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#小説
Cadd9 #11 「愛される夢」
ナスノ家の縁側は日当たりも風通しもよく、とても居心地のよい場所だった。そこで昼寝をするたびに、樹はいつも、年寄りの膝の上で眠る年老いた猫のような気分になる。その猫は長生きをしすぎていて、一日中眠ってばかりいるのだ。
縁側の色褪せた板敷きの床に枕を置き、日の光を浴びながらうとうとしていると、樹はじつにさまざまな夢を見た。どれも永遠のように長く、そして光に溢れたまぶしい夢だった。しかしそれらは目が覚
東京アダージョ「ライダースジャケット」
自分が、30代に入った時だった。
都内の高校の時の同級生と、たまたま、仕事での出先の駅で会った。
それも、北関東の駅でだった。
急に声をかけられても、、彼には、失礼だが、あまり目立たない存在だったのか、すぐには、思い出せなかった。
彼は、浪人の末、当時、学費の安い国立の大学に進学したそうだ、それは、母子家庭だったからかも知れない。
はじめは、都内の信用金庫に勤めたが、今は、母親の実家で暮らし、地元
プロローグ2-2(ムサシ、月歌へ)-サイレント・ネオ-boy meets girl-
「なあ、ムウ・メウさんよ、この勲章やその紙っきれの代わりにいったい、どれくらいの人間が死んだんだろうな…!?」
2
「…さあな」
ムウ・メウは突然冷たい目になってムサシを見つめた。
彼女の癖である。自分の気持ちを見せたくないとき、突然心を閉ざすのである。
しかし、ムサシはそれぐらいでは全くひるまない。
「俺が戦争に行っている間に、コハルは死んだ…」
「聞いたよ、残念だった…」
コハルはムサシの
私のメフィストフェレス
大学生活!
桜花爛漫な青春日和を満喫しようと、私は人がごった返す学内を散策していた。入学したからには今までのオタク人生と決別し、爽やか絢爛清純派学徒に生まれ変わろうと悠々闊歩と練り歩いていた目先、『内海くん』の姿を見つけた。半年前からの文通相手で、恥ずかしながら私がこの大学に入学した理由でもある。彼は携帯を持たないから示し合わせも無く直接会える機会は稀だ。私は当然この機会を逃さない。
「内海く
白と黒の神社-夢語り-
note公式のお題「私の不思議体験」用の記事です。
https://note.com/info/n/n5768176aee24
無彩色の道を中心に
白と黒の神社が2社ある
とても広い神社で
大きな木が1柱ずつ立っていた
白色の神社は明るく日が差し
汚れた様子もなく
真っ白で無機質な境内の中にある
黒色の神社は薄暗い霧が立ち込め
陰鬱な空気が漂い
煤のように真っ黒な境内の中にある
自分は白