半径100m

ものがたり。全てフィクション。不定期気まぐれ投稿です。自分のつぶやき記事は、数日後に削…

半径100m

ものがたり。全てフィクション。不定期気まぐれ投稿です。自分のつぶやき記事は、数日後に削除。筋トレと粒あんが好き、かもしれない。

マガジン

  • 創作大賞2024 応募作品&いただいた感想文

    note 創作大賞に応募した作品『エロを小さじ1』全十一話のマガジンです。 そして、いただいた感想文、紹介してくださった記事です。 ありがとうございます!

  • 創作大賞2024 応募作品&いただいた感想文

    掌編集です。全五話。一話完結なので、どこからでもお読みいただけます。読んでください! ゆるいファンタジーです。異世界旅行も生まれ変わりもありません。 いただいた感想文も収録。ありがとうございます。

  • 1〜5分の物語

    1〜5分で読めるオリジナル短編小説を収録。 文体や読後感は、それぞれ違います。 1分で600文字くらい読めるかな、と適当に計算した時間です。

  • 童話と絵本

    童話(だと自分で思っている短い物語)& コラボ絵本。

  • 6〜10分の物語

    6〜10分で読めるオリジナル短編小説を収録。 文体や読後感は、それぞれ違います。 1分600文字くらいで読めるかな、と適当に計算した時間です。

最近の記事

  • 固定された記事

掌編集『球体の動物園』 かばうらら

 今日、かばが来る。かばが来る。かばと会える。  目が覚めるとすぐにそう呪文のように唱えて、私はカーテンを開けました。眩しい朝の光が幸先良く、と言いたいところですが、外は雨。雨が無言で降っていました。残念に思い、私は一瞬目を閉じましたが、瞼の裏に浮かんだかばの顔は笑っていました。  かばには、昨日、確認の電話をしました。 「あの、明日ですよね。何か準備して欲しい物はありますか」 「そうですね、湯船いっぱいに水を用意していただけたら嬉しいです」  かばの珍しくはずんでいる声を聞

    • ズッキーニとキュウリ

       風鈴と風が戯れあっている。ちりんちりんと、笑っている。その音を聞きながら、私は台所で野菜を洗っている。 「ズッキーニとキュウリって、似てるね」  突然、背後から文也の声が聞こえて、私はズッキーニをシンクの中に落としてしまった。振り返って、声の主を見た。 「あぁ、びっくりした。おかえりなさい」  蛇口から勢いよく流れる水が、驚かされた私の心臓みたいに、シンクの中で飛び跳ねる。 「似てるけど、ズッキーニはウリ科でカボチャの仲間よ」  文也は「知ってるよ」と笑って、私の横に立ち、

      • 創作大賞感想キャッチコピー。その②

        創作大賞応募作品の中から、読んだ作品のキャッチコピー&三行感想文?を書きました。 応募期間後半は、フォローの有無関係なく読みました。noteには素晴らしい作品が本当に沢山あるのですね。 そのなかから、私好みを数作チョイスしました。 その①はこちら あの頃を思い出す。爽やかで温かい青春物語。 友情、家庭問題、受験、そして恋。全ての登場人物がいきいきとしていて、特にお父さんが最高です。作中小説も素晴らしい。爽やかで泣けます。 恋心はバイクと走る。中年男の切ない物語。 初読みの

        • 読んでくださり、ありがとうございました。

          何の準備もしていなかった『創作大賞2024』 どうしよう? 初参加するべきか? 悩んだ末…… ① 数年前に他の投稿サイトで連載して、途中で止めてしまった『エロを小さじ1』をこの機会に書き直して完結しよう!  ② 以前noteに投稿した『球体の動物園』に新作一話を追加して投稿しよう! ……と決めて、急遽書き始めました。 参加して良かったと思っています。とても楽しい時間を過ごすことができました。二つの目標も達成できて、それだけで満足しています。 ただ、今後また創作大賞に参加する場

        • 固定された記事

        掌編集『球体の動物園』 かばうらら

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        • 創作大賞2024 応募作品&いただいた感想文
          22本
        • 創作大賞2024 応募作品&いただいた感想文
          10本
        • 1〜5分の物語
          20本
        • 童話と絵本
          7本
        • 6〜10分の物語
          7本
        • 11〜30分の物語
          2本

        記事

          創作大賞感想キャッチコピー。その①

          創作大賞応募作品の中から、読んだ作品のキャッチコピー&三行感想文?を書きました。 あぁ、こんなに短いのに、時間だけはかかりました。そして感想文?下手です。 読んだのにまだ書けてない作品、読みかけの作品、読みたい作品もあるので、第二弾も予定しています。 (読了順) 恋愛、家族愛、フラ愛。行間に愛が踊る。 映像化に最適な作品です。この物語に出てくる男性たちが好きです。フラダンスに詳しくなくても、映像が浮かび、踊ってみたくなります。 つかみどころのない男が人の心をつかむ。

          創作大賞感想キャッチコピー。その①

          掌編集『球体の動物園』 いそげスローロリス

          「あぁ、あんた見てたらイライラする。いいわよ、私がする」  莉奈ちゃんはそう言って、私の手からカップ麺の空の容器を奪い取った。  腹が立ったから、私は莉奈ちゃんを睨みつけて言い返した。 「食べたらすぐに片付けてくださいって、言いましたよね。いつまでもテーブルの上にあるカップ麺の容器を見てると、私の方がイライラするんです」 「あんたって、動くのはのろいくせに、怒ったら早口になるんだね」  莉奈ちゃんは私を睨み返し、怖い顔をしたまま、カップ麺の容器をゴミ箱に投げ入れようとする。

          掌編集『球体の動物園』 いそげスローロリス

          掌編集『球体の動物園』 たぬきおやじ

           近所の体育館で行われる『いきいき体操教室』の申し込み書に必要事項を記入していた節子さんの手が止まった。年齢という欄で、右手にボールペンを持ったまま静止している。  あら、私は、いくつになったんだっけ?   節子さんは天井を見上げて眉を寄せた。天井の木目は何も教えてくれない。  八十を超えたの覚えているけど、何歳超えたんだっけ?   節子さんはしばらく考えて、八十四と書き込んだ。  たぶん八十四か五だ。一歳くらい間違えても怒られはしないだろう。  そう決めつけてから、いつから

          掌編集『球体の動物園』 たぬきおやじ

          掌編集『球体の動物園』 エミューの笑み

          「変なヤツが、うちのビルの屋上にいるみたいなの。ちょっと見に行ってくれるかな?」  社長から電話があったのは、俺が明日お客さまに渡す賃貸借契約書をちょうど書き終えて帰ろうとしていたときだった。  先に事務所を出た社長は、たぶんこのビルの向いにあるバーの窓際に座っている。いつものようにジントニックを飲みながら窓の外を見上げ、変なヤツに気づいたのだろう。 「了解しました。見てきます」 「大丈夫? 無理だったり、危なかったりしたら、こっちの携帯に電話して」  社長の声色からすると、

          掌編集『球体の動物園』 エミューの笑み

          掌編集『球体の動物園』 ゴリラVSイメージ

          「おい、ねぇちゃん、俺たちと遊ぼうぜ」  今どき珍しい声の掛け方をされたとき、私の頭の中を巡ったのは『ひとり暮らしの女性が、近所のコンビニでお弁当をひとつだけ買うのは危険です』という、昔どこかで読んだ忠告文だった。  今のこの状況のように、コンビニから跡をつけられたりするらしい。 「ねぇちゃん、可愛い顔してるな。仕事帰り? カラオケボックスでも行かない?」 「結構です」 「ふん、カラオケじゃなくてホテルでもいいぜ」  男二人は、私の左右に立った。コンビニの袋をぶら下げてる私の

          掌編集『球体の動物園』 ゴリラVSイメージ

          エロを小さじ1 《最終話》

          《最終話》そしてハッピーエンド? 「和牛のたたき」 「おこぜの唐揚げ」  池上貴明が予約してくれた小料理屋の、木の温もりのある個室に座ると、貴明と春香はメニューを覗き込み、次々と料理を選んだ。 「おくらの天ぷら」 「おっ、それ、僕も食べたかったんだ。あとは季節の野菜の炊き合わせ」  食の好みが似ている。そんな男と料理を選んでいるだけで、春香の心は踊った。  食べ物の趣味が合う人と向かい合って座る、食べる、飲む、話す、笑う。食べ物と二人の間の空気が絡まって、喉を伝い内臓に到達

          エロを小さじ1 《最終話》

          エロを小さじ1 《第十話》

          《第十話》 そろそろ幕を引きましょうか。 「ねぇ、今日来てた島春香って子、この島冬美のお姉さんだと思うんだけど」  小早川洋子は、夫の純也に顧客カルテを見せた。 「気になる態度だったのよね。明らかに私や参加者を馬鹿にしてるというか。うさぎ小屋に紛れ込んだ蛇みたいに目立っていたわ」  リビングルームのソファに深く座る洋子は、赤ワインを飲みながら、純也の顔を見る。  昼間、肉じゃがを作ったキッチンは綺麗に片付けられており、講習会でエロティックの素を参加者たちに吹きかけた黒服を着

          エロを小さじ1 《第十話》

          エロを小さじ1 《第九話》

          《第九話》博史もアレを忘れた 「あぁ、忘れてた。そうか。アレだったのか」  長谷博史はスマートフォンを持ったまま、ひとり呟き、ワンルームマンションの白い壁を見つめた。  今日、映画館から帰宅してから、博史は島冬美に何度もLINEを送った。 『冬美ちゃん、どうしたの?』 『僕、何か気に障ることを言ったかな? 変なことしたかな? もしそうだったら、教えてください』  返信がないので電話もかけた。電話にも出てくれなかった。  冬美の態度がなぜ急に変わったのか、博史には全く分からな

          エロを小さじ1 《第九話》

          エロを小さじ1 《第八話》

          《第八話》池上貴明と島春香 「なんとなくカラクリが分かってきましたね」  池上貴明が言うと、島春香は頷いた。  貴明と春香は、喫茶店でかれこれ二時間も話し込んでいた。 「まず男女とも、ネット上でアンケートに答えるのね」 「年齢や好きな異性のタイプを訊いて、カップルをおおまかに作成するため、だな」  貴明も春香もネットで講習会の申し込みをした。そのとき、住所、氏名、年齢、身長、趣味や好きな異性のタイプを記入したのだった。 「そしてA駅のマンションには、エロティックの素をつけ

          エロを小さじ1 《第八話》

          エロを小さじ1 《第七話》

          《第七話》池上貴明と運命の女 「背の高い女。ポニーテール。どこだ?」   B駅から電車に乗った池上貴明は、ゆっくりと乗客を見回しながら車両の中を歩いた。  身長約170センチ、目が大きくて、髪はポニーテール、ジーンズと黒のカットソーを着た女を探しながら歩いた。  今日、貴明が出会う運命の女。  さっきまで池上貴明がいたB駅前の雑居ビルの一室、ファシナンテの事務所には、貴明を含めて十人の男たちが集まっていた。 「ここにお集まりいただいたのは、本日、恋愛運が最高に良い方々です

          エロを小さじ1 《第七話》

          エロを小さじ1 《第六話》

          《第七話》冬美がアレを忘れた。 「しまった。あぁ、どうしよう。忘れてた」  島冬美は、長谷博史と待ち合わせの約束をしているコーヒーショップの数メートル手前、お洒落な雑貨店のショーウインドウに映る自分の姿を横目で見た瞬間に、血の気が引くのを感じて、立ち止まった。  ガラスに映る自分の姿を見たのは、デート前の最後の確認のつもりだった。  数日前に買ったフレアスカート。それが似合っているかどうかは、何度も試着して家の鏡で確認した。でも、歩くたびに揺れるスカートの裾、そこからのぞく

          エロを小さじ1 《第六話》

          エロを小さじ1 《第五話》

          《第五話》池上信男のときめき 「父さん、婚活したら?」  ある日、突然、息子に言われた。 「婚活? 父さんを何歳だと思ってるんだ。いいよ、そんなもの」  久しぶりに実家に帰ってきた息子と夕飯を食べていたときだった。  婚活? なんだそれ? 池上信男は唐揚げを喉に詰めそうになりながら笑った。  信男は、男手ひとつで息子の貴明を育てた。  妻が出て行ったとき、貴明は中学生だった。手がかからない年齢になっていたとはいえ、会社員として働きながら、食事の用意、洗濯掃除、学校行事の参加

          エロを小さじ1 《第五話》