だまし舟の折り紙 民話のレコード ここだけ、時間が止まっていた 古びた小物は 鈍い光を放つ 初詣に行こう 夜中に神社へ行く 面白そうだろう? 蕎麦を食べ終わり 実が唐突に言う 日が暮れはしゃぎながら歩く雪道 行列は階下まで続く お参りが済み 帰宅すると 一気に眠りに落ちた
写真の祖父とは よく目が合う 眠る時、起きた時 この八畳間に入ると 朴訥で穏やかな表情が こちらを見つめる 仏壇の下の和裁箱から 鋏を取るよう言われ 円はキヨに尋ねると 見たこともない丸い形 こう持つんだよ ちりがみの封を解き 一枚ずつ折りたたむ姿を ふしぎそうに見ていた
再び寝室の扉が開き 冷たい空気が居間を流れる ひゅっと身ぶるいをした 円(まどか)は、仏壇を見上げて 香炉の少し奥に 小鉢を置いた 手を合わせると爪の先だけが すっかり冷たい 妹と母はまだ寝息を立てている 窓辺に掛けられた 祖父の写真と 目が合い ふしぎな気持ちになった
朝日が一段と強く差し込む 瑞雲堂の箱に 新聞と虫めがね 赤青の鉛筆で線が引かれていた おはよう 鳥が来ているよ まどかを縁側に促し 団子を口に運ぶ はっと振り返り キヨと目が合う 「仏さまにあげてきてね」 キヨが渡した小鉢は温かく 団子のぬくもりを手にじわりと感じた