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#エッセイ
10/25頃発売|書籍『鬼がこの世にただひとり、生きた証を刻みつける花』
2020年7月から2022年10月まで、約2年半にわたりご愛読いただきました「物語の“花”を生ける」シリーズが、書籍として出版されることになりました。
上記で公開した16本のうち、12本に加筆・編集を行い、1本を新たに書き下ろし、計13本をまとめました。
タイトルは、コンテンツの中の1本を表題作として選びました。
長い間、皆さまにご愛読いただき、SNSを通じて「本シリーズは紙の本で読みたい」
マツリゴトを負う女たちの覚悟の花
連載シリーズ 物語の“花”を生ける 【プロローグ】はこちらから
第16回 『彼岸花が咲く島』(李 琴峰)ある年の9月、連休に両親がふたりだけで格安のバスツアーに出かけた。例年、8月のハイシーズンを避けて9月に夏休みをとって、両親と私の3人でちょっとした旅行に出かけるのだけれど、その年は仕事の都合で私の休みがとれず、両親だけで行くことになった。
父も母も高級な旅館やホテルに泊まりたいとかいいもの
カメリア、それはシャネルの戦友
連載シリーズ 物語の“花”を生ける 【プロローグ】はこちらから
第12回 シャネルのカメリア卒論を提出した大学4年の冬、同級生たちとヨーロッパへ卒業旅行に出かけた。今の大学生たちに卒業旅行なるものがあるのかどうかはわからないが、社会人になると長い休みはとれなくなるという理由から、学生最後の休みを利用して、アメリカやヨーロッパを2週間ほど旅行する学生が多かった。
私たちもロンドン、ローマ、パリを
女の生き難さを物語る花
連載シリーズ 物語の“花”を生ける 【プロローグ】はこちらから
第11回 『源氏物語』 朝顔の巻
駅の改札で待ち合わせをしていると、女子高生がふたり、向こう側から歩いてきた。
眩いばかりのエネルギー、この瞬間にしかない生命のきらめき。
その年齢にあるときは気がつかなかったけれど、私の人生にも、きっとそんな一瞬があったのだろう・・・。
そんな気持ちで近づいてくるふたりを眺めていると、そのうち
それでも太陽をみつめつづけた花
連載シリーズ 物語の“花”を生ける 【プロローグ】はこちらから
第10回 映画 『ひまわり』(監督:ヴィットリオ・デ・シーカ 主演:ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ)
トリエステのロンキ・デイ・レジョナーリ空港(通称 フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア空港)に到着したのは、空にまだ、オレンジ色のグラデーションが残る時間だった。
薄暗いターンテーブルところで荷物が出てくるのを待ちなが
過去も未来も超える花
連載シリーズ 物語の“花”を生ける 【プロローグ】はこちらから
第9回 『時をかける少女』(筒井康隆)
数年前に花生けをはじめるまで、花が好きだとか、植物に興味があるだとか思ったことがあまりなかった。
小学生のとき、夏休みに朝顔やひまわり、糸瓜(へちま)を育てて観察日記をつけるという課題があった。なぜか毎年、芽すら出たことがなく、観察日記がつけられなくて、田舎で植物を育てていた祖父に泣きついた
小町の復讐をかたどる花
連載シリーズ 物語の“花”を生ける 【プロローグ】はこちらから
第8回 『小町の芍薬』(岡本かの子)2020年。私たち人間だけでなく、花や植物たちにとっても厳しい年だった。
日本では3月に自粛生活がはじまり、4月に緊急事態宣言が出て、一年のうちでもっとも花を必要とするイベントがすべて中止になった。花や植物の需要が激減し、それを生業とする人すべてが苦しんだ。生産者は丹精込めて育てた花や植物たちを
花に生かされ、花に奪われたラブストーリー
連載シリーズ 物語の“花”を生ける 【プロローグ】はこちらから
第7回 『うたかたの日々』(ボリス・ヴィアン)花を生けるというのは、実にお金がかかる。もちろん生ける頻度、花の種類や量、表現したい世界観などによって、かける額は違うけれど、上手になろう、自分の世界を表現して他者に見てもらおうとすると、相応にかかる。
お茶やカメラ、釣り、車、楽器など道具にお金がかかる仕事や趣味はたくさんあるけど、花
“死者”に手向ける花
連載シリーズ 物語の“花”を生ける 【プロローグ】はこちらから
第6回 亡き王女のための刺繍(小川洋子)4月からのクラブ活動、何にするか決めた?
まだ・・・やっちゃんと一緒でいいよ。
そう、じゃあ手芸クラブか絵画クラブはどう?
うん、それでいい。
小学4年生になると、月曜日の6時間目にクラブ活動という時間が加わった。小学生なので課外活動ではなく、授業の一つなのだが、自分の趣味や興味に合わ
水仙は、心の静寂清明な一点を映し出す
連載シリーズ 物語の“花”を生ける 【プロローグ】はこちらから
第5回 月光は受話器をつたひはじめたり越前岬の水仙匂ふ(葛原妙子)年末に喪中の葉書が届くと、年明けの松の内を過ぎるころ、銀座の鳩居堂へ足を運ぶ。
葉書や手紙を書くことはめっきりへったし、年賀状も今はWebサイトで注文して、それぞれの宛名ごとに個別のメッセージを書くこともできるので、手書きすることもなくなった。
それでも喪中葉書に