鳴いて泣いて凪いた先にあるもの

※この小説は、詩織さんの次の作品を受け継いだものとなります。従いまして先にそちらを読んだうえで、こちらを読むことをおすすめします。

本当は友人と南の島のビーチリゾートを楽しむはずだったのに、前日の夕方にに熱が出て友人が旅行をキャンセル。そのまま片手をもぎ取られたように淡々と飛行機に乗ってやってきたタイのプーケット。

本当なら今頃友人と楽しい時間を過ごしているはずなのに、ひとりさびしくビーチを眺

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Cảm ơn bạn "Ski"「スキ」ありがとうございます

【少年は予感する】

少年は目を開いたと同時に、何かが違うとすぐに気づくことができた。見慣れた街並みではある。だがどこか違う。車道を行きかう無人タクシーの列、ドローンが上空を埋め尽くし、すれ違う人々はみなオシャレなマスクをしている。きっと街中に設置された監視カメラの解析を拒んでいるのだ。道行く人々の足元には矢印が浮かび、道案内をしているようだった。

 同じ街並みだが、同じ時代ではない。

 時間を跳躍してしまったよう

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あざます!!
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川を渡る人々

あー、どうも、こんにちは。ヤギです。今日もね、ヤギらしくメーメー鳴いてるわけですけれども。
 今日はですね、旅の途中なんです。あ、ひとりじゃないんですよ。商人さんに連れられて来てまして。簡単に言うと、商品なんです、私。今から売られに行くわけなんですよ。
 あと、連れが他にもいまして。まず、オオカミ。見るからに凶暴そうで、さっきから生きた心地がしないんですが。それから、キャベツ。これがまた美味しそう

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We Will Rock You

……いやー。しかし、錚々(そうそう)たる顔ぶれだよね。まさにオールスター勢揃い。世界中から厳選されたメンバーが一堂に会してるだけでも贅沢なのに、次から次へと私に向けて渾身の芸を披露しているこの状況、かなりいい気分。こんな機会はなかなか無いよね。

 でもね。唯一かつ致命的な問題点としては、会場が真っ暗ってことなんだよね。基本、見えない。何かを全力でやってるんだろうってのは伝わってくるんだけど、なん

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【短編小説】柘榴とショコラ

これまでの【短編小説】柘榴シリーズはこちらのマガジンから

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1月は試験に追われているうちに、あっという間に過ぎていった。
そしてわたしは2月から新しくバイトを始めることにした。
場所は、いつか彼と偶然会ったあのバーだ。
仕事は主に洗い物と雑用。
接客をすることはほとんどないので、人見知りのわたしでも十分やっていけ

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Gracias!!!(スペイン語でありがとう)
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プラネタリウムのあるホテル(掌編小説)

慰謝料の50万円が用意できたからとりにきてほしい、と電話の向こう側でサクラは言った。

 落ち着いた、少し小さな声だったが、耳をかたむけていつまでも聴いていたくなるような素敵な声だった。サクラの声をちゃんと聞くために、私はテレビのスイッチを切り、電気ケトルがお湯を沸かす時に鳴らすポコポコという音を止めた。

 夫の浮気相手から電話がかかってきているのだからもっと動揺するべきだ、あるいはもっと怒るべ

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ウレピヨ🐣
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手に入れた宝物

彼らが私の家にやってきたのは、ようやく手に入れた薬を眠ったままの妻にどうにか飲ませることができた、その直後だった。間に合った。

 彼らは薬の持ち主だと名乗り、私に盗んだ薬を返すように言ったが、もちろんそんなものは既にない。

 どんな罰でも受けると言う私に、彼らは困ったような顔を見せた。確かにタイムマシンで未来に行って、この時代には無い薬を盗んだのは私だ。それは未来において重罪で、それを他人に飲

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全然うれしくなんかないんだからね!(〃▽〃)ポッ
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「ボール」

「なぁ、お前が持ってきたボール、蹴るたび足首に髭が当たってちくちくするんだけど」「まぁ、あくまでボールのかわりだからね、それ」

ありがとうございます。とても励みになります。
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なぞかけ師匠

どれどれ、暇つぶしに私の下積み時代の話でも聞いていきませんか?昔話は退屈ですって?な~に、そんなに長い話じゃありません。
 今はこうして一人前に小説を書いている私ですが、若かりし頃は師匠を付けてもらって、いろいろとアドバイスをもらっていたんです。
 それは、初めて師匠にアドバイスをいただいた日。自分の書いた作品を、他人に見せるのが初めてで、それでもって先輩の作家さんに見せるというのだから、緊張しな

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今日はいいことあるかもしれませんね。
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約250年終身雇用を貫いた江戸幕府の倒壊後、武士達はどのように新時代を生きたか調べた ー拙者は語るー

■ 武士は西葛西にいた ー約250年間終身雇用を貫いた江戸幕府の元社員ー

その時、私は西葛西駅前のドトールにいた。

PCの充電を気にしながら「2020年代の働き方」について文字を手繰っていると、私の画面を覗き込んだ男性が「俺は超優良企業の終身雇用だったんだよ」と、ぶっきらぼうに話しかけてきたのだ。私は瞬間的に警戒した。

男はしわは目立つが、目鼻立ちも整っており、白髪交じりの七三が整えられ品が

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ありがとうございます
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