秋(空き)時間さんの世界文学案内 第四十三回:指輪物語 J・R・R・トールキン作

 ホテルで浮気していた男が結婚指輪をなくしたことに気づき、必死で探す物語です。彼はその日ホテルですごした愛人の一人に指輪のありかを問いただしますが、愛人は知らないの一点張りでした。仕方がないので彼はとりあえず100均でパチモノの指輪を買って誤魔化すことにしましたが、妻にバレるのは時間の問題です。男は一体どうなってしまうのでしょうか。乞うご期待!

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孤独の分け前(『虎に嚙まれて』『カルメン』『B・Fとわたし』/ルシア・ベルリン)

ミルクティーは甘いものだと思っていた。そのとき提供されたものはまったく甘くなく、とはいえ苦くもなく、幸せな夢がふいに途切れたような、そんな味。甘くしたいなら砂糖を追加すればいい話だが、そのときのぼくは、今から読もうとしているルシア・ベルリンの短編に丁度いいと思った。



ほんのわずかな慰めを得るためなら、人はどんなことでもするだろう。

――『虎に嚙まれて』より引用

群像の6月号に、『掃除婦

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ブッカー賞最終候補作。ナイジェリアの神話を取り入れた大長篇『小さきものたちのオーケストラ』(チゴズィエ・オビオマ)

デビュー作『ぼくらが漁師だったころ』(早川書房刊)でブッカー賞にノミネートされ、アフリカ文学の新星として注目されたチゴズィエ・オビオマ。その長篇第二作『小さきものたちのオーケストラ(原題:An Orchestra of Minorities)』を7月に刊行します。

US版書影

●あらすじナイジェリアの貧しい養鶏家の青年チノンソは、富裕層の女性と恋に落ちた。彼女と結婚するため全財産をなげうってキ

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ありがとうございます!『名探偵ポアロ オリエント急行の殺人』もどうぞ!
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秋(空き)時間さんの世界文学案内 第四十二回:チップス先生 ジェームス・ヒルトン作

 先生!いい加減本当のこと言ってくれよ!俺たち明日刻まれて揚げられちゃうんだろ!なんで言ってくれないのさ!先生答えろよ!今まで『君たちは俺が守る』とか言ってだのは嘘だったのかよ!先生!先生ってば!

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海外文学27作品の翻訳101冊を読み比べてわかったこと

日本は翻訳がほんとうに盛んで、海外文学の古典といわれる作品にはたいてい複数の翻訳があります。たくさんの翻訳があるということは、読者が選ぶことができるということですが、すべての翻訳を比べて自分に一番合うものを読んでいるという人はなかなかいないのではないでしょうか。

そういう機会を提供したいという思いで、以前はてなブログで「世界文学全集のためのメモ」という企画をやっていました。手に入る翻訳を全部比べ

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短編小説は世界を認識する最も確実な方法なんだ

 大学時代の友人と久しぶりに飲んでいたらふと彼がこんな事を喋り出した。

「短編小説こそ、世界を認識する最も手軽かつ確実な方法なんだ。君は長編小説の方が世界を認識できると思ってるかもしれないだろうけど、実は長編小説で世界を認識するのは非常に困難なんだ。長編はその膨大な文章で説得力のある論理を積み上げているので一見世界の全てがそこに書かれているように思える。だけど、その書かれた世界とはあくまで俯瞰で

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ヘルベルト・キルヒガーの罪

久しぶりに読んだら面白かったので一応紹介します。

ノーベル文学賞候補と言われている作家が友人から告発されてしまいました。その内容がこちらです。画像はなぜかトーマス・マン。いかにも文豪って感じですよね。
https://note.com/natujikan/n/nb7e6093c6146

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秋(空き)時間さんの世界文学案内 第四十一回:退屈な話 アントン・パブロヴィッチ・チェーホフ作

 退屈な話というのは概してあくびの出るような話だが、中には果てしなく陰鬱な話もある。この小説は後者の方で、もはや老境に差し掛かった老人が人生への諦念を淡々と語っているものだ。この小説の最後で老人は彼に別れを告げてきた若い女性に対して「かけがえないひとよ」と哀切を込めた言葉をかけるが、それは彼女がこの老人の幸せとは到底いえない人生にとって唯一の希望であったためか。さてこの老人がそれからどうなったのか

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秋(空き)時間さんの世界文学案内 第四十回:チャタレイ夫人の恋人

 この小説はいわゆるわいせつ文学として発表当時は毀誉褒貶の大スキャンダルになった作品ですが、今読むとそのわいせつ描写は、無修正のAVや同人イラストなどが蔓延するこの現代では、非常にたわいのないものに感じます。ロレンスがこの作品で訴えたた性の自由というテーマはさておき、文章表現におけるわいせつ表現というテーマに絞って考えると、はっきりいって、この小説のように文章でどんなにわいせつな事を書こうが、直接

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