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「みんなのフォトギャラリー」

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2022年10月以降に「みんなのフォトギャラリー」で私の写真を使って下さったみなさまのnoteをまとめています。 使っていただいたみなさま、ありがとうございます!とっても嬉しいで…
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#小説

【小説】終焉。僕は君らとこの物語を変えられるの、かな?6

【小説】終焉。僕は君らとこの物語を変えられるの、かな?6

第五章:一歩を。

「ここは…」意識が回復し始める。
見たことのある天井だ。
僕は状況確認しようと体を起こそうとするが、
視界がグワンと揺らいだ。
「うっ…、、、干渉の…反動…か…」眩暈がした。
そして僕は、酷い車酔いの様な状態になり。その場に崩れ、戻してしまった。
立ち上がれない…!命の危機を感じた。
すると、後ろから扉が開く音が聞こえた。
「きゃッ!?」扉の向こうから来た人物は短く叫んだ。

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ヴィンテージ:6

ヴィンテージ:6

「ここは…もっと翳入れた方が良くなる。後はアーケード奥の人物まで仔細に書き過ぎだ、わざとらしくなる。記憶や写真に頼ってムリしなくていい。観てもらいたいモノ、伝えたいモノをカタチにする様に描け。奥はそう見える様に、手前は感じ取れる様に」
 早坂が清原の絵に口出ししてるの初めて見た。俺は2メートルくらい背後からやり取りをボンヤリ眺めていた。
「奥の…コイツは丁寧に描きたい。コイツはこの後に手前の男に殴

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旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る女のひとり旅①

旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る女のひとり旅①

 旅の始まり、早速新幹線の揺れに酔っている。4月某日、新大阪へ向かう新幹線のぞみの指定席は満席だった。

私は窓側に座り、隣には男の人が座った。音を一切立てない、黒縁メガネにマスクでゲーマーな彼は、右手の親指以外、ほとんど動きがない。静かだという点で、なんとも私好みだ。
有り難い人の隣になったわ、と幸運を噛みしめるついでに豆腐ドーナツを食らい、プラックの缶コーヒーを飲む。時々、窓

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小説「光の物語」第101話 〜聖夜 3 〜

小説「光の物語」第101話 〜聖夜 3 〜

マティアスはシエーヌで降誕祭を迎えた。
大雪被害の対応もひと段落し、無事にこの日を迎えられたことに安堵する。
礼拝の参加者たちが到着し始めるまでの間、マティアスは城内を歩き回ってみることにした。

来客に備えて使用人たちは忙しそうだが、厨房の裏手にはたむろする子どもたちの姿がある。
きっとナターリエが手紙に書いていた子たちだ。マティアスは彼らに近づいた。
「やあ」
「あ・・・領主様・・・」
マティ

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【書評】三島由紀夫『豊饒の海』を読み、やっぱり天才なんだとさらに実感した。

【書評】三島由紀夫『豊饒の海』を読み、やっぱり天才なんだとさらに実感した。

ロッシーです。

三島由紀夫『豊饒の海』全4巻(新潮文庫)を完読しました。

「いや~読んだ~!」という感じです。精神が満腹状態です。

この記事を書く前から、「これは書評にならないな~」と自分で予想がついています(笑)。この大作をまだ消化しきれていませんし、そもそも私の拙い文学解釈力で消化できるとも思えません。

でも何か書きたい!書かずにはいられない!だからとにかく書きたいように書きます(笑)

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小説『洋介』プロローグ

小説『洋介』プロローグ

 帰り道。
落ちている石を、おもむろに宙に浮かせる少年。
背負うランドセルより高く石は浮かびあがり、そしてクルクルと回る。

 秋、夕日がかった河原、周りに人はいない。

 小さな田舎町。
ここではこの時間、人はめったに通らない。
少年はこぶし大の石を3メートルほども浮かせ、楽しそうだ。

 初めて石が浮いたのはちょうど一年前、少年は5年生だった。
少年の周りは静かに、赤と闇が交じっていた。

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月に彩られた君

月に彩られた君

「その美しさ。君は僕のお月様だ。物静かながら豊かな表情。多才で瀟洒な振る舞い。それにいつでも僕に寄り添ってくれて」

「当然です。貴方が見初めた私ですから」

「何よりこれだけ一緒に居て、全然裏が見えてこないミステリアスさ」

「それがサブスクリプションな関係というものではありませんか」

YA【その船をこいでいけ】(9月号)

YA【その船をこいでいけ】(9月号)

 夏休みが終わってから、もう二週間が過ぎた。

 九月も半ばだというのに、ばかみたいに暑い。月ノ島中学校の三年生、折田ノブは、照り付ける太陽光線から逃れられない。校庭のハンドボールコートのゴールの中にいる。同じく三年の近藤タツヒコの練習に突き合わされて、キーパーをしているのだ。

 三年生は夏休み前に部を引退した。
 今、二年生を中心としたハンドボール部は体育館のコートで練習をしている。ノブとタツ

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ビートルズ新曲「Now And Then」

ビートルズ新曲「Now And Then」

いつも「きみがくれた」をお読みいただきありがとうございます。
物語が長い分、長いお付き合いをしてくださっている方々もおられると思います。

「きみがくれた」のいくつかのシーンでビートルズの曲が登場しますが、今日このニュースを見た瞬間に、最終話のシーンで流したいと思いました。

この物語の最後にふさわしい名曲だと思います。

今読み進めてくださっている方々、そしてすでに最後までお読みくださった方々に

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嫁がパンケーキにいちごのポッキーを挿した。現代詩。

嫁がパンケーキにいちごのポッキーを挿した。現代詩。

さりげなく

なんか

さりげなく

パンケーキに

いちごのポッキーを

さす。

一本

2本

3本。

さす。

さす。

さす。

なんか

ラップを剥がします。

嫁はラップを剥がします

ぼくは

笑います。

なんとく
笑います。

嫁のために。
笑います。

ろく

ふだん

わらわないのに

よめのために。

笑います。

ほんとうに

なんで

わらってるのかな。

スティー

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【小説】 蒼(あお)〜彼女と描いた世界〜  第15話 

【小説】 蒼(あお)〜彼女と描いた世界〜  第15話 

第15話

それから四、五時間ほど歩き続けると、ウィリアムが言った。
「なんか、この地面グニャグニャしてないか?」
話しかけられたので、オリバーは答えた。
「地面? 何もさっきと変わらないけれど」
「ふふふ……」
ウィリアムが笑い出した。
「何だ、ここ。ぶふっっっ。くっくっくっっ」
笑っているのを見て、オリバーはすぐに幻覚を見ているのだと気がついた。
「おいおい、勘弁してくれ。二人も見きれない。僕

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『人魚とビスケット』 J・M・スコット

『人魚とビスケット』 J・M・スコット

開いた本のページから冒険の世界が、熱気を巻き起こしながら立ち上がり、読み手を引きずりこむ。そんなファンタジー映画のような現象を起こす小説だった。
ただしその冒険は輝くファンタジーからは程遠い、限界極限サバイバルである。

*****

冒頭は探偵小説のようだ。
人魚とは、ビスケットとは何者か。
語り手である作家が、その謎めいた新聞広告に興味を抱いて書き手とコンタクトを取り、ある過去の出来事を知るに

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『新しい扉』/オラオラするTシャツ手触り【#毎週ショートショートnote】

『新しい扉』/オラオラするTシャツ手触り【#毎週ショートショートnote】

※『軽いジャブ』/お題「イライラする挨拶代わり」で創作した
  ショートショートの【続編】としてもお楽しみいただけます

(もちろん、単体のショートショートとしてお読みいただいても可)

◆お題「イライラする挨拶代わり」で創作した410字のショートショート
 の記事はこちらです。↓ お時間があったら、ぜひ先にご一読ください。

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タワマン文学#11青山

タワマン文学#11青山

 煙草を吸い始めたのはいつからだっただろうか。6Fのこの部屋のベランダから青く光るスカイツリーは小指の先っぽくらいの大きさで見える。最後の一吸い、切れかけた蛍光灯のような音。くしゃくしゃのアルミホイルに短くなった煙草をおしつけた。

 7月になったばかりなのにひどく暑い。6月は梅雨、7月から徐々に暑くなってきて、8月上旬がピーク、それ以降は残暑で徐々に下がって行くという幼少期の記憶とは異なる天候に

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