穂音(ほのん)

ちょっとおかしな世界を書きます。犬猫鴉の集う「ミズ・ミステリオーザ」、侘び寂びじんわり…

穂音(ほのん)

ちょっとおかしな世界を書きます。犬猫鴉の集う「ミズ・ミステリオーザ」、侘び寂びじんわり「長夜の長兵衛」など。 白いお犬はいつだって創作のヴィーナス。 オリジナル曲「夢の香り」「hermosa - a piece of harmony」各社より配信中

ウィジェット

マガジン

  • お犬まみれ

    うちのお犬についての親バカ的なアレです。 ヘッダー画像は橘鶫さんが描いてくださった白いお犬です。

  • ほのんのおと

    取り上げてくださってありがとう、心にグッときましたありがとう、のおと

  • 長夜の長兵衛 七十二候シリーズ <短編小説>

    長夜の長兵衛 二十四節気シリーズに続き、七十二候のシリーズです。 短編の連作です。読み切りですので、どこからでも、お読みいただけます。全部地の文で出来ているこの世界は、一体いつ、どこなのか、どうぞお好きなところへトリップしていただけましたら。

  • こびと図書館

    • 132本

    「見えなくてもいい、いまそこにいる。信じて感じるのだ!」をスローガンに活動するこびと部が運営する図書館です。 こびと部はゆっくりのんびり各自のびのびをモットーに活動しております。

  • 穂音のお好み焼きー掌編

    【短編小説】シリーズ化していない、独立した掌編を入れています。お好みのものがあったら嬉しいです。

  • 花びら道
  • moon river presented by …
  • ウミネコ制作委員会2024東京
  • かわらないきぼうのいろ みんながボーカリストバー…
  • I love us

最近の記事

  • 固定された記事

花畑お悩み相談所 プロローグ 

プロローグ  寝る前にスマホを見ないのは、良い眠りのためのお約束だそうだ。  そう言われましても。若い頃からずっと夜型で、寝室へ向かう前に最後のメールチェックをしてしまう。退職した今でも、その習慣は変わらない。富原律子は老眼鏡をかけると、スマホの画面をタップする。  深夜のリビングに、かすかな金属音が届く。家の前の空き地に、マンション建設が始まっていて、今夜は突貫で電気工事をすると知らされていた。  律子の耳からその音がすっ、と消えた。  息は小さく、浅くなり、自分でも手が

    • 長夜の長兵衛 玄鳥去 (つばめさる)

      蚊の名残  玉露の、ふわりと甘い香りが久兵衛の鼻腔をくすぐる。  幼馴染の金兵衛が招いてくれた。こうして汗を流すのも、残暑を過ごすには良かろうと思うてな。  縁側の向こうに流れゆく雲からはもう、入道雲のような猛々しさが消え失せ、空と曖昧に混じり合っておる。  こくのある味わいが喉元から胸へ腹へと広がり、久兵衛は目を閉じる。しばしののち、二口目。味が、変わる。  良い茶というものは、揺らぐものだな。  うむ、と金兵衛が茶碗を置く。茶托がわずかにかたん、と言うた。  遠くに舞

      • 昨夜も今夜も、帰りながらとてもきれいなお月様に会いました。おかげで長ーい会議にヤラレタあと、夜道で心和みました。 さ! 帰ったら月餅を食べて、長兵衛を推敲して投稿しなくては。本日投稿のものと合わせて、あと10話で七十二候が終了します。あともう少し、がんばれ、わたし。

        • +4

          三人でお風呂に入りました

        • 固定された記事

        花畑お悩み相談所 プロローグ 

        • 長夜の長兵衛 玄鳥去 (つばめさる)

        • 昨夜も今夜も、帰りながらとてもきれいなお月様に会いました。おかげで長ーい会議にヤラレタあと、夜道で心和みました。 さ! 帰ったら月餅を食べて、長兵衛を推敲して投稿しなくては。本日投稿のものと合わせて、あと10話で七十二候が終了します。あともう少し、がんばれ、わたし。

        • 三人でお風呂に入りました

          +3

        マガジン

        • お犬まみれ
          56本
        • ほのんのおと
          109本
        • 長夜の長兵衛 七十二候シリーズ <短編小説>
          62本
        • こびと図書館
          132本
        • 穂音のお好み焼きー掌編
          28本
        • 春ピリカグランプリ
          131本

        記事

          長夜の長兵衛 鶺鴒鳴(せきれいなく)

          恋教え鳥  小さな包みを手に、婆さまの家を訪ねる。手折られた露草の色が涼やかで、質素ながらも芯のとおった佇まいである。  若安兵衛さんからにございます。長兵衛は風呂敷をほどく。十五夜の折にはどうにも手が回らぬゆえ、本日お届けするのをお許しいただきたい、と。  滅相もない、ありがたいことで。むかしから、爺さまは安兵衛さんの菓子以外は食べませんでしたけん。婆さまは薯蕷饅頭を押し戴くように、仏壇へお供えされる。  暖簾を継がれても、味は変わりませぬか、と長兵衛。  あとは鶺鴒で

          長夜の長兵衛 鶺鴒鳴(せきれいなく)

          長夜の長兵衛 草露白 (くさのつゆしろし)

          白秋  竹林をゆくと、笹の声が聞こえてくる。そういえば風の音の話をしたことがあった。まだ夏の時分に、風鈴のもとで。  空は白みはじめ、緑の色が明るくなってくる。葉に置かれた露が転がり落ちる。歩きながら、銀兵衛は考えこむ。  風に姿かたちがあるとしたら、どのようなものだろうか。  背に追うた巻物が、かたかた、と鳴る。大家の金兵衛より和尚さんへの届け物である。余程、大切なものと見えて一巻ずつを自分と長兵衛に託された。半刻ほどずらして行くようにとも。  寺へ着くと、労いの言葉と共

          長夜の長兵衛 草露白 (くさのつゆしろし)

          甘噛み甘ごめ甘たまご #文学フリマ大阪12御礼

           このたびの文学フリマ大阪「ウミネコ製作委員会」無事出店完了しました。まことに有難う御座いました。  会場に足を運んでくださった皆様も、noteやXで声援くださった皆様も。  大阪の上空に集結しておられた「浮遊層」の皆様も。  隣接ブースを快諾してくださったつるる・とき子書店のお二方も。  番頭、心より御礼を申し上げます。  午前11時に、dekoさんと二人で出店者のステッカーを受け取ってから、あれよあれよという間に打ち上げを終えて、気がつけば終電に駆け込んでいるわたくし。

          甘噛み甘ごめ甘たまご #文学フリマ大阪12御礼

          長夜の長兵衛 禾乃登 (こくものすなわちみのる)

          鈴虫  拝啓 久兵衛どの  はじめて空を飛びました。  羽だけになったなら、世界はこんなに広かった。  ふらり、風にあおられたのを鳥が捕まえてくれたらしく。雲の濃いところと薄いところがつらつらと行き合い、地上よりずっと早くから秋の仕度がなされていると知りました。なんと浅はかであったことか、季節が来たとあなたに告げているのは、わたしだと思い込んでおったのです。  思い込みはよろしくありませんね。  あそこをたゆたうものも、雲だと決めずに五感を越えてみれば。あれは、気配を変え

          長夜の長兵衛 禾乃登 (こくものすなわちみのる)

          長夜の長兵衛 天地始粛 (てんちはじめてさむし)

          桃  銀兵衛は山へ柴刈りに。  まとめたものを背負い下ってゆくと、辻の地蔵さんが暑そうにしておられる。せめて埃だけでもと、腰の手拭いを外して払って差し上げる。    蜻蛉が日に日に赤くなる。  しゃがんで手拭いをゆすいでおると、川辺にもこうして秋が集うてくるのが見える。  おや。  上流からゆっくり、何かが流れてくるのである。目をこらすと、大ぶりな桃の実のようで。  ―どんぶらこ、どんぶらこ  錐の先のようなものが胸の奥に差し込まれてくるのはなぜか。  そうだ確かにそんなひ

          長夜の長兵衛 天地始粛 (てんちはじめてさむし)

          9からカウントダウン! #文学フリマ大阪12

           親愛なるみなさま!   ウミネコ制作委員会、番頭の穂音です。  文学フリマ大阪が近づいてきております。  今日からカウントダウンを始めますと、開催当日にぴったりなんでございます。9、8、7……0!    ウミネコ制作委員会、最大の特徴は、そのラインナップの幅広さ!  ヘッダ画像、もう一度ご覧になってくださいまし。  大勢のnoterさんが作家となり挿絵画家となって完成した 童話集  個性豊かな作家による物語が読める mini文庫  海外の風が吹く スケッチブック  ウミネコ

          9からカウントダウン! #文学フリマ大阪12

          長夜の長兵衛 綿柎開 (わたのはなしべひらく)

          秋の色  言いつかった用事に思いがけず手間どった。  長兵衛は早足で歩き出す。  しばらくいくうちに、一面の稲穂も、遠くの山の木々も茜色を映し始める。刻々と変わる眺めに心を寄せていると、己も同じに染まっていくようだ。秋の色が、そこはかとなく迫っている。昼間は暑さに紛れているが、こうして日暮れになると、ようわかる。  足元が見えにくく、歩みが緩くなってきた。宵闇が近い。そろそろ潮時であろう。  稲架小屋を背に、ごろりと横たわると長兵衛は目を閉じる。土熱れの名残がからだを包み込

          長夜の長兵衛 綿柎開 (わたのはなしべひらく)

          泥辺五郎さんの記事のおかげで、生成AIの使い方が劇的に改善されました! https://note.com/dorobe56/n/n3c9fd9185cb1 が、 雉はなんかムクドリみたいなのとピヨ子になっているし、桃は生のまま焼いてるし、まだまだなのでした。 またチャレンジしてみます。

          泥辺五郎さんの記事のおかげで、生成AIの使い方が劇的に改善されました! https://note.com/dorobe56/n/n3c9fd9185cb1 が、 雉はなんかムクドリみたいなのとピヨ子になっているし、桃は生のまま焼いてるし、まだまだなのでした。 またチャレンジしてみます。

          藤井風さんのライブ配信、誰でも見られるらしいと、ついさっき聞きました。 https://www.youtube.com/live/TELFpTs29Ag?si=VGTp0Hm5cXiyHfgp これ見ながら桃太郎読もうかしら!! 月曜4じまでアーカイブもあるらしいです

          藤井風さんのライブ配信、誰でも見られるらしいと、ついさっき聞きました。 https://www.youtube.com/live/TELFpTs29Ag?si=VGTp0Hm5cXiyHfgp これ見ながら桃太郎読もうかしら!! 月曜4じまでアーカイブもあるらしいです

          善良の果て #白4企画応募

           好奇心。  知的生命体にとって、不可欠なものではないか、とわたくしは思います。  五つの自由、ってご存知でしょうかしら。  好奇心を満たす、という正常な行動をできる生活。そのためにはどうしたら良いのか考えまして、わたくしは野良犬であることをやめ、人間の庇護下に入ろうと思いました。もちろん、お相手は善良であることが必須です。わたくしの選んだおじいさんは山へ柴刈りへ行き、おばあさんは川で洗濯をする、その程度には真っ当でした。  なにも贅沢な暮らしを求めておるわけではありません

          善良の果て #白4企画応募

          校長先生、のこと

           松岡正剛さんが逝かれた。  ガラン、と心の奥に音が響いた。  わたしはISIS編集学校の卒業生で、松岡さんは校長先生。  編集、というとつい本や雑誌のことを思い浮かべてしまうが、松岡さんの考える編集とは、もっと広い。情報の扱い方、そのものなのだと思う。  決して書き方の学校では、ない。  以前、したためた編集学校のこと。    世田谷の編集工学研究所にはものすごい量の蔵書がある。卒業で訪れた日に、福袋のように放出されたものを一袋求めて帰った。ガチの化学の教科書のような

          校長先生、のこと

          長夜の長兵衛 蒙霧升降 (ふかききりまとう)

          細小波  朝が早いと、もう、霧が出る。木々の息遣いと共にそこいらを漂っておる。  安兵衛の供をして、銀兵衛は峠のてっぺんにたつ。  このところ心が晴れぬ。何をしくじったわけでもないが、どうも調子が狂う。金兵衛の弟子が己ひとりであったなら、感ずることはなかった、些細な違和感。  もう一人の弟子、長兵衛の振る舞いが心から離れぬ。驚くほど、ものを識らぬかと思うと、たれも気付かぬところで心憎い働きを見せる。  わたしは、器が小さいのであろうか。  いにしえに霧の香という菓子があっ

          長夜の長兵衛 蒙霧升降 (ふかききりまとう)