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GUILTY&FAIRLY

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全てはある妖精に出会ったことから始まった。 これは、はたして単なる冒険の物語だろうか。 異世界への扉。パラレルワールドに飛び込むことが出来たなら、どうなるのだろう。 自分自身は…
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GUILTY&FAIRLY 『紅(あか) 別の世界とその続き』著 渡邊 薫     

GUILTY&FAIRLY 『紅(あか) 別の世界とその続き』著 渡邊 薫     

第七話  買い物

買い物はとりあえずこの間、出掛けた時に見かけた肉屋に向かった。

外食はまだ落ち着かない。何か食材を買って帰ろうと思った。



肉屋に着くと、店の一番良いステーキ肉を指差して

「これを二枚ください」

と言ってみた。

店主は

「特選ロース二枚だね」と言って、肉を包み始めた。

いつもなら、何かのお祝いや自分へのご褒美の時に買う肉だったが、お金が要らないならと贅沢に二

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GUILTY&FAIRLY                                        『蒼(あお) 彼女と描く世界』     著 渡邊 薫    

GUILTY&FAIRLY 『蒼(あお) 彼女と描く世界』     著 渡邊 薫    

《あらすじ》
この世界は人間と妖精が共存する世界だ。
妖精のリリーは、偶然見かけた人間のジャンに興味を示し、仲良くなる。
ある日リリーは、森にあると噂の異世界へと繋がる扉の話をする。そこへ行こうとジャンを誘うが、そんなものはないだろうし、仕事を放って行く事なんてできないと断られてしまう。そんな中、異世界への扉は存在すると主張する人物に出会い、物語は動き始める。

第一話  美しい世界

「君はい

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GUILTY&FAIRLY 『蒼(あお) 彼女と描く世界』    

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第二話 ジャンとリリーの出会い

リリーがジャンの家の隣の木の上に、家を作って二週間ほど経った日。

いつもなら眺めるだけのリリーは、ジャンがコーヒーを飲みに仕事場から席を外した隙に、窓から仕事場にこっそりと入ってみた。

ジャンの仕事机に仁王立ちで彼のデッサン用紙を見ながら言った。

「今日は全然、デッサン進んでないじゃない」

そう言って、ジャンが先ほどまで握っていた、リリーの身長の三分の二

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GUILTY&FAIRLY                                        『蒼(あお) 彼女と描く世界』     著 渡邊 薫    

GUILTY&FAIRLY 『蒼(あお) 彼女と描く世界』     著 渡邊 薫    

第三話 ウィリアム

ジャンのオーダーメイドの洋服屋に今日もお客さんがやって来ていた。

「こんにちは〜。例の服、出来たかな?」

ひょっこりとジャンのお店にやって来たのは、もっさりした髪、流行には疎そうな四十五歳の背の低いオヤジだった。

彼は隣町で飲食店を営んでいた。

ぽってりと膨らんだお腹には、緑色のウエストポーチ。

上に来ているボーダーのポロシャツと同じ色だ。

緑色が好きな飲食店の

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GUILTY&FAIRLY 『蒼(あお) 彼女と描く世界』 

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第四話 オリバー

緑色のジャケットを手に入れて、ウィリアムは上機嫌だった。

早速ジャケットを仕事場に着て行って、お店をお勧めしてくれた従業員の女の子に見せた。

「君に言われて、早速作ってもらったけれど、どうかな?」

「素敵です! とても似合っていますよ!」

ダークブラウンのボブヘアのアンナが答えた。

アンナは二十九歳で、ウィリアムとは年齢は離れていたが仲が良かった。

すらりと手足の

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GUILTY&FAIRLY 『蒼(あお) 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫   

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第五話 リリーとオリバー

ウィリアムは注文していたパンツを引き取りにまたジャンのお店に来ていた。

「この間注文していたパンツを取りに来たよ。最近は全然良いことがなくってね。この日をどんなに楽しみにしていた事か」

ジャンは店の奥の方からパンツを取り出して来て手渡した。

「そうだったんですね。でも、髪型まで全然変わっていてとても充実しているように見えました」

ウィリアムは髪をかき上げながら

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GUILTY&FAIRLY 『蒼(あお) 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫   

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第六話 オリバーの家

オリバーは家に帰ると、また資料を広げてメモをしたりブツブツと独り言を喋っていた。リリーは、オリバーの部屋にこっそりと入りその様子を眺めていたが、とうとう声を掛けた。

「その森の地図は本物?」

オリバーはびっくりした様子で声のする方へ振り返った。

「びっくりした! いつからそこに居たの? 勝手に僕の部屋に」

「さっきのお洋服屋さんであなたの事見つけてついて来たの。あ

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GUILTY&FAIRLY 『蒼(あお) 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

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第七話 説得

リリーは困っていた。

オリバーにはジャンが乗り気ではないことを言えなかった。

多分あのオリバーの雰囲気では、ジャンが乗り気ではないと言ってしまうと仲間には迎え入れてくれそうになかったからだ。

オリバーが洋服を取りにお店に来てしまう前に、ジャンをその気にさせておかないと、きっとこの話は駄目になってしまう。

リリーはなんとか説得させる方法を考えていた。

「だって……。ジャン

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GUILTY&FAIRLY 『蒼(あお) 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

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第八話  冒険への準備

「リリーが言っていたのって、この間洋服を注文してくれた、あのオリバーって人だよね」

「そうよ。すごく沢山の資料を持っていたの!」

「変わった服を注文すると思った。きっと森に出掛ける準備だったんだね」

「いつお洋服を取りに来るの?」

「仕上がった連絡も入れているし、そろそろ来る頃だと思うけど」

そう噂話をしていると、店のドアが開いた。

二人は、もしかして。と言

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GUILTY&FAIRLY 『蒼(あお) 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

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第九話  ジャンとオリバー

それから三日後にオリバーはジャンの店に現れた。

「どうも。洋服を取りにきました。……それから……話はリリーから聞いていると思うけれど、どうかな?」

そう聞かれて、ジャンは少し緊張しながら聞き返した。

「……あの、森の事ですよね?」

「ええ。本当に森に行く覚悟はありますか?」

「もちろん。怖くなんかない。覚悟は、あります」

「……君自身で決めたのか? それ

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GUILTY&FAIRLY 『蒼(あお) 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

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第十話  約束の日

「オリバー、いつ来るのかなぁ」

「さあ。時間を言ってくれなかったからね。僕にも分からない」

二人は、準備万端でいつでも出られるようにと待ち構えていた。

店の看板は閉店になっていて、『しばらくの間休業させていただきます』と張り紙がされていた。

時計が十時を回った頃、店のドアが開いた。

「オリバー!!」

「やあ、お待たせ。ちょっと店に寄ってきたから遅くなったよ」

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GUILTY&FAIRLY 『蒼(あお) 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

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第十一話  二つ目の森



交代で仮眠を取り、持ってきていたフルーツサンドなど食事も摂ってみんな一日目の疲れが取れた様子だった。



荷物を片付けて、オリバーがみんなを集めて次の森の説明をした。

「みんなしっかり休息も取れて食事もして万全な体制だと思う。次の森は【強欲の森】と言って、身体感覚優位な人が特に影響を受けやすい森だ。特に味覚部分に反応する。森に入る前のテストだとウィリアムが特

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GUILTY&FAIRLY 『蒼(あお) 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

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第十二話 ウィリアムの目的

「どこまで行ってたんだい。遠くまで行くなと言っただろう」

「ごめんなさい。でも、食べたりしていないから」

「それならいいけど、今の所危険もなさそうだし、そろそろ休憩にしよう。何も食べないで歩いていると、逆に不安だからね」

「それは嬉しい。美味しそうなものばかり見て、さっきからお腹が鳴っていたんだ」

みんなは生クリームが垂れている大きな木の下で荷物を下ろして食

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GUILTY&FAIRLY 『蒼(あお) 彼女と描く世界』 著 渡邊 薫    

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第十三話 最後の森

少しずつ辺りの景色が変わり、ただの森へと姿を変えていった。

「意外と大丈夫だったね、二つ目の森」

「ああ、二つ目の森はもしかしたら使いようによっては、いいものかもしれない。今は留まっている暇はないけどね」

地図を見ていたオリバーが急に立ち止まり言った。

「ちょっと待って」

「どうしたの?」

「この辺から、ちょっと曖昧で」

「……君が分からないと、誰もこの先なん

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