稲村恵子

妄想と現実の境界があいまいな物語をつつ”りたいと思って40年、いまだ夢醒めやらぬツ”カ…

稲村恵子

妄想と現実の境界があいまいな物語をつつ”りたいと思って40年、いまだ夢醒めやらぬツ”カオタです。イチ推しは、宙組のキキちゃん。宙組さんを応援しています。

記事一覧

【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.25

 半世紀前、D・H・ロレンス作「チャタレイ夫人の恋人」の削除された箇所をどうしても読みたくて元町の〝丸善〟で原書を購入しました。  一語一語、辞書をひいたところ…

稲村恵子
1日前
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【小説】コーベ・イン・ブルー No.7(最終話)

   13  このビデオは、黄金の葉っぱどころではなく、大木の枝になると、海人は八田組長に言った。 「今頃、ナニ寝呆けたことゆーとんじゃ!」  山野辺は、いきなり…

稲村恵子
6日前
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【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.24

「コーベ・イン・ブルー」のハーフの女性、エミコはモデルがあります。  容姿にかぎったてのことですので、お間違えのないようにお願いいたします。  彼女のことは、「1…

稲村恵子
13日前
25

【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.23

 4月30日火曜日、午後の部。ヅカトモと三人で観劇。超イケメンのれいこちゃん(月城かなと様)までも退団とは!!  なんでみんな、やめてしまうのかな。  やめて欲し…

稲村恵子
13日前
13

【小説】コーベ・イン・ブルー No.6

  11  六甲おろしの吹き荒ぶ港に、春先の生温い浜風がまじり、潮の香りを夕暮れの岸壁に運ぶ。  季節の移り変わりが、人の心から警戒心をゆるめるのか、冒険好きな…

稲村恵子
2週間前
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【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.22

「こんどのは、エロ小説やから、載せるときに読まんといてな」と、晩ゴハンの支度をしている最中にご老公に告げると、顔色が変わる。 「そんなもん、なんで書くねん! 載…

稲村恵子
3週間前
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【小説】コーベ・イン・ブルー No.5

    9  冬の雨が軒先の路地を濡らす。閑古鳥の鳴くのカウンターの内と外。ノルマをこなせない営業マンの気分。マントバーニのムード・ミュージックが狭い店内に静か…

稲村恵子
3週間前
21

【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.21

 朝の三時に目が覚めて、ご老公が投稿してくれた小説をスマホで読み返すと、誤字脱字だらけ。  書き上がったときに三度も読み返したのに、なんでやねん。  もっともシ…

稲村恵子
1か月前
21

【小説】コーベ・イン・ブルー No.4

    8  柳沼深雪は私服に着替えると、服部海人の供述した店の住所にむかう。もしも、服部海人と出くわしても見破られない自信がある。小柄だし、化粧気はないし、目…

稲村恵子
1か月前
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【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.20

 ひと月ほど前から、腰痛に苦しむ福島県出身のご老公は、神戸在住の悪代官のババァの顔さえ見れば、黄門サマが印篭を見せつけるがごとく、「アンタのやかましい声が、骨に…

稲村恵子
1か月前
25

【小説】コーベ・イン・ブルー No.3

    7  港湾専用地区・ライナーバース・PL13。  海にせり出した埠頭の中ほどに建つ、上屋(貨物用倉庫)の二階にあるオフィスからは、ポートピア・ランドの大…

稲村恵子
1か月前
20

【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.19

 大勢の若い子たちと知り合う中で、婦人警官から女性刑事になった女子がいました。先に、お断わりしておきますが、人物設定で彼女と類似した点はまったくありませんと言え…

稲村恵子
1か月前
20

【小説】コーベ・イン・ブルー No.2

    4  午後五時半、すでに日は暮れている。  階下に二世帯、階上に二世帯。錆びた鉄の階段を見上げる。  笑い声や怒鳴り声にまじって、テレビの音や煮炊きをする…

稲村恵子
1か月前
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【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.18

 やはりnoteのAIサマのお気に入りリストには入れてもらえませんでした。この身を委ねようと、粉骨砕身しても、ルビさえまともに記入していただけず、なぜか、柳沼深…

稲村恵子
1か月前
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【小説】コーベ・イン・ブルー No.1

    1  寒風をまとい人ひとり通れる、急な階段を服部海人(はっとりかいと)は飛びこむように駈け降りる。がたぴしと鳴る木の扉をこじ開ける。一瞥で見渡せる穴ぐらに…

稲村恵子
1か月前
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【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.17

 noteをつかさどっているのは、目に見えないAIサマだと独断と偏見で判断しています。このAIサマは、認知症気味のバァさんの思い通りにならない。意のままにしたい…

稲村恵子
1か月前
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【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.25

【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.25

 半世紀前、D・H・ロレンス作「チャタレイ夫人の恋人」の削除された箇所をどうしても読みたくて元町の〝丸善〟で原書を購入しました。
 一語一語、辞書をひいたところで、私の拙い語学力では到底、理解できないとわかっていたのですが、三十六回もの裁判の末に、発禁処分をうけた問題の箇所には何が書かれているのか、何がなんでも知りたかったのです。

 アルファベットの行列を眺めるだけでいい、かならずや想像を絶する

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【小説】コーベ・イン・ブルー No.7(最終話)

【小説】コーベ・イン・ブルー No.7(最終話)

   13

 このビデオは、黄金の葉っぱどころではなく、大木の枝になると、海人は八田組長に言った。
「今頃、ナニ寝呆けたことゆーとんじゃ!」
 山野辺は、いきなり海人に殴りかかった。
 反撃の体勢をとる前に、手下の石垣が、海人をはがいじめにした。
 海人の顔面を、山野辺のこぶしが直撃。
 一瞬、目の前が真っ暗になる。
「クソガキが、思い知ったかッ」
 山野辺が吐き捨てると、石垣は海人の頭をドアに

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【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.24

【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.24

「コーベ・イン・ブルー」のハーフの女性、エミコはモデルがあります。
 容姿にかぎったてのことですので、お間違えのないようにお願いいたします。
 彼女のことは、「1995.1.17」のときのクォーターの美少女でも容姿を真似て描きました。
 ほとんど友達のいなかった私にとって、彼女は忘れようとしても忘れがたい少女でした。

 中学校の入学式の日、雨が降りました。
 団塊世代の私たちは、ひとクラス50人

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【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.23

【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.23

 4月30日火曜日、午後の部。ヅカトモと三人で観劇。超イケメンのれいこちゃん(月城かなと様)までも退団とは!!
 なんでみんな、やめてしまうのかな。
 やめて欲しくないと思うけど、それは観る側の勝手な想いなんだと思う。
 この子、歌うまいな、芝居もじょうずだな、どんどん輝きが増して、あんな役もこんな役も見てみたいと思っていると突然、退団発表になる。
 人生のつぎのステージに踏み出す時がきたと、本人

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【小説】コーベ・イン・ブルー No.6

【小説】コーベ・イン・ブルー No.6

  11

 六甲おろしの吹き荒ぶ港に、春先の生温い浜風がまじり、潮の香りを夕暮れの岸壁に運ぶ。
 季節の移り変わりが、人の心から警戒心をゆるめるのか、冒険好きな女の子らは、知り合った外国人の船に遊びにくる。
 二人以上のグループだと安全だ思いこみ、船内を案内してもらい、その国の料理までごちそうしてくれるので、たのしいひとときを過ごせると勘違いする。その場合もあるが、異なる場合もある。

 キヤッ

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【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.22

【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.22

「こんどのは、エロ小説やから、載せるときに読まんといてな」と、晩ゴハンの支度をしている最中にご老公に告げると、顔色が変わる。
「そんなもん、なんで書くねん! 載せへんからな」

 ご老公は常に、悪代官の補助係なので、次の料理に必要なフライパンをけんめいに洗っている最中。フライパンひとつでできる料理を二種類つくるとき、油で汚れたフライパンを洗い直さなければならない。洗い物は、ご老公の必須作業。

 

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【小説】コーベ・イン・ブルー No.5

【小説】コーベ・イン・ブルー No.5

    9

 冬の雨が軒先の路地を濡らす。閑古鳥の鳴くのカウンターの内と外。ノルマをこなせない営業マンの気分。マントバーニのムード・ミュージックが狭い店内に静かに流れる。
「こないだ手相、観てもろてン」
「何ンの寝言や」
 英美子と海人は馴れ合い話にふける。
「タマシイが若い! 言うてもろてン」
「脳ミソの聞き間違いやろ」
 紺地に波しぶきを散らした着物姿の英美子は、とろけるような顔でグラスを重

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【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.21

【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.21

 朝の三時に目が覚めて、ご老公が投稿してくれた小説をスマホで読み返すと、誤字脱字だらけ。

 書き上がったときに三度も読み返したのに、なんでやねん。

 もっともショックを受けたまちがいは、「美青年」と書くべきところが、「美声年」となっていたことです。ワープロで打つと、「美青年」は、「美声年」と変換されると、このトシまで知らなんだとは。
 つらつら思い返してみるに、美少年は書いても、成人の年齢に達

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【小説】コーベ・イン・ブルー No.4

【小説】コーベ・イン・ブルー No.4

    8

 柳沼深雪は私服に着替えると、服部海人の供述した店の住所にむかう。もしも、服部海人と出くわしても見破られない自信がある。小柄だし、化粧気はないし、目立つ言動は服部海人のいる前で極力しないようにした。
 ロングヘアのかつらを被り、濃い化粧をし、黒のストッキングに高いヒールを履き、毛皮のハーフコート。
 この出で立ちになれば、別人になる。

 人間とは不思議なもので、外見が変われば、内面

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【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.20

【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.20

 ひと月ほど前から、腰痛に苦しむ福島県出身のご老公は、神戸在住の悪代官のババァの顔さえ見れば、黄門サマが印篭を見せつけるがごとく、「アンタのやかましい声が、骨に沁みる」と、悪代官の声に災いが宿っているかのように脅す。「アタタタ……」という悲痛な呻き声も忘れない。
 しかし、スケさん、カクさんのいないご老公は、一人で三ノ宮の「安心クリニック」へ行き、痛み止めのブロック注射を打ってもらい、すこしラクに

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【小説】コーベ・イン・ブルー No.3

【小説】コーベ・イン・ブルー No.3

    7

 港湾専用地区・ライナーバース・PL13。
 海にせり出した埠頭の中ほどに建つ、上屋(貨物用倉庫)の二階にあるオフィスからは、ポートピア・ランドの大観覧車が視野に入る。
 海人は天井までとどくガラス窓に目を向ける。
 眩い。
 時間の停まったような陽のきらめきの下に、停滞した海が見晴らせる。
「数日間も、無断欠勤したあげくに、やっと出てきたと思ったら、警察の事情聴取を受けたですって―

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【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.19

【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.19

 大勢の若い子たちと知り合う中で、婦人警官から女性刑事になった女子がいました。先に、お断わりしておきますが、人物設定で彼女と類似した点はまったくありませんと言えば、ウソになります。
 背が高く、美人で、骨格がしっかりしていました。

 つたない私の小説に登場する警部補の女性刑事とはまったく異なる気質の女の子でした。
 気取らない性格で、だれとでも気軽に話していました。男っぽいわけでもなく、女らしい

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【小説】コーベ・イン・ブルー No.2

【小説】コーベ・イン・ブルー No.2

    4

 午後五時半、すでに日は暮れている。
 階下に二世帯、階上に二世帯。錆びた鉄の階段を見上げる。
 笑い声や怒鳴り声にまじって、テレビの音や煮炊きをする音が騒がしい。

 交番裏の公衆トイレと似通った悪臭が、路地奥に建つアパート周辺にも漂っている。水洗トイレ用の下水管が、いまだに布設されていない地区だと聞いていた。バキュームカーで汚物は吸い上げても、生活用排水はそのまま、溝に流れこんで

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【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.18

【エッセィ】蛙鳴雀躁 No.18

 やはりnoteのAIサマのお気に入りリストには入れてもらえませんでした。この身を委ねようと、粉骨砕身しても、ルビさえまともに記入していただけず、なぜか、柳沼深雪と書いて、夫にルビ(カタカナとひらかな)をふってもらうと、まるかっこの中に(やなぎぬまみゆき)となり、服部海人は(はっとりうみひと)に。
 正しくは、〝やぎぬまみゆき〟と〝はっとりかいと〟です。
 実は、ワープロであっても、私はルビが記入

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【小説】コーベ・イン・ブルー No.1

【小説】コーベ・イン・ブルー No.1

    1

 寒風をまとい人ひとり通れる、急な階段を服部海人(はっとりかいと)は飛びこむように駈け降りる。がたぴしと鳴る木の扉をこじ開ける。一瞥で見渡せる穴ぐらに近い店内。どきついスポットライトにおあつらえむきのダミ声が耳につく。カラオケマイクにかじりついたハゲ頭が目にとまる。

 派手派手しい着物姿の英美子が、ハゲ頭のわきにはべっている。リカちゃん人形と相似形の顔立ちに濃い化粧をほどこし、ひと

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【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.17

【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.17

 noteをつかさどっているのは、目に見えないAIサマだと独断と偏見で判断しています。このAIサマは、認知症気味のバァさんの思い通りにならない。意のままにしたいと思うほうが間違っているとわかっているのですが……。それでもなんとか、AIサマと折り合いをつけたいと悪戦苦闘したこの2カ月半。
 巻き添えをくらった夫は長時間、椅子に座りつづけた結果、ひどい腰痛に悩まされる異常事態に。
 男性にもヒステリー

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