度目の転換

 富士急ハイランドから6700系に乗車し、富士山に到着した。ここでは進行方向が切り替わる。
 かつて先が伸びていた駅を行き止まりにし、そのまま線路を継ぎ足して大月まで無理矢理開業させた名残を残す場所として、現在でも乗客の足枷になっている場所だ。
 乗車している6700系は運転士と車掌の位置を入れ替える程度の方向転換で再び山を下る走りに転じて次の月江寺に向かう。
 この先が下吉田。富

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ACT.112『下山』

ACT.112『下山』

大月行き電車

 既に夕暮れの河口湖の駅。
 自分は再び列車に乗車して大月の駅へ向かう。
 終点まで乗車すれば、ある程度の暇つぶしにもなろうかという感じだったが大半の時間は寝ていて大体の記憶を紛失してしまう事になる。
 冒頭の写真は大月まで向かう列車に乗車した際に撮影した記録だ。
 6700系NARUTO電車の側面である。
 富士山駅では一部しか切り抜いて撮影できずだったが、河口湖の留置線では偶然

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ACT.111『疲労途上』

ACT.111『疲労途上』

河口湖線とハエニッパ

 埼京線から譲渡され、首都圏最後の205系として尽力した205系ハエ28編成は、この富士急行に転職して富士急ハイランドの人気アトラクション『きかんしゃトーマスランド』のラッピング装飾を身に纏って活躍している。
 訪問した際にはその装飾をじっくり見る事は出来ず、ただただ混雑の中に紛れていたので撮影や記録に浸る事は出来なかった。
 やっとの思いにて富士急ハイランド方面への河口湖

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ACT.109『健在なる足』

ACT.109『健在なる足』

もう1つのOB

 御殿場線の華であった371系の転職列車、富士山ビュー特急を都留文科大学で下車した。
 この駅で特急に乗り換えて再び富士山方面に向かう。
 この富士急行線では、御殿場線で優等列車の時代の全盛期を支えた列車が共演している。都留文科大学まで乗車した富士山ビュー特急はその1つで、もう1つはこの後にやってくる列車だ。
 都留文科大学で下車し改札外に出札。
 その際にNARUTO列車(ここ

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ACT.105『偉人の道を伝った先』

ACT.105『偉人の道を伝った先』

鉄道王の力

 甲府から先は、食事を済ませて大月行きの列車に乗車する。
 この先の行き先には塩山行き・大月行き・高尾行きとあるが、この列車は中距離的に走行する列車の部類である。
 さて、乗車した大月行きの普通列車は酒折・石和温泉と駅に停車し、山梨市に停車した。
 この駅で後ろを走行する特急列車に道を譲る為の停車だ。この停車時間を活かして、乗車する大月行きの211系電車を撮影する。
 関東圏では既に

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ACT.97『光彩享受』

ACT.97『光彩享受』

憩いの客車と公園と

 子連れの男性訪問客が公園に来ただけで、入山瀬の駅付近公園は静かである。
 自分はそうした場所で余生を暮らす保存車たちが大好きだから、むしろこの環境の方が良いし車両が地域に深く根ざしている感触を大きく得られて楽しい。
 マンガを客車内で読んでいる男子以外は客車の外に出て、公園に設置された遊具で遊んでいる。蒸気機関車の存在、客車の佇まいには目も暮れんというのか。持ち込んだボール

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ACT.95『歌に沿る序章』

ACT.95『歌に沿る序章』

雨天の中を

 外は降り頻る雨の中であった。
 そうした中で、我が家を準備した荷物を確認し、JRは太秦駅に向かう為に我が家を発つ。既に妹は新年度を迎える寸前に上京し、我が家には自分1人が母と暮らしているから少し切ない時間が流れる。
「あんた、傘。折角やし要らんかったら置いてきぃな。」
母の気遣いを受けて京都を後にする。
「行ってくるわ!!」
陽も上がらず、雨で冷えた道を。水たまりのできたアスファル

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ACT.94『イントロ』

ACT.94『イントロ』

覚えてますか…?原点への回帰

 この連載の最初…は、長崎への旅路にて始まったものであった。
 何か旅連載的なモノを残せたら。そうして始まった中で、自分の中でご当地に因んだ事をしてみたい…と。
 そうした中で、自分が目を付けたのが丁度開催に向かって足並みを弾ませていたセンバツ高校野球。
 センバツでは全国47都道府県は揃わないものの、龍谷大平安・京都国際・京都外大西…と名門校が駒を進め、春真っ盛り

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ACT.93『終章』

ACT.93『終章』

網目の中で

 南北線で最後の足掻きとして真駒内からやってくる電車を撮影している自分。
 しかし、タイムリミットは刻一刻と迫っている…にも関わらず、自分の理想とする写真が撮影できない苦しみと戦っていた。自分が課した事なのに、それを達成できない焦燥感が、ただただ自分を焦らせていた。
 なんだろう、神様が何処かに居るとしたら
「ギリギリまでこんな所に残らず、大人しく帰る準備をしなさい」
というメッセー

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ACT.92『特急街道から出て〜最後の函館本線〜』

ACT.92『特急街道から出て〜最後の函館本線〜』

空席だらけの列車

 乗車して、少し驚いてしまった。
 観光列車、キハ261系5000番台…ラベンダー編成。この編成は夏季ラベンダーシーズンには車両運用を調整し、函館本線と富良野線を直通運転する臨時特急であるフラノラベンダーエクスプレスに充当されている。
 ラベンダーシーズンともあり、乗車している乗客は多いのかとフリースペースに入ったが、予想以上の空席で拍子抜けしてしまった。観光特急としての知名度

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ACT.90『追いかけの人』

ACT.90『追いかけの人』

小さな鉄道

 苫小牧駅に向かって駅に向かう中心、大通りを歩いていると何やら公園に蒸気機関車が居るのを発見した。近くには看板も設置されている。
『王子製紙 軽便鉄道』
と記されていた。そういえば近くに工場があったっけか。昨夜深夜に運転所付近を歩いていた際にも、製紙工場らしき建築物や煙突の立ち並ぶ姿を見たような記憶が残っている。
 最初、この機関車と客車に関しては何気なくの撮影で記録に打ち込んだが、

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ACT.87『引き換え』

ACT.87『引き換え』

働く同期

 札幌市営地下鉄で、最も格好良い…というのか、自分が最も魅了された車両は一体どれだったのか、と問われたら間違いなくこの8000形である。
 車両のルックスから感じる平成感、そしていつになろうと衰える事のないモダンなデザイン。そうした面が自分を魅了させた。
 そうした誘惑に勝てないから、今の自分はここにいる。新さっぽろの構内で地下鉄を撮影している。 
 写真は、乗車中の電車から撮影した新

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ACT.86『飛ばせる線路』

ACT.86『飛ばせる線路』

石勝線、再び

 追分駅に戻ってきた。列車を待機する。
 南千歳方面に向かって札幌方面に戻るのがこの旅の現状の締めくくりに相応しい…状況であるが、時刻表を確認してみると新夕張方面に1本の列車が見えた。
「少し乗車して、1駅か2駅先で下車すっか」
そうした思いで、駅に入る釧路方面の特急列車を待機した。

 やってきた列車に乗車する。キハ261系1000番台による特急列車、おおぞら/9号である。
「ま

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ACT.82『栄華を残す場所』

ACT.82『栄華を残す場所』

工場を見てから

 再び、苗穂工場に戻った。
 室蘭本線を経て、岩見沢へ。その後に旭川へ向かおうとする時以来この場所にやってきた。
 少しだけ離脱しただけでも、ここまで変化が起きているというのは何か感慨の深さがある。最果ての北の大地でも、当たり前のような日常があるのだと改めて思い知らさせるというか。
 苗穂工場を見渡せる跨線橋を離脱し、再び札幌に戻るべくホームに移動する。
 ちなみにこの跨線橋のポ

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