南の島の生命力と詞の世界。『雨の島』呉明益(及川茜訳)
台湾の呉明益さんの小説は、日本語訳がいくつかあります。現実とフィクション、現在と過去が行き来する独特の文体と世界観で、私が好きなのは『自転車泥棒』。台湾原住民の言い伝えと、日本植民地時代の銀輪部隊の歴史、現代台湾の自転車王国状況が入り混じった、不思議な小説です。
『雨の島』は事前情報がなくて、時間があれば……という程度で読み始めたら止まらなくなりました。なんせ、台湾の自然描写がすごい。木や植物、動物の野性的な生命力と、その源泉の太陽の強さとまぶしさ、圧倒的な水分の多い筆力が