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とうもろこしも神様。特別展『古代メキシコ マヤ、アステカ、テオティワカン』
子どもの頃に見た、アニメ『アンデス少年ペペロの冒険』。「黄金のコンドルよ~♪」のオープニングソングと、ラストの黄金のとうもろこしエピソードは、なぜか強烈に印象に残っています。特別展『古代メキシコ』。ようやく行くことができました。
とはいえ、今のメキシコっぽいイメージは、大好きな岩本ナオさんの『マロニエ王国の七人の騎士』の動物の国。ここでジャガー王と対面できる期待に、わくわくして出かけました。
「14億分の10憶」のリアル『中国農村の現在』田原史起
読む前から、間違いなく田原先生の本なら面白いだろうなと期待させられる本。そして、実際隅から隅まで面白かったです。タイトルは、シンプルですが、サブタイトルは習近平を書いた、こちらの本を意識したものですね。
田原先生が中国関係の仕事を初めた頃、中国は8割が農民人口だと言われた発展途上国。今では都市化率60%以上とも言われますが、都会に住んでいても実家や戸籍が農村にある人は70%くらいでざっと10憶人
耽美をめぐる社会情勢と魅力『BLと中国』周密
以前から興味を持っていた分野なので、すごく読みたかった本ですが、発売前から重版がかかるほどとは。ドラマ『陳情令』の原作『魔道祖師』や『天官賜福』の作者・墨香銅臭さんのインタビューが掲載されていた『すばる』2003年6月号もすごかったですから、当然といえば当然なのかも。
さて、周密さんの『BLと中国』は、日本でいわゆる「BL」とされる物語が、中国では「耽美」(Danmei)と呼ばれている、その語源
台湾の伝奇ミステリー『守娘』小峱峱
表紙の美麗さに、迷うことなく入手した台湾のコミック。水墨画のようで、ちゃんとマンガだけど、アーティスティックな線描写がとてもステキです。時代は清朝。日本でいうと、江戸時代。日本の植民地になる前のお話。
台南の杜家の娘・潔娘(ゲリョン)はやさしい兄に可愛がられて育ちました。当時としてはめずらしく、読み書きができて、纏足をしない。これだけ聞くと客家っぽいですが、周りの親戚はそれをよく思っていないのが
【鳥取】はわい温泉を堪能する
怒涛のお仕事月間で、疲れ果てる年度末。本当なら帰省して、故郷の温泉に浸かりたいのですが、今の状態で長距離移動は無理。そんなわけで、近所の銭湯をはしごしつつ、昨年9月のはわい温泉の写真で自分を慰めようと思います。
倉吉からはわい温泉行きの路線バスに乗って、民宿鯉の湯さんへ。冬のお料理が有名みたいですが、9月だったので季節外れかな?と思った私は、朝食のみで予約。秘湯のジュリエッタさんの記事をマネて、
『東洋の至宝を世界に売った美術商ーハウス・オブ・ヤマナカ』朽木ゆり子
京都の泉屋博古館にいくと、とんでもなく古い青銅器がたくさんあって、しかもそのうちのいくつかは、世界で2つか3つのうちの1つだとか学芸員さんに教えてもらって腰を抜かします。そんなものが、なんで日本にあるのかと驚くのですが、よくよく考えると清朝末期に多くの国宝が流出したことは映画『ラスト・エンペラー』でも、陳舜臣さんの直木賞を受賞した小説『青玉獅子香炉』でもおなじみでした。
あとは、何気なく読んでい
金沢の「和」を堪能する女子旅
今、旅行をするなら、やはり金沢。阪神淡路大震災体験者としては、些少なりとも復興支援に協力したいし、サンダーバードは金沢まで行けるもの最後になるし、和菓子大好きだし。ということで、2月下旬、友だち&娘の3人で「古都」を堪能してきました。
さて、私のおめあては菓子木型美術館。行ってみると、和菓子の加賀藩御用菓子司森八さんの2階にあって、かなりプライベート空間なことにびっくり。でも、ものすごく見応えあ
ノスタルジー上海。『長恨歌』王安憶(飯塚容訳)
予備知識ゼロで手に取った、王安憶の長編『長恨歌』。白居易の『長恨歌』と同じ名前の現代小説なんて、一体どんなだろうと読み始めたのですが、独特な文体にあっという間に引き込まれました。彼女の文体は、中国で「評論叙事文体」と名付けられたそうです。
凝った表現や、美麗な修辞でもなくて、一文、一文はシンプルで短いのに、それが一つ、また一つと連ねられると、他の誰とも違う雰囲気を醸し出す不思議。例えば、冒頭はこ
ホームドラマみたいなドキュメンタリー映画『◯月◯日、区長になる女』2024年。
たまたまSNSで宣伝見つけて、家族で見に行きました。久しぶりの大阪十三の第七藝術劇場は、別の映画の監督さんの舞台挨拶があったせいか、エレベーターフロアに人だかりで身動きとれないほど。『夢見る給食』のオオタヴィン監督の舞台挨拶だったそうです。
そういえば、日本のだし文化と、素材を生かした料理のすばらしさを撮ったドキュメンタリー映画『千年の一滴』もこの映画館で見たんでしたっけ。
さて、この『◯月◯
知らなかった日本のタイル文化。『和製マジョリカタイル―憧れの連鎖』INAXライブミュージアム
先日、台湾の彩色タイルの本を買って、ちょっとづつ楽しみながらパラパラめくって読んでいたら、ふと似たようなタイトルの本が目にとまりました。それが、本書『和製マジョリカタイル――憧れの連鎖』。愛知県常滑にあるINAXライブミュージアムというところが出版したもので、本というより博物館の展示の図録に近いです。
「和製マジョリカタイル」というのは、大正初めから昭和10年代に日本で生産された多彩色タイルのこ
【香港島】天官賜福。筲箕湾の道教寺院(廟祠)めぐり。
2023年夏、仕事ででかけた香港島。せっかくの機会に、飛行機までの半日を観光しないわけにはいきません。早朝から、トラムに乗って香港島を横断して、終着点の筲箕湾の道教の廟めぐりをしてきました。目的はなく、単純にトラムにのって散策したかったので。
ちょっと想定外だったのは、地下鉄に比べて(当たり前だけど)2階建ての路面電車トラムはゆっくりだったこと。ほぼ西端からスタートしたので、反対側の終点まで1時
日露戦争に人生を狂わされた男たちの物語。映画『ゴールデンカムイ』2024年
オープニングのすさまじい二〇三高地のシーンから、主人公の杉元とアシㇼパが出会い、困難を乗り越えて相棒(バディ)を組むまで。この映画は、壮大な物語の「序章」です。内容は原作のテイストそのままですが、なんといっても生身の俳優さんたちがくりひろげるアクションシーンがすばらしい。そして、合間、合間に広がる試される大地、北海道の雄大な景色。映画ならではの表現で、原作の世界を存分に表現しています。
タイトル
大あたりのコメディ映画『宝くじの不時着~1等当選くじが飛んでいきました』韓国、2022年。
ヒット作があれば、パロディがつくられる。これは小説でも映画でも同じようです。パロディ作品については、当たりもあれば外れもあるので、宝くじみたい。超有名どころでは、小松左京の『日本沈没』と筒井康隆の『日本以外全部沈没』でしょうか。
さて、韓国ドラマの超ヒット作『愛の不時着』は未見ですが(そろそろ本気でnetflix考えないと)、韓国映画『宝くじの不時着』は、ポスターを見た瞬間「絶対、当たり!」の予
ポップな懐かしさ。『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』康鍩錫
台湾の裏通りや下町を歩いていると、レトロな建物や壁、看板があって、歩きながらみているだけで楽しいです。今回、手に取った彩色タイルの本は、去年12月に大阪の国立民族博物館のヒンドゥー展でみたときから興味があったタイルについての本。
古代ローマの遺跡からも出土するタイル。中国に古くからある磚(せん:東洋式の黒い煉瓦。日本でも飛鳥・奈良時代に使われ、浮き彫りの模様もあり)。タイルの歴史は実用的なブロッ
『踊る大捜査線』エッセンスも楽しめる密室殺人ミステリー『厳冬之棺』孫沁文
最初のページからひきこまれる、一気読み必至の良質なエンタメです。文章のテンポがよくて、構成も上手いので、ただただ、密室殺人が楽し……..じゃなかった、次々展開される密室殺人のミステリーを読むのが楽しいです。訳者は安定の阿井幸作さん。
まず、主人公の優秀な梁良(リャン・リャン)刑事が「織田裕二似」ってところでニンマリ。なんせ、『踊る大捜査線』リアタイ世代ですから。織田裕二の役って優秀だけど、それ以