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「キャッチ1本、家事のもと!」をキャッチコピーに、主婦兼コピーライターを続けています。趣味で、オリジナル技法の3D刺繍のバッグも製作。とにかく、ゼロから何かを創りあげることが好き。エッセーや小説など、仕事を離れた作品作りを楽しみます。

マガジン

  • 大河ファンタジー小説「月獅」

    天卵を宿した少女と、天卵の子の物語です。

  • 『月獅』章ごとのまとめマガジン

    大河ファンタジー小説『月獅』の各話を章ごとにまとめた<全文>を収納したマガジンです。まとめ読みをされるには、最適です。

  • 連載小説「オールド・クロック・カフェ」

    京町屋を改装したカフェは、一歩入ると時計の森。そこでは、時のはざまに置いてきた忘れ物を教えてくれる「時のコーヒー」があるという。

  • アンノウン・デスティニィ

    創作大賞2023に応募の「アンノウン・デスティニィ」をまとめています。

  • #エッセイ「Say When! 」

    「Say When! 」というタイトルで綴っているエッセイをまとめています。

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アンノウン・デスティニィ 第1話「怪盗」

※今作品は宇佐崎しろ先生によるイラストをモチーフにした創作大賞2023「#イラストストーリー部門」への応募作品である。 第1話:怪盗 【2035年5月10日】  女がふたり、長く美しいプラチナブロンドをなびかせて向き合っていた。正面を向いた女は明るい鳶色の瞳のまなじりをきっと吊り上げ、背を向けた女の喉もとに果物ナイフを突きつける。  窓辺には夕闇が迫り、ログキャビンの高い天井から吊るされた照明が彼女たちの金髪を妖しく輝かせていた。緊張と静寂が室内を支配する。 「あたしが鳴

    • 大河ファンタジー小説『月獅』56         第3幕:第14章「月の民」(5)

      前話(第55話)は、こちらから、どうぞ。 これまでの話は、こちらのマガジンにまとめています。 第3幕「迷宮」第14章「月の民」(5)  以来、シキは午前中に図書寮におもむき、午後からは巽の塔を訪ねるようになった。多忙を極めるラザール様を煩わせることなく『月世史伝』を解読できることが、シキはうれしかった。  イヴァンもシキとの時間を心待ちにした。幻の書の『月世史伝』が存在したことも僥倖であったが、それを読める幸運に身がふるえた。それだけではない。シキは男児であるはずなのだ

      • 詩と暮らす(#シロクマ文芸部)

        詩と暮らす 朝露に硝子の首飾りをかける蜘蛛の巣は 籬の茂みで、東雲のうすくめざめる時を待つ 疎水べりに野蒜を摘み、菜園に種を蒔き、穀雨を待つ 風に雨の匂いをかぎ、セーターのほつれを繕い うだる熱気に緑陰を求め 軒の氷柱の滴を聴き ことばの澱をときほぐし 去年も 昨日も 詩と暮らす 詩と暮らす 曇天のした蓮のうてなで蛙はうたい、 角の青果店の軒先から、つばくろの雛はとうに飛び立った 書棚の埃を払い、ヴェルレーヌの詩集に、消印のかすれた絵葉書を見つける 風鈴がそよぎ、鍋の焦げを

        • 大河ファンタジー小説『月獅』55         第3幕:第14章「月の民」(4)

          前話(第54話)は、こちらから、どうぞ。 これまでの話は、こちらのマガジンにまとめています。 第3幕「迷宮」第14章「月の民」(4) 「白の森は知っているかな」  イヴァンは立ちあがり、椅子に腰かけながら問う。 「西の国境にあって、白銀の大鹿が森の王だということだけですが」  拾い集めた紙束を卓の上でまとめ、シキも腰かけた。 「白の森の周りには四つの村があって、森の恩恵を受けている。わがエステ村はその一つで森の東にある。白の森に人は入ることはできないのだよ」 「どうして

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        アンノウン・デスティニィ 第1話「怪盗」

        • 大河ファンタジー小説『月獅』56         第3幕:第14章「月の民」(5)

        • 詩と暮らす(#シロクマ文芸部)

        • 大河ファンタジー小説『月獅』55         第3幕:第14章「月の民」(4)

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          夢のあとさき(#シロクマ文芸部)

           ――『逃げる夢の法則』というのを知っているかね。  消えかけの燭台の炎のような声が、店の奥でゆらめいた。  そこだけぼうっと微かに白く光の粒が滲んでいる。  けっして明るくはない戸外から飛び込んだぼくは、ほとんど明かりのない仄暗い店内に目が慣れるのに数分を要した。  なぜそんなことになったのか、わからない。  コベントガーデンでアンティークの露台をひやかしながらマーケットのにぎわいを楽しんでいた。ロンドンの秋は駆け足で過ぎる。マーケット前の広場では、早くも木枯しが落ち葉を

          夢のあとさき(#シロクマ文芸部)

          大河ファンタジー小説『月獅』54         第3幕:第14章「月の民」(3)

          前話(第54話)は、こちらから、どうぞ。 これまでの話は、こちらのマガジンにまとめています。 第3幕「迷宮」第14章「月の民」(3)  イヴァンと名乗った男性は低いがよくとおる声で微笑みながら布を差しだすと、奥に消えた。シキが渡された布を手に呆然と佇んでいると、すぐに盆をもって戻って来た。壁際に暖炉がある。その前に木製の大きな卓があり、椅子が六脚ならんでいた。男は盆を卓の上に置くと、暖炉に火をくべる。シキは棒立ちのまま、イヴァンのようすを目で追った。 「捕らわれの身だか

          大河ファンタジー小説『月獅』54         第3幕:第14章「月の民」(3)

          大河ファンタジー小説『月獅』53         第3幕:第14章「月の民」(2)

          前話(第52話:第14章「月の民」1)は、こちらから、どうぞ。 これまでの話は、こちらのマガジンから、どうぞ。 第3幕「迷宮」第14章「月の民」(2)  レルム・ハン国の王宮は六芒星の形をしている。その北の頂点に月夜見寮はある。背後にはノリエンダ山脈が聳え、月夜見寮は王宮の北を守護する重要な砦でもある。一方、星夜見寮は南の頂点にあり、レルム海を一望し、海上からの襲撃を見張る。ふたつの寮は星と月の運行から王国の命運を占うとともに、守りの要でもあった。  シキは辞書を片手に

          大河ファンタジー小説『月獅』53         第3幕:第14章「月の民」(2)

          誕生日を盗め!(#シロクマ文芸部)

          「誕生日を盗んでいただけないかしら」  マイアミのビーチに面したカフェで、リックはジョッキを手に、行き交う極彩色のビキニの肢体に目を細めていた。麦の液体で喉をうるおしながら小麦色の肌を眺める至福。惜しみなく降りそそぐまばゆい太陽。天国はここにある。ニューヨークでひと仕事をこなしたリックは、バカンスを楽しんでいた。恋人のミアも連れてきたかったが、「ごめんなさい。締め切り前でお休みがとれないの」と、ひどく残念がっていた。中堅どころの出版社で駆け出し編集者のミアは、ろくに休みもと

          誕生日を盗め!(#シロクマ文芸部)

          大河ファンタジー小説『月獅』52         第3幕:第14章「月の民」(1)

          これまでの話はこちらのマガジンから、どうぞ。 第3幕「迷宮」第14章「月の民」(1)  レルム暦六三五年四月、王国に激震が走った。  「天は朱の海に漂う」との星夜見がオニキス副星司長によってなされた。流星が流れ、天卵が生まれてからちょうど二年が過ぎた春で、カイルは十七歳、シキとキリトは十二歳になっていた。  二年前、白の森の南端にあるカーボ岬から、天卵は海に没したとレイブン隊が報告していた。それを覆す星夜見に王宮は騒然となる。事の真偽を確かめるべく、ダレン伯が辺境警備軍を

          大河ファンタジー小説『月獅』52         第3幕:第14章「月の民」(1)

          妻恋い(#シロクマ文芸部)

          「紅葉鳥よ!」  恵映子が声を落としてささやく。  残暑の影響か、紅葉は五分といったところだった。山道は周囲の木々で陰っているとはいえ、十月も末だというのに暑い。木の上に目を凝らしながら首筋の汗をぬぐう。樹幹をさまざまな鳥がさえずり飛ぶ。種を特定することなど、亮二にはできない。 「どれ? どの鳥?」 「ほら、あそこ」  恵映子は声をひそめて雑木林の奥を指さす。  そこだけ美しく橙と紅に装いをかえたイロハモミジの下に、立派な角をもつ鹿が一頭佇んでいた。おもむろに顎をあげて高く、

          妻恋い(#シロクマ文芸部)

          トリガー(#小牧幸助文学賞)

          君のためは誰のため?S&Wの銃口を睨む。 ミステリー系にも、挑戦してみました。

          トリガー(#小牧幸助文学賞)

          「風史遺文」(#小牧幸助文学賞)

          七の新月、世界の蝶番が閉じ風蛇が消えた。 ファンタジー系も考えてみました。

          「風史遺文」(#小牧幸助文学賞)

          「追憶」(#小牧幸助文学賞)

          遮断機が下り、遠離る背は茜空にまぎれた。 2作目です。

          「追憶」(#小牧幸助文学賞)

          「ひと夏」(#小牧幸助文学賞)

          渚の足跡を晩夏の波がさらい、海猫が舞う。 ふつつかながら、20字の小牧幸助文学賞に応募します。

          「ひと夏」(#小牧幸助文学賞)

          『月獅』第3幕「迷宮」          第13章「藍宮」<全文>

          これまでの話は、こちらから、どうぞ。 「藍宮」(1)  カイルが十五歳で立宮してまもない浅春のこと。池の氷はほどけていたが、頬をなでる風にまだ冷たさが残るそんな日だった。王太子のアラン兄上が事故で落命される数日前のことだ。 「お待ちください」  図書寮を退出しようと正面扉にカイルが手をかけるのを、近侍のナユタが押しとどめた。 「それほど警戒せずともよかろう」と笑っても、ナユタは盾とならんと前に出る。  エスミの末弟のナユタは、カイルよりも十歳上の二十五歳の青年で、姉から

          『月獅』第3幕「迷宮」          第13章「藍宮」<全文>

          大河ファンタジー小説『月獅』51         第3幕:第13章「藍宮」(4)

          これまでの話はこちらのマガジンから、どうぞ。 第3幕「迷宮」第13章「藍宮」(4)  暦が二月をめくってまもないある日、キリトは近侍二名を伴って藍宮を訪れ、カイルとナユタを驚かせた。 「母上を説得してまいりました」  胸を張るキリトの後ろで近侍たちが苦笑していた。どうやらここひと月、真珠宮では悶着が続いていたらしい。  ――なにゆえ後宮から出てはいけないのか。なぜ藍宮を訪れてはいけないのか。どうしてカイル兄上に会ってはいけないのか。  新年の行事で忙しないラサ王妃をキリ

          大河ファンタジー小説『月獅』51         第3幕:第13章「藍宮」(4)