【連載小説】「北風のリュート」第6話
前話はこちら
第6話:奏でるもの(2)
「珍しいね。それ、リュート?」
レイは竜野川の堤に腰かけ、家から持ち出した楽器を奏でていた。
顔をあげると、眼鏡をかけキャップを目深にかぶった若い男が立っていた。ジーンズにモスグリーンのウインドブレーカーをはおり、荷物でふくらんだリュックを背負っている。フル装備のカメラでも入っているのだろう。航空祭にやって来る典型的なスタイルだ。
「そこの階段を降りてまっすぐ行くと県道に出ます。左に折れると基地の正門が見えます」
レイは視線も