往復書簡:ひびをおくるとは

本記事では写真家・鳥野みるめさんと、私、書肆 海と夕焼 店主の柳沼雄太がnoteのマガジンにて連載している「往復書簡:ひびをおくる」についての概要をお伝えします。初めてお読みいただける方も、途中からお読みいただいた方も改めて楽しんでいただきたいという思いのもと、筆を執りました。

1.往復書簡:ひびをおくる とは

 「往復書簡:ひびをおくる」は、写真家・鳥野みるめと書肆 海と夕焼 店主・柳沼雄太

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ありがとうございます!嬉しいです!
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小説に向かなそうなタイトルで小説を書いてみよう

こんばんは。じつは今日、ふと思い立って、夕方にツイッターで以下のような募集をしたのでした。

急募】即興企画で「小説に向かなそうなタイトル」を募集します。採用タイトルは1つ。#小説に向かなそうなタイトル、で呟いてください。採用ツイートのみRTします。夜の九時くらいまでで締め切り、そこから決めて12時までにnoteにアップします。

本当は2,3件集まればいいかなと思っていたのだけれど、思いのほかた

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絵描きと蚯蚓

十二月上旬のある夕方、精神科急性期病棟の回診を終えて疲れ切った私は、少し休ませてもらおうと、当直室に向かった。

 扉を開けると、猿のように皺だらけの顔をした男が、寝そべって何か本を読んでいた。私はちょっと驚いたが、すぐに慢性期病棟のアルバイト、霜村英治であることに気づいた。

「なんだ、霜村さん」
 私は疲れた軀を、霜村の傍に投げ出した。
「先生ですか、お疲れ様です」
 霜村は無愛想に言って、本

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ごろつき

鮭。酒。
 焼鮭を肴に酒はOne Cup OZEKI Jumbo300。身を総て食べ終わって残った、ぱりぱりに焼けた皮を大事に舐りながら私は、すいっ、すいっ。ipadを操作してtweetを眺めていた。
 相変わらず悪いニュースばかりが目に入ってくる。
 豪州では先日来の大規模な森林火災の復興も儘ならないまま、今度は深刻な豪雨災害に見舞われているらしい。
 豪州には昔馴染みの友人が住んでいる。
 私

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短篇小説「抱擁」④

「私は反対だね。死者のことをどう思うかは生きている者が勝手に決めればいいじゃない? なにもお父さんの半生を今さら探ることないと思うね」

 私がナオミの自宅で雨村治夫という男の人となりや、彼からの依頼について話すと、ナオミは煙草をすぱすぱと吐き出しながら言った。

「第一に、その雨男にはもう会わないほうがいいよ。今日も雨だし。そいつのせいかも」

 ナオミはまんざらジョークでもなさそうな様子で眉間

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短篇小説「抱擁」③

雨村治夫は私の知る男のなかでも最低の部類だった。喜怒哀楽の怒りばかりがたんこぶみたいに突出しており、不出来な阿修羅を思わせた。かつて娼館にいた頃に私をやたらぶった男がいたが、雨村なら私を殺す寸前まで痛めつけたにちがいない。この男はそういうタイプにみえた。

 彼は警官に「俺の娘を……ハルカを道連れにした男に家族はいるのかよ?」と尋ねた。警官は一瞬私の顔を見たが、沈黙を保った。私はすでにその時には父

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短篇小説「抱擁」②

話を父が船に乗って消えた日に戻そう。
 あれから私がどんなふうに過ごしたか。一人の人間の不在を補うことは罅割れた容器を修復するみたいに簡単にはいかない。私以上に大きく取り乱したのは母だった。母は一人で帰ってきた私を責めた。なぜ父を止めなかったのか、と。それから店長も私を責めた。明日から自分の代わりに馬車馬のように働く人間がいなくなったからだ。

 私の口からは甘いキャンディーの匂いがしていた。母は

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短篇小説「抱擁」①

仕事Aと仕事Bの切れ目なので、ちょっと今夜は気持ちを切り替えるためにぼんやりと手すさびに短篇を書いてみたい……と思ったのだが、何回かに分けますね。今日と明日で前半後半になるのか、3回、4回くらいに分けるのか不明ですが。タイトルは「抱擁」。ではでは。

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 雨の日に生まれた。誰に聞いたわけでもない。私がそう決めたのだ。名前のない街で、雑貨店の地下にあるソフ

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「みらい」

三ヶ月ぶりの婦人科で、青ざめたのが自分でも分かった。

「は〜い、今日はエコーと、癌検診ですね〜」

 エコーだけかと油断していた。否、それだけでも昨夜から緊張して身を固くしていたのだ。それが、もっと痛い、癌検診も今日だって?

「荷物を置いて、お隣の検査室にどうぞ」

 にこやかに告げる美人女医に逆らえるはずもなく、涙目で立ち上がった。エコーの冷たい器具も不快だが、癌検診は、擦り取られるから痛い

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今日も明日も良い日になりますように!
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ありがとうございますー!
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