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好きな記事その2

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#小説

黄昏に見る

黄昏に見る

 あなたは誰? とつぶやいて 私は誰? と言葉が聞こえる。わからないわ、とささやいて、わからないの、とその繰り返し。

 私が目にしている光景は間違いなく現実に違いないのだろうけれど、私が今ここにいる真実は、本当に現実なのかわからない。

 寂しいとき、楽しいとき、悲しいとき、嬉しいとき、この感情は本物だと思う。私がそう感じている、真実だと。でも、その私は本物? 存在している?

 それは、私では

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Cadd9 #11 「愛される夢」

Cadd9 #11 「愛される夢」

ナスノ家の縁側は日当たりも風通しもよく、とても居心地のよい場所だった。そこで昼寝をするたびに、樹はいつも、年寄りの膝の上で眠る年老いた猫のような気分になる。その猫は長生きをしすぎていて、一日中眠ってばかりいるのだ。

縁側の色褪せた板敷きの床に枕を置き、日の光を浴びながらうとうとしていると、樹はじつにさまざまな夢を見た。どれも永遠のように長く、そして光に溢れたまぶしい夢だった。しかしそれらは目が覚

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エッセイ:タイムラインは、流れる河

エッセイ:タイムラインは、流れる河

こんにちは、デレラです。

noteでは、わたしはいろんな人をフォローするようにしています。

フォローされれば、記事を一切書いていない方を除いて、ほぼフォローバックするようにしています。

特に、わたしがこれまで興味を持ってこなかったことについて書いている方、

または、ご自分の興味関心について深掘りして書いている方は、

喜んでフォローバック。

わたしは、タイムラインを混沌とさせたいと思うん

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掌編小説「モンクの肖像」

掌編小説「モンクの肖像」

 コーポ深山の二階の一番奥。かすかにジャズが漏れ聞こえてくるその部屋が、私の腐れ縁の友人の家。

「亮介、私。入るよ」

 おざなりにノックして、ドアを開けた。
 雑誌や脱ぎ捨てた服やゴミで散らかったワンルーム。淡い冬の陽が差し込むベランダの窓のそばで、亮介はいつものようにイーゼルに向かっていた。飽きもせずにかけているのは、ジャズピアニスト、セロニアス・モンクのアルバムだ。 
 これがすっかり日常

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シンクロニシティ!ライトワーカーの道!神社の秘密の巻⑥

シンクロニシティ!ライトワーカーの道!神社の秘密の巻⑥

専業主婦であり霊能が得意でヒーラーの真理さん、
画科で、デザイナーで神託が得意な、のんさんによると、
「神社には神霊はいて 、人の切なる思い、願いや祈りが
 神霊に通ずれば 人の魂は、神の神聖さと結合、共鳴し、
 進化や 成長を遂げると思います。」
と言う。

神社とは、人の祈りと神様の願いが一体になる場なのだそうだ。
人の魂の成長の場として の役割を担っているのです。

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東京アダージョ「ライダースジャケット」

東京アダージョ「ライダースジャケット」

自分が、30代に入った時だった。
都内の高校の時の同級生と、たまたま、仕事での出先の駅で会った。
それも、北関東の駅でだった。
急に声をかけられても、、彼には、失礼だが、あまり目立たない存在だったのか、すぐには、思い出せなかった。
彼は、浪人の末、当時、学費の安い国立の大学に進学したそうだ、それは、母子家庭だったからかも知れない。
はじめは、都内の信用金庫に勤めたが、今は、母親の実家で暮らし、地元

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放課後のドッペルゲンガーは嘘をつく

放課後のドッペルゲンガーは嘘をつく

「ねぇ樹、ドッペルゲンガーって知ってる?」

 弟のベッドで枕を抱えて座るジャージ姿の姉、実琴は質問をした。姉が部屋にいる事など気にもせず、樹と呼ばれた弟は授業の復習を熱心に続けていた。
「知ってる、あれだろ自分とそっくりな奴に出会ったら死ぬって怪異話」
何でそんな話をするのか。と樹は聞き返した。
「ドッペルゲンガーというよりも。私と共通点が多い人と学校で知り会ったって言う方が正しいのかな」

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『テディベアの記憶』

『テディベアの記憶』

Read data No.0/0
20××年××月

オレンジ色に染まった夕暮れ。
少しばかり強風が吹き荒れ、
遠くからは小刻みに機械音が聞こえる。

棒付きの飴を口に含みつつ、
紺色の制服を着た少女は
見慣れた商店街を通り
自宅に向かっていた。

歩道脇に落ちている
小さなぬいぐるみが視界に入る。
それは赤い縞柄のテディベア。
背中には短い紐が付いていた。
 
拾い上げ見つめていると、
学生鞄

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プロローグ2-2(ムサシ、月歌へ)-サイレント・ネオ-boy meets girl-

プロローグ2-2(ムサシ、月歌へ)-サイレント・ネオ-boy meets girl-

「なあ、ムウ・メウさんよ、この勲章やその紙っきれの代わりにいったい、どれくらいの人間が死んだんだろうな…!?」



「…さあな」
ムウ・メウは突然冷たい目になってムサシを見つめた。
彼女の癖である。自分の気持ちを見せたくないとき、突然心を閉ざすのである。
しかし、ムサシはそれぐらいでは全くひるまない。
「俺が戦争に行っている間に、コハルは死んだ…」
「聞いたよ、残念だった…」
コハルはムサシの

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御岩神社

御岩神社

葵の御紋が飛び込む

「この紋所が目に入らぬか…」あの有名なセリフがあたまのなかを駆け巡ります。

水戸藩初代のころより水戸藩の国峰とし、徳川光圀公(水戸黄門さま)など代々参拝をするところであったそうです。

「浄らかな山かびれの高峰(御岩山の古称)に天つ神鎮まる」常陸國風土記

創建の時期は不明のようですが縄文時代の遺跡が発掘されているよう。

御祭神は

国之常立神 クニノトコタチノカミ

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菊の継承

菊の継承

古今は
或る日では
なかった

篤き焼べては
秋の暗闇

魂落ちえども
契り果たすまで

死はそれほど
高潔ではなく
くれてやる

涙累々、老母は
兄弟のくれた施し
忘れようがない日々

この身が
あの家に
届くのであれば———

もしかしたら
失われた信義なのかもしれない

古いから、時代が違うから
そのような理由で価値観は無くならない
見えなくなるのはいつも我々の方だ
ただ、其処にあるというの

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ベケット

ベケット

『文通』

蠱惑的な響きである。私はしたことがある。しかも想い人と。それだけで人生勝組宣言を発布できるのではないか…?儚くも甘酸っぱい手紙のやり取りを私は期待した。でも現実は非常だった。例えば私がこんな文面を送ったとする。

『テニス、好きなんだね!私も最近テニスの王子様にはまってますw
推しはありきたりながら不二くんですꈍ◡ꈍ
実は…テニプリもミュージカルやってるんだよ!私も最近まで知らなく

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私のメフィストフェレス

私のメフィストフェレス

大学生活!
桜花爛漫な青春日和を満喫しようと、私は人がごった返す学内を散策していた。入学したからには今までのオタク人生と決別し、爽やか絢爛清純派学徒に生まれ変わろうと悠々闊歩と練り歩いていた目先、『内海くん』の姿を見つけた。半年前からの文通相手で、恥ずかしながら私がこの大学に入学した理由でもある。彼は携帯を持たないから示し合わせも無く直接会える機会は稀だ。私は当然この機会を逃さない。

「内海く

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白と黒の神社-夢語り-

白と黒の神社-夢語り-

note公式のお題「私の不思議体験」用の記事です。
https://note.com/info/n/n5768176aee24

無彩色の道を中心に
白と黒の神社が2社ある

とても広い神社で
大きな木が1柱ずつ立っていた

白色の神社は明るく日が差し
汚れた様子もなく
真っ白で無機質な境内の中にある

黒色の神社は薄暗い霧が立ち込め
陰鬱な空気が漂い
煤のように真っ黒な境内の中にある

自分は白

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