[掌編小説]テキサス・キャノン・ボール

近所のコンビニを右に曲がって、暫く真っ直ぐ行くと、10畳程の小さなコインランドリーが見えて来る。
その隣に、同じ位小さな蕎麦屋がある。
2人掛けのテーブルが4つあり、入り口には5.6冊の新聞や雑誌がブックスタンドに並んでいて、厨房には棒切れみたいな腕の大将が、何時も寸胴鍋をかき混ぜている。
メニューは掛け蕎麦、盛り蕎麦の2種類のみと少ないが、喉越しは格別だ。どれだけ口に詰め込んでも、喉が蕎麦に合わ

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世の中の、空模様(5/26)

世の中に漂う人のココロを、

Aymieが感じるコーナーです。

ピンときたら採用だし、

こなかったらスルーしてくださいね。

****

金曜日の夜くらいから漂う、

鉛のようなおもさ。

濡れたシャツが肌に貼りつき、

重くなったジーンズを着ているような。

私の心の、

一番弱いところを引っ張って、

いっしょに落ちていこうとする力。

ときどき、

梅雨の間の晴れ間みたいなものに

なん

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スキ、うれしいです!
10

終着点は、出発点である

高校の卒業式、高橋は語る。
 
「香川…実は、隠してたことがあるんだけど」
「なに?」
「私、彼氏いるんだ」
 
まじかぁ、『ブタゴリラ』があだ名の高橋に彼氏か…結構衝撃だった。
 
「誰?私の知ってる人?」
「あの、ほら。『残響六ロール君』彼」
「まじかぁ」
 
その変な名前の彼は以前昼休みの校内放送にいきがった手紙とハードロックな選曲を送り、放送部内で話題になった年下の根暗少年だった。高橋が後

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ショートショート『人間臭い』

【親睦会】
女A 「いつもスマートな課長が酔いつぶれてトイレで寝てるわよ」
女B 「人間臭いわ、ステキ♡」

【会社】
男C 「いつもクールな部長がこないだのコンペで負けた後、屋上で泣いてたらしいぜ」
男D 「ふうん、部長にも人間臭いところがあるんだなあ」

【粗相】
男E 「こないだちょっとおしっこもらしちゃってさあ」
女F 「人間臭いわ、ステキ♡」

【俳優】
男G 「俺、外国の俳優みたいにな

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ありがとうございます!!!
5

許す強さ

ガシャーン。

リビングの方でものすごい音がした。

音がした方を見ると、どうやら長男(3歳6か月)が食事中に皿をひっくり返してしまったようだ。

彼はだんだんと涙目になっていった。

わざとやってしまったわけではないことは、すぐに分かった。

台所で洗い物をしていた妻が、「もう、何やってんの…!」

と声を荒げて長男のもとへ駆け寄ろうとした。

僕がやるから、といい皿を拾う。

「大丈夫?どこか

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ショートショート『正義の人』



 彼は、正義の人だった。
 間違っていることは自分が正さねばならないと信じていた。
 たとえば街中で信号無視を発見すれば叱りつけ、エスカレータでは中央に立ち、歩く者を阻止した。
 たとえば友人たちが陰口や愚痴を言えば怒鳴りつけた。メールを返信してこない知人にはなぜ無視するのかとしつこく迫った。
 友人知人たちはなるべく彼から距離を置いた。正しいことを行なっているのになぜ自分を避けるのかと彼は

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花粉症の人は、鼻の入り口に「ワセリン」を塗りましょう。
7

◆ 咲かぬなら...◆

お買い物の時、ユリの花をみつけてから、
絶やさす花瓶に補充して、愉しむようになった。
毎朝の水替えと、花粉取りを日課にしている。

ユリ一辺倒の生活を1ヶ月。
一本の茎に、6個の花弁が着いたものを選ぶ。
そう、私は欲張り派です。

明日咲くかなと観察日記をつけるように、眺める時間も愉しい。

茎の先端の方の花弁が折れてしまった。

可哀想に。この花は咲くのかな。
小さな瓶に移してあげた。
今日は咲

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1

恐怖は無知を媒介する

内海くんとの文通は同じ大学に通っても続いていた。入学して半年経ったが、未だに内海くんの家に遊びに行ったことは無い。というか、2人でどこかに遊びに行ったことすら一度もない。
 
私は勇気を出して手紙に書いた。『ps.内海くん、たまには私と何処かに遊びに行ってみるのはどうだろう?』返事は一週間後に来た。『次の日曜日、高円寺改札前、十五時に』手紙を読んだ私はリアルに「うひょ~!」と言った。後にも先にもそ

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アイトハ

「愛することって、時にとてもつらいじゃないですか。」

「君はそう思うのかね。」

「ええ。忍耐強くないと愛はできません。」

「ほう。」

「愛さない事の方が、圧倒的に楽です。」

「でも君は愛することが好きだろう。」

「好きというより、愛さずにはいられないんだと思います。」

「愛とは何だろう。」

「受け入れることでしょうか?」

「または、理解することか。」

「相手を信じることもあるか

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