果てしない、五分の物語【ショートショート】
「ねえ、どこに行ってたの?」
僕は彼女に訊いた。
「どこ?」彼女は訝しげに目を細める。「お手洗いって言わなかったっけ?」
「君は確かにトイレの方向へ消えた。今から五分前に」
「どこかおかしい? 時間が短すぎた? 長すぎた?」
「時間が短いのか長いのかって、相対的な問題だよね」
「どういうこと?」
「五分という時間は、トイレに行くふりをしてこっそり裏口から出て、タクシーで港の倉庫まで行き、監禁していた人質を殺害するには足りないかもしれない。でも、ちょうど裏口のところにいる人間