見出し画像

息子の歯抜け顔に思うこと

息子の歯がぽろぽろと抜けている。
最初の一本目がぐらつきはじめたときには、てんやわんやだった。
息子は、泣いたり、おびえたり。
わたしたちは、様子をみたり、説明したり、体験談を語ったり、なだめすかしたり。
そのうち、いつまで経っても抜けないので、歯医者に行ってきれいに抜いてもらったほうがいいのではないかと悩んだりしたけれど、そうこうしているうちに、なにかの拍子に、ぽろりと抜けた。
ティッシュペーパーの上に転がった乳歯は、驚くほどちいさかった。
このちいさな歯が、何日も、何年も、息子にものを食べさせ、ここまで育ててきたのだ。
いままでありがとうね。
そう思うと、ちょっとだけ涙が出た。
はじめて歯が抜けた息子は、ひとつおおきな仕事をやり遂げたような、先を行く友だちにようやく追いついたというような、なんだか誇らしげな顔をしていた。
二本目、三本目、四本目、と抜けていくうちに、親も子もだんだん慣れてきた。
最近では、夕飯のコロッケをかじったときに「あっ、抜けた」「おう、よかったじゃん」というぐらいの軽い感じになってきた。
わたしも、もう、涙することもない。
子どもと過ごす日々は、いつだって前に向かっていて、ものすごい速さで進んでいく。
いまの息子は、上下の歯が二本ずつ抜けていて、なかなか愉快な面相になっている。
昼間っから公園でワンカップ飲んで笑ってる陽気なじいちゃんみたいな。そんな感じ。
学校でも歯が抜けたねって言われるでしょ、と聞いたら、ほとんど言われないよ、だってマスクつけてるし、とのことだった。
このご時世だから仕方ないけれど、少しだけもったいないような気持ちになった。
子どもはたえず変化していく。
息子の歯抜け顔は、期間限定なのだ。
いまのうち、たっぷり眺めておこうと思う。


この記事が参加している募集

#子どもの成長記録

31,504件

読んで下さってうれしいです。 スキ、サポート、シェアなどのリアクションをいただけると満面の笑顔になります。