KAORU

渡邊 薫 小説や詩を書いています。恋愛ものやファンタジー。パラレルワールドも好き。

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    全てはある妖精に出会ったことから始まった。 これは、はたして単なる冒険の物語だろうか。 異世界への扉。パラレルワールドに飛び込むことが出来たなら、どうなるのだろう。 自分自身はどう感じ、どう行動していくのだろう。 あるはずがない。 凝り固まった頭では、決して覗くことのできない世界。

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【詩】こぼしたもの

全ては完璧だった 欲しいものは持っていた だけど 胸に穴が空いているかのよう 空っぽみたいだ 追いかけすぎて 必要なものをこぼしてしまったのかもしれない こぼしたことにも気付かずに それが何だったかもうまく思い出せずに ただ 空っぽの胸を眺めてた 何かを追いかけていたけれど それも思い出せずに 何かをこぼしたけれど それも思い出せずに ただただ眺めてた 全ては完璧だった 僕は完璧だった

    • 第七話 個展 数ヶ月後、個展の会場でゆきは準備を進めながら言った。 「初めての個展にしては、中々良いものが出来たと思う」 「すごく良いよ」 あきは仕事の休みを調整して、個展の初日の手伝いに来ていた。 ゆきの提案した通り、入口最初の場所には、あきの詩が飾られた。 ただ、あきの要望によりその詩は小説の見開き程の大きさで、会場の壁に対してかなりこじんまりとしていて、主張する事なくただそこに佇んでいた。  ゆきはもう少し大きくしたいと

      • 第六話 あき ゆきはある夜、ソファでだらりと倒れ込み、悩む様に言った。 「なんか、個展今のままじゃ物足りない気がする」 「何で? 良い作品ばかりだと思うよ」 「なんていうか、パンチが足りない。良いとは思うけれど普通かなぁ。って、思ってて。せっかくやるならもっと面白くしたいなぁ。自分ももっと楽しめる様な」 「君の作品はメッセージ性が強いから大丈夫だよ」 「……」 ゆきは少し沈黙した後、飛び起き、目を輝かせながら言った。 「そう

        • 第五話 幼い頃の夢  家に帰り、お風呂場から出てきたゆきは、テーブルに綺麗に並べられている夕飯に目を輝かせた。 「わーい! パスタだ! この魚介のパスタ大好き! タコもイカも、貝も大好きだし、はぁ〜、良い香り。海の香りだ」 「海の香り?」 「うん! 私、海の食べ物大好き! お魚も大好きだし、カニとかエビも好き。あ、でも山の食べ物も大好きだなぁ。きのことか、栗とか、蜂蜜も美味しいよね」 「君は食いしん坊だね」 「あと、卵も好きだし、いち

        【詩】こぼしたもの

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        記事

          第四話 予定調和 それから数ヶ月、ゆきは作品をいくつか描き上げた。 あきをアトリエに呼び、アトリエで作品をみてもらっていた。 雨のよく降る日だった。 「ねえ、私の作品どう?」 少しだけ不安そうにゆきは尋ねた。 あきは微笑み、 「君の不思議で神秘的な世界観がすごく表現されていると思うよ」 「この中から個展用に何点か選びたいの。どれが良いかなぁ?」 そう聞かれて、あきは一つ作品を指差して言った。 「……これなんかはどう?」

          第三話  退屈と謎解き迷路ゲーム ゆきはソファにパジャマ姿で寝転びゴロゴロとしていた。 「……退屈」 黒猫のジャスミンは、遠目からゆきを眺めてからソファに近寄って来た。 ゆきはジャスミンが座れる様に体を起こし、手を招くようにして自分のそばへと呼んでみた。 ジャスミンはその様子を見て、ゆきと少し距離を取りながらソファに飛び乗りうずくまって目を瞑った。 「ねえ、ジャスミン。今日は何をしよっか。今日は絵を描く気分じゃないし、あき

          第二話 アトリエと思い込み それから数日後、約束通り二人はアトリエに来ていた。 「へ〜。ここが君の作業場なんだ。すごく開放的で気持ちのいい部屋だね」 あきは興味津々に部屋を見渡していた。 「うん。日差しが沢山入る部屋はこだわって探したの」 「いいね。自分だけの空間。邪魔になったらいけないと思って遠慮していたけれど来る事が出来て良かった」 ゆきは驚いた様子であきの方へと振り返った。 「え? 遠慮してたの?」 「だって、君の大切な場所

            【あらすじ】 真っ白な建物に、作業台に並べられた画材道具。その場所で一人、黙々と作品を作り続けている彼女の名前は『ゆき』。 彼女は髪を一つにぎゅっと結い、アトリエで今日もキャンバスに想いを込めるように描く。 ゆきは、アトリエから徒歩圏内でモデルの彼氏と同棲をしていた。 名前はあき。整った顔立ちをしていて、モデルの仕事をしている。背はスラリと高く、普段はクールだと言われることが多かった。 けれど、ゆきと一緒にいる時の彼は、友人が想像できないであろう程に甘く、

          二羽の鳥

          第二話  二羽の鳥 私は見つけたんだ。 彼らの存在を。 私は有能な彼を口説き落とした。 研究をさらに押し進める為に。 私はテレビと会話ができる。相互間での意思疎通だ。彼らが返事をしてくれるのは、いつも気まぐれだが。 彼らとは、単純にテレビに映っているタレント等を指すのではない。意思疎通のできる何者かだ。テレビや電子機器を通して私とコンタクトを取る。 向こうに住む彼らは独特の言語を使う。いや、その言い回しは正確ではない。 同じ言葉を使うが、こちらの世界とは意味合いが違

          二羽の鳥

          BUT LOVE ME

          【あらすじ】 とある詩人の話。 彼は、開けてしまう。 パンドラの箱を。それは本当に開けてはいけないものだったのか。 彼の思考を共有し、壊れてしまうのは、誰の意識なのか。 現実と彼の思考を行ったりきたり。最後まで正気でいられるのは誰なのか。 第一話 だけど、僕を愛して ——僕は開けてしまった パンドラの箱を ただ、興味が勝った。 理由を聞かれると、沢山のまとわりつく言い訳を引き剥がすと、そんな単純な事なのかもしれない。 けれどそれは、踏み入れてはならないものだった。

          BUT LOVE ME

          第六話 鳥 鳥は、優雅に、軽やかに空を飛ぶ。 あんな風に私も飛べたなら。 今日も、鳥を羨んで空を見上げる。 彼と二人暮らしを始めて、朝起きて、隣に好きな人がいる幸せを噛みしめていた。 何気ない時間が幸せだ。 休日は映画を見たり、お散歩をしたりして一緒に過ごした。 私はサスペンスやホラー映画はあまり今まで観なかったけれど、二人暮らしを始めて、彼と一緒に観るようになった。 怖いものは苦手だったけれど、頭から布団をかぶって少しだけ顔を出して観ていればある程度大丈夫だっ

          猫と飴

          第五話  猫 猫は、可愛いと思う。 けれども僕は、猫を飼った事がない。 猫は、僕の事を好きになってくれるのだろうか。 一時期、野良猫が懐いてくれた事はあるけれど、きちんと飼った事はない。 猫は爪とぎをするという。 あちらこちらボロボロにされるのだろうか。 可愛いから、結局ボロボロにされても許してしまうのだろうか。 猫にきっと悪気なんてない。 そもそも、こんな僕にちゃんと懐いてくれるのだろうか。 ペットショップに立ち寄り、猫を連れて帰りたいという気持ちと、上手くいかな

          猫と飴

          猫と私

          第四話  猫と私とそれから それから数年後…… 僕らの過ごす日々はほとんど変わらなかった。 ただ一つ変わったのは、僕らの関係性で、何を言わずとも一緒にいるのが当たり前になった事だ。 彼女は社会人になり、仕事を始めてもう数年経つ。 彼女は会うたびに色鮮やかなワンピースや柄物のワンピースで僕の前に現れた。 鮮やかなワンピースを着るようになった彼女は、今でも僕の想像のつかない事を突然思いついて喋り出す。今日もいつもの調子で、急に思い立ったように言った。 「私、舞台の台本とか、

          猫と私

          私と猫

          第三話  私と猫 私は美しいものが好きだ。 幼い頃から、可愛いものが好きだった。 キラキラしたものが好きだった。 私は子供の頃から、お姫様に憧れていた。 フワフワと広がるドレスに、キラキラと光る装飾の施された美しいお城で、毎日を過ごす。 きっとベッドはフワフワで、とても良い香りがする。 可愛くて美味しそうな、ちょこんとしたケーキと、綺麗なカップに注がれた紅茶でティータイムをする。 あとは…… お姫様になった事がないから何をしたら良いのか、分からない。

          私と猫

          私の宝物

          第二話  私の宝物 私はきっと、良い母親ではなかった。 私は二十七歳で三年ほど付き合った彼と結婚した。 その年にすぐに妊娠して、一人の男の子が生まれた。 出産した病院からその子を連れて帰る時に思った。 こんな可愛い天使を連れて帰って良いなんて。 私が妊娠して、私が産んだ子だ。 もちろん良いに決まっているけれど、物凄い贈り物だと思った。 とても幸せだった。 この子が三歳になる頃に、夫の海外赴任が決まった。 夫について行こうか迷ったけれど、数年で戻るという言葉を信じて、こっ

          私の宝物

          猫と手紙

          《あらすじ》 順風満帆に生きてきた主人公の僕。ある時、ふと自分の人生に疑問を抱く。 何を求めて生きてきたのか。そんな疑問を抱えながら日々を送っていると、とある小柄な女性に出会う。 自分とは違う考え方を持つその女性と一緒にいることで自分の過去、自分の本心、いろいろなものに向き合うようになる。 第一話  猫と手紙 僕は眺めていた。自分の人生を。 たぶん、順風満帆。 そういう人生だ。 学生時代はそれなりにモテてきたし、勉強も嫌いじゃなかった。 そんなに頑張ってやらなくて

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