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僕たちはきっと本の中に還る

ひさしぶりに本を読みました。

一ヶ月、だいたい十冊前後読んでいるのですが、毎日毎日ちょっとずつ読んでいるわけではなく、読むときには連続して、何冊も並行して、身体をずぶずぶと沈めるように読む。
読まないときは、ぱったりと読まない。
そんなペースになることが多いです。
最近は、ぱったりと読まない周期に入っていたので、活字を目で追うこと、紙のページをめくること、そして、そこから湧き出てくる感覚を味わうことが、とても新鮮でした。

本の中は、いつも、しんとしている。
それは、どんな作品であっても変わらない。

薄いカーテンが西日に透けてふくらみ、鉛筆を走らせる音と、居眠りの吐息がすうすうと聞こえてくる、そんな、どこかにあるようでどこにもない、ちいさな図書館の静けさ。
その中に、ぽつねん、といるような感覚。
さびしさと自由をいっぺんに噛みしめているような、そんな感覚。
それが好きで、本を読み続けているのかもしれない、と思うことがあります。

どんな熱も、いつかはさめる。
どんなつながりも、いつかは解ける。

そうして、最期にひとりきりになったとき、あの静けさの中へと還っていく。
はっきりとした宗教観を持っていない僕は、ぼんやりとそんなふうに感じています。

僕たちはきっと本の中に還る。

いつかやってくるその日まで、目の前の雑然とした日々を、おかしみながら、いつくしみながら、くり返していこうと思うのです。


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