お題

#ほろ酔い文学

お酒をテーマにした小説やマンガなどの、創作作品を投稿してください!

人気の記事一覧

♡今日のひと言♡エラ・ウィーラー・ウィルコックス(改訂)

エラ・ ウィーラー・ウィルコックス(1850-1919~アメリカ・作家、詩人) 平明な文章で韻を踏ませた、軽快で楽観的な表現・作風で知られている。代表作は“Poems of Passion”(情熱の詩~19 c 末頃)や“Solitude”(孤独~1883)など。

♡今日のひと言(短歌)♡穂村弘②

穂村弘(1962‐ 北海道〜歌人、詩人、批評家、翻訳家) 1990年、『シンジケート』で角川短歌賞の次点となり、デビューした(俵万智『サラダ記念日』が同年の受賞)。以降、現代短歌を代表する歌人として評論、エッセイ、絵本など幅広く活躍。『短歌の友人』(2007)で第19回伊藤整文学賞、連作「楽しい一日」で第44回短歌研究賞、『鳥肌が』(2007)で第33回講談社エッセイ賞、『水中翼船炎上中』(2018)で第23回若山牧水賞を受賞。歌集に『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』(

つぶやき~あなたへこんな夜は~

酷暑の忘れ物の飴ひとつ バリのお土産キャンデー入れに残ってた 元職場の若いこがくれた飴入れ 少し生成りの陶器 熱中症対策で重宝したな でも 甘いもん好きの孫くんには 不評で残ってった たった ひとつ その飴はブルーの洋服をまとい 芯はお砂糖でおめかし 甘酸っぱい味なの その飴 ひとつ カップに入れて 緑茶を注ぎ 30ccくらいの黒霧島を注ぐ 吞み始めは 少し苦く そのあと ほわっとしあわせで 最後に 甘ーいあの一粒の味がする 生きてるって いろんなことあるよね でも

おまえ

眠れない夜 新聞配達のバイクが一瞬窓を照らして 逃げていく 枕元の時計の蛍光素材の針… あと2時間はうとうとできるのにと 遠ざかるバイク音を うとましく 思う…… ごそごそと起きだす布団 しばらくシーンとしたあと その息は廊下歩く音に変わっている  隣の部屋に小さな明かり…   髪をとかしてパチンとくくる気配… ピッピッピッと洗濯機をセットする音 あと追うように短いメロディ ワンテンポ遅れてホースに水が流れだす 今日の洗剤はどっちだろう  さっきの電子音が どのコースのもの

牧田オサム 五十二歳の立ち位置

#短編小説 #イヤミス #読書好 #眠れない夜のために 

シーズンも私の恋愛も終了

ひっそりとやっているXの趣味垢があって。そこに突然メッセージが送られてきて。そこから毎日のようにメッセージのやり取りが始まった春先。 野球観戦できるお友達がいなかったから野球一緒に観に行けたら楽しいな嬉しいなって思ったら、彼がたくさん試合誘ってくれて意を決して野球観戦に行くことに。 その前に1回会うことになって、4月は毎週のように会っていて。そこからどんどん毎週会う約束ができて、毎日過ごすのが本当に楽しくて。『楽しい時間は溶けちゃいますね!』なんて話しをしていたのに今はそ

サラサマルチを卒業しました

 ボールペンは、サラサ1択です。  仕事場で使って、書き心地に感動してから20年。色の鮮やかさもお気に入りです。プライベートでも、黒と赤のサラサクリップと、替芯をストックしています。それにしてもボールペンって、いつも置く場所を決めているのに、何で気づくとなくなっているのでしょう。  携帯用は、サラサマルチでした。多機能ボールペンです。黒は必須。シャープは手帳を書くときに。予定は変更になるので、消せないといけません。休みの日は赤でマル。緑は、あると何かと便利。そして、青はス

あなた

「お行儀悪いですよ…」 ほんの少しだけ怒った声 盆に倒された徳利を立てながら 片方の手で すすめ肴が出される いつものことと呆れた顔に 小さな笑いがにじむ    うなじには後れ毛… 台所仕事に うっすら汗ばんでいるのが見てとれる  炭で あぶって出された椎茸も 湯気あげて汗ばんでいる 山から訪れた客からの手土産 家主の一言で急遽七輪を出した細君 せっかくの旬を台無しにしてはならないと緊張の面持ち…  いや主に恥をかかせてはならないという妻としてのプライド… 「さっきの酒

晩酌の流儀(#シロクマ文芸部)

 金色に輝くグラスタンブラーを手に入れた。  日頃は家飲みをする方ではないが、匠が手掛けた逸品を手に入れたのだ。  これはバッカス神に献杯をしなければなるまい。 「まずは日本酒にしますか?」  妻がふざけた口振りでいつも晩酌を促す。 「そうだな、では獺祭をいただこうか」  獺祭とは山口県の銘酒だ。主原料は山田錦。アルコール度数は16%と程よく楽しませてくれそうだ。  最近では海外での日本酒ブームの煽りを受けすっかり高級酒になってしまった。  ひと口飲んでみる。なめらかな口当た

君から受け取ったメッセージ 一度瞳を閉じる 身体に流れてくる心地よい風 その風を全身で受け止め そして大きく吸い込む ゆっくりと瞳を開く 目の前には澄み切った空が広がる 視界は良好なことに気づく よし、いける 進むべき道は開かれている 目指すべき地へ、一歩先へ進め

126回目のYouTube配信は『秋灯り』という短歌を朗読いたしました✨ https://youtube.com/shorts/JxoJZ0HEGyM?si=t8XyGO6BlV5RvQWn

【ミステリー小説】腐心(12)

▶第1話は、こちらから。 ▶前話は、こちらから。  給湯室で気の抜けたあくびをしながら、香山はインスタントコーヒーの瓶の蓋をあけた。底にわずかに茶色い粉がこびりついているだけだ。くそっ、泥水みたいに濃いコーヒーが飲みたかったのに。ニコチンにしとくか、と胸ポケットに手を伸ばしかけると、 「私が淹れましょうか、主任」   滑舌のくっきりとした声が背後からした。振り返らなくてもわかる。小田嶋がショートボブの髪を耳にかけ入り口に立っていた。  香山の返事も聞かずに、小田嶋はコーヒー

歳時記を旅する54〔西鶴忌〕後*秋澄むや殿の並びし寄進札 

磯村 光生 (平成七年作、『花扇』) 『日本永代蔵』(一六八八年)の菊屋の善蔵という質屋の話(巻三)。     人に情けをかけることをせず、神仏へ願いをかけることも考えそうにない男だったが、初瀬の観音を信心して急に通い始めた。菊屋は「戸帳がひどくいたんでいるので、私が寄進して新しく掛け替えましょう」と言って、古い戸帳を譲り受けた。この戸帳の唐織は貴重なもので、大切な茶壷の袋や表具切れとして売って、だいぶ金銀を儲けて家が栄えたが、後には、昔よりおちぶれて、京橋で、下り船を目

秋の夜に

なんだろな最後に呼ぶの母のこと理屈じゃなくて遠くて近く 日常の隙間に母が見える時いくつになっても傍にいきたい いつまでも明日が続くわけじゃないふとそんなこと呟く夜よ 「母親にはずっと生きててほしかった」夜半のメールはきみからのもの 酷暑からいっぺんに風変わる 寒くはないかと母の声する 父とみた薪能の社には今もいるよなそんな気がして  元気かい? 風が冷たくなったね。 あなたは 気丈なひとだけど 大丈夫かな? かあさんって やっぱり最後の砦だね。

お酒と人生の甘やかな記憶

 お酒を極端に嫌う賢い男友達に、「酒を飲むのは自分を律することのできていない証拠だ」と言われ、何もそんな言い方しなくてもいいじゃない、と腹が立ったが、言いたいことはわかるので気持ちを落ち着かせた。  言いたいことはわかるのだ。でもどんな芸術もお酒と切り離して語れないのだから、お酒は芸術と同様、人生を豊かにするものの一つだと信じている。ゴッホは禁断のお酒によって身を滅ぼしたのだった……とよぎるけれど、それでも。  お酒が人生の豊かさに深く関係するのは、必ず記憶が付随するから

【ミステリー小説】腐心(10)

▶第1話は、こちらから。 ▶前話は、こちらから。 「課長、今朝の桜台町のホトケの件なんすけど」  刑事課長の島田警部がノートパソコンから片目だけ上げる。遠近両用メガネはかろうじて鷲鼻に引っかかっていた。香山の顎先に向かって、続けろ、と促し画面に視線を戻す。薄くなった頭頂部に話しかけるのも馴れた。 「事件性が出てきたんで、樋口だけでなく田畑と小田嶋も借りて班を組みたいんですが」  島田は左肘をデスクにつき、だぶついた顎を支え胡乱な目を向ける。 「熱中症による死亡事故と違うのか

届かぬ想い

このあとも連絡来るタイミングが合って不定期に連絡を取り合っていて。 好きだけどこの人とは付き合うことはないんだろうな、付き合えないな、でも付き合えたら嬉しいな。なんて迂闊なことを考えていて。 だって“今の彼女と結婚しないと思う”なんて言ったから。 私の仕事を肯定してくれた初めての人で、一緒にいて落ち着くなって思った人で、私が恋人とうまくいかないときに話聞いてもらったり、“はなのこと彼氏より大切に思ってる”って言ってくれて。 あ〜早く彼女と別れないかなって思ってたら、来

紙の手帳を卒業しました

 私は、ほぼ日手帳のweeks4月始まりを使って7年目でした。  weeksは、閉じた状態でスマホよりひと回り大きいくらいです。見開き2ページで、縦に1週間。月曜始まりです。左ページに仕事の予定、右ページにプライベートの予定を書きます。月間カレンダーは最初に1年分まとめてあるので、週間カレンダーの途中に月間カレンダーが入ってくるということはありません。  最初、これらの仕様が気に入って購入したのですが、6回もリピートした理由は「紙」でした。1度使うと、他の紙に書いたりめく

wantって形容詞なの?

 国語の授業で先生に 「動詞を1つ挙げてください」と聞かれた。  その前の英語の授業で「want」という動詞を覚えたばかりだったから、僕は自信を持って 「ほしい」と答えた。  先生がニコッと笑った。 「山根くん、残念。『ほしい』は形容詞です。日本語の動詞は『ウ段』で終わります。『イ段』で終わるのは形容詞ね」  先生の指摘で「あぁそうか…」と思ったのだけど、 「でもさぁ、英語では『ほしい』は動詞だと習ったんだけどなぁ」という疑問を持った。  疑問を持ったけれども、国語の

【ミステリー小説】腐心(11)

▶第1話は、こちらから。 ▶前話は、こちらから。  鑑識係の部屋は三階東奥の吹き溜まりのような場所にある。  刑事課も空気は澱んではいるが、常に喧噪に攪拌されている。鑑識の室内は澱みが無言で堆積している。  入ってすぐの前室テーブルに簡単な現場の見取り図が用意されていた。バックヤードの扉をノックすると、奥から紺色の作業着姿の浅田が頭を掻きながら現れた。 「あれ、グっちゃんは?」 「樋口には防カメの手配をさせてる。小田嶋さんと三人班になった」   へえっと、浅田は気の抜けた相

120回目のYouTube配信は『金色(こんじき)の雲』という短歌を朗読いたしました😊 https://youtube.com/shorts/VKA86ZmYjb4?si=wge4xiZIwE8bW08D

西の空は茜 

エプロンのポケットから小分けのドッグフードを取り出し、空になっていた銀皿にカラカラと音をたて入れた。 黒いマジックでリキと書かれた犬小屋からリキがのそのそ出てきて、前足、後ろ足の順に伸ばし、気怠そうに近づいて来る。リキの後ろからシャラシャラと細い金属のリードも付いて来た。 すぐそばに腰を下ろしたリキは大きくあくびをして、乾いた鼻をフンフンと伸ばし、私の首筋をペロリと舐めてから大きな尻尾をクリーム色のタイルにそっと振り下ろした。 私はリキの頭から背中までのなだらかさを確かめるよ

123回目のYouTube配信は『夏の忘れもの』という詩歌を1分間朗読いたしました😊 https://youtube.com/shorts/7-vUbFHktIs?si=J2ljMWx5z52PXpaK

121回目のYouTube配信は『Autumn Time』という詩歌をゆる〜り朗読いたしました🍁 https://youtube.com/shorts/GsQ-mbzg54k?si=G4daf-TKqCX-9Lgq

127回目のYouTube配信は10月9日(水)に、『10月の緑』という短歌を朗読いたしました。 https://youtube.com/shorts/OgPpX7xiHhI?si=We9NgIIVk5MrZMCX

俳句の源流を歩く|酒折の歌(最終回)

 さて、彼女が出て行ってから九夜十日。音沙汰もなく不安ばかりが募る中、俳句を並べて気を紛らわせている。  と言ってもそれは他愛ないもの。他人にとっては、意味をなさない駄句のかたまりだろう。けれども、ある人が言っていた。 「披露する目的で詠んでは駄目だ。」  ヤマトタケル以降の日本は、柿本人麻呂も言うように、「言霊の幸はふ国」。言霊の結晶である「歌」が、一己の幸せを導くところとなったのだ。  歌をうたえば、世界が現れる。神々が歌って天下を生み固めた時代は過ぎ去り、その響きを宿

【ミステリー小説】腐心(9)

▶第1話は、こちらから。 ▶前話は、こちらから。  柳一郎の失踪は、29日か30日か。地取りで明らかにするしかねえか。とりあえず佳代子の供述を取ろう。 「失踪に気づいたのは、7 月30日で違いありませんね」 「ええ」 「時刻は?」 「晩ご飯ができたと呼びに行った7時です。さっき29日としてお話した内容は、30日のことをすり替えただけ」 「では、午後4時から『ウエステ』に買い物に出かけ、5時半に帰宅。柳一郎さんの部屋からはテレビの音がしていた。その後、あなたは夕飯のこしらえを

大学1年生、色とりどり

いろはにほへと、散るまでに 無事に高校を卒業し、それなりに充実した春休みを過ごし、ついに私は大学の入学式という門出に立ちます。 知り合いゼロ、土地勘ゼロという状況は、物心がついてから初めての経験だったように思います。 非常に緊張し、非常に怯えながら当日を迎えました。 当時、mixiというSNSが流行っており、そこで同じ年に入学するメンバー同士の交流が行われていたようですが、私はぼんちゃんとの「浮気の一因になるようなことがあったら嫌だからmixiは辞めよう」という若々しい

あの日の夢

薄紅を 纏ひ たなびく 夕暮れは あの日の夢の いのちのやうに photo & words by なおみ

【エッセイ】酒と泪と破滅願望

 あれだけ好きだったお酒を普段飲まなくなった。  最近ではたまに飲んでもすぐに酔っ払ってしまう。おそらく内臓系がすでにいかれているのだろう。怖くて検査などはしたことがないが、日常的にお酒を抜いていればいずれ回復するだろうと楽観的でいる。  そもそも若い頃、なんであんなに毎日飲んでいたのか。お酒の味が好き、酔っ払う感覚が好きというのもあるが、お酒の場が好きだったのだろう。それは今も好きだ。誰かと熱く、そしてゆるく語ってみたり。みんなでワイワイしてみたり。 『飲みニケーショ

投資(FX)を学ぶ💵 ✅金融政策:物価や通貨の安定のために中央銀行(日本で言えば日本銀行)が行う金融面での経済政策のこと🌟 →経済情勢から「金融緩和」を行うか「金融引締」を行うかの判断を行い金融政策を実施 金融政策で決定される「政策金利」の変更によって為替レートが動くことが多い📊

122回目のYouTube配信は『金銀を織る』という短歌を朗読いたしました〜😊 https://youtube.com/shorts/m-UN5sqyfIs?si=44mK-WSBJLALbnQG

【ミステリー小説】腐心(8)

▶第1話は、こちらから。 ▶前話は、こちらから。  被害者の失踪日時について夫婦で供述が異なるというのか。  樋口からの報告に香山は文字どおり耳を疑う。 「おい樋口、そっちは聴取が終わったんだな」  ――はい。 「そのメール画面を送信日時のわかる状態で写メしろ。木本和也は帰していい。おまえも、こっちに来い。二号室だ」  ――了解です。  香山は廊下の壁に凭れて二本目のハイライトに火を点け、二号室と表示されている取調室の扉を睨みつける。  単純に考えると29日に失踪したという

雨ポツポツ ノンアル飲んでも ほろ酔い帰宅

昨日の仕事帰り 久しぶりに馴染みの居酒屋さんへ 健診月間&ダイエットでお酒を控えていた身 馴染みのお店は本当にご無沙汰 ここは料理も優しい味なので お食事だけでも でも、居酒屋さんだから、やっぱり飲まないとね そんな中、ありがたいのが「ノンアルビール」の存在 一応、飲んでいるように見えます 頼んだおつまみたち 1時間と少し居てお店を出ました 天気予報通り、昨日は夕方から降り始めました 頭にポツポツと雨の雫が… 居酒屋のご主人ともゆっくりお話ししたし 酔わなくてもい

129回目のYouTube配信は『緑の銀杏』という短歌を朗読いたしました😊 https://youtube.com/shorts/EjIDQpDx3mM?si=3GOtoGULUG_XoRs4

119回目のYouTube配信は『9月の雲』という短歌を朗読いたしました〜😊   https://youtube.com/shorts/0yAqedz-WOo?si=nYgxliMfXpnbJqzh

ヘビイチゴ

「ヘビイチゴって、知ってます?」  金曜日午後10時のバー。カウンター席で隣に座っていた女に、突然訊かれた。  週に三日はこの店に来ているが、見たことのない女だった。もし会ったことがあれば、決して忘れるはずのないような人目を引く顔をしている。左右の目がアンバランスで唇が厚い、どこか危うい雰囲気の顔をした女だった。  女は僕の右隣に座り、呆けたような顔でカウンター正面に並んでいる酒のボトルを眺めながら、カクテルを飲んでいた。ロンググラスに入った赤いカクテル。  そして、ボトルの

文学があったから

 今のお家に引っ越したその日の夜、近くのバーに行った。これからお世話になるであろうことを容易に予想できたため、勝手ながらご挨拶に行く気持ちだった。  蒸留酒を多く取りそろえたそのバーの上品なマスターは、私を年上の女性と引き合わせてくれた。ハイライトを何本も吸って、ラムをロックで飲み、「男が私の手の平で踊っていないと満足できない」と言っていた。映画女優のように格好いい女性。  端から見るとまるで対照的な二人だっただろうが、私たちは谷崎や三島の話をし、江國香織さんや桐野夏生さ

短編小説「眠れない夜は、気楽亭へ」その6

車たちのライトと、デパートの明かりがきらきら輝く夕暮れ。 大きな交差点の真ん中に、私は立っていた。 人も車も、私を通り抜けていく。 ここは私の夢の中だから、普通ならありえないことも、こうして当たり前になる。 京都河原町駅の、地上に上がった目の前にある、この交差点。ディズニーストアやエディオンや、高島屋の煌びやかな光と、外国人観光客の多さで、何だか異国に来たように思えてくる、そんな、どこか不思議なところ。 ここは私にとって、本当に大切な場所だ。 暫くぼうっと、街の流れを眺め

俳句の源流を歩く|酒折の歌➆(全8回)

 酒折の歌の功績は、自問をも許容したこと。それは、想念が歌になるということを明らかにした。  その瞬間、神々の計らいの産物であった和歌が、個々の内面を映し出す鏡ともなった。ここに歌は、人々が内包する「苦しみ」に関わり、「苦しみ」を和らげる道具としての役割を担い始める。  起点となるのは、ヤマトタケルの辞世とも言われる思国歌。 倭は国のまほろば たたなづく青垣 山隠れる倭し美し (大和は素晴らしいところ。幾重にも重なる青垣。山に覆われた大和の美しさよ。)  この歌の画期的な

レモンティー

学生時代は何度か入院していて、そのひとつは交通事故によるものだった。 レントゲンを前にした医師が「折れてますね」と言う。 知っているよと思うほど痛かったから、何だったらこちらから「折れてますよ」と申告したってよかった。 私の右足は丸太のように腫れていて、色も薄紫とグレーを足したような色をしていた。自分の右足の膝から下が象の足ような状態になっていることは、どんなに痛みを伴ってもハロウィンに被るラバーマスクを足に履いているように現実味がなかった。 意外に冷静でいられたのは、その足

124回目のYouTube配信は『雨のairport』という詩歌をゆるり朗読いたしました✈️ https://youtube.com/shorts/fsbcryYiEnM?si=DUIqrcJDkwj4QKnG

跳躍と笑い声

ピアノのレッスンは ブルグミュラーのアラベスク。 最後の跳躍が どうも上手くいかない。 左手は 親指から ミレドシラと下がり 半拍おいて 1オクターブ上のミ゙とラを 同時に押さえる。 親指がミ 小指がラ。 右手は 小指から ミレドシラと下がり 半拍おいて 1オクターブ上のドとラを 同時に押さえる。 親指がド 小指がラ。  左手と右手は 一緒に弾くから 最後の音は 左手のミとラ 右手のドとラの 4つの音が 同時に鳴る。 1オクターブの跳躍だけど テンポが速く なかなか難

俳句の源流を歩く|酒折の歌➅(全8回)

(メモ)和歌とは何か  古代の歌 ⇒ 呪と伝  酒折の歌 ⇒ 想と呪  酒折の歌 ――― 唯一分かる確かなことは、ヤマトタケルの五(四)七七を、翁が五七七で受けたということ。そのことで、定型を有する歌が出現。  けれども、それだけではなかっただろう。もしかすると、当時残っていた歌謡の中に、翁の歌と同じような語調を持ったものがあったのかもしれない。それを面白いと言って褒めた可能性も、無いとは言えない。  もっとも、ヤマトタケルの置かれた立場を思えば、そこに「呪」があったと見

覚悟なんて決めない

上の人が白であれば 白 黒であれば 黒 それを白とすると決めたなら 腹を括った ということ 黒とすると決めたなら 魂は売らない ということ

【ミステリー小説】腐心(7)

▶第1話は、こちらから。 ▶前話は、こちらから。 「警察が……嫌がる?」  香山は佳代子の言葉をなぞる。  行方不明者届を出すまでに二日近くかかっていることを指摘すると、佳代子はそう言い放って冷ややかな目を向けた。取調室の空気が硬くなる。  無機質な壁の時計は、午後二時になろうとしていた。夏の陽射しが窓辺で踊っている。死体を検分した日は食欲がなくなるが、今日のホトケは傷一つなく腐敗もしていなかったからか、腹が空いてきやがった。まあ、でもメシは抜きだな。まだ聞きたいことの半分

俳句の源流を歩く|酒折の歌⑤(全8回)

 古事記にいう「酒折の宮」――― 二千年を隔てた現在では所在不明であるが、最有力とされる場所が、酒折駅近くにある。  その名も「酒折宮」。ヤマトタケルを主祭神とする神社で、その御神体は、焼津で命の窮地を救った火打嚢。伝承では、東国の造に任命された御火焼翁がここに留まり、この宮を中心として東国を開拓したという。  その日は雨であったが、春らしい優しい雨。境内の所々に咲く小さな花々を撫でるようにして、雨は参道を潤していた。  それにしても、清々しい場所。観光地らしさというものは

118回目のYouTube配信は『dancing in the autumn wind』という詩歌を朗読いたしました〜😊 https://youtube.com/shorts/rb1cG45R1cc?si=gkxKtsinBktqiDA6

【ミステリー小説】腐心(4)

▶第1話は、こちらから。 ▶前話は、こちらから。  東野警察署の駐車場は、庁舎の裏にある。  県道に面した庁舎正面の角を曲がった側道から白いコンパクトカーが滑り込んで来た。ハンドルを握っていたのは、意外にも妻のほうだった。 「先に生安で、ガイ者の行方不明者届けが出てないか確認してくれ。俺は二人を相談室に案内する」  駐車場のコンクリートは直射日光を反射して、じわりと揺らいでいた。太陽は中天にある。足早に裏口へ向かう樋口の巨躯をもってしても足もとにわずかな円形の黒い影が動くだ

アインシュタインとか思ったホロ酔い日記

今日は晴れ間があった。 それだけで自然と笑みが溢れてくる。 今日はホロ酔いなので多少の誤字脱字、偏見独断はご了承ください 笑 海岸で読者をした。 物理学に関する一冊である。 数式や、図を一切使わず文字だけで記された一冊だ。 かつて物理を疎外していた我が身の様な者に対して書かれた一冊で、大変読む価値があるのだ。学生時代は物理学が嫌い、苦手、興味がないそんな人間であった。 しかし、今は興味がある。 シュレーディンガー方程式からの猫 量子力学 波動方程式 ドブロイ波… 全