思春期にぜったい面倒な思いをしたくない。

出産を終えたばかりのとき、娘と息子の居る姉から1番に言われたのは、

「思春期大変だよ」

だった。

いや、まず出産が大変だったのを知ってるだろう姉よ…。

だが、確かにそのとき姪の思春期は大変そうだった。

私は腕のなかの赤子を、くわっと見つめた。

くそう。

めっためた抱きしめてやる。

見てろよ。お前が甘えたいかぎり、めっためたに抱きしめてやる。

そんで、無理なときな遠慮なく「むりー」

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祝福あれ!

カリムスメ

こうして手を繋いでいると、本当の娘のように思えてくる。

「ねえノゾミちゃんあれ買って」

おもちゃを指差す。

本当の娘ならわがままにねだるのを「ダメ」と叱りつけるのだろうけれど、私は可愛がるだけ可愛がる。

「いいよ。どれがいい?」

「んーと、ぜんぶ」

「ぜんぶかー。よしぜんぶ買っちゃおう」

「ノゾミちゃんありがとうー!大好き」

大好き、この言葉は今の私にはとっては何よりの薬だ。

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ありがとうございます^ ^

【短編】魔法のうた

マギーの顔は青ざめていた。というのも学期末に行われる、歌のテストが1週間後に迫っていたからだ。普段は燃えるように鮮やかな赤毛も、どことなく元気がない。
 歌なんて、大嫌いだ。音楽なんて、大嫌いだ。どうして人間は歌うんだろう。しかも楽しそうに。歌うなんて、ばかげている。歌わなくてもドラゴンなんて見たことないし、他の教科ができていれば村を出て働ける。彼女はため息をつきながら、一日を終えて学校を後にする

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山の日の温泉旅館

「ニコールそろそろ起きたかな。連休中は休みなしって行ってたな」
 西岡信二は、取材で那須高原の山の中にいた。これは信二が企画して出版社に提案したもの。那須高原の山の中にある、温泉地二ヶ所の体験取材であった。

 この日、朝一番の新幹線で東京から那須塩原駅に降り立ち、そこからレンタカーを使って移動。午前中のうちに最初の取材先である、北温泉の日帰り入浴を済ませる。「しかし、北温泉は良かった。露天もいい

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Cảm ơn bạn "Ski"「スキ」ありがとうございます
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Daydream

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講義の終わるチャイムが鳴った。理穂は机に突っ伏したままの顔を上げてハッとした。生徒たちが次々に席を立ち、教室から出て行った。そのとき、理穂は後ろから肩を叩かれた。驚いて振り返ると、友人の美香が立っていた。
「理穂、起きた?もう、講義中ずっと寝てるんだもん。」
―講義中…?私、いつから講義受けてたんだっけ…。
「理穂?寝ぼけてんの?」
「…ねえ、美香。私、今日いつから学校来てた?」
理穂が

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ありがとうです!!またお待ちしていますね。
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Daydream

—1—

その日は良く晴れた1日だった。
理穂はいつもと何も変わらない時間を過ごしていた。大学に行き、友達と話し、講義を受ける。不自然なことなんて何もなかった。今日は講義が終わったあと弘樹とふたりで映画を観にいく予定がある。とても楽しみにしていた理穂は、早く講義が終わらないかと時計をチラチラと気にしながら、熱っぽく話す教授の言葉をノートに書きとめていた。あと20分で講義が終わると思っていた、そのと

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ショートショート60 「悪魔の所業」

海に面してそびえる崖の上、眼下では剥き出しの岩に打ち寄せた激しい波が、白い飛沫を上げて砕け水面に幾ばくかの泡を作っては消えていく。

その光景を虚な瞳に映しつつ、一人の女が立っていた。背後には悪魔が直立不動の姿勢で腕組みをし佇む。

悪魔と言っても、風態は人間の男と見分けがつかない。女がそれを悪魔と認識したのは、本人がそう名乗ったこと…そして汗ばむこの季節に涼しい顔をして、長袖のジャケットに袖を通

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泣きそうです!
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《掌編》きっとみんな、「死にたい」「死にたくない」を繰り返している

文句と愚痴。家族の声が五月蝿い。
 我儘な音で、心が壊れそうになる頃――土曜の夕方は散歩に出る。

 6月。歩道の端のあちこちに、黄色い野生の菊芋の花が咲いている。いつもゆっくりと時間をかけて、自動販売機に向かう。

 その日。アスファルトに、「死にたい」と白いチョークで書かれていたのを見つけた。それは不思議と切実だった。何故か心に触れた。 

 しゃがんで、そこに転がっているチョークを拾い上げ、

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ありがとう( ˘ ³˘)♥

クリームパンの問い

『来ないはずの明日』→『食文化』→『リア充失敗』→『バーター』→『親愛なる、いちごジャムパン』→『被害妄想』→(本記事)

「『知らない』より『知っている』方が幸福なことって、なーんだ?」

 唐突に謎々じみた問いを投げられて、私は朝食兼昼食のクリームパンに齧り付こうと大口を開けた状態で一時停止した。私から先生へ質問する事は多々あるが、その逆は大変珍しいことである。況してや謎々なんて、珍事中の珍事

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ブロック塀 (ホラー掌編:2000字程度)

あらすじ……
 オ姉ちゃん……サヨウナラ……
 あの夏の日。
 ゆずくんとお別れをしました。©Fortuna 2020

 ゆずくんとお別れをした、あの夏の日のことです……。 
 
 こういう時世なので、目下のところ、自宅(母と暮らしています)で仕事をすることが多くなりました。
 午前はキッチンのテーブル。午後からは書斎で仕事をしています。私の場合ですが、一日中同じ場所にいるより、変えた方が飽きる

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