【連載小説】「北風のリュート」第49話
前話
第49話:赤い瘡蓋掃討作戦(3)
【6月30日 決戦】
午前八時。鏡原基地正門から深緑の巨大なトレーラーが十台、重低音を轟かせて姿を現した。住民のいない薄暗い町を粛々と進む。二日前までの住民避難の混乱と喧噪が嘘のように、町は無音の寂寥に覆われていた。赤信号で待つ必要もない。機能を停止している町。トレーラーの列は基地の南端角を左折し、鏡の森緑地公園の北端に添って東へとまわる。鏡池から東へ三百メートルの地点に到着すると高射隊員が続々と降り、ペトリオットシステムを百メート