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三奈乃の読書日記

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刺さった、心を揺さぶられた――そんな作品のレビュー集です。 ※イラスト/ノーコピーライトガール
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記事一覧

【短歌&ブックレビュー】「空白」(『世界でいちばん透きとおった物語』と「A先生」…

杉井光『世界でいちばん透きとおった物語』(新潮文庫nex)を読みました。 最近話題のベスト…

「音」のプロが切り取る人生の断面――櫟茉莉花さん『彼女達のピアノ』にエールを!

※このレビューは、わたしの敬愛する櫟茉莉花さんの傑作『彼女達のピアノ』へのエールです。 …

「幸福な子ども」という呪い――夢野寧子「ジューンドロップ」(第66回群像新人文学賞…

『群像』6月号に掲載されている、第66回群像新人賞受賞作・夢野寧子「ジューンドロップ」を読…

ファンタジーとしての市川沙央「ハンチバック」——第128回文學界新人賞受賞作を読む

 第128回「文學界新人賞」受賞作・市川沙央「ハンチバック」を読んでみました。 『文學界』5…

まぶたに残るうすみどり――川上弘美「栃木に飛んでいく」(『群像』2023年5月号)

 久しぶりに文芸誌を買った。 『群像』2023年5月号。 「追悼・大江健三郎」が目当てだった…

台北の風をあつめて――高妍『綠之歌(上・下)—収集群風—』

 今回は、台湾の女性マンガ家・挿絵画家である高妍の『綠之歌(上・下)—収集群風—』(臉譜…

「練習する時間」の輝き――乗代雄介『旅する練習』

 乗代雄介『旅する練習』(講談社)は、第164回芥川龍之介賞候補作です。ただ、惜しくも受賞には至りませんでした。  その代わりというのも変ですが、乗代さんはこの作品で、第34回三島由紀夫賞と第37回坪田譲治文学賞を見事ダブル受賞しています。  そういう意味で、話題作ということは間違いないのですが、わたしは何より『旅する練習』っていうタイトルが素敵だな、と思っていたんです。  それで今回、このずっと気になっていた作品を読んでみたのですが――  うわあ、わたし、泣いちゃい

永遠の瑞々しさと本格ミステリーー仁木悦子『猫は知っていた』

 仁木悦子『猫は知っていた』が出版された当時、作者自らが書いた広告文があります。版元は講…

今村夏子の衝撃——『むらさきのスカートの女』、『こちらあみ子』

 今村夏子さんと言えば、2019年、第161回芥川賞を受賞した『むらさきのスカートの女』(朝日…