彩生透

「アヤキ/トオル」です。 フィクションをあなたに届ける ただの音楽好き(投稿は少しずつ…

彩生透

「アヤキ/トオル」です。 フィクションをあなたに届ける ただの音楽好き(投稿は少しずつ)! 観る:聴く:読む:紡ぐ、もっと noteで多種多様な感性に触れたい。 無色透明の僕から極彩色へ__ 毎回、姿を変えるかも知れません。 やさしさにありがとう/それぞれのペースで

最近の記事

おくりものとらべる

 ラベルライターの柔らかなボタンをふにっと押して、好きなフォントや絵文字でデコレーションされたシールが出て来るのを待つ、楽しみ。和室の押入れに長いこと眠っていた宝の箱、埃を払って、「このテープが切れたら」と思いを馳せる。  それにしても、不揃いな裁縫セットやら分厚いアルバムやらに気を取られ、部屋の片付けが進まない。  何しろ、拗ねた小学生の娘がまだそこに隠れているようで。霞がかかったタワー、泥濘、人の群れ、慣れる遅延と溜め息、憂鬱を度数が高いアルコールでごまかす、結び付

    • マーブル模様の通い路

       週末は大抵、痺れた腕の中にちょこんと収まる君のつむじを愛でて、ペールトーンの浅い眠りを妨げないよう、ふたりにとっては少しばかり窮屈なベッドからなるべく、こっそりゆっくりと抜け出すけれど、またまた失敗、起こしてしまった。 「おはよう。ううん、もうこんにちはの時間だね」 「ん」  挨拶もそこそこに、くるりと背を向け、壁に張り付く(僕の代わりにしないでくれ)。  と、何かがかつん、と音を立てて小指の長さ程度の隙間に落ちる。後であのベッドの下を覗かなくては(少々、面倒なことに

      • いついつまでも続くイルミネーション

         午後から一日が始まって午前に終わるのです。  新しい暮らしはいかが、『お元気ですか』の返信を敢えて先送りにしています。冬が去ってもまだ電飾で彩られる、どこそこのような。  その上、お気に入りの白いロングスリーブTシャツにはへそにびちゃっとカレーの染みがついてしまい、なかなか落ちません。胸の刺繍やバックプリントと同様に、お洒落の一環だと割り切る他ないでしょうか(こうして、寝巻の出来上がり)。  対処法が分からず、つまり、数年前のアルバイトは回転式ハンガーラックに色とりどりの衣

        • ラブ・ストーリーが書けません

           夜の終わりを告げるような星と、眠れぬ誰某が綴った言葉のグリッターチュールに見惚れる。  四月の初めに嘘を吐かない、「対面よりかネットでの交流の方がずうっと難しい」あなたの口癖は「好き」であり、ぼくとしては数の一つになりたくなかったが、何故だか言われず。  傾くベッドサイド、仄かなミュゲ、オーロラフィルム、タブレット端末の検索履歴は『不安と恐怖の違い』、トランプゲームのルールはおろか、テレビで定期的に放送されるアニメーション映画のあらすじさえもあの人はよく知らなくって、ただ

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        マガジン

        • CHAMELEON
          63本
        • REMEMBER
          13本
        • SURRENDER
          206本
        • DESTRUCTION
          201本

        記事

          はるいろ空を舞う

             ベランダから敷布団が忽然と姿を消した。    店で最も安価でありながら、あれこれ加工された掘り出し物、サイズはセミダブル、三つ折り可、程よい厚み、空色のそれが、セットのカバーと枕を残して、たった一つ(大型)の布団ばさみごと、春風に攫われる。  休日の正午、四丁目マンション、窓辺にて。ふっくらと太陽の香りに包まれたかったUは、咄嗟に仕様もないギャグが頭に浮かび、慌てて見回す。エアコン室外機裏、両隣の仕切り、路地や、モダンなタイルが美しいエントランス前にどっしりと構えたゴ

          はるいろ空を舞う

          桜漬けの季節

          「高校生」の肩書きが無くなったら 身を焦がしたあなたに気持ちを伝えよう、と。 何が哀しいって言葉遊びみたいな三年間 結末に名前を呼び間違えられたことよ 表紙のつもりが教科書の一頁でお別れ 『あの人の代わりはいない』 『好きに変わりはない』 だけど、顔が思い出せないの オリジナルはとうに加工されていた。 《昼想:夜夢》 職種サジェスト『やめとけ』『きつい』 幸せを願われてばかりいる。 着こなすスーツ、継続購入した定期券 改札付近で名残惜しそうにする そこのふたりに本当の 「

          桜漬けの季節

          軽すぎる好きはかなた《2》シャボン玉

           どの道、余程「人生変わる」は私の方であった。天気予報が外れてもメグの大袈裟な予想は当たり、小雨の音に釣られてうつらうつら、左側の窓に視線を注ぐ。と、灰色の校庭は勿論のこと、何もかもが小型に見え、それらを自在に移動して満足のいく町を作る(夢路)。『僕は公園のすぐそばに住んでるよ』『うちと遠くないんだね』  メッセージこそ恋人宜しく盛んだが、猶もレオとは直接話せなかった。『多分みんながとやかく言う あと恥ずかしいから』に共感できてもクラス替えのカウントダウンが、そうだ、このよ

          軽すぎる好きはかなた《2》シャボン玉

          軽すぎる好きはかなた《1》紙飛行機

           ブレザーは別として、どうにも丸襟のブラウスとボウタイが似合わず、スカートではなくジャージを穿いていた。軽く整える筈が勢い余って切り過ぎた前髪は眉の上で額に張り付き、「個性的だね」と数秒、迷って気まずそうに目を逸らさないでくれ、ならばいっそのこと笑え、そして一刻も早く伸びろ。  制服を脱いだとて、年の離れた姉と母による「若いって」から始まるタイムスリップ、はたまた「今のうち」などの貴重な経験談を聞き流す。たとえ父が居てもテレビに夢中だ、打つ相槌のミス、酔っ払えばぐうぐうといび

          軽すぎる好きはかなた《1》紙飛行機

          三月{ }回と転

          連載終了からもうすぐ一年 いつもありがとうございます 新しい小説の執筆中です

          三月{ }回と転

          友達のバンドが売れてゆく

          「何度目のおめでとう?」「最終回まで序章」「まだ間に合うかな」「凡才で諦めの悪い天才がいたっていいでしょう」「ライブハウスで会う約束は信じられる」「這いつくばり、抗い、踠き、疼く」「だけどやっぱり好きが答え」「貫き通す『キャラクター』」「嫌われても見つかりたかった、無関心よりは」「慣れろよ--慣れるか」「オートロックだからあの日には帰らないよ」「下書きの文字を食べた」「ゲーム内のレベルだけが上がる、クリアできなかったのに」「強くなりたい口撃力は弱さ」「生活のため、いかにも

          友達のバンドが売れてゆく

          飴色℃

          雨戸が呼んでいる、あとちょっとを延長で三度寝、いっつもレモネードの季節、穿き替えたパジャマのようなワイドパンツ、スワイプ飽和I MYあまい独り歩きワード、真新しいホーム→ドア腿の上に乗車券、恋情映す特急の窓、隣は文学サイレンとモード、今日もランドマークは見えず折りたたみ傘の刺繍や水溜り少々、遊覧の続編・物語るメロディックドリーマー、「どうか、あなたはあなたのファンでいてね」

          214-(STARRY)

          214-(STARRY)

          花冠と#まろやか、な

          そういえば、矢淵(やふち)さんが作ったマカロニサラダには薄切りの玉葱が入っており、辛味を抜く一手間はかけず大雑把、たっぷりのマヨネーズで誤魔化そうとも目にしみるような感覚を、閑散としたスーパーマーケットで買う。  アルバイト帰りの閉店間際に青果売り場を素通りして半額のシールが貼られた弁当をレジに持って行く。馴染みの店員と客はどちらも疲れた表情、「来週は雪が降るらしい」? この話を耳にするのは何回目だろうか。嫌という程ダスティーカラーの夜風に背中を押される。  祝ってばかり

          花冠と#まろやか、な

          【何者化】週間-習慣-義務感-ギムレットなどと考えた頃、隣り合わせた『久しぶり』は大変身を遂げており、その昔読んだ小説と架空キャラクターの名前を挙げ、「見つけた」と語る。あれはロールモデル探しだったのか、彼女の口癖がぱっと浮かぶ。……もしや囚われ、到頭住み着いてしまった別人では?

          【何者化】週間-習慣-義務感-ギムレットなどと考えた頃、隣り合わせた『久しぶり』は大変身を遂げており、その昔読んだ小説と架空キャラクターの名前を挙げ、「見つけた」と語る。あれはロールモデル探しだったのか、彼女の口癖がぱっと浮かぶ。……もしや囚われ、到頭住み着いてしまった別人では?

          かわいい__ドルチェの想像摂取

          グルマン、寝香水のラストノートが−3℃に混ざり合った。枕元を照らす枯れない花と彫刻に一目惚れした写真立て、読み掛けの絵本が重なり、苦さを飛ばして深みだけ身に纏う甘美なデザートタイムは毎日のプロローグ、口当たりが良い夢でしか会えなかった人と恋をする。 もしも〈冷凍保存〉できるなら? 昨晩、卵液に漬けておいたフレンチトーストは心ここにあらずで焦げて、蜂蜜とシナモンが染み渡り、桃色は褪めた。お気に入りのマグカップにはフルーツが繊細なタッチで描かれており、ロマンを感じる。 ガラス

          かわいい__ドルチェの想像摂取

          この片想いが叶わなくても

          ふと、言葉は何になるのだろう、メランコリックな風ではためくカーテンと閉めた窓が連れて行った昨日限りのクラスメイト、ひとりふたり欠けたって同じ教室を変えたい、彼らはノイズキャンセリングで無関係、詰め込まれた時間割が仲良しごっこ、自己紹介の好きなバンドはさよならも言えずに活動休止、近くの学校がライブハウスより遥かに遠かった、少年は青春とやらをパンクで初めて知る、どす黒い影だけが伸びていく、そうやって「僕」を音楽として切り刻んで生活、(リ)メンバー、散る奏でる、この中途半端で嫌

          この片想いが叶わなくても