運田兵鉄

本当にバカな奴だなと言われながらも、好かれる。私はそんな人間になりたい。そんな小説家に…

運田兵鉄

本当にバカな奴だなと言われながらも、好かれる。私はそんな人間になりたい。そんな小説家になりたい。最近感情失禁多し、年だなあー、真面目な話もします。

マガジン

  • 小説 女郎屋炬燵の戯言

    何でもありの世の中、事実は歴史に刻まれる。 何でもありの頭の中、妄想は小説に刻まれる。 なんと、100円で頭の中見れます。

  • 小説 佐戸交霊糞便魔蔵地獄図之変

    運田兵鉄の短編小説まとめブック。 非常識な男運田の願いはただ一つ。 読んで下さい。読んで下さい。読んで下さい。読んで。 読んで下さい。読んで下さい。読んで下さい。読んで。 読んで下さい。読んで下さい。読んで下さい。読んで。 ふ、と笑う事うけあいです。

記事一覧

短編小説 股間と神(1927字)

なんで、こうなったのか分からない。 島田平吉は天井を見上げて、暫く眼を閉じる。 この老人ホームに入って5年、平吉は90歳になる。 ホールで食事を摂りすぐ部屋に戻り…

運田兵鉄
4日前
6

短編小説 木魂に腐った性根を彫り出せ3/3回(1478字)

恐らく私は冷静さを欠いていた。 大急ぎで読書する妻のスナップ写真のデッサンを始めた。 しかし出来はイメージとはかけ離れていた。 結局、写真を拡大トレースして 何…

運田兵鉄
1か月前
7

短編小説 木魂に腐った性根を彫り出せ  2/3回(1002字)

庭で作業を始めた、丸太の表面をチェーンソーで切り落として 縦、横、幅、約八十センチ角の木魂が出来た、仏像を創るには、 分割する方が良いが、私にはこの大きさを割る…

運田兵鉄
1か月前
7

短編小説 木魂に腐った性根を彫り出せ   1/ 3回(625字)

定年退職して、半年も経たないうちに妻が亡くなった。 職場を失い、家庭を失い、私に残ったのは、 あっちこっち傷んだ肉体と あっちこっち傷んだマイホームと あの世ま…

運田兵鉄
1か月前
10

短編小説 なぜ、生かされて来たのか 其の三 分けあって最終回の続き(684字)

僕は一瞬見えた賽子に絶句した。 暫く立ち尽くし、やっと、発した。 「そんな、馬鹿な」 ホモサピエンス(人間)であり続ける事。命の自分史 僕は 大自然の子分で、無慈…

運田兵鉄
2か月前
7

短編小説 なぜ、生かされて来たのか 其の二最終回(1388字)

「まだ、やる事があるぞ」 と聞いた感じがする。 そうだ、あの時に感じた声に似ている。 命の自分史 青い空、ジリジリと熱波が吹き付ける夏、高校二年の通学中の時だっ…

運田兵鉄
2か月前
6

短編小説 なぜ、生かされて来たのか  其の一(1169字)

僕とあの幼児の差。命の自分史 あなたの命は誰のものですか。 「え、」 命の所有者は、本当にあなたですか。 「僕のものに、決まっているだろう」 命が、あなたのものと証…

運田兵鉄
3か月前
4

短編小説 昼と夜のリポート (2846字)

その時代の空気はその時代の人をつくり出す。 プロローグ 1959年昭和34年冬 定時制高校の物理教師河合将史は自宅で、期末試験の採点をしていた。 当時は日本中の高校生の…

運田兵鉄
3か月前
8

短編小説 喫煙室の幸運 (2370字)

渡り廊下から青い空を見上げる。 近くの換気扇からモヤモヤっとした弱い白い煙が出ている。 二三歩進むと、三キロ程先に見える火葬場の煙突と換気扇の視点が重なる。 それ…

運田兵鉄
4か月前
14

短編小説 昭和の残り香に生きる男(2134字)

渋谷区恵比寿の坂を上り小さな路地裏を縫うように歩くと、 突然昭和が現れる。 これは昭和の風景だ。 つまり男の住むアパートの一区画だ。 それは三十年以上続く経済的停滞…

運田兵鉄
5か月前
17

短編小説 スーツと裏切り者。(1447字)

プロローグ 三年通う恵比寿ガード下の中華食堂永楽楼でいつもの通り、 レバニラ炒め定食を注文した。 店は昼食ピークの後で、客は少なかった。 パートのおばちゃんが笑って…

運田兵鉄
5か月前
12

二人で懐メロ(499字)

1970年代、二人は未だ出会っていない。 出会ったのは1981年お見合いだった。 1983年に結婚し二人の歴史は幸も不幸も重なった。 テレビから今日のタイトル、1970年代のヒッ…

運田兵鉄
6か月前
11

短編小説 嘘嘘嘘嘘嘘みんな嘘!(1966字)

子供の頃 嘘をつくと、閻魔様に舌を抜かれる。 嘘は泥棒の始まり。 と聞き怖いと思った。 その為か拾った10円を交番にとどけた。 大人になり 嘘が正しい時もある。 嘘は生…

運田兵鉄
6か月前
13

短編小説女将さんと大将の居酒屋始末記3最終回 (1273字)

口コミとは恐ろしいもので、女将が会計すると、タダの時があると。 しだいに広まっていった。その証拠に女将がレジに現れると、そそくさと会計に向かう客が増えた。 それと…

運田兵鉄
6か月前
8

短編小説女将さんと大将の居酒屋始末記2 (1677字)

大将と常連客で女将に協力し店を続ける。盛り上げる。 さっきまで、他人事の様に、はしゃいでいた女将さんが、ハンカチを目頭に当てて、じっと聞いていた。 常連客の四人と…

運田兵鉄
7か月前
14

短編小説女将さんと大将の居酒屋始末記1 (1798字)

女将さんが、釣銭を間違えだしたのは半年位い前からだろうか。 御会計のトラブルで怒るお客に大将が出て丸く収める光景を何度か見た。 僕はこの居酒屋の常連で、入り口に近…

運田兵鉄
7か月前
12
短編小説 股間と神(1927字)

短編小説 股間と神(1927字)

なんで、こうなったのか分からない。

島田平吉は天井を見上げて、暫く眼を閉じる。

この老人ホームに入って5年、平吉は90歳になる。

ホールで食事を摂りすぐ部屋に戻りベットに寝て天井を睨みつける。

昼食後のこの動作は、ここに来てからのルーティンに成っている。

眼を閉じ、運が良ければ浅草の賑わいから吉原界隈の陰のある風景に繋がる。

運が悪い時は病院の集中治療室だ。

チューブに繋がれた平吉に

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短編小説 木魂に腐った性根を彫り出せ3/3回(1478字)

短編小説 木魂に腐った性根を彫り出せ3/3回(1478字)

恐らく私は冷静さを欠いていた。

大急ぎで読書する妻のスナップ写真のデッサンを始めた。

しかし出来はイメージとはかけ離れていた。

結局、写真を拡大トレースして

何とか下絵を描きだした。

下絵を木魂に転写し、やっと彫工程まで進んだ。

私は転写した下絵のつまり、木魂の上辺に初めに書いた

偽善ではならないの文字を観て、

心を引締めて、輪郭線に切込みを入れ

下絵の周囲の荒堀りを始めた。

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短編小説 木魂に腐った性根を彫り出せ  2/3回(1002字)

短編小説 木魂に腐った性根を彫り出せ  2/3回(1002字)

庭で作業を始めた、丸太の表面をチェーンソーで切り落として

縦、横、幅、約八十センチ角の木魂が出来た、仏像を創るには、

分割する方が良いが、私にはこの大きさを割る勇気が無かった。

グラインダーで表面を磨いて体裁を整え、苦労して

ブルーシートを引いた書斎に台車に乗せた木魂を運び込んだ。

五十九歳で亡くなった妻明子のスナップ写真を、

滲みの付いたアルバムから、引き剥がして戻した。

歳を重ね

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短編小説 木魂に腐った性根を彫り出せ   1/ 3回(625字)

短編小説 木魂に腐った性根を彫り出せ   1/ 3回(625字)

定年退職して、半年も経たないうちに妻が亡くなった。

職場を失い、家庭を失い、私に残ったのは、

あっちこっち傷んだ肉体と

あっちこっち傷んだマイホームと

あの世までの不確定な生滅時間だけである。

娘二人はそれぞれ自立して去って行った。

親密な煩わしい付き合いを敬遠した私に友人はいない。

何も考えず、ぼーとしている、

若い頃に煩悩を捨てようと禅寺に通った事があるが

今の私には座禅も警

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短編小説 なぜ、生かされて来たのか 其の三 分けあって最終回の続き(684字)

短編小説 なぜ、生かされて来たのか 其の三 分けあって最終回の続き(684字)

僕は一瞬見えた賽子に絶句した。

暫く立ち尽くし、やっと、発した。

「そんな、馬鹿な」

ホモサピエンス(人間)であり続ける事。命の自分史

僕は
大自然の子分で、無慈悲な全ての死をコントロールしていると言い放った

声の主に問うた。

「我々ホモサピエンスは、種を栄えさせる為に懸命に生きている、生きる為

に戒律を作り、社会生活を円滑にし死を恐れ、

それを退ける方策を考え、日々実行している、

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短編小説 なぜ、生かされて来たのか 其の二最終回(1388字)

短編小説 なぜ、生かされて来たのか 其の二最終回(1388字)

「まだ、やる事があるぞ」
と聞いた感じがする。

そうだ、あの時に感じた声に似ている。

命の自分史

青い空、ジリジリと熱波が吹き付ける夏、高校二年の通学中の時だった。

三メートル程先を歩く男子高校生が、突然膝から崩れるようにして

仰向けに倒れた。

後ろを歩いていた僕たちは、駆け付けた。

男子高校生は、隣のクラスのCだった。

Cは、かっと眼を見開き一点を見つめ、口から泡を吹きながら、

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短編小説 なぜ、生かされて来たのか  其の一(1169字)

短編小説 なぜ、生かされて来たのか  其の一(1169字)

僕とあの幼児の差。命の自分史

あなたの命は誰のものですか。
「え、」
命の所有者は、本当にあなたですか。
「僕のものに、決まっているだろう」
命が、あなたのものと証明できますか。
「簡単だ、自死出来るからだ」
それなら、死んで証明してください。
「無茶言うな、命懸けの、その時が来ればだ。」
その時が来れば死のボタンを自分で押せると言う事ですか。
「偉そうに何なんだ、あんた、誰だ。」
私は全ての死

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短編小説 昼と夜のリポート              (2846字)

短編小説 昼と夜のリポート (2846字)

その時代の空気はその時代の人をつくり出す。

プロローグ
1959年昭和34年冬
定時制高校の物理教師河合将史は自宅で、期末試験の採点をしていた。
当時は日本中の高校生の四人に一人は定時制高校の生徒で、その大半は家計を助けるために仕事をしながら学業に励んでいた。
当然、人数も多くガリ版刷りのB4の回答用紙も束に成っていた。
解答に赤鉛筆で〇✔を付けて採点し合計点をつける。
授業で問題をほのめかして

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短編小説 喫煙室の幸運 (2370字)

短編小説 喫煙室の幸運 (2370字)

渡り廊下から青い空を見上げる。
近くの換気扇からモヤモヤっとした弱い白い煙が出ている。
二三歩進むと、三キロ程先に見える火葬場の煙突と換気扇の視点が重なる。
それは火葬場の煙に吸収され一つになり昇っていく。

山裾に墓標の様に起立する二つのビルがある。
それは普通病棟A、緩和ケア病棟Bから成る成仏寺総合病院である。
A棟B棟をつなぐ渡り廊下があり、そのB棟脇にプレハブの喫煙室がある。
この病院では

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短編小説 昭和の残り香に生きる男(2134字)

短編小説 昭和の残り香に生きる男(2134字)

渋谷区恵比寿の坂を上り小さな路地裏を縫うように歩くと、
突然昭和が現れる。
これは昭和の風景だ。
つまり男の住むアパートの一区画だ。
それは三十年以上続く経済的停滞の産物ではない。
男の中では、この風景と一緒に昭和は続いている。
ここに紹介するのは昭和に立ち止まった、ある男の生き様である。
この男は昭和三十年に生まれている。
終戦から十年焼け野原から劇的に復興する最中に男は生を受けた。
新幹線が出

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短編小説 スーツと裏切り者。(1447字)

短編小説 スーツと裏切り者。(1447字)

プロローグ
三年通う恵比寿ガード下の中華食堂永楽楼でいつもの通り、
レバニラ炒め定食を注文した。
店は昼食ピークの後で、客は少なかった。
パートのおばちゃんが笑って中国訛りで
飲むか
と、水代わりにまかないのインスタントコーヒーを入れてくれた。
驚いた。
毎日通っているが、初めての事だった。
何故か優しさが区切りになった。
その後店には行ってない。

茂はスーツに袖を通したあの日をはっきりと覚えて

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二人で懐メロ(499字)

二人で懐メロ(499字)

1970年代、二人は未だ出会っていない。
出会ったのは1981年お見合いだった。
1983年に結婚し二人の歴史は幸も不幸も重なった。
テレビから今日のタイトル、1970年代のヒット曲が流れ続ける。
当時の歌番組の映像と、現在のスタジオに集まったスター歌手達が当時の
裏話に花を咲かせる。
番組は現在のスター達の生歌と、当時のスター達の曲と映像が前後する構成で進んで行く。
二人は、恐らく走馬灯のように

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短編小説 嘘嘘嘘嘘嘘みんな嘘!(1966字)

短編小説 嘘嘘嘘嘘嘘みんな嘘!(1966字)

子供の頃
嘘をつくと、閻魔様に舌を抜かれる。
嘘は泥棒の始まり。
と聞き怖いと思った。
その為か拾った10円を交番にとどけた。
大人になり
嘘が正しい時もある。
嘘は生きる為の潤滑油。
と聞き、たぶんそうだと思った。

彼女の名も歳も知らない恐らく未成年だ。
メロンが嘘を纏いキャバクラで仕事を始めたのは14年前の事だった。
初めに勤めたキャバクラの面接で彼女を見た店長が、眼を瞑り天井を見上げ右手を

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短編小説女将さんと大将の居酒屋始末記3最終回 (1273字)

短編小説女将さんと大将の居酒屋始末記3最終回 (1273字)

口コミとは恐ろしいもので、女将が会計すると、タダの時があると。
しだいに広まっていった。その証拠に女将がレジに現れると、そそくさと会計に向かう客が増えた。
それと同じくして店の顧客が明らかに増えだし人気が出て来た。
一週間程した辺りからか、また急に顧客が増えだした。
あの晩話をした4人の客のつまり女将さん応援団の我々はすぐに気づいた、これはSNSで広がり始めたのだ。
まずい。
このままでは、タダの

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短編小説女将さんと大将の居酒屋始末記2 (1677字)

短編小説女将さんと大将の居酒屋始末記2 (1677字)

大将と常連客で女将に協力し店を続ける。盛り上げる。
さっきまで、他人事の様に、はしゃいでいた女将さんが、ハンカチを目頭に当てて、じっと聞いていた。
常連客の四人と大将は、どうやつてお客に理解してもらい、居酒屋を続けられるか話し出した。
全員の注目を集めた認知症患者の河合克之が続けて言った。
「とにかく忘れます、自分自身がバカに成っていくのが、日に日に解ります、それが怖いのです。怖くて、怖くて、寝た

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短編小説女将さんと大将の居酒屋始末記1     (1798字)

短編小説女将さんと大将の居酒屋始末記1 (1798字)

女将さんが、釣銭を間違えだしたのは半年位い前からだろうか。
御会計のトラブルで怒るお客に大将が出て丸く収める光景を何度か見た。
僕はこの居酒屋の常連で、入り口に近く、レジの脇で落ち着かない、皆が座りたがらない、一人椅子にいつも座っている、ここが僕の指定席だ。
この居酒屋に通いだしたのと、今の会社に勤めたのがほぼ同時だから、約10年になる。
この居酒屋は、女将さんも大将もアルバイトも、客も相手に深入

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