ねぇ しょう君 カボチャとシメジって どう料理したらいい? ぼくに聞かれても どうしたらいいかわからないよ 一緒に考えようか ゆみりん ありがとう しょう君 えっと 調味料はぁ… あれっ?お醤油と味醂しかないよ こんなのでお料理出来るかしら そうなんだぁ これからは 買い物する時 何きらしてるかメモしとかなきゃね ごめんね 今度からそうするわ えっと よくわかんないけど とりあえず ゆでちゃおうか 油使うと後片付けが大変だし そうだね ぼくもそれが一番い
神聖なものには麻 神代の祈りには欠かせない素材 良く歩く小社の鳥居に その末端が見られる 結い飾られた縄 そのもとをくぐると自然に心あらたまるのは 古今変わらぬ感動だろう 古代人の貫頭衣も麻だったと聞く 魔から身を守る御布は 楚で正直 いにしえ 神 近く暮らす人々の息づかいが 近くの神域の鈴のねとなって 聞こえてくる 鈴から垂れる縄も 元来 麻が正式 伊勢 斎宮では今も麻畑が営まれている あの一画で どれ程の神飾りが作られるのか知らないが 能率効率を言い出したら到底成
コロあいの「さかな」は…… フワッとした羽衣のようで ピリッと メニシムきれあがった着物 ウィンドーの並ぶショッピングモール 人混みのなか一点を見つめて待つひと 面と向かって初めて会う日… 遠くからでもすぐ わかった 綺麗にクシとかれた髪が小さく巻かれている 後ろから近づいて「こんにちは」と 声をかけた ぎこちないタイミングで…… 少しだけ戸惑った表情は こちらのことを (何も知らないから不公平だ) みたいな目をしていた お互い詳しいことは 探りあわないはずだったから驚い
日の出から しばらく… 建物の影は まだ長い 冷たい道が なんとなく光沢を放っている 人が沢山歩き過ぎるから また余計磨かれて白くなる道 小さく咳払いをしたら まともに自分の耳に返ってくる 昨夜も人々の悲喜こもごもを聞いたであろう道 ちょっとだけ気を遣って そろりそろりと歩く… 店の看板は あっさりした文字ばかり 犬矢来のほうが目立っているのを見て頬がゆるむ 突然意味なく路地へ入ってみる 初めて踏み入れる路地 まわりに人が居ないのを確認して靴紐を結び直す 夏には雪駄で歩いた
種類によってだろうか まだ染まる気配すらない葉が 朝日に透ける やはり植物は 露置かれた ひとときが 一番輝いて 美しい 人との つながりも それに似ている 突然 打ち水したような出逢いに溺れ 水 引いてくると その心地よい潤いに馴染み すっかり乾いてしまうと まるで何事もなかったかのように 跡形も無くなる…… ひとつのことを 思っている… おそらく こちらの想像通りのことが その塊の中で進んでいるのだろうが それを確かめる術も 理由も 探せないままでいる 沙汰が
とても そわそわしていた… ずっと あることが 気になっていて仕方がなかった 接点のないまま 間接的に それとなく 言葉重ねて気を引いたり 逆に引かれたりした わざと逆撫でするようなことを して見せたり されたりもした それに疲れて 思いきって手紙を送った すぐに返信がきた お互い心を隠しながら すこしだけ見せるよう 関をゆるめた 何度かやり取りが続いた 近づいたように思えたり わざとよそよそしく装ったりもした 少しだけ素直になると 自然の流れで 合う約束が出来た 彼女は
大丈夫か?疲れたんちゃう? そんなことないよ アンタかて運転しんどいんちゃう? そう言われたら疲れが どっと出てきた 眠気覚ましに肩もんでくれるぅ♥️ アンタ運転中やのに そんなんできひんやん! そんなことないやろ 毎月の夫婦楠お参りしてきたばっかりやん 甘えたこと言わんとって!ホレッ ガムでも噛んで しっかり前見て運転しいっ! お前いつから そない強なってん? 昔は しおらしぃて もそっと可愛げがあったでぇ はぁ? アンタこそ 昔は 気持ち悪なるぐらい格好
瞬発力と熟考…… 極端にどちらかだけが働くことはないので その二つの兼ね合いが重要だと教わりました。 でもたまには まる1日瞬発力だけ…直感だけで過ごしたくなることもあります。 ルーティーンをしない日 思いつきだけで動く日 古本屋さんに行くと 何かしら その日の気分に ピタリのものがあります。 しかも投げ売り価格で… いわゆる積読の もと 店にある本が 家の棚に置かれる景色が すぐ浮かびます。あの作者と あの作者の本の間に これがあればなぁ… 鉛筆で薄く書かれた値
なんとなく 気になるから見ていた… 普通に聞こえる言葉 普通に見える仕草 普通であるような佇まい… それらに隠された裏の意味 小気味良いゼスチャー ずっと待ち続けている健気… いつからか それに気付き始めていたけど まさか と打ち消すよう 自分で自分に仕向けた 育った環境も 過ごしてきた境遇も まして釣り合いバランスも 違いすぎる きっと からかわれているのだろう 向こうのほうが 何枚もうわてに思えてならない わざと気を引く振舞い ほんの少し見せる隙 でも表向き
眠れない夜 新聞配達のバイクが一瞬窓を照らして 逃げていく 枕元の時計の蛍光素材の針… あと2時間はうとうとできるのにと 遠ざかるバイク音を うとましく 思う…… ごそごそと起きだす布団 しばらくシーンとしたあと その息は廊下歩く音に変わっている 隣の部屋に小さな明かり… 髪をとかしてパチンとくくる気配… ピッピッピッと洗濯機をセットする音 あと追うように短いメロディ ワンテンポ遅れてホースに水が流れだす 今日の洗剤はどっちだろう さっきの電子音が どのコースのもの
「お行儀悪いですよ…」 ほんの少しだけ怒った声 盆に倒された徳利を立てながら 片方の手で すすめ肴が出される いつものことと呆れた顔に 小さな笑いがにじむ うなじには後れ毛… 台所仕事に うっすら汗ばんでいるのが見てとれる 炭で あぶって出された椎茸も 湯気あげて汗ばんでいる 山から訪れた客からの手土産 家主の一言で急遽七輪を出した細君 せっかくの旬を台無しにしてはならないと緊張の面持ち… いや主に恥をかかせてはならないという妻としてのプライド… 「さっきの酒
ちょっと秋めいてきたから良く眠れるんじゃねぇか? そんな こっちの都合よくいくかよ 何しろアレが ちけぇだろ アレが あ~あ~ アレね わかるよ アレ オレは まぁせいぜい1回で済んでるけどね うらやましいねぇ 1回で済むんならじょうのじょう 上等じゃねぇか オレなんかひでぇ時は3回は行くぜ あら お気の毒 そんなんじゃぁ落ち着いて寝てられねぇだろ やっぱりアレかい?床につく前にゃぁ水分控えんのかい? そんなの当たり前じゃねぇか 水分どころか 食後のほうじ茶…い
本は寸法と色で記憶します 探すときは背表紙に書かれた文字は読みません ルックスで見つけ出します 赤っぽい色だったな… とか 背が低くて わりと分厚かったな… とか…… 調べものをして 元の場所に仕舞わないのですぐ手元に山積みになります それを分別せずゴソッとひとつところに戻すので 不思議な並び方で陳列されることになります 大まかに二つのカテゴリーに別けています ひとつは写真や図解の多い芸術系のもの もうひとつは文字が主の文学系のもの どちらとも言えないものは そのふたつ
飛行機雲が とぎれて 消えます こんな時 あくる日は 雨 空の色を見ながら あの人を 思います 私が ずっと思っていることを あの人は知っています あの人はあの人で 私がなぜ深く踏み込んで来ないのかを 知っています 明日は雨 この頃の天気予報は当たります 濡れるのを承知で 傘持たず歩くことだって出来ます 傘を保険にして 逃げ道は作りたくないから 好きなことばかり 勝手して生きてきました 身体の事考えずに過ごしたのは 怖いことから 目を逸らしていただけ あの人は
てくてく登ると ほんの少しだけ汗をかく 塀からのぞく庭木を勝手品評する道 お参りを済ませた人が 坂から降りてくる 寺域の森が目に入ってくる 寄進者の名が彫られた石柱が並ぶ 襲名する家の名や 講の名前や 社中の名前…… 山門を見上げて一礼 両手と口を清めて石畳へすすむ 真っ直ぐでない杉線香は茶色 折れているものを五本ほど摘まんで 蝋燭から火を移す 煤だらけの獅子がしらの香炉へ 先に立つ線香を気にしながら 自分の線香を立て煙を手繰る 本堂の石段をのぼる 賽銭箱の縁に志をの
四国は 心なしか時間がゆっくり流れている……気のせいだろうか。 信号さえ変わるのが遅く感じられるから不思議だ。 広い空間に小山がポコポコ出ている……。 その形が穏やかなものばかりだから気もたたない。古い山の形だという。時間に こなれてカドとれたのだろうか。 田んぼに伸びる国道にも農道にも遍路笠が点を打つ……。 五重塔が目に入る。 末広がりの安定した姿には見えない。 立っているというより 大地に根ざしている感じ……突き刺さっていると言ってもいい……。 その奥の誕生伽藍より先