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「キャッチ1本、家事のもと!」をキャッチコピーに、主婦兼コピーライターを続けています。…

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「キャッチ1本、家事のもと!」をキャッチコピーに、主婦兼コピーライターを続けています。趣味で、オリジナル技法の3D刺繍のバッグも製作。とにかく、ゼロから何かを創りあげることが好き。エッセーや小説など、仕事を離れた作品作りを楽しみます。

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  • 珠玉の小函

    おきにいりの記事のための部屋です。

  • 北風のリュート

    「#創作大賞2024」の応募作品、『北風のリュート』をまとめました。

  • 『月獅』章ごとのまとめマガジン

    大河ファンタジー小説『月獅』の各話を章ごとにまとめた<全文>を収納したマガジンです。まとめ読みをされるには、最適です。

  • 大河ファンタジー小説「月獅」

    天卵を宿した少女と、天卵の子の物語です。

  • シロクマ文芸部 課題作品

    シロクマ文芸部の課題で作った小説などを編集したマガジンです。

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【連載小説】「北風のリュート」第1話(#創作大賞2024/#ファンタジー小説部門)

第1話:遠いうねり    そこは世界の蝶番のような場所だった。  東と西の大地の深くえぐれた裂け目は、太古の昔に一頭の巨大な龍がつけた爪痕だと伝えられている。底なしの谷から唸り声をあげて天へと疾風が舞い上がるのを風の龍と呼んでいた。竜巻と呼ぶものもいる。  七の新月の夜になると羽毛のような雪が降り始める。  北風がその大いなる翼で大地と地に棲む人々を翻弄するころ、北風に乗ってやってくるものがいた。彼らを龍人と呼んだ。  遠い昔の忘れられた地球の子守唄のような記憶だ。 【2

    • 創作大賞感想『眠る女』by吉穂みらい

       正直に言います。私は感想文のたぐいが大の苦手です。  創作大賞の感想どころか、ふだんも読書感想文を書いたことがほぼありません。noteの町では、皆さん、すばらしい読書感想文を書かれていて、それをひたすら「すごいなあ」と拝読し、私の貧困な読書歴の水先案内人として参考にさせていただいていました。  ですから、今年も創作大賞の感想を書くつもりはまったくありませんでした。なにしろ、超遅筆の私は自身の応募作(『北風のリュート』)が締め切りまでに脱稿できるかすら怪しかったものですから。

      • 尊敬するnoterの吉穂みらいさんが、拙著の『北風のリュート』の感想文を書いてくださいました。作者の私よりも的確に分析し、読解してくださり、私が描きたかったものが何かが、わかりやすいです。皆さん、ぜひ、読んでみてください。 https://note.com/yoshihomirai/n/n2b1e9b05a898

        • 『北風のリュート』こぼれ話

           『北風のリュート』をなんとかぎりぎりセーフで完結させることができ、今、軽い放心状態です。51話、11万字の長い小説をお読みいただき、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。  制作秘話などというたいそうなものではありませんが。いくつかの偶然がありました。  この物語を書き始めたときにあったのは、冒頭の「そこは世界の蝶番のような場所だった」から始まる『龍秘伝』の「伝承」の部分だけでした。これは半年ほど前に書き、そのまま考えあぐねて放置していた一節です。  去年とは

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        【連載小説】「北風のリュート」第1話(#創作大賞2024/#ファンタジー小説部門)

        • 創作大賞感想『眠る女』by吉穂みらい

        • 尊敬するnoterの吉穂みらいさんが、拙著の『北風のリュート』の感想文を書いてくださいました。作者の私よりも的確に分析し、読解してくださり、私が描きたかったものが何かが、わかりやすいです。皆さん、ぜひ、読んでみてください。 https://note.com/yoshihomirai/n/n2b1e9b05a898

        • 『北風のリュート』こぼれ話

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        記事

          本日、『北風のリュート』を完結させましたが、慌てていて、「環水平アーク」の写真を貼り忘れていました。今、貼り付けましたので、よろしければ最終話株で「環水平アーク」の美しさをご覧ください。 https://note.com/dekohorse/n/n9b19b1832a66

          本日、『北風のリュート』を完結させましたが、慌てていて、「環水平アーク」の写真を貼り忘れていました。今、貼り付けましたので、よろしければ最終話株で「環水平アーク」の美しさをご覧ください。 https://note.com/dekohorse/n/n9b19b1832a66

          【連載小説】「北風のリュート」第51話<最終話>

          前話 第51話:北風のリュート(2) 《龍穴が開いた。龍人の娘よ、頼んだぞ》  竜巻のごとき突風が洞の奥から吹きつけ、レイは慌てて風琴を胸に抱きかかえた。『龍秘伝』の蓋が閉じ、ひとりでに舞い上がってレイの胸もとに収まる。レイはそれを不思議に思う余裕もなく、疾風に目をつぶった。  竜巻がレイの足もとから渦を巻き上げ、あっという間にレイを包み、洞の奥へと旋回しながら消える。龍穴はその渦に吸収されるがごとく閉じ、洞には静寂な闇が残された。    何が起こったのか。一瞬のことにレイ

          【連載小説】「北風のリュート」第51話<最終話>

          【連載小説】「北風のリュート」第50話

          前話 第50話:北風のリュート(1) 「立原、おい、立原、しっかりしろ」  迅は薄く目を開ける。  シートが切り離され、メインパラシュートが開いたところまでは意識があった。それからをよく覚えていない。海野がなぜいる? 「パラシュートはそこの木に引っかかっていた。おまえはベイルアウトの強烈なGで意識を失ったんだろ。ぶら下がるおまえの重さに若木が耐えられなかった。俺が駆けつけたときには、枝ごと折れて落下していた」  右目がかすんで焦点がうまく合わない。擦ろうと伸ばした手を海野に

          【連載小説】「北風のリュート」第50話

          【連載小説】「北風のリュート」第49話

          前話 第49話:赤い瘡蓋掃討作戦(3) 【6月30日 決戦】  午前八時。鏡原基地正門から深緑の巨大なトレーラーが十台、重低音を轟かせて姿を現した。住民のいない薄暗い町を粛々と進む。二日前までの住民避難の混乱と喧噪が嘘のように、町は無音の寂寥に覆われていた。赤信号で待つ必要もない。機能を停止している町。トレーラーの列は基地の南端角を左折し、鏡の森緑地公園の北端に添って東へとまわる。鏡池から東へ三百メートルの地点に到着すると高射隊員が続々と降り、ペトリオットシステムを百メート

          【連載小説】「北風のリュート」第49話

          【連載小説】「北風のリュート」第48話

          前話 第48話:赤い瘡蓋掃討作戦(2) 【6月20日】 「立原、副司令室に行くぞ」  記者会見翌日の二十日昼過ぎ、龍ケ洞インターでの警備の任務を終え基地に戻るなり、海野一尉に促された。  何だろう、また、流斗関係だろうか。昨日の会見といい、流斗の活躍ぶりが迅は誇らしくもあり羨ましくもあった。海野と並んで歩きながら、龍ケ洞インターでの市長と暴走車との顛末を話した。「へえ、アンパンマン市長、やるな」海野は操縦技術では飛行隊で群を抜き、兄貴肌で若手からの人望も厚い。迅も海野を兄の

          【連載小説】「北風のリュート」第48話

          【連載小説】「北風のリュート」第47話

          前話 第47話:赤い瘡蓋掃討作戦(1)  鏡原の空は朝から、夕暮れのように暗い。明けない夜がはびこる。  池上は副司令室の窓辺でジッポーのフリントホイールを何度も回転させる。酸素が少ないため、なかなか着火しない。ようやく着いた細い炎に煙草の先を押し付け、肺胞を広げて煙を染み渡らせ、ゆっくりと紫煙をひとつ吐き出す。この酸素状況で煙草がよくないのはわかっている。だが、朝の一本は譲れない。  「赤い瘡蓋掃討作戦のファーストミッションは、鏡池の水を抜くこと」  陸自の猛将鷺池を前に

          【連載小説】「北風のリュート」第47話

          【連載小説】「北風のリュート」第46話

          前話 第46話:全住民避難(2) 【6月25日】  結局、自主脱出は三割ほどに留まった。    避難初日の二十五日午前七時。  すでに鏡原基地にはJAL四機、AN四機が駐機していた。  十五分刻みで関空へ二機、羽田へ二機飛行する。鏡原からの離陸と同時刻に両空港から空の機体が飛び立つ。常に四機が基地に待機し、搭乗を行うことになっていた。  基地の開門は七時と告知していたが、六時過ぎから列ができ、開門時間を三十分早めた。門から受付までロープを張って四列に分け搭乗機ごとに待機場所

          【連載小説】「北風のリュート」第46話

          【連載小説】「北風のリュート」第45話

          前話 第45話:全住民避難(1) 【6月20日】  会見翌日の二十日にロックダウンが解除され、他市に通じる道路の封鎖が解かれた。名古屋に通じる濃尾自動車道龍ケ洞インターに車が殺到すると予測され、迅も朝から警備にあたっていた。  会見では、自家用車による自主避難を禁止も奨励もしなかった。一斉避難も強制しない。一斉避難では、政府が責任をもって移送し、避難先も用意すると明言しただけだ。どちらを選ぶかは個人に委ねられた。ずるいけど、しかたないよね、と流斗が自らを責めるように漏らして

          【連載小説】「北風のリュート」第45話

          【連載小説】「北風のリュート」第44話

          前話 第44話:龍の秘密  『空の赤潮対策本部』の速報が午後五時にあると、昨夜、グループトークに流斗がつぶやいていた。テレビをつけて待ち構えていたレイは、流斗のアップにひっくり返りそうになった。チャンネルを変えても、どこの局でも流斗がしゃべっている。 「あら、あらあら。流斗君、いつのまに」  母が料理の下ごしらえの手をとめ、エプロンを外しながらソファに腰かける。空の状況が深刻になって以来、午後診は閉め、往診で対応している。 「あなた、天馬さんがニュース速報に」  往診から戻

          【連載小説】「北風のリュート」第44話

          【連載小説】「北風のリュート」第43話

          前話 第43話:空の赤潮対策本部(5) 【6月19日、G県庁】  県庁舎前は報道記者やカメラクルーでごった返していた。  『鏡原クライシス緊急対策本部』がすでに稼働しているのに、別の対策本部を立ち上げるというだけでも耳目を集めていたが、その上、昨日予定していた会見を急遽キャンセルした。それが放送局の興味を引いたらしい。かなりの報道陣が詰めかけている。昨日の会見中止は苦肉の策だったが、結果的に良かったとカメラの多さに流斗は目を細める。  昼過ぎから降っていた小雨も今はあがって

          【連載小説】「北風のリュート」第43話

          【連載小説】「北風のリュート」第42話

          前話 第42話:空の赤潮対策本部(4)  市長は立ちあがると、流斗の提案の綻びを衝いた。 「避難では自家用車の使用を禁止するんでしたな。ですが、患者搬送を先行し快復映像を発信すると、一斉避難前に脱出を図る市民も多数現れると思われます。いや、殺到するでしょう」  あ、と流斗は自分の迂闊さに舌を打つ。 「市長の懸念はもっともです。自家用車による自主脱出を認めるかどうかですね」  流斗は起こりうる可能性を脳内でシュミレーションする。 「現在、鏡原から他市に通じる主要幹線道は交通機

          【連載小説】「北風のリュート」第42話

          【連載小説】「北風のリュート」第41話

          前話 第41話:空の赤潮対策本部(3) 「どうやって瘡蓋を除去するんだ。それを剥がさない限り、住民は鏡原に戻れないんだろ。原発事故のように何年も住民を避難させたままにするのか」  当然の質問が飛ぶ。 「掃討作戦については、わしから説明しよう」  池上が会議室を睥睨して立ちあがる。空気が一瞬にして緊張する。 「理屈は単純だ。ペトリオットミサイルによって瘡蓋に穴をあける。穴が開けば、ダウンバースト級の強力な下降気流が起こる。その気流で一気に瘡蓋を吹き飛ばす」  ダウンバーストは

          【連載小説】「北風のリュート」第41話