掌編集『球体の動物園』 たぬきおやじ
近所の体育館で行われる『いきいき体操教室』の申し込み書に必要事項を記入していた節子さんの手が止まった。年齢という欄で、右手にボールペンを持ったまま静止している。
あら、私は、いくつになったんだっけ?
節子さんは天井を見上げて眉を寄せた。天井の木目は何も教えてくれない。
八十を超えたの覚えているけど、何歳超えたんだっけ?
節子さんはしばらく考えて、八十四と書き込んだ。
たぶん八十四か五だ。一歳くらい間違えても怒られはしないだろう。
そう決めつけてから、いつから