情句百物語

【新米鬼二郎】 末成歳時記の季寄せ担当です。現代人にピンとくる歳時記づくりを目指しています。新しい俳句のあり方を考えるため、「情句百物語」を立ち上げてみました。ヨロシク!https://yeahscars.net/

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    • カッコいい俳句を詠みたいんじゃ!

      末成歳時記季寄せ担当の俳句修行日記

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    「軽み」と呼ばれる極意|俳句修行日記

     酔っぱらってハメを外したボクも悪いんだけど、「軽い人」と言われてショック。そのショックを引きずりながらドアを開けると、師匠が「どうした?」と聞いてくる。仕方ないから惨めな婚活を報告すると、「軽みは、この世界の誉め言葉じゃぞ」と。 「『軽み』ですか?」と問うと、それは俳聖芭蕉の境地だという。多くを語らなかったがために、三者三様の解釈が存在するが、それでも、「高みに連れ立つ論理に変わりはない」と、師匠のたまう。 「『軽み』とは思いやりの結晶のことでな、多人数で句をつなぎ合わ

      • 紫陽花や仔細語らぬ雨の中

        • 掛詞から縁語へと|俳句修行日記

           師匠の俳句はダジャレばっかり。先日、ソレは俳句じゃないと言う人がいて、反論できずに困り果てた。現代俳句では、掛詞さえも避けるという。 「和歌が命脈を保ってきたのは、掛詞の恩恵によるところが大きい。それは、短詩の表現幅を広げるとともに、遊戯性をも付与してきたんじゃ。じゃから、俳句の前身とされる俳諧では、『賦物(ふしもの)』としての言葉遊びに用いられることもあった。」 「しかしな、遊戯性が高度化すると、一般人には理解しようのない芸事に成り果ててしまうもんよ。そんな中にやって

          • こいし抱き茨の花は咲きにけり

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            切れとは何か|俳句修行日記

             上達しない俳句を嘆いていると、「おまえの問題はキレにある」という。「キレとは何ですか」と聞くと、俳句の三要素うんぬん。思わずあくびすると、「あした講義してやるから、竹刀を準備して待っとれ」と。なんですかそれ?俳句に竹刀が必要ですか?  ということで、あした限りの命かもしれません… 「竹の秋手を切ることもありにけり」  翌日、竹刀をスポーツチャンバラの小太刀に代えて、おそるおそる仕事場のドアを開いた。すると、腕組みをして仁王立ちする師匠の姿。  目を合わせることもできず、恐

            くちびるに触れてとけせぬ花氷

            季重なりのこと|俳句修行日記

             昨夜、師匠が帰ってからデスクで寝てしもて、出てきた師匠に「何ねこんどんのじゃ」と小突かれた。けど寝ぼけとって「ネコちゃう…」と口ごたえしたらしい。それで、次のお題は「ネコ」なって、「ねこんでも やねこいことは夢ならず」と詠んだ。  すると師匠、「ふざけるな」と大声出して、「こういうのがネコじゃ」と、他人の句を提示する。そんな中に、芭蕉の「猫の恋止むとき閨の朧月」というのがあった。ボクは、そこに勝利を確信して、「『猫の恋』と『朧月』で季重なりじゃないですか」と指摘すると、「季

            季語のはたらき|俳句修行日記

             次の記事のテーマを決めるから、俳句を詠めと師匠が言う。「ぱわ原に馬しか見るものなかりけり」とすると、「ぱわ原」とは何だと聞いてくる。「いなかの地名ですよ」とごまかすと、今度は季語がないと叱られた。本当は「鹿」を詠み込んだつもりなのだが…  そうこうしているうちに師匠と険悪になって、ムキになって「無季俳句だってある」と楯突いた。  師匠のたまう。「挨拶句である発句から発展してきた俳句の本質は、他者とつながり、共感することなんじゃ。そのためには切っ掛けが必要でな、体系化された季

            風そよぐ別れに薫るうしろ髪

            AI の中心で、愛をさけぶ|俳句修行日記

             業績がパッとしないことを咎められたので、「出る杭は打たれるといいますから」と言って反論した。そして、「日本は住みにくいところだな」とぼやくと、「イチローも大谷も日本型システムが育てたんじゃよ」と師匠が怒鳴る。 「ここは、伝承を重視しながらも寛容な国じゃ。出る杭は打たれると言い訳する奴は、最初から悔いることばっかり言う奴じゃ。挑むこともなく、甘い汁ばかり吸おうとしておる。そういう奴は、打たれる前に折れてしもとんのじゃ。信念をもって自らを貫き通す人間に、この国の人々は優しいよ。

            なつきたるのらの名を知る垣隣

            タブーと写生について|俳句修行日記

             ぜんぜん俳句が上達しない。酒焼けした師匠を横目に、「カッコいい俳句が詠みたいな」と独りごとを言うと、師匠は「おまえにゃ無理」と一刀両断。なんでじゃー(涙)  師匠のたまう。「かっこよさの第一条件は、自分の世界を持つことじゃ。」  ボクにも自分の世界があると主張すると、「いつも他人のことを愚痴っとるじゃないか。今も、ワシの悪口が聞こえてくるぞ。他人を評価することで自分の立ち位置を確認しているようでは、自分を生きとるとは言えんもんじゃぞ。」 「カッコいい俳句を詠みたいなら、日

            俳句と川柳|俳句修行日記

             世間はゴールデンウィーク。そのことを師匠に言うと、「何じゃソレ」と。声をあげてもダメならば、ボードに一句たたきこむ。 「あしたまた仕事メーデーメーデーと」  川柳に鞍替えしよかな… と言っても、川柳と俳句の境がよう分からん。師匠に聞くと、俳句は発句から生まれ、川柳は前句附をベースにしておる云々…。そんな古いむかしの誕生秘話じゃない、現代における二者の違いはどうなっとるんじゃ???  師匠のたまう。「絵にたとえるなら、俳句は静物画、川柳はポスターじゃ。俳句は、個人の美意識が

            新緑の風をはらみてしづかなる

            雨だれは相聞にして藤の花

            徒に咲く花ちぎりてや夢あわせ