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故郷にJリーグのクラブチームがあって、本当によかった

二十四歳の春、わたしは突然帰省した。 新卒で三年働いた職場の、いろいろなハラスメントのストレスから、かちかちに強張り、思うように動かなくなってしまった身体と、心…

ひー
3年前
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小さなことでくよくよしたい

くよくよしている。 本当に小さなことで、くよくよしている。 詳しい事情は割愛するけれど、小学三年生の息子が、悔し泣きしながら下校してきた。 話を聞くと、同級生か…

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1年前
35

気づくひと、気づかないひと

先日、草むしりをした。 子どもの通う小学校の保護者活動で、各学年のクラス役員と協力者が集まり、総勢二十人ほどで、にぎやかに校庭の草をむしった。 子どもが入学する…

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1年前
104

「演じる」という読書体験を

学校図書館でボランティアをしています。 普段は、読み聞かせや、貸出返却のお手伝いをしているのですが、ボランティア仲間との雑談のなかで「なんか劇とかやってみたくな…

ひー
1年前
41

アラフォー、のびしろしかないわ

三十六歳。アラフォーである。 年齢の近い友だちと、もうアラサーだから、とか、アラサーになって体力落ちたわ、とか自虐混じりにキャッキャとしているうちに、あっという…

ひー
1年前
66

冷や汗をかくほどの贈りもの

35×2のちいさな黒い粒。 教室にみっしりと並んだそれは、初夏のデラウェアみたいに瑞々しくて、まんまるで、そして、何を考えているのかわからない。 本の表紙を抱いて、…

ひー
1年前
29

芸能人が羨ましくなるとき

芸能人が羨ましくなるときがある。 彼や彼女が、くちびるからぽろりと落とした何気ない日常の言葉ひとつでも、ファンの子たちは、きらめく宝石粒のように拾い上げ、そっと…

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2年前
42

夏の日の「平和集会」という学校行事から学んだこと

わたしは、九州の出身です。 わたしが通っていた地域の小学校では、毎年夏休みのまっただなかに「平和集会」という集会が開かれる特別な登校日があり、いつもこんがりと日…

ひー
2年前
17

「ちいかわ」が好きなんです

ちいかわ、ご存知でしょうか。 ナガノさんという方が描かれた、ネット連載のまんがのタイトルです。 ちなみに「ちいかわ」とは「なんか小さくてかわいいやつ」の略だったり…

ひー
2年前
34

踏んだり蹴ったり祝われたり

もうすぐ日付が変わる。 日付が変わったら、お誕生日だな。 と、思いながら、子どもたちと布団を並べた和室でぼんやりしていると、家が、地面ごとぐわんぐわん揺れた。な…

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2年前
33

病める時も健やかなる時も

突然、濃厚接触者になりまして。 ひとつの病気が、流行り病と呼ばれるようになってから、いつかはこんな日がやってくるかもしれないと、頭の片隅で、うっすら考え続けては…

ひー
2年前
28

啓蟄にまつわるエトセトラ

虫がうんうん飛び回っている。 玄関の引き戸を開けるなり、ちっちゃな羽虫が、うんうん、うんうん、うんうん。 こうなるのが嫌で、玄関にちいさなフックを取り付けて、市販…

ひー
2年前
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ちいさな暮らしを脅かすもの

わたしの暮らしはちいさい。 ほとんど、ひとつの町の中で完結していて、一日に関わる人の数も、少ない。 十人、十五人いくか、いかないかぐらい。 関心事も、今日の晩ごは…

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2年前
28

息子の歯抜け顔に思うこと

息子の歯がぽろぽろと抜けている。 最初の一本目がぐらつきはじめたときには、てんやわんやだった。 息子は、泣いたり、おびえたり。 わたしたちは、様子をみたり、説明し…

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2年前
25

僕たちはきっと本の中に還る

ひさしぶりに本を読みました。 一ヶ月、だいたい十冊前後読んでいるのですが、毎日毎日ちょっとずつ読んでいるわけではなく、読むときには連続して、何冊も並行して、身体…

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2年前
26

わたしは勝手に救われている

集合住宅の共用スペースを掃く。 うちの前の廊下から、階段、エントランス。 埃、誰かの髪の毛、ちいさな虫の死骸。 掃除はいいよなあ、と思う。 (志村けんさんのいいよな…

ひー
3年前
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故郷にJリーグのクラブチームがあって、本当によかった

故郷にJリーグのクラブチームがあって、本当によかった

二十四歳の春、わたしは突然帰省した。
新卒で三年働いた職場の、いろいろなハラスメントのストレスから、かちかちに強張り、思うように動かなくなってしまった身体と、心をかかえて、逃げ延びるように、東京から佐賀へと帰ってきた。
飛行機を降りて、空港の建物を出た瞬間に、暗がりにへたりこんで、わんわん泣いた。
無職になってしまったし、結婚を考えていた同い年の恋人も、ひとり暮らしのアパートの部屋も、そのまま置い

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小さなことでくよくよしたい

小さなことでくよくよしたい

くよくよしている。
本当に小さなことで、くよくよしている。

詳しい事情は割愛するけれど、小学三年生の息子が、悔し泣きしながら下校してきた。
話を聞くと、同級生から紙製の棒で頭をペシペシと叩かれることが頻繁にあり、やめて、と言ってもやめてもらえず、もういやだ、という気持ちが爆発したようだった。
かといって、相手の子のことが大嫌いかといえば、そういうわけでもないらしく、ペシペシ叩かれないときは、い

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気づくひと、気づかないひと

気づくひと、気づかないひと

先日、草むしりをした。
子どもの通う小学校の保護者活動で、各学年のクラス役員と協力者が集まり、総勢二十人ほどで、にぎやかに校庭の草をむしった。

子どもが入学するまでは、保護者の集まりは、上辺だけの関係で、陰険で、派閥やいじめがあり、ギスギスしたものにちがいないと怯えていたけれど、いざ飛び込んでみると、あっけないほどに杞憂だった。
上辺だけの関係であることには変わりないけれど「今日も暑いですね」と

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「演じる」という読書体験を

「演じる」という読書体験を

学校図書館でボランティアをしています。
普段は、読み聞かせや、貸出返却のお手伝いをしているのですが、ボランティア仲間との雑談のなかで「なんか劇とかやってみたくない?」からの「おっ、やってみちゃう?」という話になり、どういうわけか学校側からも許可が下り、あれよあれよという間に、劇を「やってみちゃう」ことになりました。

子どもたちのいない時間帯の図書室を、即席の会議室にして話し合った結果、宮沢賢治の

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アラフォー、のびしろしかないわ

三十六歳。アラフォーである。
年齢の近い友だちと、もうアラサーだから、とか、アラサーになって体力落ちたわ、とか自虐混じりにキャッキャとしているうちに、あっという間にアラフォーである。
親戚のちびっこには、こないだまで赤ちゃんだったのに、もう小学生なんだね、子どもの成長は早いね、なんて話をするけれど、そんなことはなかった。子どもに限ったことではなく、大人だって早かったのだ。

こないだ、ゆるキャン△

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冷や汗をかくほどの贈りもの

冷や汗をかくほどの贈りもの

35×2のちいさな黒い粒。
教室にみっしりと並んだそれは、初夏のデラウェアみたいに瑞々しくて、まんまるで、そして、何を考えているのかわからない。
本の表紙を抱いて、黒板を背にして立つと、いつだって、どんどん舌が乾いていくのに、脇の下はじっとりと湿っていく。しまった、またグレーのシャツを着てきてしまった。
それでもニッと笑って、今日はこの本を読みます、とはりきった声を出すと、なになに、とか、あっ、そ

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芸能人が羨ましくなるとき

芸能人が羨ましくなるとき

芸能人が羨ましくなるときがある。
彼や彼女が、くちびるからぽろりと落とした何気ない日常の言葉ひとつでも、ファンの子たちは、きらめく宝石粒のように拾い上げ、そっと手のひらから胸ポケットへとうつし、明日を生きるお守りにしてくれるのだ。
存在するだけで愛され、称賛され、そして、誰かの力になることができる。
いいなあ、いいなあ、羨ましいなあ。

でも、大人だから、本当は知っている。

彼らを覆っている愛は

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夏の日の「平和集会」という学校行事から学んだこと

夏の日の「平和集会」という学校行事から学んだこと

わたしは、九州の出身です。
わたしが通っていた地域の小学校では、毎年夏休みのまっただなかに「平和集会」という集会が開かれる特別な登校日があり、いつもこんがりと日焼けした顔で通っていました。

その日は、ひさしぶりにクラスメイトたちに会えるわくわくした気持ちと、もうひとつ、ちょっと憂うつな気持ちもありました。
平和集会の日は、毎年、児童玄関のホールの壁に、写真パネルが掲示されていました。
心への配慮

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「ちいかわ」が好きなんです

「ちいかわ」が好きなんです

ちいかわ、ご存知でしょうか。
ナガノさんという方が描かれた、ネット連載のまんがのタイトルです。
ちなみに「ちいかわ」とは「なんか小さくてかわいいやつ」の略だったりします。
そのまんがでは、 まっしろいクマのような「ちいかわ」、ねこの「ハチワレ」、破天荒な「うさぎ」という、なんかちいさくてかわいいキャラクターたちの日常が描かれているのですが、決して、かわいいだけじゃない。
ときにブラックで、ときにホ

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踏んだり蹴ったり祝われたり

もうすぐ日付が変わる。
日付が変わったら、お誕生日だな。

と、思いながら、子どもたちと布団を並べた和室でぼんやりしていると、家が、地面ごとぐわんぐわん揺れた。なんだこれ。
おおきな円を描くような揺れ。
なにもない部屋なので、なにかが倒れてくることはないけれど、子どもたちの身体に覆いかぶさるようにして、収束を待つ。

家族が流行り病になって、わたしたちは濃厚接触者になって、さらに地震まで来るか。

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病める時も健やかなる時も

病める時も健やかなる時も

突然、濃厚接触者になりまして。

ひとつの病気が、流行り病と呼ばれるようになってから、いつかはこんな日がやってくるかもしれないと、頭の片隅で、うっすら考え続けてはいたけれど。
まさか、本当にやってくるなんて。

同居家族のひとりが感染。
家庭内隔離での療養は骨が折れた。
骨だけじゃない。心も折れた。

スプレーボトルを片手に、共用のドアノブやトイレは、一日に何度も消毒した。
体調にあわせた食事を用

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啓蟄にまつわるエトセトラ

啓蟄にまつわるエトセトラ

虫がうんうん飛び回っている。
玄関の引き戸を開けるなり、ちっちゃな羽虫が、うんうん、うんうん、うんうん。
こうなるのが嫌で、玄関にちいさなフックを取り付けて、市販の虫よけアイテムを吊るしているのに、まるでイヤミのようにその周りをうんうんしている。うんうんすな。

夫とドライブをしているとき、近頃、本当ににあったかくなったよね、という流れから、なんとなく、ごきぶりの話になった。
もし、家のなかにごき

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ちいさな暮らしを脅かすもの

わたしの暮らしはちいさい。
ほとんど、ひとつの町の中で完結していて、一日に関わる人の数も、少ない。
十人、十五人いくか、いかないかぐらい。

関心事も、今日の晩ごはんとか、家族の健康状態とか、週末に行きたいところとか、春になって急激に増えてきた庭の雑草対策とか、SnowManがおそ松さんの実写映画をやって、十四松が佐久間くんでトド松がラウールくんなのハマり役すぎるな、ということとか。

わたしの世

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息子の歯抜け顔に思うこと

息子の歯抜け顔に思うこと

息子の歯がぽろぽろと抜けている。
最初の一本目がぐらつきはじめたときには、てんやわんやだった。
息子は、泣いたり、おびえたり。
わたしたちは、様子をみたり、説明したり、体験談を語ったり、なだめすかしたり。
そのうち、いつまで経っても抜けないので、歯医者に行ってきれいに抜いてもらったほうがいいのではないかと悩んだりしたけれど、そうこうしているうちに、なにかの拍子に、ぽろりと抜けた。
ティッシュペーパ

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僕たちはきっと本の中に還る

僕たちはきっと本の中に還る

ひさしぶりに本を読みました。

一ヶ月、だいたい十冊前後読んでいるのですが、毎日毎日ちょっとずつ読んでいるわけではなく、読むときには連続して、何冊も並行して、身体をずぶずぶと沈めるように読む。
読まないときは、ぱったりと読まない。
そんなペースになることが多いです。
最近は、ぱったりと読まない周期に入っていたので、活字を目で追うこと、紙のページをめくること、そして、そこから湧き出てくる感覚を味わう

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わたしは勝手に救われている

わたしは勝手に救われている

集合住宅の共用スペースを掃く。
うちの前の廊下から、階段、エントランス。
埃、誰かの髪の毛、ちいさな虫の死骸。

掃除はいいよなあ、と思う。
(志村けんさんのいいよなおじさんの口調で)
手を動かせば動かしただけ、世界が変わる。足元がワントーン明るい。自己有用感。

最近は、ままならないことばかり。
泣きっ面にハチからさらに、9、10、11。
そのたびに、大丈夫、大丈夫って、なんとかバランスを保って

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