ちいさな暮らしを脅かすもの

わたしの暮らしはちいさい。
ほとんど、ひとつの町の中で完結していて、一日に関わる人の数も、少ない。
十人、十五人いくか、いかないかぐらい。

関心事も、今日の晩ごはんとか、家族の健康状態とか、週末に行きたいところとか、春になって急激に増えてきた庭の雑草対策とか、SnowManがおそ松さんの実写映画をやって、十四松が佐久間くんでトド松がラウールくんなのハマり役すぎるな、ということとか。

わたしの世界は、わたしの両手が届く範囲で時を進めていて、いまのところ、何事もなく平和で、たまに退屈なぐらい穏やか。
だけど、わたしの両手を超えた向こうでは、誰かの日常が壊され、誰かが泣いている。
いまにいたるまでの歴史の中でも、たくさんの日常が壊され、たくさんの穏やかな暮らしが奪われ続けてきたのだろう。
そう思うと、胸がぎゅっと詰まって苦しい。
もし、自らの穏やかな暮らしを守るために、双方の人々が血や涙を流して戦っているんだとしたら、こんなに悲しいことはない。

ふと、家事の手をとめて、わたしに出来ることはなんだろう、と考える。
まだその答えは見つからない。
そのうち、わたしのこのちいさな暮らしも、奪われてしまうのではないだろうか。
そんな不安が過ぎることもある。

わたしは思う。
わたしたち、ひとりひとりの暮らしよりも、尊いものなんてないのだ。

あたたかい日差しと、まだひんやりと冷たい空気が入り交じる中途半端な季節のなかで、ぼんやり立ちつくすような気持ちでいる。


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