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月刊『抽象的な歩き方』

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様々なフリー切符や長旅に出た記録の置き場。
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#夏の思い出

ACT.93『終章』

ACT.93『終章』

網目の中で

 南北線で最後の足掻きとして真駒内からやってくる電車を撮影している自分。
 しかし、タイムリミットは刻一刻と迫っている…にも関わらず、自分の理想とする写真が撮影できない苦しみと戦っていた。自分が課した事なのに、それを達成できない焦燥感が、ただただ自分を焦らせていた。
 なんだろう、神様が何処かに居るとしたら
「ギリギリまでこんな所に残らず、大人しく帰る準備をしなさい」
というメッセー

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ACT.92『特急街道から出て〜最後の函館本線〜』

ACT.92『特急街道から出て〜最後の函館本線〜』

空席だらけの列車

 乗車して、少し驚いてしまった。
 観光列車、キハ261系5000番台…ラベンダー編成。この編成は夏季ラベンダーシーズンには車両運用を調整し、函館本線と富良野線を直通運転する臨時特急であるフラノラベンダーエクスプレスに充当されている。
 ラベンダーシーズンともあり、乗車している乗客は多いのかとフリースペースに入ったが、予想以上の空席で拍子抜けしてしまった。観光特急としての知名度

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ACT.87『引き換え』

ACT.87『引き換え』

働く同期

 札幌市営地下鉄で、最も格好良い…というのか、自分が最も魅了された車両は一体どれだったのか、と問われたら間違いなくこの8000形である。
 車両のルックスから感じる平成感、そしていつになろうと衰える事のないモダンなデザイン。そうした面が自分を魅了させた。
 そうした誘惑に勝てないから、今の自分はここにいる。新さっぽろの構内で地下鉄を撮影している。 
 写真は、乗車中の電車から撮影した新

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ACT.86『飛ばせる線路』

ACT.86『飛ばせる線路』

石勝線、再び

 追分駅に戻ってきた。列車を待機する。
 南千歳方面に向かって札幌方面に戻るのがこの旅の現状の締めくくりに相応しい…状況であるが、時刻表を確認してみると新夕張方面に1本の列車が見えた。
「少し乗車して、1駅か2駅先で下車すっか」
そうした思いで、駅に入る釧路方面の特急列車を待機した。

 やってきた列車に乗車する。キハ261系1000番台による特急列車、おおぞら/9号である。
「ま

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ACT.85『膝下解明』

ACT.85『膝下解明』

キハの裏で

 当日の天気は、曇天の中に陽射しが時折差し込むといった状態であった。そうした中で、屋外に保存されているこの場所のメイン的な存在であるキハ183-214を撮影する。夕日を受けて輝く国鉄色は、日本人のDNAを刺激する格別の情景である。
 さて。こうして炭鉱鉄道の開発歴史や石勝線の開通と安平町を形成した歴史を2つ眺め、保存車も共に観察した。
 しかし、この場所には隠れてまだ保存車がいるので

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ACT.83『新たなヒーロー』

ACT.83『新たなヒーロー』

道東の星と共に

 昼下がりの札幌駅。
 土曜日の夏季。8月をもう少しで迎えようとする中の札幌は北の大地といえど暑く、自分の中では滞在時間で慣れているとはいえ、車両を見てようやく自分が北海道に滞在していると気付かされる。
 ディーゼルサウンドを掻き鳴らし、高架駅に滑り込んできたのはキハ261系1000番台。
 現在の道南方面と札幌を結ぶ特急/スーパー北斗。そして今回乗車する石勝線で道東と札幌を結節

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ACT.79『眠らない夜』

ACT.79『眠らない夜』

随一の繁華を

 西18丁目から東西線に乗車して、再び大通にやってきた。この大通では札幌市営地下鉄の全路線が交錯し、全ての方角にアクセスが可能になっている。
 当初はセイコーマートで探して、ホットシェフでも…と思ったものの、折角の美食の都市に居るのだからやはり何か食べておかねばという気持ちにさせられた。何回かホットシェフでは食べたし、もういいかな…という気持ちが内心混ざっていたのも含まれるのだが。

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ACT.78『焦点』

ACT.78『焦点』

宿、到着へ

 ゲストハウスに行くまでの道のりに、かなり迷っていたのを今でも思い出す。
「どっちや…分からん…」
発達のあるあるになってくるのかもしれないが、方向感覚や地図感覚、それに自分の居場所を感じられないというか街中を逃走しているような気持ちになる。時刻は既に21時を回っていた。通常の移動ではサッサと進めるような移動距離を、サイン類のレトロな文字や札幌市営地下鉄の独自性を写真に記録しつつ歩行

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ACT.76『フォトタイム』

ACT.76『フォトタイム』

駅で過ごす束の間

 石北本線を走り抜き、旭川で観光列車を撮影する為だけに待機している。
 特急/大雪は札幌に向かう特急列車・ライラックにカムイといった都市間接続の列車と連携を取っている。
 自分が乗車した大雪4号の場合だと、札幌方面への接続はライラック34号となる。16時30分に旭川を発車して、札幌には17時35分に到着する列車だ。この列車に乗車すれば、札幌での時間に大きく余裕が出来るだろう。

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ACT.75『かつての本線』

ACT.75『かつての本線』

夏空の下を

 列車は北見を発ち、留辺蘂に停車した。そしてまず、列車の転換点となる遠軽まで走り抜けていく。そしてその前に立ちはだかるのは常紋峠という厳しい難所だ。
 この峠を貫いて掘られたトンネルには犠牲者が多く発生し、工事関係者の犠牲を弔う慰霊碑も設置されているのだとか…
 北海道の鉄道を待ち受ける難所に立ち向かい、乗車中のキハ283系は遅延の原因と化した温度上昇の線路を踏み締め走っていく。

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ACT.74『再び、分岐点へ』

ACT.74『再び、分岐点へ』

列車待ちにて

 石北本線の線路温度上昇により、列車は正常な運用をできない状態でいた。
 乗車予定の特急•大雪4号も大幅な遅延となり、北見駅ではどんより重い空気が立ち込めていた。
 その中で…というのは、待合室のテレビを鑑賞したり(鑑賞というほどの内容でもなくニュースなのだが)、駅構内のセブンイレブンに向かったりと駅構内をぼんやり周回して暇つぶしをしていた。セブンイレブンではJR北海道土産に関して

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ACT.73『感情動転、歴史の先に…越えろ石北本線!』

ACT.73『感情動転、歴史の先に…越えろ石北本線!』

昭和への架け橋

 大正…の蒸気機関車というと、やはり令和最大のアニメ映画として現状のヒットを記録し、そして世界でも多くの高い評価を得たアニメ『鬼滅の刃』…劇場版より、無限列車編で登場した旅客用の蒸気機関車。8620形が浮かぶだろう。
 この機関車の活躍は、令和になった今。多くの国民と世界の人々に大きな人気を集め、
『無限列車』
の呼び名を集めた。大正・昭和・平成。そして令和の時代を踏んで今に至り

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ACT.72『北見の出会いより〜残り香に思う〜』

ACT.72『北見の出会いより〜残り香に思う〜』

北見市到着

 石北本線の特急列車、オホーツク号に乗車して北見に到着したのは昼にも近い11時を過ぎた段階であった。札幌を6時50分に出発し、旭川から長い道のりを経て、遠軽でスイッチバック。そしてその先、生田原での常紋越えに挑み、列車は北見に出てきた。
 自分が下車した時、北見は凛々とした夏晴れの空の下、快晴の天気であった。旅は既に後半に入っているのだが、その中でもこの北見で迎えた天気はここ1番の状

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ACT.71『更なる長い道』

ACT.71『更なる長い道』

旭川へ

 朝の普通列車に乗車し、のんびりと旭川駅に向かって進んでいく。既にH100形にも旅の案内人のような気持ちというか落ち着いた感覚が芽生え、安心感のようなものさえ同時に感じてくる。
 このまま麗かな日差しに身を委ね、30分程度で列車は旭川に到着する。今回は再び旭川に戻って…からの更に長い道を歩んで道東、北見市に向かい歩みを進めていく。何となしに、稚内まで既に行ったからなのか肩の荷が既に砂にな

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