本ノ猪

所属先に関係なく、学問する。 2022年1月1日から、隔日(午後8時)で書籍紹介を投稿しています(「本に向かって走り出す」)。 Twitter⇨https://mobile.twitter.com/honnoinosisi555

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    最近の記事

    付き合い

     私には「ぼくは一人でいるのが好きなので」とよく口にする後輩さんがいる。  彼とは、共通の友人を通じて知り合いになった。後に、この「共通の友人」とは関係が疎遠になるのだが、後輩さんとの付き合いは続くことになる。(私には、こういうことがよくある。) *  彼は時折、私を自宅に招いてくれる。それでいて、特段何かすることが決まっているわけではなく、珈琲を二人分準備して、黙々と本を読み始めることも多い。  読書後にやってくる、束の間の雑談タイムの際、彼はしばしば「ぼくは一人で

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      • 成長

         自分はそんなに変化を望んでいないのに、周囲の活発さに焦らされて、「私も新しいことを始めた方がいいのかな?」と不安になる。  この「周囲」は、SNSの登場によって、それが無かった時代よりも飛躍的に拡大された。自身とさして生活環境の変わらない人間が、自分よりも活躍しているのを目にして、焦る。場合によっては、それが妬み・嫉みに転化して、ネット上で罵詈雑言を飛ばすようになる。そして気がつけば、他人の成功を素直に喜べない人間になってしまう。 *  他者の目にも映り込むように、外向

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        • 好きな言葉

           作家・阿部昭の『新編 散文の基本』(中公文庫)という本に、「好きな言葉」という一篇が収録されている。  この中で著者は、冒頭に森鷗外の短篇『羽鳥千尋』の一節を引いて、言葉を好きになることの意味を説いていく。 「私は好きな詞がある。廃墟、暮春、春鳥、埃及、壁画、藝術、故郷、刀、革、甕、踏青、種を蒔く、その外イタリア、スパニアの地名、梵語、僧の名などである。私の妹は詞の好悪が一層強烈で、檞という一語に並ぶ好きな語はないといっている。」 (『たけくらべ・山椒大夫』講談社、P20

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          • 自炊と外食

             2021年に亡くなった山本文緒さんのエッセイ集『残されたつぶやき』(角川文庫)が刊行されていたので、手に取った。  山本さんは1962年生まれ。私の両親と同世代である。訃報のニュースを目にしたときは、自分の両親の死をも同時に想像して、暗い気持ちになった。 *  私の山本文緒作品の初読は、大学一回生の頃。幾つも講義が被っていて、話すようになった女性の友人に勧められ、読んだ。指定されたのは『恋愛中毒』(角川文庫)である。  高校生まで、読書とは無縁の生活を送っていた人間に

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          記事

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            自転車

             先日、久々にマイ自転車がパンクしたので、専門店に修理に出かける。  ここ一、二年の巣篭もり生活で、すっかり自転車に乗る頻度が少なくなった。以前は、頻繁に自転車を故障させ、「お兄ちゃん、乗り方が荒いよ」と、修理のおじちゃんに怒られることもしばしば。が、乗る回数自体が少なくなると、乗り方が荒い私でも、なかなか自転車を壊せなくなった(?)。 *  どこに行くにも自転車だった人間が、ここ数年ですっかり「散歩移動」にハマったのはどうしてだろう。  こんな問いが、ある本の読書中、

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            教科書

             私は中学生の頃、一部の同級生から「歴史王」と呼ばれていた。「王」の所以は、とにかく歴史科目の試験の点数が高かったからである。  いま思うと、何とも恥ずかしい「称号」だが、当時の私はそれなりに誇りを感じていた。  私の通っていた中学校には、平均点数97〜98点を叩き出す、秀才三人組がいて、毎回一位〜三位の座を独占していた。そんな中、彼らから唯一、一位の座をーーとはいっても歴史科目だけだがーー奪っていたのが、「歴史王」である私だった。  採点済みの答案用紙を受け取るとき、私の

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            好き嫌い

             人がある対象を「嫌い」になるとき、そこに明確な理由が存在する場合もあれば、イメージで「なんとなく」そう感じている場合もある。  後者の場合は厄介で、メディアの流す情報に触れて、知らぬ間に「嫌い」にさせられている可能性が高い。対象について何を知っているだろうと自問自答し、もし無知に近いのであれば、その負の感情は植え付けられたものであるかもしれない。  なんとなく嫌い、という感情は、対象のことをよく知ることによって改まる場合がある。もちろん知ったことで、明確な理由をもった「嫌

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            友だち

            「俺はあいつのことを友だちだと思ってるよ。向こうがどうかは知らないけど」  会話中、こんな言葉を耳にするたびに、「友だちってなんだろう?」と頭を傾げることがある。  SNSの普及によって、「つながり」を増やすことが容易になったことにより、何と表現するのが適切なのか不明瞭な人間関係が増えた。日々、お互いの投稿に「いいね」を付け合い、時々リプライを送ったりするが、直に話したことも、顔を合わせたこともない。  このような人間関係に「友だち」と名づけることには違和感を覚える。だが、

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            喫茶店

             休日の早朝。ポケットに小銭を数枚入れて、小袋(中身は文庫本)を手にして家を出る。向かう先は、喫茶店。目的は、モーニングである。  喫茶店には、行きつけの店が三店ほどある。基本はそれらの店を訪ね、時々気分転換に新規開拓をする。メニューもイマイチ、店主も無愛想、という残念な店にぶち当たることもあるが、これはこれで楽しんでもいる。 *  店主の無愛想さにも二種類ある、というのが私の持論だ。一つは、確かに表情はムスッとしているが、身のこなしには一切の無駄がない場合。もう一つは、

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            怒り出す本

             読書中。思うところがあって、本に話しかけることがある。  本の中の指摘に唸らされたときは、いったん本を閉じて、「そういう見方があったかー、やるなー」などと褒めながら、カバーを撫でる。  客観描写してみると、なかなか気持ち悪い光景だが、実際にしているときに違和感を覚えたことはない。  読んでいる本が古本のときは、つい前の持ち主について想像を巡らしてしまう。一度も頁を捲ることがないまま手放した人もいただろうし、私のように唸りながら読み耽った人もいただろう。  どのような持ち主

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            走馬灯

             私は布団に入ると、すぐに眠ってしまう体質で、不眠に悩まされたことがほとんどない。それでも、数ヶ月に一度、まったく眠れない日があって、そのときは自室の天井を凝視して、あれこれ考え事をする。  よく考えるのは、自分の「死」について。死んだらどうなるのだろうと素朴に想像して、火葬場で灰になって「無」になる瞬間をイメージする。これはなかなか恐ろしいもので、手のひらに爪を食い込ませ、その痛みで想像を中断させたこともあった。  また、死後だけでなく、死に際への関心も強い。  よく死に

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            アウトドア

             本や雑誌といった活字媒体は、総じて「内向的」なものと思われがちである。「読書」は基本的に一人でするものであるから、このような印象を持たれやすい。  だが、本や雑誌の中にも、読者を家の外に連れ出すことを目的とする、外向的な者たちも存在する。その代表例が「アウトドア本」である。 *  家で黙々と映画鑑賞、を趣味としていた友人から、「最近、ソロキャンプにハマっている」という話を聞いたのは、たしか2022年のはじめ頃。ソロキャンプに纏わる諸々(必需品、場所選定、レシピなど)が詳

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            読書感想文

             SNSを覗いていると、時々「読書感想文」がトレンドにあがってくることがある。  論調は全体的にネガティヴで、「読書感想文のせいで、本が嫌いになった」といった文章が並ぶ。  私自身、読書感想文について、いい印象を持ったことはない。学校の読書感想文には「コンクール」がつきものなわけだが、なぜ個人の感想に評価が下されるのか、納得がいかなった。求められているのは、純粋な感想ではなく、年齢に比べて幼くもなければ気取ってもいない、あくまで「年(学年)相応」の感想なのだろう、と断じていた

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            ニュースの見方

             先日、家庭教師の元生徒さんから、「無事に夏休みの宿題が終わりました」との報告があった。 正直、7月中に宿題との向き合い方を質問してきたくらいだから、何の心配もしていなかった。すぐに「おつかれさま」と返信する。  予想通り、宿題は8月半ばには終わらせていて、残った日数を全力で遊びの時間に使えたようだ。遊びの多くは、家族との外出で、海に行ったり山に行ったり、祭りにも出かけたらしい。一人暮らしの身からすると、何とも羨ましい日々である。  何回かやりとりを続けていると、「時間が

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            学校と独学

             「学生は勉強することが仕事」という言葉がある。私はこの言葉が苦手だった。  シンプルに「勉強しろ!」と言わず、「仕事」という「生活上、しなくてはならないもの」の代表格を持ってきて、勉強が「義務」であることを強調する。  言われるたびに、私は「勉強を義務にされてたまるか」と反発心を募らせていった。反発し続けることは、結果的に自分の首を絞めることになると知りつつである。  大学生になり、次第に勉強から義務感が薄れていくと、私はそれまで見せなかった積極性を、学ぶことに対して見せる

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            平穏

             10代の終わり頃。口癖になっていた言葉があった。  「自分のことで精一杯」である。  友人から「目つきが怖い」と言われるほど、バイトに明け暮れていた18、19歳の私は、どうすれば大学生活を成り立たせられるか、という一点だけを考え、日々を過ごしていた。そうなると、時事ニュースや社会問題を追う時間も元気もなく、時折、意識の高い友人から話を振られても、「自分のことで精一杯で……」といってお茶を濁した。  20歳になるかならないかの時期。私はこの言葉を口にしないよう心がけるよう

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