十五皐月

平穏な日々が好き。でもときどきビックリしたい。

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  • 【極超短編小説】鉄の塔の町

    鉄塔の立つ町。この町は『東』『西』『南』『北』の4つの町からできています。鉄塔は4つの町のちょうど真ん中に立っています。この町で暮らす人々のお話をまとめました。

  • 【短編連載】精と血

    不定期の更新となりますが、よろしければ寄ってってください。

  • 【短編小説】鉄塔の町:

    「鉄の塔の町」が舞台。記憶を失った青年を中心に物語が進んでいきます。

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改めてページのご紹介 2023.10.30

 改名って、なんか大袈裟ですけど  『さつきじゅうご』から『十五皐月』に改名しました。このほど。  「どうして改名?」ということですが、noteを始めるときに、やっつけで決めちゃったんですね。『さつきじゅうご』という名前は。  で、ちゃんと考えてみようと最近になって思い立ちまして、今回の改名に至ったわけです。  いろいろと考えました。ああでもない、こうでもないと。漢字、カタカナ、ひらがな、アルファベット、キリル文字(嘘)等々。  でもずっと使ってると愛着が湧いてまして。『さつ

    • 【極超短編小説】消化試合じゃない

       何となく点けていたリビングのテレビから、サッカー中継が流れている。この時期ともなれば消化試合の様相を呈しているが、その中でひとり気を吐く選手がいる。私のお気に入りの選手だ。彼はどんなゲームでも、いつも全力だ。そのプレーからは勝負よりもサッカーが好きでたまらないことが伝わってくる。  お気に入りの選手を見て、一瞬高揚したがすぐに現実に引き戻される。近頃、鬱々とした気分が日に日に増しているのだ。  私は夕飯の箸を止めた。  「ごちそうさま」  「あら、あなたもう終わり?美味しく

      • 【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る⑦

         二人の後を追って、僕は薄暗い通路を走った。楽屋で涙を流した彼女が脳裏に浮かんだ。  僕の前を走っていた二人が急に立ち止まった。僕も二人にぶつかりそうになりながら、なんとか足を止める。二人の肩越しに通路の先を覗く。そこには向かい合った男と女がいた。  男の方が頭一つ分背が高く、上から見下ろしている。女は睨めつけるように見上げている。  「いい加減、諦めて。何度も言ったはずだけど」  感情の入っていない冷静なその声は彼女だった。ステージでは歌で、楽屋では涙で感情をすべて吐き出

        • 【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る⑥

           彼女は涙を拭うと、自分の頬を両手のひらでパンと叩いた。  「ライブの打ち上げ、あなたも一緒にね」  そう言って彼女は笑顔を作った。  「えっ、僕も?」  関係者のパスを首からぶら下げてはいたが、僕はライブの裏方をやったわけでもないし、彼女のバンドとは何の関わりもない。場違いな感じがした。  「そうよ。当たり前じゃない。あなたはわたしの……」  「すみません。ちょっといいですか?」  彼女が言い終わらないうちに突然話しかけてきたのは、バンドのマネージャーの女の子だった。  彼

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        改めてページのご紹介 2023.10.30

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        • 【極超短編小説】鉄の塔の町
          110本
        • 【短編連載】精と血
          5本
        • 【短編小説】鉄塔の町:
          24本

        記事

          【極超短編小説】裏:喉に刺さった骨

           次が今日最後の患者だ。診察が終われば、久しぶりの休日で完全にオフの予定だ。そしてその前にはお楽しみが待っている。  今、看護師はこの診察室にいない。人手不足のため病棟へ手伝いに行かせた。僕は自ら最後の患者を診察室へ呼び入れた。  「先生、俺のこと覚えているかい?」  ひととおりの診察の終がわったあと、パソコンに向かってカルテを入力をしていると、椅子に座っている最後の患者に話しかけられた。  「ああ、覚えているさ。君じゃないかな、と思ってはいたよ」  彼のことはよく覚えてい

          【極超短編小説】裏:喉に刺さった骨

          【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る⑤

           立錐の余地がないほどの超満員にもかかわらず、ライブハウスの中はしんと静まり返っていた。オーディエンスは固唾をのんで待っている。エアコンが効かないほどのキャパオーバーの空間では、顎から滴る汗も床に落ちることなく熱気の中に溶け込む。  僕は入口近くの壁を背にしていた。ステージを正面に臨んで、ライブハウス全体を見渡せる場所だ。そして、このライブハウスの中で彼女から最も遠く離れた場所だった。  ハレーションを起こすほど真っ白で強烈な明かりがステージに降り立った。それと同時に、空気

          【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る⑤

          【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る④

           彼女はハイヒールを脱ぐと、運転席の後ろに放り込み、僕に助手席に座れと指さした。彼女の車は車高が低くてひどい乗り心地だった。道路の凸凹が直に体に伝わる。アクセルを吹かすとエンジンは唸り、同時に爆発するような排気音が耳をつんざく。  「この車……、凄いね」  僕は車の激しい動きに舌をか噛みそうになりながら、排気音に負けないよう大声を上げる。  「いい音でしょ」  そう言う彼女の横顔は嬉々としている。  二人を乗せた車は週末の賑やかな町を離れ、すれ違う対向車は次第に少なくなってい

          【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る④

          【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る③

           気がつくと、僕は彼女のすぐ目の前に立っていた。話しかけるでもなく、ただ彼女を見ていた。いや呆けたように、息を呑んで見惚れていた。  「もう、ここ飽きちゃった。わたし、もう行くわ」  「僕も一緒に行っていいかな?」  彼女が言い終わると同時に僕は即座に訪ねた。ただ彼女と一緒にいたかった。  「どうぞ、お好きに」  彼女は手に持ったグラスを近くのテーブルに置くと、出口に向かって身を翻す。ピンと伸びた背筋、体の動きに遅れてなびく青いドレス、ハイヒールの踵から真っすぐ伸びる緊張した

          【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る③

          【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る②

           藍色に近いてらてらした濃い青色のドレスは、背中と胸が大きく切れ込んで、行儀の良い上品なパーティードレスとは言えなかった。彼女はひときわ目を引いた。というより周りからは浮いていた。  どんな目的で誰が主催したのかさえ、そこに集まったほとんどの者たちが知らないような、そんなコンパで僕は彼女と出会った。洒落た店を貸し切った会場には人が溢れ、それなりに盛り上がっていたように思う。  その当時、僕は大学生でコンパや飲み会、イベントなんかにやたらと顔を出していた。もちろん声を掛けら

          【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る②

          【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る①

           深夜、彼女からの着信。  「今……鉄塔の下……これから北の峠に……」  彼女は風の中だった。好きでたまらなかったその声は、風切音とモザイクになっていて、今の僕には聞きづらい。  「それを言うために電話を?」  僕の言葉にはどんな感情が乗っていたのか?彼女は何を感じただろう?  「そうよね……そうだったわね……」  風の中に溶けてしまった彼女の思いは、僕には分からない。  「そうだよ、僕たちはもう別れたんだから」  そんなつもりはなかったけれど、諭すように事実を繰り繰り返して

          【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る①

          風邪 花粉症 同時に… で辛すぎ… 治ったら投稿します… 予定ですけど

          風邪 花粉症 同時に… で辛すぎ… 治ったら投稿します… 予定ですけど

          【極超短編小説】裏:バレリーナとライター

           ヘビースモーカーのオレは、ズボンの左ポケットにハイライトとオイルライターをいつも入れていた。しかし彼女の部屋に配達する日は、タバコは朝起きてから1本も吸わなかった。それに前日はニンニクの入ったものも食べなかった。他にも朝は必ずヒゲを念入りに剃ったし、爪もきちんと切って、爪の間に黒い汚れがないかも確かめた。配達のときに着ているユニフォームも前日に自分でアイロンをかけた。そして彼女の部屋に配達する日は、不思議と町の鉄塔がより高く見えた。 「いつもありがとうございます。すみませ

          【極超短編小説】裏:バレリーナとライター

          【極超短編小説】裏:序幕

          「『しばらくの間、お休みします』だって……」  ドア1枚を隔てて、外から若い女の寂しそうな声が聞こえた。どこかで聞いた声。  僕はその声を聞いて、ドアから離れて奥にいればよかったと思った。  昨夜、ベッドで毛布をかぶり、右半身を下にして横になり眠りについた。朝日から逃げる僕の前に、夜を纏った鉄塔が屹立する夢を見た。  夜中、少し汗ばんでぼんやりと目が覚めると、彼女が目の前に僕を見つめて横になっていた。彼女は僕の名前を呼び、涙を流した。その涙の意味は、あまりに多すぎて、僕はま

          【極超短編小説】裏:序幕

          【極超短編小説】裏:ガラスと短冊

           気づいてほしいと言っているようなキラキラした光。  見上げると、高層ビルのガラスに太陽の光が反射していた。その光は私の深いところにある、かさぶたに触れる感じがした。  「おっ、やっと来たな」  と言った声に、私は視線をビルのガラスから隣の夫へ向けた。その夫の表情と声には優しさと慈愛が満ちている。  私たちの娘が公園を横切ってこちらへ駆けてくる。春をまだ出し惜しみしたような日差しとは違って、娘はこぼれるように溢れでる若さにはまったく無頓着だ。私はその若さに純粋な羨ましさととも

          【極超短編小説】裏:ガラスと短冊

          【極超短編小説】裏:どこかの夜に

           「負けました。なんて絶対に言わない」  彼女は僕のベッドの中で言った。  僕はひんやりとした窓ガラスに頬を当てて、中空の夜空で明滅する鉄塔のオレンジ色のライトをぼんやり眺めていた。  そして押し殺したような彼女のすすり泣き。  僕はカーテンを引いてベッドに近づく。  「なーんてね」  と彼女は振り向いておどけるように言った。その口元はカーテンの隙間から射し込んだ夜の明かりに照らされていた。  「おやすみ」  と言って彼女は壁に向き直った。  僕が寝ているうちに、彼女は行っ

          【極超短編小説】裏:どこかの夜に

          【極超短編小説】裏:来世は

           岬の突端に立ち、彼方に望む夕日。  夕焼けは黄、オレンジ、ピンク、紫へと刻々と移ろい、その美しさに息を呑む。  子どもの頃、町の鉄塔を見上げていてふと思い立った。自転車で行けるところまで行ってみようと。そしてひたすらにペダルを漕いだ。気づけばこの岬にたどり着いていた。その時、初めて訪れたここで、あの夕日を見たのだ。  今、ここで眺める夕日は数十年前のあの時の夕日そのものだ。  学校を卒業して社会に出て、結婚し子どもを持った。機会があればこの岬を訪れて夕日を眺めた。1人の時

          【極超短編小説】裏:来世は