稲村恵子

妄想と現実の境界があいまいな物語をつつ”りたいと思って40年、いまだ夢醒めやらぬツ”カ…

稲村恵子

妄想と現実の境界があいまいな物語をつつ”りたいと思って40年、いまだ夢醒めやらぬツ”カオタです。イチ推しは、宙組のキキちゃん。宙組さんを応援しています。

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  • 中篇小説・長篇小説

    妄想と現実の境界があいまいな物語をつつ”りたいと思って40年、いまだ夢醒めやらぬツ”カオタです。イチ推しは、宙組のキキちゃん。宙組さんを応援しています。

最近の記事

修羅のなみだ【中篇小説】

離婚後、末期がんを患い、母親の自死と不運がつづき、自棄になり、マッチングアプリで知り合った肥満熟女と性的関係をもとうとするが、機能しない。絶望するが、熟女と同居することに。こしかた日々を悔やみ、せめて最期くらいは平安を得たいと願っている中年男の物語。        1 晩夏のひまわり  女は一糸まとわぬ恰好で片膝を立て、サチオのベッドを占領している。この女を花にたとえるなら、春の訪れを告げるタンポポではなく、夏の盛りを過ぎてもれんれんと咲く晩夏のひまわり。  色褪せた花び

    • 【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.35〈タカラヅカ〉

       雪組「ベルサイユのばら」。7月17日午後の公演を観劇。  とうとうサキちゃん(彩風咲奈様)も退団なのか。童顔なので、かわいらしい男役さんだと思って見ていました。身長が高く、手足が長くて、ダンスが上手なんだと思っていたら、いつの間にか、凛凛しい男役さんに成長していました。「るろうに剣心」で、斎藤一を演じたとき、エプロンステージで、刀を振るうサキちゃんを見て、「いつのまに」と驚きました。  順調に見えたトップまでの道程でしたがコロナ禍もあり、トップとして思う存分、舞台に立てな

      • 【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.34

         ご老公は失敗を繰り返す。なんでこうなるのか。ワカラン。「ボーイ・ミーツ・ミーツ」を、まとめて、マガジンにしておこうとすると、なぜか、NO.1を消してしまい、復元して再投稿することに。「南ユダ王国滅亡」のときも同じようにマガジンにしようとした。前回はNO.2を消して再投稿した。そうなると、一番、頭にきてしまう。スキを押してくださった方に心より、おわび申し上げます。この小説は新作ではありません。半年前に投稿されたものです。NO.2~NO.8は下のほうに埋まっています。  自分

        • ボーイ・ミーツ・ボーイ(1/8)

            1 星と空とはやっぱり星と空                  レールモントフ詩集より  綿菓子に似た雲が二つ、黄砂の入り交じった空に浮かんでいる。  おれ――南川俊夫は、駅のホームに立つと、改札口につづく階段を振り返る。 (ジュンのヤツ、ナニしてんねん!)  褐色の電車が左手からすべりこんでくる。  8時20分発だ。この電車をのがすと確実に遅刻する。 (見捨てていくぞぉ)  車両に乗りこみ、扉が閉まる瞬間、幼なじみの菅谷純一が、うしろの車両に駆けこんできた。  おれは

        修羅のなみだ【中篇小説】

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        • 中篇小説・長篇小説
          24本

        記事

          胞衣(えな) 【中篇小説】 

           娘の手を引き、精神病院への長い道程を歩いている。あの人に会うために――。   1  古都に不似合いな紙つぶてのような雪が降った日の朝、私はR病院の内科病棟にはじめて足を踏み入れた。つい昨日まで研修医だった私は指導教官から不手際を罵倒されつづけ、脳細胞は奇跡でも起きないかぎり活性化しない状態になっていた。  それでも未知の分野に対する意気込みだけは心身に満ちていた。しかし若いナースを従えて病室に入ると、病院特有の消毒液の臭いにまじって何か得体のしれないものが腐食したよう

          胞衣(えな) 【中篇小説】 

          【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.33

           脳腫瘍の手術を受けた60代の友人から携帯に連絡がきた。6月に入院し、手術をしたはずなのに、本人は、1月から入院しているという。医師に同行して各地の病院を転々としているとも。そして、「顔の下に新しい脳ができた」と言ったあと、突然、電話は切れた。  彼女が30代の頃に知り合い、私の教える場所にずっとついてきた。本人はほとんど書かないのに、三ノ宮の教室にも大学のゼミにも入り、文集をつくるときは、ほぼ1人でやってくれた。もうトシなので教室を閉じ、やめると言ったとき、毎月、勤労会館

          【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.33

          【短編小説】顔の下の新しい脳

            1  地下鉄の高速神戸駅から広い通りを2百メートルほど行くと、7階建のビルの真下にくる。  矢野鋼治(やのこうじ)の勤める会社はこのビルの5階のワンフロアを借りている。  ビルの管理人室で、鍵を借りる。  優里xHiroの「I’m a mess」を口ずさみながら、鋼治は誰も出社していないオフィスに足を踏み入れる。    血に濡れてるメッセージ    隠された口元じゃなにも言えないだろ  半袖のTシャツに七分袖のオフホワイトのシャツを重ね着し、モスグリーンのパンツで出

          【短編小説】顔の下の新しい脳

          【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.32〈タカラヅカ〉

           宙組公演「ル・グラン・エスカリエ」6月27日午後の部観劇。  試練は人を育てるのだと、宙組のショーを観て強く思った。逆風の中、舞台に立てなかった9カ月余り。一時も無駄にすることなく、精進していたことが如実にわかる宙組生の歌とダンス。なんども涙をぬぐった。キキちゃん(芹香斗亜様)を筆頭に、誰一人、一瞬の気のゆるみを見せない。みなの凛として立つ舞台姿にどれほど多くのタカラヅカファンが力づけられたことか、安堵したことか。  午後の公演にもかかわらず、満員の客席の熱気もスゴかった

          【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.32〈タカラヅカ〉

          【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.31

           子供の頃から、人間関係のスキルが機能しなかった私の学校生活は惨憺たるもの。規律を守れない私はどの教師にも嫌われる。そんな子どもは、周囲の子からも敬遠される。  学校でいちばん不思議だったのは、クラス替えになると、女の子たちはすぐに友達をつくり、次の学年になると、どこに行くのも一緒だった子同士が、よそよそしい態度になり、新しいクラスの子たちと友達になることでした。  どうしてそんなことが可能なのか?  いまも永遠の謎です。  小学三年の通信簿の所見欄に、「協調性に欠け、独裁

          【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.31

          玉ねぎボーイ【短篇小説】

              1            エリはタテのものをヨコにしない。見終えたDVDは、ところかまわず投げ捨てる、カップラーメンの汁は捨てず、飲みさしのコップはそのまま―ー。  親のしつけがなっていないと思った矢先に母親がやってきた。  スレンダーで小柄な娘とは似ても似つかぬポーク型のオバサンで、毛玉のよったセーターの胸を大威張りではって、ショット・ガンを乱射する速さでまくし立てる。 「嫁入り前のムスメですよ。それがどこの馬のホネともわからん学生と、あやしい仲やとでも隣近所の

          玉ねぎボーイ【短篇小説】

          【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.30

           とんでもない失敗をしました。ほとんどの方が興味のない拙い小説(No.1~9)を、「南ユダ王国の滅亡」と改題し、ひとまとめにして下段に押しやろうとしたところ、トップにきてしまいました。他の方のように、マガジンにしようと試みたのですが、ご老公の手に余ったようです。整理がつくどころか、現在下段にある元原稿のNo.1を消すと、まとめたほうのNo.1も消えるというサイアクの事態に。 「1が、消えてしもたで」と、のんびりと言われたとき、一瞬、めまいがしました。現代小説は比較的、早く書

          【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.30

          南ユダ王国の滅亡(1/9・3/9)共有分

          https://note.com/calm_godwit132/n/n8717f0fa8bda

          南ユダ王国の滅亡(1/9・3/9)共有分

          南ユダ王国の滅亡(2/9)

          2024年1月22日 15:05   6 1995.1.17  錐で刺されるような痛みを額に感じて目が覚めた。数秒後、ゴォーという大地をゆるがす不可思議な音が聞こえた。 激しい上下動で、ベッドから弾かれるようにして飛び起きた。 起きたというより、放り上げられた格好だ。 上下動が左右の揺れに変わった。立っていられない。 うずくまる。 バリバリと木材の折れる音が耳をつんざく。 部屋の中の物がつぎつぎ倒れてくる。恐怖で身動きできない。 これが地鳴りなのか。振動が止

          南ユダ王国の滅亡(2/9)

          南ユダ王国の滅亡 (1/9)

           1つの石が人手によらずに切り出されて、黄金の像の鉄と粘土との足を撃ち、これを砕きました。こうして鉄と、粘土と、精銅と、銀と、金とはみな共に砕けて、夏の打ち場のもみがらのようになり、風に吹き払われて、あとかたもなくなりました。ところがその像を撃った石は、大きな山となって全地に満ちました。  ダニエル書2章34~35節    1 秦野亜利寿   数Ⅰの授業中に事件は起きた。眠気を誘う暖房のせいで爆睡していたわたしの脳天に衝撃が走ったのだ。教師の鉄拳制裁だと勘違いした。  

          南ユダ王国の滅亡 (1/9)

          南ユダ王国の滅亡(3/9~9/9)

          南ユダ王国の滅亡(3/9~9/9)

          【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.29

           両性具有者=アンドロギュヌスの物語を書きたいと長年、思ってきました。しかし、どう書いても思うカタチにならない。  視点に問題があると、気づくのに時を要しました。  コメントを寄せてくださる方の中に、参考になるのではと、三田誠氏の「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」と虚淵玄氏の「フェイト・ゼロ」の二作を紹介してくださった方がいらしたのです。  虚淵氏の文体に驚愕しました。若い方が読むと知ってさらに驚きました。エンタメ小説は、読みやすくなければならないという思い込みを払拭す

          【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.29