sori
検証、考察、まとめなど、中の文章を読み飛ばしても内容把握に差し支えないもの。 また、小説は掌編以下が目安。
それなりに腰を据えて読む分量。 短編以上が目安。
「見つけてくれてありがとう」慕っている配信者が時に嬉しそうに、時に畏まって口にしていた言葉。 クリエイターにはきっと身に染みる感慨。 だって、スマホひとつでもはや誰もが表現者。 好きを気軽に晒せるようになったことは、それを強く押し支えてくれている。 好きを気軽に探せるようになったことは、やっぱりそれを強く押し支えてくれている。 好きなものを好きと言えるのは幸せなことだし、好きな人に好きを伝えられるのも幸せなこと。 その意味なら、幸せはわりと気軽な距離まで近づいてきて
「じゃあ告白だってことがそもそも伝わってないわけか。ならリハーサルも済んで、あとは本番で決めるだけだろ」 「その科白、一度でも告白してきてから言ってもらえます?」 「すればいいのか? じゃあするわ」 「へっ? 今?!」 「えっ?!」 「……あー。何か、ごめん」 「……あー。こちらこそ」
「ふえぇ」 「どした?」 「デート中につい彼を押し倒しちゃって」 「攻めるね」 「で、キスしたら彼が発作起こしちゃって。……男性アレルギーとか」 「そこまで男勝り極めなくても」 「アバターだってかわいい女の子だったのに!」 「メタバースで?! あんたの彼氏のファントムセンスも相当だわ」
「病み上がりが鼻が利かなくて」 「なことで来んな。私はあんたの恋人に恨まれたかない」 「彼女はそんなことしないよ。それよりこのままじゃ彼女がどんな匂いか分からない」 「逆に考えたら? 匂わなくていいの。いざ臭かった時、思わず傷付けなくて済むと」 「臭いの?」 「そこは否定しないのか」
「あんた一年中半袖だけど、寒くないの?」 「たまに寒い。だが俺の童心は屈しない。冬にミニスカートを穿く心意気にだって負けない!」 「その癖、シーズンイベントとかの飾りつけにはやたら熱心よね」 「自らの行動に因って実感するんだ。豊かに巡る季節の中で生きているんだと」 「一年中半袖でね」
「衣替えを年に一度だけするって人が居てさ」 「一年で季節が一巡しきってないの?」 「それか地下とか極地とかみたいなところとを行ったり来たりしてたとかかな」 「あー、普段は海に出っぱなしの船乗りとかもか」 「まあどちらにせよ昔の話なんだけど」 「季節が巡ってたなんてさ、本当なのかなあ」
「たまには衣替えしてみようと思うんだ」 「まあ衣替えはたまにするものだな」 「何が良いと思う?」 「何って、暑いか寒いかで決まるだろ」 「今が唐揚げだから、竜田揚げだと芸が無いか。……するとチキンカツか、とり天か」 「それならチキンカツだな」 「何でさ」 「寒いと厚着したくなるだろう」
「プレイ中にさあ、『ここって性感トンネルだよね?』って訊いたんだよ」 「最低かよ。相手ドン引きだろ」 「いやそれが『生誕トンネルだよ馬鹿』って一笑されてさ。で、思ったんだ。俺、この人と結婚しよう、生涯を懸けて大切にしようって」 「聞きたくなかった経緯だが、何はともあれお幸せにな!」
「で、私のこと生涯を懸けて全身全霊で愛してくれるって。だから、この人ならって」 「惚気か」 「半分はね」 「残り半分は?」 「あの、ね。私の、その、全身をね、全霊で、隈なく」 「愛されちゃった?」 「……」 「えっ? あっ、あー、うん。ちょっと引くけど、羨ましくはあるか? ……あるか」
「天使って、よく何とかエルって云うじゃん」 「まあ例外もあるけど大体そうかな」 「でしょ? それならヤマトタケルも天使でいいんじゃねって」 「あー、確かにエルっちゃエルか。時の天子の勅使だから、天使っちゃ天使だけど」 「ほらね!」 「うーん。解釈違いも、実質天使で、……まあいいか」
「栗は桃と同等の活躍が見込めると思うんだ。柿が実るまで待てないにしても、栗太郎なら桃太郎に遜色なかろう。それに桃はデリケートだが、栗は硬いし鋭い」 「川上から大きな栗と桃が流れて、お前が婆さんならどちらを優先するよ?」 「……栗よ、お前は強過ぎた」 「栗には猿退治があるじゃないか」
「かわいい子を撫でて愛でたい。いやこの際、撫でられる方でも構わない」 「そういや子供の頃、坊主頭だったんだけど、クラスの女子や近所のお姉さんにやたら頭を撫でられてさ」 「その手があったか!」 「いやさすがに歳を考えろ」 「だから俺がかわいくなって撫でたらいいわけだろ?」 「んんん?」
「ねえ。私、栗拾いに誘われたのよね?」 「うん。確かに栗拾いに誘ったよ?」 「じゃあ何で尻拭いに付き合わされてたの?」 「君にしか頼めなかったからさ」 「いや栗どこよ?」 「それが火の中だからさ。お蔭で早く片付いて僕たちはいいお肉を囲んでるんじゃないか」 「次はお肉だけにして欲しいわ」
「夢を見たの! 私が関西弁ネイティブになってたの。私、関西弁に憧れがあるでしょ」 「知らんけど」 「でね、そりゃあもう流暢な関西言葉が次々口を衝いて出るの。立て板に水!」 「で、起きたら」 「この様ー」 「そりゃ大阪の夢だね」 「大阪弁の夢だよ」 「京の夢でもある」 「京都弁もいいね!」
「ここに行き倒れと食い倒れがいます」 「また極端なビフォーアフターを」 「天下の台所ではどちらがより地獄でしょうか?」 「どっちのお腹にもハイカロリーはリバース必至。匂いでも拷問。決めた。両方。なぜなら私が二人の前でたこ焼きお好み焼き串カツをこれ見よがしに食べるから」 「鬼かお前は」
「プラネタリウムは他にもあるのに、どうしてここだったの? あ、もしかして初デートの場所? ……じゃあ二人が出会った運命の場所か」 「私たちにってよりも、プラネタリウム好きにとって特別なの。パパはね、日本でプラネタリウムが始まったこの場所から二人の新しい関係を始めたかったんだって」