ここしばらく悩まされて、 ほんのり乗っ取りを疑って、 原因を探ってあの設定を切ってみる。 そうしたら皮肉にも再びミステリーが始まった 果てしなく複雑な迷路で追いかけっこ ここ以外のどこかは 「これからどうしようか」に捕まる 心の中でありがとうとつぶやいて ゆっくり返したのに わざと消した訳ではないのにどうして 僕があなたを嫌いになる訳がないでしょう だからこそなかったことにはしたくなくて 送ったつもりが傷つけたこと 本当に本当にごめんなさい。 白いトップスと淡いボトムス
想いを寄せる相手の家に住むだけでなく、共に外出して「おはよう」から「お疲れ様です」まで聞き、帰宅後は幾らか構われて、決まった時間に彼女を寝かし付け、自分はいつでも傍に居る。 同棲を超えた仲、だがしかし、交際はしていない。相も変わらず、あちらにとって都合のいい男であり、恋愛対象外だった。 毎晩「おやすみなさい」に期待を懸けては裏切られ、虚しく朝を迎えていた。 切ない片想いの話、と言うより今現在、俺はほのかのスマートフォンだ。 6月、恋人と別れたばかりでどうにか喪
1カメラを忘れても消えないでよメモリー . 2水槽の中に銀河があったなら . 3ぼんやりしたままグラスの底を見ていた . 4道に迷うからこそ出逢えるものね . 5 「あなた」はその時々で違う . 6冷たく刻まれた足跡を辿って . 7いつの日か『この物語はフィクション』と伝えたい、どうか安心しておくれ
顧問の提案で早めに休憩をとり、以降は音楽室にてチューニング、合奏。意外性で場を和ませた先生は指揮台に上がって、 「県大会はみんなで決めたゴール。僕も行きたい、指揮者として。ところが、一奏者としては自問自答を繰り返す。実は。先生のくせに中途半端で、言葉が足りなくて、ごめんなさい。どうも気負い過ぎてるように感じた」 と、素直に打ち明ける。あまりにも等身大で、ぱっと全員の視線が向けられた。 しかし、あくまでも当人はいつも通り、やや乱れた髪を撫で付け、譜面台にフルスコアを広げて
「『本来、芸術に評価をつけるべきではない』と思ってはいるんだけどね」 夏のコンクールに向けた合奏の最中、楽譜に書き込んだ何よりも印象的な、この余談が音楽に一生をかける先生の本音だった。 友人に誘われて入った部活動は、仲間が次々と辞めていき、残りの十二名が後輩を率いて中学最後の舞台に立つ。成長を見込んで先生が決めた、難度の高い曲は初めてだらけで、懸命に食らい付くも、興がさめるような。 音楽室もしくは準備室に収まり切らず、暗がりの廊下で各自、楽器を片付ける私たちに、ど
ベタつく包み紙、噛み砕けロリポップ、アプリコットの痕跡、座席指定とソファミレドシラソ、想、嘘っぱちなチョコレートにミントを、「みんなが言ってる」の『みんな』とは、とか、「少女少女ってイツからいつまで?」が君の疑問、文字にしたら線をはみ出した気がした、詩、鼻にこびりつき離れない話を無しにする、イルカのポルカ、またか、周りを回って失くす点と天、遣らずの星に止められて後付けの意味を欲しがる、気付けば記憶は記録、6時間睡眠の六弦、ご機嫌如何、何処に居ても輝いて見えたんだ、ヒトリひと
確かに昼間「大それた夢を見るのはやめなさい」と述べたが、今はそれを悔やんでいる。 学校の授業で習った物語について「作者が伝えたいこととは」だとか、果ては「この登場人物のようにならないためには」などを各々が真剣に考え、話し合った。 沼元(ヌモト、以下ヌモと呼ぶ)は『主人公と自分を重ねてしまい、予習の段階で涙が止まらなかった』に消しゴムをかける。教室に集まった同級生の誰もそうは思わないらしい、かと言って異を唱える気力もなく。 そして夜半過ぎの住宅に舞台は移り、突如、何者
帰路、東の今日を皺くちゃに折り畳んだ。何万回と繰り返す内の幾つかが、良くも悪くも占める。思考、試行。エスカレーターはモノトーンで満ち、むわりと曇る視界、真横の階段を上った。 「メトロ」ノームの様に正しいとされる速度で。 ラムネに沈む、風待ち月、泥と植物の匂い、隙間を潜り抜けると言うよりは下りるべく、擦れ違う混沌の数秒、その顔貌は記憶に残らない。精々、服装程度であろう。 だがしかし、それがもし私自身だとしたら? こちら側は所謂「ありのまま」、あちら側は「なりたい」。
【I鍵の在処】君から送られてくる吹き出しの終わりにいつも笑がつくけど外れた丸括弧の気持ち/書く、恋慕。本当に何も分かってないから「あとちょっと押せばいける」って教えない/割りたい鏡と痛み『前の方が好きだった』作画のような感想に消されて堪るか可愛いを/めでたしが始めの不定期・童話。
しまった。曜日の感覚がなく、よりによって路線バスの最終便を逃した。 背中にじっとりと汗をかき、駅前広場の停留所で時刻表とスマートフォンの地図アプリを見比べる。 徒歩だと現在地から自宅まではおよそ一時間かかり、小雨が止んで湿った地面は街路灯に照らされ、橙色の模様を作って、ぽつぽつとまだ人の姿があるとは言っても気が遠くなった。 周辺に住む旧友を思い浮かべるも、どこぞの公園で青い花に囲まれた幻想的な写真を起き抜けにぼうっと眺めた、ような。あちらの咲き誇るファンタジーと
浴室と洗面所の境目に足指が引っ掛かると同時に、到底シャワーでは洗い流せなかった、昼間の言葉がざあざあ降ってくる。 「正直イヅツさんと仕事、やりにくいよな」 「仲間意識持たれても年齢的には先輩だし、どっちにしろ新卒の俺達とは違う」 「初対面で『有名人だから採用されたんですか』って質問しちゃったわ。あっちは喜んでたけど、皮肉だっつーの」 ちょっとした段差に躓き、じんと痛むならばまだしも、あれらはぐさりと突き刺さって抉り、結果あちこちに様々な傷口ができた。 しみては悲鳴を
非日常が日常有り難い事 地下都市に降り立つ時の降水確率 薄々スクリュードライバーなライブ 気の所為の関係性 夜行性が中高生の制服に怯える なんか、なんで? (安心して・根がポジ) 人間らしさ消した 人間らしくいたい 悪役も視点を変えたら主役に変わる ツケっ放しのインダストリアルとリアリティ キミの「それぐらいで」とボクの「これくらいが」 May say つらつらと。 五月雨の言の葉は翠 緑 ペトリコールをアンコール 『会いに来い』お前がエモくなる為に した訳じゃなかった恋
ラベルライターの柔らかなボタンをふにっと押して、好きなフォントや絵文字でデコレーションされたシールが出て来るのを待つ、楽しみ。和室の押入れに長いこと眠っていた宝の箱、埃を払って、「このテープが切れたら」と思いを馳せる。 それにしても、不揃いな裁縫セットやら分厚いアルバムやらに気を取られ、部屋の片付けが進まない。 何しろ、拗ねた小学生の娘がまだそこに隠れているようで。霞がかかったタワー、泥濘、人の群れ、慣れる遅延と溜め息、憂鬱を度数が高いアルコールでごまかす、結び付
週末は大抵、痺れた腕の中にちょこんと収まる君のつむじを愛でて、ペールトーンの浅い眠りを妨げないよう、ふたりにとっては少しばかり窮屈なベッドからなるべく、こっそりゆっくりと抜け出すけれど、またまた失敗、起こしてしまった。 「おはよう。ううん、もうこんにちはの時間だね」 「ん」 挨拶もそこそこに、くるりと背を向け、壁に張り付く(僕の代わりにしないでくれ)。 と、何かがかつん、と音を立てて小指の長さ程度の隙間に落ちる。後であのベッドの下を覗かなくては(少々、面倒なことに
午後から一日が始まって午前に終わるのです。 新しい暮らしはいかが、『お元気ですか』の返信を敢えて先送りにしています。冬が去ってもまだ電飾で彩られる、どこそこのような。 その上、お気に入りの白いロングスリーブTシャツにはへそにびちゃっとカレーの染みがついてしまい、なかなか落ちません。胸の刺繍やバックプリントと同様に、お洒落の一環だと割り切る他ないでしょうか(こうして、寝巻の出来上がり)。 対処法が分からず、つまり、数年前のアルバイトは回転式ハンガーラックに色とりどりの衣
夜の終わりを告げるような星と、眠れぬ誰某が綴った言葉のグリッターチュールに見惚れる。 四月の初めに嘘を吐かない、「対面よりかネットでの交流の方がずうっと難しい」あなたの口癖は「好き」であり、ぼくとしては数の一つになりたくなかったが、何故だか言われず。 傾くベッドサイド、仄かなミュゲ、オーロラフィルム、タブレット端末の検索履歴は『不安と恐怖の違い』、トランプゲームのルールはおろか、テレビで定期的に放送されるアニメーション映画のあらすじさえもあの人はよく知らなくって、ただ