深夜割引の高速はトラックばかり 自分と気の合うスピードの車を見つけて あとにつく 東行して 月の出に祈る夜もあれば 西行して 昇る朝日を背に受ける事もある 山陽道でくだる時 必ずと言っていい程 宮島サービスエリアに寄る 丁度夜明け頃休むと 空も海も鳥居色に染まるのが美しい 芝生の広場にお洒落なカフェ 中には まだ人の気配は見られない その脇をぬけて展望台から見おろす街は まばらに目覚めた所もありそうだ 左からだけ光差すビルの陰陽が はっきりしている この街の沖おはす神も峰
まだ若い頃 ある人によく呼ばれた 早朝5時の席入り 家を3時半に出なければならないので 寝ずに伺うこともあった 4時半過ぎに到着すると すでに縦列駐車の車が2台 ドア閉める音も しめやかに「参りましょうか」と見合わせて門へ 3人をあと押しするようにヒグラシがカナカナと鳴いている 水が2~3度まかれた跡匂わす玄関 手がかりを開ける ガラスの金魚鉢の脇に冷えたおしぼりが置かれている 襖を引いて寄付で靴下を改める 小盆の新渡汲出しに氷が揺らぐ あらかじめ指名されていた正客から腰
何かしらはじまりそうな節目 熱いうちに打てではないが 思いきって始めてみた 何事も初めてと言うのは気持ち良い 新しい茶筅をおろす清々しさに似ている そんな事を思いながら つぐ欠け炭 田舎炭はパチパチするし すぐいこって すぐから消しになる…でも それを焼いた爺ぃの顔が見える安心感は 何者にも替え難い 初めて焼いた炭の方が 良い出来だったと正直な弁 結局 人に良く見せようと思わない所が 良いのだろう 席に飾るような炭もあれば 藁家の囲炉裏炭も 炭は炭 燃えて無くなるものに