お題「桃太郎のライバル」

昔々、あるところに桃之助という青年がおりました。

この青年の暮らす家にはそれはそれは大きく立派な桃の木があり、毎年たわわに実をつけると桃之助は人々にふるまってまわり、桃はまるまると肉厚で頬が落ちるほどに甘く、たいそう美味いと村では有名でありました。

ところが、桃之助の桃はいっとう美味いがゆえに、噂は悪さばかりする鬼たちのあいだにも聞き及び、慎ましやかに暮らす桃之助はいつも財産の代わりに手塩をか

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【グッドプラン・フロム・イメージスペース】 「『ヒキガエルよりマシでしょ』 作戦」 (No.0112)

昨日誕生日だったのに、ミントはガッカリとうなだれて空き地の土管に座っていました。
その姿を見つけた友達のミライは、心配になってミントに近づいてみると、彼は何やらヘンテコなたぬきのヌイグルミを持っていました。

「ミント、誕生日おめでとう。そのヌイグルミはひょっとして誕生日プレゼントで貰ったのかな?」
「ああミライ、全くそうだよ。」
「その調子だとそれは君が望んだものとは随分違ったみたいだね。」

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利益のために 嘘をつく のは 悪いこと ですね

ショートショート⑯地中海に浮かぶ国

親父とお袋を連れて、僕は遠く離れたヨーロッパの島国にやって来た。
関空からドバイで乗り継ぎ、マルタ国際空港に着くまでに要した時間は約20時間。しかし、マルタ共和国は日本よりも8時間遅いので、移動時間と体感時間がつり合わない。何だか不思議な気分だ。

空港には、誰でも自由に弾けるピアノが設置されてあった。

両親はもちろん、僕ももう若くない。長時間のフライトもあったし、まずは休みたかったのでバスに乗

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オブリガード
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田中目八

2018年より俳句雑誌『奎』同人。

第1回ビバ!ユキオ俳句賞BL部門『いやむしろつきあってない賞』

ぼくらの奈々が歓声賞『歓声賞★』

クリスタルレイ句賞【あなたの番です賞】

週間俳句 第657号 作品評『ツッパリ』

本分は主に即興を手段とした演奏家(別名義)。普段は早朝のパートタイム、昼からは引きこもり。タマに贅沢しての喫茶店、ではタマゴサンド。基本一日一食の味噌汁。着物を愉しむことも。

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三丁目歯科

給湯室に置いてあった誰かのヨーロッパ土産のクッキーをつまんだら歯の詰め物が取れてしまった。仕事はエンドレスでやってもやっても終わらないし、部の連中は使えないやつばっかり。よほどイライラしていたのか、普段はお土産の甘い物なんて口にしないのに、なぜかその日に限って手を伸ばしてしまった。ただでさえ忙しいのに詰め物が取れるなんて。怒りをぶつける先もなく、さらにイラついた。
見かねた後輩が会社の近くの歯科医

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EVERGREEN

まだぼくらが幼い頃、兄は草むらへ行くことを日課のようにしていた。学校から帰って来ると、ぼくらのために設えられた子ども部屋に荷物を放り込んで、一目散に草むらへと駆けて行った。晴れた日はもちろん、曇りの日にも、雨の日や雪の日でさえ。まるで、そここそが本当の住み処であるかのように。
 兄はその草むらを知り尽くしていた。どこに窪みがあるのか、倒木の来歴、ちょっとした木立の一本一本、そのうろの形状まで。そ

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弱虫モンブラン

久々にニコ動に行ってみたら、余りの過疎っぷりに驚いた。
 
大昔自分が投稿した曲はどうなってるかな…再生数1万と少し、マイリス500ちょい…大昔とそう変わらない。若気の至りで投稿し、唯一ニコニコで当たった曲。あの頃は、曲作りが楽しくて仕方がなかった。黒歴史だって、流れた時間が歴史を黒くするのであって、産声を上げた時は純白の歴史なのだ…勇気を振り絞り再生ボタンを押した。
 
イントロで停止した。今の

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感情の取捨

この惑星は争いで満ちている。もう何千年も前から争いが世界から消えた日は存在しない。指導者は口をそろえて「平和」というが誰も完璧に実現できるなんて思っていない。裁判所なんていかにも「平和」な顔をして人を言葉や文書で裁いているが、そもそも裁判所自体が争いの象徴みたいなものだ。だから人々はせめて自分の周りだけでも争いが起こらないように毎日神経をすり減らして暮らしている。だが確かに皆どこかで世界の平和を望

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「蚊」

大量の蚊に取り囲まれ身動きがとれない中、一匹のウェディングドレスを着た蚊が現れて、俺の胸をゆっくりと刺す。

ありがとうございます。とても励みになります。
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ブルシット小説劇場 第23話 「海の底で」

可愛い女の子を見つけると胸がドキドキするものだし、生きてる甲斐があったなぁと心底思うことになる。あまりに自分勝手。だけど、気持ちが先に加速してどこまでも行ってしまうもんだから、たとえ間違いであったとしてもそれはとっくに取り消し不可能な過ちとして認めていくしかない。それは私が、女の子が大好きな男として生まれたから。ただ、それだけ。
ということで私たちは人魚に導かれて海の底にある宮殿に招かれたというわ

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